明大に1点差で惜しくも敗れファイナルステージ進出が遠のいた慶大。わずかな望みを抱き3戦目、東海大に挑んだ。序盤は風上の慶大が試合を優位に進めると思われたが、予想を覆すほどの東海大の勢いにのまれ、なかなか敵陣に入り込めない。それでも気迫のディフェンスで守りきり5-0で折り返すと、後半は逆に慶大が風上の東海大を追い詰める。終盤攻め込まれるもトライラインぎりぎりの攻防を制した慶大が10-7で勝利し、一方明大が立命大に10-12で敗れたため、勝ち点1差で慶大が4季ぶりの正月越えを決めた。
大学選手権セカンドステージ vs東海大
12月22日(日)12:00K.O.@熊谷ラグビー場
得点 | ||||
慶大 | 東海大 | |||
前半 | 後半 | 前半 | 後半 | |
1 | 1 | T | 0 | 1 |
0 | 0 | G | 0 | 1 |
0 | 0 | PG | 0 | 0 |
0 | 0 | DG | 0 | 0 |
5 | 5 | 小計 | 0 | 7 |
10 | 合計 | 7 |
得点者(慶大のみ)
T=木原、三谷
ポジション | ||
1.PR | 三谷俊介(総4・国学院久我山) | |
2.HO | 中尾廣太朗(環4・長崎北) | |
3.PR | 青木周大(商3・慶應) | →16吉田貴宏(総3・本郷) |
4.LO | 小山田潤平(経3・慶應) | |
5.LO | 白子雄太郎(商3・慶應) | |
6.FL | 濱田大輝(総4・桐蔭学園) | |
7.FL | 木原健裕(総3・本郷) | →20徳永将(商2・慶應) |
8.No8 | 森川翼(環3・桐蔭学園) | |
9.SH | 渡辺諒介(経4・慶應) | |
10.SO | 慶田兼紹(商4・慶應NY) | →22佐藤龍羽(環4・茗溪学園) |
11.WTB | 服部祐一郎(総3・國學院久我山) | |
12.CTB | 石橋拓也(環3・小倉) | |
13.CTB | 大石陽介(環4・修猷館) | |
14.WTB | 下川桂嗣(商3・修猷館) | |
15.FB | 児玉健太郎(環4・小倉) |
4季ぶりの国立へ、慶大に残された道は東海大戦の勝利しかない。勝って明大が負ければ国立への切符が手に入る。その可能性は低いかもしれない。しかし残されたわずかな希望を信じ、慶大がセカンドステージ最終戦に挑んだ。
敵は東海大。リーグ戦下位通過ながら明大に1点差敗北と善戦、立命大に勝利して勢いに乗る怖い相手だ。慶大は「アタックでもディフェンスでも我慢」(濱田副将・総4)を念頭に、序盤から畳みかけていこうというプランだった。しかし風上の慶大は序盤、ハンドリングミスでチャンスを逃し、自陣にじわじわと侵入される。確実な球出しとハイテンポのパスワークでエリアを挽回することが難しい。そうこうしている間にゴールライン目前まで攻め込まれてしまう。しかし慶大は大きな相手にもダブルタックルでラインを割らせない。慶大自慢の魂のタックルが随所に見られ、相手のミスをうまく誘うことができた。ここから攻めに転じたい慶大だったが、今度はこちらもペナルティを連発。風上という好条件の中、「キックをうまく使わなければならなかった」(大石・環4)が、東海大の接点の激しさにキックを封じられてしまう。東海大が力で押し、慶大がタックルでそれを押し返す。「みんなの諦めない気持ちというのはゴール前のディフェンスのところでは体に染み込んでいる」(白子・商3)、まさに守りの慶大を体現し、反撃の時をじっと待った。なんとか風上のうちに点を入れたい慶大はハーフウェイライン周辺からPKを試みる。しかしここはSO慶田(商4)がはずし得点ならず。このままスコアレスで前半を終えるかと思われたがチャンスが慶大にめぐってきた。38分、敵陣深くでマイボールラインアウトの権利を得るとモールを形成。そのままインゴールへ持ち込み、最後はFL木原がグラウンディングに成功。ここでもコンバージョンキックは外してしまったが5-0でなんとかリードを保ち後半へと進む。
前半は確かにディフェンスがよかったが、アタックではキックの精度が悪く、風上にもかかわらずボール支配率も負けていた。しかし「キックで前に出られないというのはわかっていたので、個々で思いきり勝負しよう」(大石)と攻めの姿勢は忘れない。まだ負けたわけではない。前を向き続ける。
後半開始早々、スクラムから左サイドを抜かれあっという間のトライを許してしまう。強風を計算する見事なキックで5-7と逆転されてしまった。しかし慶大はあきらめない。「ディフェンスで流れを持っていくのが慶應のラグビー」(青木・商3)だ。後半12分、ここまでのうっぷんを晴らすかのように慶大がその力を発揮する。SH渡辺(経4)の正確かつ速い球出しでボールをつないでいくと、CTB大石(環4)が中央を突破し敵陣深くへ。その後は粘り強くフェーズを重ねると、渡辺がここはパスを放らず突破。右に振って最後はPR三谷がゴール下に走り込んだ。逆転のトライで10-7。試合の結末はわからなくなっていく。意地でも追加点を取りたい慶大は後半28分にもエリアを広げ、ゴールを脅かす。ラインアウトを起点にモール→ラックと形成し、徐々にゲインしていくとLO白子(商3)が抜け出し、タックルを受けながらグラウンディングするもこれはノックオンの判定でトライならず。膠着状態はさらに続き、試合の終わりが近づいていく。だがここで一波乱あるのがラグビーだ。残り時間わずか、東海大が猛攻を仕掛け、慶大は防戦一方を強いられてしまう。しかしここでも「我慢」が慶大の勝利を手繰り寄せた。ホーンが鳴った後のラストプレー、東海大のグラウンディングはレフリーに認められずやり直しのコール。プレーが途切れたその瞬間、慶大の勝利の笛が響き渡った。
勝利という一つの条件をクリアした慶大。そして慶大のCプール1位通過の条件はあと一つ、明大の敗北だ。ここまで接戦を制してきた明大と、慶大のこの試合の勝利で1位通過の望みを絶たれた立命大の対戦。明大有利は変わらないと思われたが、ホームでの試合となった立命大が明大を前半から圧倒。明大は後半意地を見せたがまさかの敗北。その瞬間、勝ち点1差で慶大の4強入りが確定した。
東海大戦は「今年一番のディフェンス」(濱田副将)だった。個々の能力で劣る東海大相手にも臆することなく低く当たり、泥くさくプレーした結果の勝利。ゴール前での粘り強いディフェンスは明らかに春から成長したポイントだろう。しかしそれ以上にミスが多かったのも事実。特にキックではタッチキックがラインを割らなかったり、真正面のコンバージョンキックを外してしまうなどひどいものだった。目標であった大学ベスト4は果たせたものの、こんなプレーをしているようでは勝ち上がることはできないだろう。その上、次戦の相手は前人未到の5連覇を目指す王者・帝京大だ。生半可な覚悟では明らかに大敗を喫してしまう。1月2日の国立の舞台では一層成長した慶大を見せてもらいたい。
【ケイスポ的MOM】チームの勢い変える期待の9番 SH渡辺諒介
ここまで南(総2)に変わり、選手権すべての試合でスタメン出場しているSH渡辺。Bチームから這い上がってきた一番の成長株と呼べるだろう。この日も風下に立たされた後半から奮起し、テンポの速い正確なパスを供給し、トライを呼び込む個人技も見せた。「早いテンポで出したときに前があく事が何回かあった」と状況を冷静に判断する能力にも長けている。最高学年として臨む最後のシーズン、つかみ取った正SHの座にこの男は立ち続ける。
(記事・宮本 大)
以下コメント
FL濱田大輝副将
(試合を振り返って)80分間アタックでもディフェンスでも我慢し続けようということをテーマにして挑んだので、それが実行できてよかったです。(タックルで粘り勝つという慶大らしい勝ち方でした)ミスがあっても全員でカバーをしようという意識がすごく強くて、今年一番のディフェンスができたんじゃないかと思います。(最後の苦しい時間は)立命さんと明治さんの試合結果を待つ感じですが、人事を尽くして天命を待つということで、とりあえずこの試合に勝たなければ望みもつながらないので。その意識でやっていました。(先週の敗戦からそうした意識で練習してきたのか)とにかく東海さんに勝たなければ何も始まらないので、勝つことだけをテーマにやっていました。(明大の試合結果はまだ分かりませんが、今の心境は)まず試合に勝ててホッとしました。国立に行けたら自分たちは奇跡を起こせたんじゃないかなという気持ちで、いい報告を待っています。
PR三谷俊介
(今日を振り返って)とにかく、勝ててよかったです。(どのような気持ちで試合に臨んだか)必ず勝たないといけない試合だったので、勝ちへのこだわりを強く意識しました。(セットプレーについて)スクラムは相手のほうが強いと知っていたので、押されないように注意しました。ラインアウトに関しては自分たちのほうが有利だったため、制圧しようという意識で臨みました。(トライシーンを振り返って)渡辺が抜けてくれて後は走り切るだけだったので、精一杯駆け抜けました。(大学選手権セカンドステージを振り返って)どの試合もハラハラする試合展開で実力が拮抗していたため、その中で勝ちを2個手にできたのはすごく大きなことで、チームの成長につながったかなと思います。また大学選手権では、個人的にもとても調子が良いのでこれからもこれを続けていけるように頑張りたいです。(明大の結果が出ていないが今の率直な心境は)『人事を尽くして天命を待つ』という思いです、やることはやったのであとは立命館大に頑張ってもらうしかないです。良い結果を待ちたいと思います。
HO中尾廣太郎
(今日に向けての意気込みは)後がないのでとにかく自分のすべてを懸けてやろうと思っていました。(試合を振り返って)ほとんど覚えてないんですけど、みんなの意地が形として見えて、すごい嬉しい試合です。(セットプレーについて)迷惑かけちゃったりしたんですけど東海相手にスクラムの面ではいい方だったかなと思います。(今の心境)結果を待つのみなので、次がある気持ちで今から備えたいと思います。
PR青木周大
(今日の試合を振り返って)勝って、国立への可能性を残せたことは本当に良かったと思います。(先週の試合で負傷していたが)肩を肉離れしてしまって今週は割と治療メインでやって痛み止めのんでテーピング巻いて試合に出ました。(前半の評価)前半は個人的にらしくないタックルとかもあってよくなかったですがディフェンス全体はよかったと思います。やっぱりディフェンスで流れを持っていくのが慶應のラグビーだし、なにより我慢できたのがよかったと思います。(ハーフタイムはどんなことを話し合ったのか)全然攻めていないし、風下でキックしても戻ってきてしまうから、風下になったということはとにかく攻めようという運命なんだということで思い切りやりました。(総じてペナルティも多かったが)競った試合になってペナルティが多くなってしまうということは自分たちのスキルが足りていないということだし、精神的な弱さが出てしまっていると思うからもっと練習していきたいと思います。(今複雑な心境だと思うが)いい流れで来ていると思うし、立命館も関西の一位で意地を見せてくれると思うので、途中経過は見ずに結果だけ見て、先のこと考えてやっていきたいと思います。
LO白子雄太郎
(試合を振り返って)まずは勝てて本当によかったです。自分のトライがノックオンで認められなかったので。途中からは行けるという確信があったので自分で決めようと思いましたが、決められず自陣まで戻されてしまいました。(リードを守り切り勝利したが)前半からずっと自陣に釘付けになってしまい苦しい展開でしたが、明治戦でもずっと我慢できていたことが自信になっていました。みんなの諦めない気持ちというのは、ゴール前のディフェンスのところでは体に染み込んでいるというか、無意識にタックルしてまた立ってタックルして、という繰り返しが当たり前にできるようになっていると思います。(FW戦を振り返って)個々は大きくて力強いので、一人目は下に行って二人目は上に行くというのを徹底しました。危ないシーンもありましたが、みんな一生懸命戻って反則を誘ったりもできました。(ラインアウトは風も強い中だったが)風が強かったので、自分たちも相手も前目のサインが中心でしたが、同じサインでもサインの名前を変えてみたりという工夫が生きたと思います。ディフェンスでは、僕は後ろだったのであまりプレッシャーはかけられなかったんですけど、それでも出来る限りのプレッシャーをかけていました。(ベスト4進出はまだ分からないが心境は)やれるだけのことはやったので、後は人事を尽くして天命を待つ、ですね。
FL木原健裕
(試合を振り返って)80分しっかり我慢するということをみんなで言っていてそれができたので、素晴らしいディフェンスだったかなと思います。(自身のプレーについて)トライはしっかりボールもらってみんなで取れたトライだったと思います。抜かれてしまったところは普段から練習しているんですけどそれが出せなくて、僕が何も考えずにやってしまったので反省点です。後はしっかりディフェンスラインを揃えて出て止められたのでそこは良かったかなと思います。(セットプレーについて)小山田がサイン出しをしてくれてそれを信じてやっていたんですけどちょっとファンダメンタルの上げる部分やサインでのミスが目立ってしまいました。(セカンドステージを終えて)これで次につながるかは明治対立命次第なんですけど、今まで国立行くためにやってきて明治に負けちゃって最後は東海に勝たなきゃいけなかったのでやることはしっかりできたと思います。ほっとしています。
SH渡辺諒介
(今日の試合を振り返って)とにかく勝って良かったです。(自分で持ち込むシーン)早いテンポで出したときに前があく事が何回かあったのでそこで自分で持ち出してトライに繋げられたのは良かったと思います。(課題は)ショートサイドのディフェンスや、ディフェンスで細かいミスがあったのでそこを修正したいと思います。(東海大の印象は)個々が強くてダブルタックルで止めなければいけなかったのでそこを意識していました。(粘りのの勝利だったが)ありがとうございます。ディフェンスで我慢がコンセプトでしっかり我慢出来たので良かったです。(最後のディフェンスのシーンは)もうなんとしてでも止めてやるという一心で必死にやりました。(明大の結果が分からない中で)あとは祈るだけなので待ちたいと思います。
CTB石橋拓也
(今日を振り返って)とにかく勝ててよかったというのが一番です。(どのような気持ちで試合に臨んだか)今日負けてしまったら4年生が引退してしまうため、悔いだけは残したくないと思い、今までで一番良いパフォーマンスのプレーをしようと誓って臨みました。(自身のプレーを振り返って)今日はミスもなく、堅く行けたので良かったです。(チーム全体のパフォーマンスは)皆一つの目標に向かってプレーできたのでチームとしてはすごく良かったと思います。(大学選手権セカンドステージを振り返って)苦しい試合が多かったのですが、それを勝ち抜くことが出来るようになったことはチームにとって大変プラスになったのではないかと思います。(明大の結果が出ていないが今の率直な心境は)あとは立命館大の良い結果を待ちながら、皆で試合観戦をしたいと思います。
CTB大石陽介
(今日の試合を振り返って)アタックではミスが多くていいとは言えないものだったですがディフェンスで相手を抑えられたかなと思います。(フォーカスしていた点は)アタックでもディフェンスでも我慢するという点で、風も強くてアタックでもっと我慢してうまくやれればよかったと思うんですけど、ディフェンスではいいタックルができていたと思いますし、二人目の寄りも早かったのでいいディフェンスができていたと思います。(風上を生かしきれなかったことに関して)前半は風上でキックをうまく使わなければいけなかったのと、自分たちのミスが多かったのが悪かったと思います。(後半は攻められていたが要因は)風下でキックで前に出られないというのはわかっていたので、個々で思いきり勝負しようということをハーフタイム中に話したのでミスはあったんですけどそれはうまくできていたと思います。(ペナルティの多さに関して)レフリーの方がかなりオフサイドを見ていたのでそれをみんなで共有して、あまり減ってはいないですが後半意識はしていました。(キックがうまくいっていなかったと思うが)前半風上でもっとうまくけれていればよかったとおもいます。そこでFwdを疲れさせてしまった部分もあるのでそこは反省すべきだと思います。(明治対立命の結果待ちだが今の心境としては)立命かってくれとしか言いようがないんですがとりあえず自分たちが勝って待てるという展開になったのはよかったと思います。
FB児玉健太郎
(今日の試合を振り返って)いろいろミスもありましたが、勝てて良かったです。(今日の試合に向けて)自分たちのラグビーをするだけです。(東海大について)小原選手が非常にいい選手なので警戒していました。(ディフェンス面では粘れたが)そこが勝因だと思います。(キックの調子について)1本ミスキックがあって、あれがうまくいっていれば楽な試合展開になっていたかもしれないので、次は意識してやっていきたいです。(反則が多かったが)審判によって判定は変わりますが、試合中に修正していきたいです。(今の気持ち)立命館に頑張ってもらうだけです。
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