ゴールデンウィークの5月5日、京都で同志社大学との定期戦が行われた。天候にも恵まれ、たくさんのラグビーファンで埋め尽くされた同志社大グラウンドにて、両校の選手が熱戦を繰り広げた。試合は前半こそ同大にペースを握られるものの、後半は「自分たちのイメージした試合展開が出来た」(田中監督)と、ディフェンスの光る慶大らしいラグビーで勝利を飾った。
定期戦 VS同志社大
5月5日(土・祝)14:00K.O.@同志社大G
得点 | ||||
慶大 | チーム | 同大 | ||
前半 | 後半 | VS | 前半 | 後半 |
1 | 5 | T | 2 | 1 |
1 | 3 | G | 1 | 1 |
0 | 0 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
7 | 31 | 小計 | 12 | 7 |
38 | 合計 | 19 |
得点者(慶大のみ)
T=鈴木貴裕2、佐藤2、鹿児島、青木
G=高田4
出場選手 | ||
ポジション | 名前(学部学年、出身高) | 交代選手 |
1.PR | 小田基貴(商4・小倉) | →16青木周大(商2・慶應) |
2.HO | 渡辺祐吉(経4・慶應) | |
3.PR | 平野裕馬(環4・国学院久我山) | →17山田亮介(環4・国学院久我山) |
4.LO | 佐藤太朗(総4・国立) | |
5.LO | 遠藤洋介(環4・国学院久我山) | |
6.FL | 小田村淳平(政4・慶應) | →19伊藤豪(総4・福岡) |
7.FL | 森川翼(環2・桐蔭学園) | |
8.NO8 | 鹿児島昌平(経4・慶應) | |
9.SH | 宮澤尚人(法2・慶應) | →20鈴木雅貴(環4・慶應) |
10.SO | 高田英(経4・慶應志木) | |
11.WTB | 鈴木貴裕(経4・慶應) | |
12CTB | 名頭薗泰輝(商2・慶應) | →21木村亮平(商3・明善) |
13.CTB | 甲斐鑑(理4・千種) | |
14.WTB | 風間雄太郎(経4・慶應) | |
15.FB | 新甫拓(経4・慶應) | →22瀧口晃太郎(文4・桐光学園) |
先に試合を動かしたのは同大。慶大はタックルミスからいきなり自陣深くへ攻め込まれると、ゴール手前で相手ボールスクラムというチャンスを与えてしまう。粘りを見せるものの、最後はラックから抜け出され開始4分で同大に先制のトライを許す。その後も、風下に置かれた慶大はなかなかボールを奪うことが出来ずに自陣での戦いを強いられる。攻めに転じようとも敵陣内で反則を取られ、なかなか相手ゴールを脅かすことが出来ない。前半20分、マイボールスクラムから反撃を図るも、相手にターンオーバーされ決定的なチャンスを与えてしまう。ここは相手のミスで難を逃れたが、前半25分には、慶大のタックルミスから相手にトライを奪われ0—12とさらにリードを許す。ここまで同大ペースで試合が進む中、前半終了間際に慶大がようやく一矢報いる。マイボールラインアウトの権利を得ると、テンポよくパスをつないで展開。フェーズを重ねて最後はWTB鈴木貴副将(経4)がトライ。SO高田(経4)のコンバージョンも決まり7—12と、反撃ののろしを上げたところで前半戦を終えた。
後半、風上に立った慶大は一気に形勢逆転する。「ディフェンスからリズムを作れて、自分たちの流れできた」(鈴木貴)と言うように、ディフェンスが随所に光り、相手ボールを自陣へ運ばせない。後半13分、低く鋭いタックルで相手を仕留めターンオーバーすると、CTB甲斐(理4)からパスを受けたLO佐藤(総4)がトライを奪う。コンバージョンも決まり、14—12と逆転に成功すると、流れは完全に慶大へ。キック処理も安定し、敵陣でのプレーの時間が続くようになった。後半25分、ラックからWTB木村(商3)が敵陣深くへ切り込むと、WTB鈴木貴がこの日2本目のトライを挙げる。後半29分には途中交代で入ったFB瀧口(文4)がビッグゲインを見せ、最後はLO佐藤が、中央にトライ。同大を大きく突き放した。この後も慶大は攻めの手を緩めない。後半33分にも敵ゴール前でのセットプレーからトライを奪う。その後同大に得点を許すシーンはあったものの、攻めては素早いパス回しで同大のディフェンスをかいくぐり、守ってはタックルからターンオーバーに成功する場面も多く見られ、相手に主導権を握らせなかった。慶大は、後半41分にNO8鹿児島(経4)がラックから持ち出してダメ押しのトライを挙げ、38—19のダブルスコアとしたところでノーサイドを迎えた。
前半こそセットプレーで押され、劣勢に立たされた慶大だが、「後半はうまく修正できていた」(渡辺副将・経4)と、試合の中で立て直しをしながら戦うことができた。後半はタックルを始めとするディフェンスが見事に機能。そこからリズムを作り、攻めでは素速いパス回しでトライを奪うなど、理想的な慶大ラグビーを体現しての勝利であった。ディフェンス、タックルの出来こそが慶大の命運を握っている、それがはっきりとわかる一戦であった。
次戦は盛岡で釜石シーウェイブスと戦う。トップイーストに所属する格上の相手に挑むこととなり、厳しい戦いが予想される。慶大らしいラグビーをいかに体現できるかが、善戦するための鍵となるだろう。
【ケイスポ的MOM】 絶対的トライゲッターへ WTB鈴木貴裕
この日2つのトライを決め、慶大に流れをもたらしたのは、新チームの副将も務める鈴木貴裕だ。昨年はケガに悩まされ、対抗戦はスタンドから見守ることしか出来なかった。しかし、大学選手権で初のスタメンに選出されると、いきなり2トライを挙げる活躍を見せ、その実力が確かであることを証明した。「こいつに渡せばトライを取ってくれる」という信頼を勝ち得ることが目標だと語る鈴木貴。絶対的トライゲッターへ、さらなる活躍に期待がかかる。
(文・大貫 心明)
コメント
田中監督
(今日の試合を振り返って)同志社さんは関西の強豪であり、慶應にとっては定期戦というのは対抗戦の一戦と同じように大事にして戦っているので、優勝することができて非常によかったと思います。オール長崎との試合で出た反省として、サポートの早さや、アタックもディフェンスもインサイドワークが遅かったというのがあったので、そこを一つのテーマにして戦いました。そこについては選手も非常に意識をしていて、今日はいい結果が出たと思います。ただ、タックルミスや、相手のキャプテンのNO8の選手が非常にフィジカルが強くて、タックルに入っても一発で倒しきれてない、倒せなくて飛ばされてしまう局面もあったので、個々のタックルの強化は改めて必要性を感じた試合でした。セットプレー、特にスクラムは、前三人の頑張りによってセットプレーで相手に対して圧力をかけ、風下の厳しい局面だったけれども、それを凌ぐことができたのが今日の勝利だと思います。後半は風上になって、まずしっかり地域をとってFwdを前に出してやって、自分たちのラグビーを展開していこうということをやっていたので、そういった意味では自分たちのイメージした試合展開が出来たと思います。3つのトライを取られたんですが、その3つの内容はタックルミスからだったので、そこが課題・反省として残った試合でした。(来週は盛岡で釜石シーウェイブスとの試合があるが)社会人のトップイーストに所属するチームで本当に強豪の強豪なので、胸を借りるつもりで戦いたいと思います。昨年の東日本大震災で大きな被害を受けられた釜石さんなので、そのチームと戦えることを光栄に思うと同時に、僕らも前日に入ってボランティア活動をさせていただくんですけれども、少しでも復興に寄与できるように、学生らしく、ひたむきに戦う姿を通じて、岩手の方達に対して勇気を与えることが出来ればなと思っています。精一杯ひたむきに、学生らしく戦いたいと思います。
HO渡辺祐吉
(今日の試合を振り返って)自分たちがやって来たセットプレーの動きに注意したんですけど、同志社の個の強さにやられて、一番大事にしていたタックルという部分で多くの課題が出た試合でした。(前半セットプレーで押されていて、後半はなかなか押せていたと思うが)そうですね、後半はうまく修正できていたと思います。(今日渡辺さん自身攻撃に積極的に参加していたが心がけていたこと)体をガツガツ当ててディフェンスラインを下げられたらいいなと思ってプレーしていたので、積極的に行こうと心がけていました。(うまく出来ていたか)ビデオ見てもう一度確認しなければいけないと思うんですけど、体をうまく当てていけたと思います。(個人的なタックルの出来)あまりディフェンスする機会がなかったんですけど、やはりミスが多くて、スクラムを組んでいると次スクラムなんで。でも慶應らしさを出せたのではないかと思います。(チームのタックルの出来)個にやられたという部分もあるのでもう一度日吉に帰ってやっていかなければいけない部分があると思います。(来週の釜石シーウェーブス戦に向けて)社会人でとても個が強いとおもうので、大きな外国人にでも、慶應らしさ、ひっくり返せるようなタックルを何回も何回も繰り返せるように試合をしたいのでこの一週間練習していきたいと思います。
WTB鈴木貴
(今日の試合を振り返って)前半はどうしても自陣で試合をしてしまって、同志社さんからの攻撃を受けてしまい、自分たちのペースでできませんでした。前半は苦しい試合だったんですけど、後半に入って修正できて、ディフェンスからリズムを作れて、自分たちの流れでできました。試合を通して修正ができて、次につながる良い試合だったと思います。(今日の試合に向けた意気込みは)チームがやってきたことをいかに試合に出せるかが重要だったんですけど、それができればチームの雰囲気も良くなっていって循環ができると思ったので、練習でやってきたことを試合で出すことを意識しました。その中で自分のできることをやっていくっていうことですね。(同志社大の印象は)すごく広い展開をしてくるチームだと思っていました。関東のチームは近場近場で攻めてくるチームが多いんですけど、同志社大学はCTBでポイントを作って、両サイドで広くラインを作るという感じです。それに慣れてなくて、最初は上手くディフェンスできませんでした。(流れがつかめない中、1本目のトライをあげたが)僕はもう、ボールをもらって置くだけでした。Fwdがよく動いてくれたなと思います。(2本目のトライは)ゴール前からで、決めのサインプレーでした。今年バック3からも積極的にボール絡んでトライを取っていこうって話していたので、セットプレーからトライを取れたっていうのは大きいなと思います。(自身の収穫と反省は)反省は、ハイパンの精度ですね。今日は2本ともミスしてしまったので。陣地を取る上でキックはとても重要なので、精度をあげていきたいです。収穫は、ディフェンスの部分で、後半からFwdと連携を取って修正できたので、ディフェンスの部分は良かったと思います。(次に向けて)すごく私的なことなんですけども、何とかトライを取ることができているので、このまま出た試合ではトライを取って、チームの勝利に貢献していきたいです。
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