混戦を極めた秋リーグ。入替戦の可能性は、最終日第3試合の4校に開かれていた。慶大に課された条件は、3−1、もしくは3−0での勝利。そんな1部復帰への期待とは裏腹に辛くも大東文化大のパワーと高さに圧倒され、立ち上がり6連続失点。相手のミスでしか得点できないまま、点差が開いていく。OH・山口快人(経3・慶應)を中心にスパイクで得点を重ねるも、第1セットは16-25。迎えた、運命の第2セット。エース・入来晃徳(環4・佐世保南)のスパイクポイントで幸先よく幕を開けるも、その後は慶大バレーを完全に封じられてしまう。9ー25でこのセットも落とし、入替戦の望みはここで途絶えた。それでも第3セット。なんとか1点差で19–20を迎えると、岩間祥成(環2・成城)のサービスエース、MB・稲井正太郎(法2・慶應)のブロックポイントで21−20と慶大が一歩リードする展開に。最後まで大東文化大にくらいついた慶大だが、23−23から2連続で強烈なスパイクを叩き込まれゲームセット。チーム山元の“秋”は、悔しくも終わりを迎えた。なお、稲井正太郎が最多34得点でブロック賞を受賞した。
2025年10月26日(日)
2025秋季リーグ @立教大学新座キャンパス
慶大×大東文化大
得点  | 
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  | 
慶大  | セット  | 大東文化大  | 
16  | 1  | 25  | 
9  | 2  | 25  | 
23  | 3  | 25  | 
出場選手  | 
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ポジション  | 背番号  | 名前(学部学年・出身校)  | 
S  | 13  | 松田悠冬(商1・慶應)  | 
OH  | 10  | 野口真幸(商3・慶應)  | 
MB  | 8  | 中島昊(経1・慶應)  | 
OP  | 11  | 入来晃徳(環4・佐世保南)  | 
OH  | 6  | 山口快人(経3・慶應)  | 
MB  | 22  | 稲井正太郎(法2・慶應)  | 
L  | 4  | 今田匠海(政2・慶應)  | 
途中出場  | 
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L  | 1  | 山元康生(法4・慶應)  | 
S  | 15  | 久保田健介(商4・慶應湘南藤沢)  | 
S  | 26  | 岩間祥成(環2・成城)  | 
L  | 21  | 井上航(経1・慶應)  | 
秋リーグ最終戦ということもあり、アップ前の旗振りでは4年生全員でコートを旋回。そして後輩たちが4年生を囲むように集まり、全員で円陣を組む。第3試合は入替戦出場校を決める2試合というだけに、両コート応援に熱が入る。

4年生でコートを駆け回る
第1セットは、高さのあるブロックに精度の高い強烈なスパイク、そしてビッグサーバーを擁する大東文化大を前に慶大バレーを展開できず。1部復帰への期待感とは裏腹に、辛くも立ち上がりから6連続ポイントを許し0ー6。その後も相手のミスでしかポイントできないまま、点差がじわじわと開いていく。暗雲が立ち込める中、4ー11と7点ビハインドを負ったところでタイムアウト。悪い流れを断ち切りたい慶大は、OH・山口快人のレフトやバックアタックで地道に得点を重ねるが、相手の精度の高さに呑まれ、開いた点差が縮まることはない。それでも、相手の4連続ポイントで迎えた12–21の場面では、絶対的エース・入来晃徳が相手の鉄壁を打ち破る強烈なライトスパイクで意地を見せる。しかし、大東文化大のスコアだけが捲られ続け、16−25で第1セットは大東文化大に軍配が上がる。

4年生エース・入来晃徳
入替戦出場をかけた、絶対に落とせない第2セット。最初のポイントは、OP・入来晃徳がエースの意地を見せ、鋭いスパイクを相手コートに突き刺す。幸先の良いスタートに見えたが、直後に相手の2連続サービスエース。主導権を握られ、リズムを崩されていく。ビハインドが嵩んでいく中、3-8でOH・野口真幸がバックアタックを決め、L・今田匠海(政2・慶應)も好レシーブでチームを支える。続くMB・稲井正太郎のブロックポイントで、ようやく流れをつかんだかに思えた慶大だが、相手の高さと力強いサーブを前に思うように攻撃が決まらず再び苦しい展開に。MB・中島昊(経1・慶應)とS・松田悠冬(商1・慶應)の息の合った速攻が決まるも、スコアは縮まらない。8-19の場面では再び2連続サービスエースを許し、相手の勢いに呑まれてしまう。最後もサービスエースで得点を奪われ、9-25。第2セットを落とした慶大は、この瞬間に入替戦の望みを失った。

塾高からのS・松田とMB・中島の安定コンビ
第3セットは、ディグリベロに主将/L・山元康生(法4・慶應)を起用。3連続ポイントを奪われるが、MB・中島昊のブロックやOH・野口真幸(商3・慶應)のディグが光り1ー3。さらに相手のサーブミスから、OP・入来晃徳のサービスエース、MB・稲井正太郎のブロックポイントで3ー5。徐々にペースを取り戻した慶大は、入来のスパイクや高身長S・松田悠冬のブロックで得点を重ね、大東文化大にくらいつく。S・松田は、OP・入来、OH・山口快人、OH・野口をうまく使い分け、相手ディフェンスを揺さぶりをかける。そして野口のサーブでブレイクに成功し、16–18の2点差に迫ると大東文化大はすかさずタイムアウト。

攻守で成長を見せたOH・野口真幸
入来が決めれば、相手も決める。1点差に詰め寄れば突き放され、再び1点差に迫った19−20の場面。ここで慶大は、入来に代えて岩間祥成を投入。絶妙なコースを狙ったサーブで相手のレシーブミスを誘い、土壇場で20–20の同点に。さらに、岩間のナイスサーブからMB・稲井のブロックが光り21−20。ここで慶大が一歩前に出る。喜びも束の間、大東文化大のタイムアウトを挟むと、相手のスパイクポイントで瞬く間に2点のビハインド。慶大もタイムアウトで立て直しを図り、入来のスパイクでまずは1点。さらに、甘く浮いた球をS・松田がスパイクで叩き込み23–23。一度は逆転勝利も頭をよぎった第3セットだが、最後は立て続けに強烈なスパイクを叩き込まれゲームセット。秋リーグ最終戦は、悔しくも大東文化大にストレートで敗れた。

サーブでチームを鼓舞した岩間祥成
試合終了の瞬間、立ち上がれない入来に下級生たちが声をかけ、健闘を称えるようにギュッと円陣を組んだ。ここまでチームを牽引し続けてきた4年生に、下級生が成長した姿を見せるかのようにーー。

試合終了の瞬間、後輩たちが声をかけてコートの仲間を集める
慶大は悔しくも入替戦出場が叶わず、最終順位は4位。結果だけを見れば目標には届かなかった。それでもこの秋は、慶大らしく純粋にバレーを楽しむ部員たちの姿が、確かにあった。ブロックで34得点を挙げたMB・稲井正太郎はブロック賞を受賞。「この秋なら1部に戻れる」と。そんな、春とは違う感覚さえ抱かされたシーズンだった。慶大の“秋”はここで終わるが、チーム山元の戦いはまだ終わらない。全早慶明定期戦を経て、このチームで戦う最後の大会・全日本インカレが待っている。コンディションを整え、最後は悔いなく全てを出し切ってほしい。そして、何よりも大好きなバレーを楽しんでほしい。きっと、それが慶大バレー部の最大の武器となるーー。

試合終了後、秋リーグ最後の円陣
(取材:長掛真依、村田理咲、丸山晃央)
▽以下、コメント
ーー最終戦を終えましたが、今どんなことを感じていらっしゃいますか
今シーズンはかなりチャンスだったなと思う一方、そのチャンスを掴みきれなかった弱さがあったなというふうに思います。
ーー高さのある大東文化大相手にどんな対策を
今日も結果的にやられてしまいましたが、やっぱりビッグサーバーが何人もいて高いブロックで攻撃を切り替えしてくるチームだったと思うんですけど、それに最初からやられてしまったというのが、力不足だったなと思う一方で、あのプレーは大東文化さんが素晴らしかったので1位にふさわしいプレーだったんじゃないかなとも思います。
ーー第1セット終了後、時間をかけて言葉を交わされていました
あのビッグサーブを受ける中で、それをまとめるということにもう一回フォーカスしていこうということ。それから、逆にこちらもサーブで相手を揺さぶるということを継続していくということ。向こうが逃げてきたボールについては確実にまとめ上げるということを伝えました。
ーースタメン、控えの選手も含めて、春からの成長は
全員が本当に成長したと思います。それはスタメンだけでなく、ピンポイントで出場する選手も全員がそれぞれの役割を全うするべく成長していたなと思います。特に控えの選手については、いつ出るか分からない、出たとしてもワンチャンスしかないということでとても難しい役回りだと思うんですけれど、常にコートにいるような心意気でチームを鼓舞したり、あるいは自分が出た時にどういうプレーをするかというイメージを持ちながら、用意をしてくれていたからこそ、いつ来るかわからない僅かなチャンスでしっかりと仕事を果たしてくれたんじゃないかなと思うので。その努力が素晴らしかったなと思いますし、今日もそれがあったからこそ大変素晴らしいバレーをしていた大東文化さんに対して、3セット目はギリギリまでいけた。一方で、そこまで追い上げたにも関わらず、捉えなきゃいけないボールを逃してしまった弱さというのはあるので、そこは実力だったなと思います。
ーー上級生として秋を戦った、OH・山口選手、野口選手については
特にディフェンスの部分で大きく成長していて、それがチームの攻撃の安定の条件としてすごく貢献してくれていたなと思います。攻撃についても、いろんなオプションを身につけて試合ごとに成長を見せてくれていたなと思います。
ーー早慶明、全カレへどう時間を使っていきたいですか
全日本インカレでしっかりと主体性を見せつけられるような準備を、第一優先にやっていきたいなというふうに思います。怪我人もたくさんいるので、そこのコンディションの調整というのはたまに入れながら、全日本インカレでいかに終われるのかというところに照準を合わせて準備をしていきたいなと思います。
ーー最終戦終えましたが、試合を振り返って
今日の試合は2セット目を取れなかった時点で入替戦に行けない、3ー1で勝たないといけないという中で、2セットを立て続けに落としてしまった。チームの中で見れば、あの戦い方は本当に良かったのか、力負けをしたところはもちろんあるんですけど、どこか自分たちの力とか持っているものを出しきれなかった。ミスが10本っていうところも数字に表れていると思うんですけど、この大一番で自分の力を出しきれない、出させてくれなかったというのは「勝てるチーム」ではないということの表れだったかなと思います。
ーー個人としてはいかがでしょうか
3セット目はいろんな要素があって自分が出て、自分の役割というのは分かってプレーしたつもりで、個人的には1本来たのを上げるのが自分の役目だったし、あのディグを1本上げられる姿を後輩たちに見せなくちゃいけなかったなというのは分かっていたんですけど、それができなかったというのは、俺が入替戦に行く、1部に行くチームとしてのプレーができなかったところなのかなと、すごい悔しさとかモヤモヤとか、気持ち的には混じったものがありますね。これが事実というか、負けたことが全てです。
ーー秋リーグ全体を振り返って
僕的には、すごく夏に進化をして、守備のところだったり繋ぎのところ、アタックのコミュニケーション、ブロックもそうですけど、いろいろ成長した、個々人のベースのスキルを高めてこの秋リーグに臨めたのかなと思っています。それが序盤の清水の活躍とか(=OH・清水悠斗/総2・習志野)、山口(=OH・山口快人)もリーグ11試合通して安定感がより増していたり、随所に表れていたと思います。正太郎(=MB・稲井正太郎)に関しても、春とは違って持ち味を発揮し続けてくれたというのは一つ大きいところで、みんなの活躍はまだまだ他にもあって。真幸(=OH・野口真幸)が、清水が怪我して投入されてもしっかり活躍できる、日大戦の勝ちに貢献できる。それは中島(=MB・中島昊)も然り、戦えるメンバーがそれぞれの力を発揮できたというのは春と違って成長したところだなと思いましたし、そういうところは見ていてすごく変化を感じたので個人的には嬉しかったですし、来年に向けて楽しみな部分ではあります。
でも、この試合で勝てない、立教戦で勝てない、梨学戦でも力を発揮できない、なんでなんだろうというところ。怪我人はいましたけれど、そこをクリアできないと1部には上がれない。ただ総じて怪我人が多い中で、ほとんどみんなが怪我をしている中で最後まで戦い抜いてくれたのは本当に感謝しています。
ーー下級生主体のチームという難しさもあったと思います
結構バランスを意識しています。主張できない場面もあると思うんですけど、考えるのが得意な子達なので、何が必要か、どんな練習をしたいのかというのをなるべく取り入れつつ、彼らの意見を尊重しつつ、こっちとして絶対にやらなければいけない監督やアナリストと話したことをやる。個人的にはサーブレシーブはぶらさずにやってきたつもりですし、そういった「やりたいこと」と「やらなければいけないこと」を融合させながらやってきました。僕も初めて4年生が全然出ていない代を経験して、これまで見てきてもいないですし、自分も経験していない中で、試行錯誤してもがきながら、それが少しバレーボールという形で日大戦の勝利とか、秋リーグの序盤に結びついたのかなと。間違ってはいなかったんだろうな、ただ勝てなかった。後輩たちがどう思っているかは分からないですけれど、僕なりにはそういう考え方でやってきました。
ーー早慶明、全カレへどう頑張っていきたいですか
ここは全く整理できていないというか、1部復帰というのを目標にやってきたので。チーム全体の目標に関しては、上級生、監督と相談しながら決めなければいけない。ただ、さっきもちょっと大昭さん(=25卒/前主将・渡邊大昭)とも話していましたけれど、行動ベースで何を残せるか、最後にどういうことをアクションして引退を迎えるかというのは自分たちにかかってくるので。そういうところにこだわりながら、チームとして目の前の試合に向けてコンディションを上げて、しっかり自分たちの力を発揮できる戦い方をしなければいけないと思っています。来年に向けて繋いでいくというところにもなるかと思いますし、ちゃんと話し合って決めていきたいと思います。
ーー最終戦終えましたが、試合を振り返って
本当に悔しいという一言に尽きるかなと思います。大東相手にしっかり戦えるような作戦も組んでいて、そこでどう戦うかという準備をすごくしてきたんですけど、そこにまで行けなかったというのは大きな課題だと思いますし、そのれが自分たちの実力だと思うので。大きな経験値であり、すごい悔しい試合でした。
ーーどんな戦い方を準備されてきましたか
相手はブロックが高かったりとか、力でくるチームに対して、いかに自分たちが繋げるか、クイックとかにいかに対応するかというところを練習してきたんですけど、そこに行くまでにダメな部分が大きかったと思います。
ーー秋リーグ全体を振り返って
4敗して、梨学とか大東はお伝えしたとおりなんですけど、それ以前に自分たちと同じレベルの梨学とか立教とか梨大に対しての負けはすごく痛いのかなと。そういったところを取りこぼすのが慶應の弱みであり、最後上にいけない理由だと思うので、如実に慶應の弱さが出た秋リーグだったかなと思います。
ーー個人として、振り返っていかがですか
負けた時は悔しかったですし、勝った時は嬉しかったという純粋な気持ちが大きかったですし、怪我の影響はあるんですけどあまりそれを言い訳にしたくないなという想いがあって。最後は入替戦に行けなかったという結果を見て、申し訳なかったなというのが個人としてはあります。
ーー下級生主体のチームでここまで戦ってきました
チームができた時はバラバラになってしまう時もあったんですけど、負けも勝ちも含めて試合を経験して、最後はまとまってみんなで次に行こうという雰囲気になってくれているので、そこはチームとしての成長ですし、自分も頑張ってきて良かったなというふうに思っています。
ーー早慶明、全カレへどう頑張っていきたいですか
あと何試合かしか、数えられるくらいしか試合はないというのは事実としてありますし、今日もそのうちの1試合で。今日は全力を出し切って挑めたというよりかは、力を出しきれずに終わってしまった側面があったので、まずは今日の試合を振り返って何がいけなかったのか、自分たちの力の出し方というのを考えて、後悔がないように最後までチームを作り上げていけたらいいのかなと思っています。

  
  
  
  
