蹴球部・新年度特集第2弾では、今年度の副将を務める渡辺祐吉(経4)と鈴木貴裕(経4)、Bksリーダーの新甫拓(経4)にお話を伺った。慶應高時代から共に切磋琢磨してきた三選手。いよいよ開幕するラストイヤーに懸ける思いや、幹部として茂木新主将を支えていく熱い決意などを語っていただいた。
――自己紹介をお願いします
鈴木 今年度のBksの副将を務めることになりました、経済学部4年の鈴木貴裕と申します。ポジションはWTBをやっています。
渡辺 同じく慶應高出身でHOを務めてます、渡辺祐吉と申します。よろしくお願いします。
新甫 塾高出身のFBをやってます、今年Bksリーダーをやることになりました新甫拓です。お願いします。
――副将・Bksリーダーに決まったのはいつですか
新甫 1月の中旬から下旬にかけてぐらいですかね。
――決まってから、田中監督から何か言葉をかけられたりしましたか
鈴木 僕は昨年の最後の試合しか出ていなくて、一年間ケガで練習にもあまり出れていなかったので、これからは体を張ってチームを引っ張っていく必要があるぞ、ということを言われました。
渡辺 僕は高校時代に、田中監督と主将・監督という関係だったので、頑張れよというよりは、また頼むぞ、のような感じの言葉をかけていただきました。
新甫 僕も(渡辺)祐吉(選手)と同じで、塾高時代も幹部として田中監督と接してきたので。今回も祐吉や茂木をしっかりサポートできるように頑張っていきたいです。
――決まったときの気持ちは
鈴木 最初に候補に挙がったときはプレッシャーもありましたけど、やらなければいけないなという責任のほうがだんだん強くなっていって、完全に決まったときには覚悟に変わりました。
渡辺 三年間、自分が引っ張っていくという気持ちで過ごしてきたので、もちろん覚悟はありましたし、やっていきたいな、挑戦していきたいなというのが本音です。Web用に書いてほしいコメントとしては、プレッシャーや責任の重さを感じましたが、それを全うしていきたいという気持ちが強かったです。
新甫 同期のみんなが推薦してくれて、そこで強い気持ちを持つことができました。同期の期待と責任を十分感じているので、そこは応えていかなきゃならないなと思っています。
――今年は最高学年であり、副将・Bksリーダーということで、昨年までとは違う心境の変化はありますか
鈴木 最高学年の自分が誰よりも頑張らないと、下の学年もついてこないし、チームの雰囲気にも直結するということを感じています。自らが引っ張っていかなきゃいけないなという意気込みは、今までは感じられなかったもので、最終学年だからこそ感じるものですね。
渡辺 姿勢で示さなきゃいけないというのが一つと、あと後輩には弱みを見せてはいけない、というのが大きく感じるところで。そのぶん同期は頼りにしています。
新甫 幹部である前に一人の4年生ですので、私生活だったり部活中だったり、見られている部分が多いと思うので、そこは常に意識するようになりました。
――プレッシャーなどの他に、やりがいを感じたりはしていますか
鈴木 やりがいというより、個人的な話になってしまうんですけど、僕はこの二人と違って試合経験が二試合しかなくて。最終学年ですし、思い切りやって自分をアピールしてやっていきたいという気持ちが強いですね。
渡辺 自分が引退したときに、やりがいや達成感をどれだけ味わえるかということのために、今全力でやっています。
新甫 今言われてしまったんですけど、利害は後からついてくるものだと思うので、後でそれをいっぱい感じられるように、毎日精一杯やっていきたいと思います。
渡辺 就活用のコメントを言うなよ(笑)。
――三選手とも、それぞれ中学や高校のときには主将などの経験があるということですが、自分以外の二人のリーダーとして適任だと思うところを挙げていただけますか
鈴木 (渡辺)祐吉(選手)は意志の強さですかね。自分が引っ張っていくんだという意志の強さ、周りの選手に与える安心感はすごいと思いますし、これだけ自分の意思をはっきり言ってくれる選手ってなかなかいないと思うので、中心に立つにはすごく信頼できる選手です。新甫は冷静で、ラグビーのこともよく分かっているので、自分がパニックに陥ってしまったとき、新甫に聞けば何かしらの答えが返ってくるというか、相談できる相手です。引っ張っていくとかではないんですけど、答えを持っていて、安心、頼れる、っていうイメージですね。
渡辺 試合中厳しくなったときに、一番その状況を打開してくれるのが鈴木貴裕。厳しい状況を自ら切り裂ける実力はリーダーとして適任だと思います。コミュニケーションは不器用なんですけど、とても信頼できます。新甫は客観視できる、一歩下がってチームを見られるという点がすごくて。リーダーって、どうしてもまっすぐになりがちな人が多いと思うんですけど、その点こいつは色んな面をコントロールできるっていうのと、あとは試合経験が多いというのがリーダーとして適任な点ですね。
新甫 鈴木は背中で示すというか、祐吉も言ったように話すのは得意じゃないんですけど、プレーでチームを引っ張っていける実力を持っているので、チームメートも全員信頼していると思いますし、そこにみんな期待していると思います。祐吉は代を引っ張っていこうという意識が強くて、ベクトルを自分に向けられる人だと思います。何事もただやるだけじゃなくて考えてやっているので、そういう姿勢もみんな見ていると思います。
――茂木選手について、リーダーとして適任だと思うところは
鈴木 試合中、ディフェンスで苦しい場面のときに誰よりも体を張ってタックルができるところです。苦しいときほど人に頼りがちになると思うんですけど、そこで自ら力を発揮して目立てる選手というのが茂木です。タックルでチームを救ってくれるのは誰かっていうと茂木の姿が浮かぶので、そこで主将は茂木だなと思いました。
渡辺 慶應はタックルがベースにあって、そのタックルを一番体現できるのはやっぱりあいつかなと。あいつの男らしさや男気に魅力を感じる部分もありますし、あいつのために体を張ろうと思えるキャプテンです。
新甫 寡黙なイメージでありながらも、口下手ではなくて、男らしさを感じます。チームメートもみんな期待していると思います。
――茂木主将を支えていくうえで、どういう役割を演じていきたいですか
鈴木 茂木のポジションはFwdなので、Bksのことは分からないことが多いと思います。Bksの方は僕と新甫でまとめていかなきゃならないので、そこが一番力になれる部分かなと思います。
新甫 グラウンドでは僕と鈴木が引っ張っていかなければと思いますし、私生活でもしっかりとした姿勢を持って示していかなければならないというのがありますね。
渡辺 あいつがどれだけチームのことを考える時間を少なく出来るかというのが僕らの仕事だと思います。僕らがしっかりチームを運営できればあいつはプレーに専念できるわけですし、同じFwdは引っ張っていかなきゃいけないと思います。
――茂木組がスタートして数ヶ月が経ちましたが、部の雰囲気はいかがですか
鈴木 例年よりも早く練習が開始されて、ウエイトなんかもきついものが多いので、体の方はすごくきついんですけど、みんなこれはやっていかなきゃならないことだと分かって練習に取り組んでいるので、練習に対する姿勢や練習中の雰囲気は充実したものになっていると思います。
渡辺 今は体づくりの時期なので、チームどうこうというよりは個人にベクトルを向けてやっている時期なんですけど、秋に笑うために今はひたすら辛いことを乗り越えていく、厳しい練習をやっていく、それだけです。
新甫 今シーズンは学生主体ということを監督がおっしゃって。それで僕たちもラグビーに対して考える時間も増えてきましたし、練習自体も自分たちで考えてやっている部分もあります。練習に対する身の入り方というか、目的を持ってしっかりやれているので、雰囲気としてはすごく充実したものになっていると思います。
――今年、具体的にやっていきたいことはありますか
鈴木 去年あまりバックスリーが機能せずに、キックカウンターからのアタックなどもほとんど出来ていなかったので、今年は僕と新甫のいるバックスリーをもっと使っていって、積極的に攻めていきたいなと思っています。
渡辺 個人としては、技術面でスローやスクラムの精度を上げていきたいというのがあります。副将としては、4年生が頑張っているから、下級生も4年生のためにやってやるかというチームを作っていきたいです。
新甫 鈴木も言ってたように、カウンターであったりと、Bksの仕掛けが去年は少なかったので、一人一人がしっかり判断を持って仕掛けていけたらと思います。Bksリーダーとして、そういうことが出来るためにはどんな練習がいいのかを考えていきたいです。
――現在練習ではどのようなことに重点を置いて取り組んでいますか
鈴木 それはもうディフェンス、特にタックルですね。今年のチームの方針として、ディフェンスチーム、慶應はタックルが全てだという共通認識があるので、そこにフォーカスをあてて練習をしています。
――みなさんは、出会ってから何年も経つと思いますが、お互いの第一印象は覚えていらっしゃいますか
鈴木 祐吉に対する第一印象は、最初から積極的に発言していくというか、前に立つことができる人間なんだなと。新甫は、有名だったので初めて会う前から聞いていて。
新甫 これは書かなくていいですよ(笑)。
鈴木 東日本で一番すごいSOが入ってくるという話を聞いていて。中学の時も一回選抜の試合で当たったことがあったんですけど、そのときもすごい選手だったので、最初からすごい選手なんだなというイメージが先にあって。案の定すごかったんですけど。ちょっとケガしちゃってて出遅れたのはありますけど、言っていることはラグビーについて誰よりも考えているなと思いました。すごい人です。
渡辺 この二人は中学時代から名前が知られていたので、こいつが鈴木か、こいつが新甫か、という感じでした。
新甫 鈴木は、「神奈川に鈴木あり」みたいに言われていたので。普通部の鈴木は化け物みたいなやつだと。
鈴木 東日本ナンバーワンSOには敵わない(笑)。
新甫 それ絶対ばかにされるよ(笑)。
渡辺 ここのやりとりも載るからね!
新甫 祐吉は当時からガツガツしているなというイメージです。
――その印象は今も変わらないですか
渡辺 だいぶ変わったよ。やっぱり成長を色々見てるから(笑)。
新甫 変わったところもありますかね(笑)。性格とか。根本は変わらないですけど。丸くなったりしてます、みんな。
――昨年度のお話しを聞かせてください。昨年度を振り返ってみていかがですか
鈴木 僕はひたすらケガに悩まされた一年でした。対抗戦は1試合も出られなかったですし、スタンドで見ていてすごく悔しい思いがありました。対抗戦に関しては悔しい思いしかありません。大学選手権では初めてレギュラーになれましたが、大学入って初めての公式戦が大学選手権ということですごく緊張して、プレッシャーもありました。でも試合中は自分がピッチに立てていることがすごく嬉しくて、試合はきつかったですけど楽しかったですね、試合できていることが。
渡辺 昨年一番違ったことは、下級生から上級生になったということです。でもそれで自分の気持ちが上級生になっていたかと言われると、正直4年生に甘えていた部分があって。4年生の背中を追いかけて、自分がいかに成長できるかということを考えていた一年でした。今はその一年があったから、3年生にいかに上級生としての役割を果たしてもらえるかというのも考えてもらいたいと思います。教訓じゃないですけど、そういうチームの方が強いなっていうのは自覚しています。
新甫 去年一年間を通して僕はAチームで出させてもらうことが多かったんですけど、実力不足で結果的には5位という形で終わってしまいました。でも個人的には経験を積めた一年だったと思っています。その経験をどうやって同期、下級生、チームに活かせるかということを考えてやっていきたいですね。
――昨年感じた課題点はどのあたりですか
鈴木 チームの課題でいったらBksのことなんですけど、受け身になっていたというか、相手のBksに対して自分たちから仕掛けていくことができなかったことが反省点です。個人としては、ブラインドサイドからのライン参加ですかね。もっとボールのところに絡んでいって、自分がもっと積極的にプレーに参加できたら良かったのかなというところです。
渡辺 チームとしては、慶應らしさが失われていたんじゃないかなと。タックルの面でも、走り勝つという面でも。今年はその「らしさ」を追求したいなというのがあります。個人としては、自分の関わるスクラムやラインアウトは武器として持てるようにしたいです。
新甫 チーム伝統のタックルという部分が去年は見られなかったので、今年はそれを大事にしていきたいと思います。あと去年は与えられたことを淡々とやっていたなという反省が僕の中であって。今年は色々考えながらやっていきたいと思います。
――仲宗根選手らが抜けた新チームの戦力的な印象はいかがですか
鈴木 僕らの代は突出したスタープレーヤーというのが誰もいなくて、他の大学に比べて体の大きさや運動能力でいったら劣っている部分があると思うんですけど、僕らの強みは一丸となって向かっていけるところなのかなと。僕らの代の特色なんですけど、みんなで一つの方向に向かっていける、それこそが僕たちの代の強みで、今年一番やっていかなければならないことなのかなと思います。
渡辺 個で勝てなかったら組織で勝つ。組織で個のハンディキャップを補えるチームにしていかなければいけないと思っています。
新甫 まとまって勝つということですね。
――今年はどんな一年にしていきたいですか
鈴木 最後に後悔はしたくないので、あの時こうしておけば良かったなということをなるべく少なくしたいと思います。あとはケガですね。昨年あれだけ悔しい思いをしたので、今年はもう一回もケガで抜けることなく、一年間グラウンドに立ち続けたいと思います。
渡辺 一年間の取り組みは結果を出して初めて評価されるものなので、結果を追求していきたいと同時に、その過程で得られるものも大切にしていきたいと思います。
新甫 結果を求めてやっていきたいと思います。結果を出すために何をすべきなのかというのは幹部、同期とも話して、やっぱり考えてやるということなんじゃないかなと思います。
――最終学年であり、副将・Bksリーダーという立場として新たに一年がスタートするわけですが、その中でみなさんが目指す理想のリーダー像についてお聞かせください
鈴木 僕は二人が言うように、あまり口が上手くないので、姿勢やプレーで引っ張っていくしかなくて。WTBはトライを取ることが仕事ですので、こいつに渡せばトライを取ってくれると思ってもらえるのが一番嬉しいですし、グラウンドでの存在感、信頼というものを勝ち得ることを目標にやっていきたいと思います。
渡辺 誰よりも熱く体を張りたい。それだけです。
新甫 こいつと一日でも長くラグビーがしたいとか、こいつを勝たせてやりたいと思ってもらえるような人間になりたいです。そのために何ができるかというのは考えて行動していかなければと思います。
――お忙しい中、ありがとうございました!
(取材 大貫 心明)
慶應高を経て、現在経済学部4年。慶應普通部在学時には主将を務めた経験がある。昨年度はけがから復帰後、Jr.選手権を経て大学選手権でWTBとして初めてレギュラー入り。同選手権1,2回戦で計3トライを挙げるなど活躍を見せた。1㍍75、84㌔
渡辺 祐吉(わたなべ・ゆうきち)
慶應高を経て、現在経済学部4年。慶應高時代は田中監督のもとで主将を務めていた。昨季はチームのJr.選手権連覇に貢献した。今年度はHOとしてセットプレー安定のキーマンとして期待されている。1㍍70、88㌔
新甫 拓(しんぽ・たくる)
慶應高を経て、現在経済学部4年。昨年度は春季からAチーム入りし、経験値を上げていった。1つ1つのプレーの安定感が武器。チームメイトからの信頼も非常に厚いFB。1㍍73、75㌔
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