【バレーボール(男子)】「早慶戦になるとギアが違う」1部王者ワセダに1−3の健闘  攻めのバレー展開も“紺碧の壁”は高く/第89回早慶バレーボール定期戦

バレー戦評

早慶運営陣のこだわりが詰まった華々しい演出で幕を開けた、第89回早慶バレーボール定期戦。男子戦の第1セットは序盤からリードを広げられ、15ー25でワセダに軍配が上がる。続く第2セットでは攻守共に全員の技が光り、今季の春季1部リーグ王者であるワセダ相手に慶大が主導権を握る展開に。全員で繋ぎ、最後にエース・入来晃徳(環4・佐世保南)が決め切るという慶大の良さが詰まった第2セットは、慶大が25ー22で勝ち取る。試合の流れを分つ第3セットは、再びワセダの勢いに呑まれ16ー25。絶対に落とせない第4セットは、S・松田悠冬(商1・慶應)がMB・松山鼓太郎(商3・慶應)のクイックを有効に使いながら得点を重ね、9ー9の同点に。しかし、堅実なワセダ守備の牙城を崩すことはできず、19ー25でゲームセット。11年ぶりの勝利をかけて臨んだ第89回早慶定期戦は、1ー3でワセダに敗れた。

2025年6月8日(日)

第89回早慶バレーボール定期戦@日吉記念館

得点

 

 

慶大

セット

早大

15

25

25

22

16

25

19

25

 

出場選手

 

 

ポジション   

背番号

名前(学部学年・出身校)

OH

10

野口真幸(商3・慶應)

MB

松山鼓太郎(商3・慶應)

OP

11

入来晃徳(環4・佐世保南)

OH

山口快人(経3・慶應)

MB

22

稲井正太郎(法2・慶應)

S

13

松田悠冬(商1・慶應)

L

緒方哲平(環2・日向学院)

L

今田匠海(政2・慶應)

途中出場

 

 

OH

清水悠斗(総2・習志野)

OP

山木柊(文4・慶應湘南藤沢)

S

15

久保田健介(商4・慶應湘南藤沢)

S

26

岩間祥成(環2・成城)

第1セットは、早大の勢いに押されて慶大バレーを展開することができず。序盤から、4ー10と大きくリードを広げられてしまう。慶大は早くも1度目のタイムアウトで立て直しを図り、まずはOH・野口真幸(商3・慶應)のスパイクで1点を返す。しかし、その後も慶大攻撃が決まらず早大の4連続ポイント。6ー16の10点ビハインドを負ったところで慶大が2回目のタイムアウトをとる。OH・山口快人(経3・慶應)のスパイクやブロックで得点を重ねるも、開いた点差は大きく。15ー25で第1セットを落とす。

攻守で安定感を見せた山口

松田悠冬のサーブで始まった、第2セット。相手に2連続ポイントを許すも、MB・松山鼓太郎のクイック、さらにはブロックで慶大も2連続得点し、即座に試合をふりだしに戻す。その後2ー4とされるも、OH・清水悠斗(総2・習志野)の好ディグからロングラリーとなり、エース・入来晃徳がスパイクを決めると日吉記念館は大きな歓声に包まれる。続く松山のサーブから、相手のミスやMB・稲井正太郎(法2・慶應)のクイックなどで慶大が3連続ブレイクに成功し6ー4。松山やOP・入来晃徳の正確なブロックが要所で光り、春季1部リーグ王者の早大相手に1点のリードも許さない互角の試合を展開する。14ー12の場面ではL・緒方哲平(環2・日向学院)の体を張ったディグからOH・山口快人がスパイクを決めるなど、全員の技が光る。ブロックやトスをミスなくこなし、入来が決めきるという慶大の良さを全面に発揮した第2セットは、25ー22で慶大が奪う。

体を張ってボールをあげる緒方

試合の流れを分つ重要な第3セットは、MB・松山鼓太郎が立て続けにクイックを決めチームを勢いづける。それでも5ー7から3連続ポイントを許すと、徐々にワセダの勢いに押し流されていく。攻撃ではエース・入来晃徳やOH・山口快人がスパイクで得点を重ね、守備ではL・今田匠海(政2・慶應)と緒方哲平に加えて同じく2年生のOH・清水悠斗も粘りを見せ、なんとかワセダにくらいつく。セット終盤には、サーバーとして久保田健介(商4・慶應湘南藤沢)を起用するなど執念を感じさせた慶大だが、16ー25で第3セットを落とす。

途中出場で存在感を見せた清水

第4セットは、早大主将・前田凌吾(スポ4・清風)のツーアタックで幕を開ける。流れを奪われ連続失点を喫するも、慶大のエース・入来晃徳の強打がそれを断ち切る。直後にはS・松田悠冬(商1・慶應)のブロックポイントも決まり、4連続得点で一時は9-9と早大に迫る。このセットで光ったのは、中央からの速い攻撃。特にMB・松山鼓太郎の速攻が決まり、早大の鉄壁の守備に風穴をあける。しかし早大の堅実な守備に押され、13-18と点差を広げられてしまう。ここで、エースとしてチームを牽いんした入来が足をつり負傷退場。代わって主務として運営面でもチームを支えるOP・山木柊(文4・慶應湘南藤沢)が今季初出場。笑顔で声をかけ、チームを鼓舞する。今田匠海・緒方哲平の両Lが好レシーブを繰り出し、攻撃陣を援護。託された清水悠斗が、劣勢の中でも力強く決め切った。しかし、早大の高い攻撃力に一歩及ばず、19-25でゲームセット。強い思いで臨んだ伝統の「お祭り」は、悔しさの残る幕切れとなった。

試合後に互いを讃えあう入来(奥)と山木(手前)

(記事・写真:村田理咲、長掛真依、梅木陽咲、塩田隆貴、河合亜采子)

 

▽以下、コメント

星谷健太朗監督

ーー今日の試合を振り返って

この最高の場で、最高の相手とバレーボールができて最高でした。

ーー選手たちのプレーについては

緊張で力を発揮できない場面がありながらも、自分と向き合って攻め続けるバレーボールが展開できたのではないかなと思います。

ーー監督ご自身も熱くなられる場面がありましたが、どのような思いでしたか

選手たちに経験がない中で、モチベーションを下げさせないためにあえて熱くなっていました。試合中は頭に血が上って、気持ちを維持できなることがありますが、出来る限り新鮮な状態を続けられるようにすることも監督の大きな役目だと思っているので、熱くなるべきところは熱くして、どんな場面でも立ち向かっていくように示せたかなと思います。

ーー強敵・早稲田との対戦で学んでほしいこと

功績のあるチームですが、同じ人間、同じ大学生であるということ、大舞台で必ずしも100%の力を出し続けられるかと言われるとそうではないということを、体感してくれたかなと思います。

ーー東日本インカレ、秋リーグへ、どのように準備していきますか

基礎基本の部分を、正しいフォームと向き合って培っていきたいです。それが大事な場面で出てくると思うので、勢いでごまかせると思わずに、土台を作っていきたいと思います。

ーーファンの方々に一言お願いします

結果として歯がゆい部分が多かったのですが、それでもチケットを買ってきていただいてる多くの皆さんに少しでも何か感じとっていただけたらなという思いで、チーム一同戦ってきました。1人でも多くの人にそう思っていただけたら本望です。レベル的には差が縮まりにくい相手ではありますが、これからも少しでも高いレベルで戦っていけるように頑張ってまいりますので、機会があれば、リーグ戦や来年の早慶戦の応援に来ていただけたら嬉しいです。ありがとうございました。

 

#11 副将/OP・入来晃徳選手(環4・佐世保南)

ーー今日の試合を振り返って

全体的にみんな頑張ってくれていました。はっきり言うと、自分の足がつってしまったから負けたという印象です。全力を出せば戦える相手だということを知れたので、それはいい経験だったなと思います。ただ、その中で力負けした部分を感じているので、自分たち以上の力を持つ相手にどうやって戦っていくかというところで新たな課題ができたと思います。

ーー第2セットを取りましたが、要因は何だと考えますか

みんなが僕に託してくれて、それをしっかり決めることができたのが大きいと思います。いろんな人の応援が力になってスパイクを打ちきることができたので、やっぱり早慶戦は特別な場だなと思います。技術的なところで言うと、パスやブロックといった土台の部分を仲間がしっかりやってくれたので、相手に圧力をかけられていたと思います。

ーーここからしばらくオフシーズンに入りますが、練習で重点的に取り組んでいきたい部分はありますか

今回の春リーグの課題として出たのがサーブやパス、ブロックといったプレー上での土台の部分です。そこの質が明らかに悪いということがデータからも出ているので、もちろん「繋ぎ」のバレーも大切ですが、それ以上に個人のスキルも高めていけたらいいなと思います。

ーー秋季リーグへの意気込みをお願いします

絶対1部に上がりたいと思っています。日大や梨学など、春に勝てなかった試合には理由があると思うので、それをしっかり振り返って、調整や土台作りを頑張っていきたいな

 

#5 OP/主務・山木柊選手(文4・慶應湘南藤沢)

ーーまずは主務として、早慶戦当日を無事に迎えられました

やっぱり、苦しかったというのが一番大きくて。新しい試みがすごい多かったのでOBの方々の反応も、体育会事務室の方の反応も最初は全然良くなかったので、まずはそこを説得するところから始まって。許可をもらってもそれが必ず実現する訳ではないですし、理想像はありながらも実現させるということがすごく大変でした。でも、こうやって演出の時に盛り上がってくれる観客の皆さんとか、それでやる気を出してくれる選手を見て、やって良かったなと思いました。

ーー涙を見せる慶大スタッフさんの姿もありました

本当に安心しました。リハーサルもあまりできていなかったので、どうなるか全然分からなくて。なんとかうまくいって良かったなという感じです。

ーーベンチスタートでしたが、チームのプレーはどう見られていましたか

「みんな、早慶戦になると一つギアが違うな」というのをアップの時から感じていて。いつもより跳べていたと思います。だからこそ最後の方で入来が足をつってしまったりだとか、いつもの実力以上のプレーが随所に見られましたし、1セットとることができたというのが何よりの証かなと思っています。

ーー足をつってしまった入来選手に代わり、早慶戦の舞台に立たれました

まさか出るとは思っていなくてびっくりしたというか。不謹慎ですけれど、自分が出られるから「いつでも足つっていいよ」というふうには言っていて…(笑)。ちょっと前から「入来がつったら出るぞ」というふうに監督から言われていたので、心の準備はできていたし、前日まで何度も自分の頭の中でイメージしてきた早慶戦なので緊張はしませんでした。全然初めてな感じもしませんでしたし、昨日4回も5回も思い描いていた早慶戦をもう一回見た感覚です。

ーーラストイヤーの残りの期間はどう過ごしていきたいですか

スタッフとしては1個下の航大(=副務・林航大)を詰めが甘くないように、成長させたいなと。今回の早慶戦みたいに派手なことはやろうと思えばできると思うんですけれど、何よりも大事なのは派手なことの裏で、部として活動を続けていく上で重要な土台の部分をおろそかにしないことなので。早慶戦で演出というプラスアルファの部分のノウハウを得られたので、残りの期間では(部の)土台のもっと見えない部分がまだまだだと思うので、その辺りを詰めていきたいです。選手としては10年間のラストイヤーなので、自分の全盛期で終われたら良いなと思います。

 

渉外主務・河村歩奈(経4・慶應湘南藤沢)

ーー無事に早慶戦当日を迎えられて、涙する場面もありました

本当に夢が叶ったなと思います。みんなにたくさんわがままを聞いてもらって、発案者だからこそうまくいかなかったらどうしようと不安に思うこともあったんですけど、みんなの協力のおかげで一人ではできないことを成し遂げられたので、悔いなしという感じです!結果以外は悔いなしです。勝ちたかったです。

ーーこの早慶戦で成し遂げたことを余すことなく教えてください!

私は集客班のリーダーなので「観客動員数を上げる」ということを一番の使命に動いていました。最初は日吉の駅をジャックしたかったんですけどお金の関係で厳しいという結論になって、日吉キャンパスの道路に面しているところに横断幕を張ることに止まって。それでもやりたいことができて十分嬉しかったんですけど、横断幕の様子を見にいった時にちょうど横断幕に載せたチケット情報のQRコードを読み込んでくれているファミリーがいて、この横断幕を見て早慶戦を知って来てくれるんだということを実感して、手触り感があって一番嬉しかったです!観客動員数は3325人で過去最多くらいの水準です!3年前が3300人くらいということで正確な数字は分からないのですが、過去最多の方に来ていただけたのかなと思います。

ーー早慶戦1日を振り返って

同期というところで言うと、私が選手入場の時に配信画面の切り替えをやっていたんですけど、入来が登場した時に本当に泣けてきちゃって…(笑)。入来がカッコつけているのを見て泣きながらスイッチングするという変な人になっていました。試合は2セット目を取ってくれて本当に嬉しいなというところで、早稲田は1部で優勝したチームですし簡単に勝てる相手ではないですし、もちろん格上ということもありますけれど、何よりも選手たちに楽しんでほしかった。早慶戦って4回しかできない舞台なのでプレッシャーとかではなくてただただ楽しんでほしくて、ただただ楽しむというのが慶應の強みが出る要素だと思うので。こういうふうにセットを取ることができたという「結果」に表れて良かったのかなと思います。

ーー結果以外はもう悔いなしですか

はい!これまでは、一つのことが終わったらどんどんやりたいことが出てくるタイプだったんですけど、4年目でわがままもたくさん叶えてもらったので今年はもう満足かなと思います!悔いのない4度目の早慶戦でした!

ーーラストイヤーの残りの期間はどう過ごしていきたいですか

運営、スタッフというところでは早慶明が今年は慶應開催なので、新しい早慶明をお見せしたいなと思います!(笑)

 

#2 OH・清水悠斗選手(総2・習志野)

ーー今日の試合を振り返って

ベンチスタートで、準備しといてねと言われていたので、出るだろうなとは思っていましたが、最初は気持ちを作るのが難しいところがありました。でもコートにいる人たちが、エンターテインメントじゃないですけど、とてもプレーしやすい雰囲気を作ってくれていたと思います。

ーープレーについては

堅実なレシーブと点を取って盛り上げるスパイクが、劣勢の時は特に大事だと思うので、攻める姿勢を出来るだけ多く出して、チームが上がるきっかけになれば良いなと思いました。そのチャレンジの結果、これまで守りに入ってしまっていたような場面でもしっかり打ち切って、攻めに行くことができたので自分の中で成長を感じました。

ーー最後に託される場面が多かったように思います。どんな思いで打ち切りましたか

入来さんがもう打てなくて、自分に上がってくるのは分かっていたので、普段の練習を思い出して、気持ちと、助走とか準備する時間を自分で作って打ち切ることができました。

ーーこれからのオフシーズン、何を目標に取り組んでいきますか

最後のように、打ち切るプレーというのをもっとコンスタントに出来るようにしたいので、入来さんのような攻撃力と、リベロ並みのレシーブ力というような、どこをとっても90、100点出せるような選手になりたいと思います。1つのポジションにこだわらずに、色々なポジションで視点を養って、時間をかけて総合的にバレーボールがうまくなっていきたいです。

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