開幕戦は東洋大相手に先制点を奪いながらも不運な失点で同点を許し、勝ち点3を逃した慶大。今節は日本航空高との対戦となった。前半から慶大が圧倒的にボールを保持するが、引いて守る相手を前になかなか決定的なシーンを作り出せない。後半も日本航空高のブロックに苦戦し、両チームともにスコアレスのまま試合は終盤へ。引き分けも頭をよぎった90分、右サイドを突破した熊谷明奈(総1・十文字高)のクロスを松木里緒(環2・常盤木学園高)が足で決め、ついにゴールをこじ開ける。この得点が決勝点となり、慶大が待望の今季初勝利を挙げた。
第23回関東女子サッカー2部リーグ 前期第2節
2017/4/22(土)14:00KO@押原公園グラウンド
慶應義塾大学1-0日本航空高校
【得点者(アシスト者)】
〔慶〕90分 松木里緒(熊谷明奈)
◇慶大出場選手
GK野村智美(総4・作陽高) |
DF佐藤幸恵(総1・十文字高)→84分 山本華乃(理1・山手学院高) |
DF奥本くるみ(環2・浦和レッズレディースユース) |
DF鈴村萌花(総3・村田女子高)→46分 加藤楓琳(総2・常盤木学園高) |
DF熊谷明奈(総1・十文字高) |
MF松木里緒(環2・常盤木学園高) |
MF中島菜々子(総3・十文字高)→90+2分 澤田優香(経2・慶應湘南藤沢高) |
MF工藤真子(総2・日テレ・メニーナ) |
MF小川愛(総1・神村学園高)→76分 足立智佳(環1・大阪桐蔭高) |
FW勝木日南子(総2・大和高)→65分 志鎌奈津美(環3・常盤木学園高) |
FW鈴木紗理(総1・十文字高) |
前節、慶大は東洋大との開幕戦で先制しながらも守備の乱れから失点を許し、ドローに終わった。早めに今季初勝利を挙げておきたい中、今節は山梨県で日本航空高と対戦。伊藤洋平監督はこの日も開幕戦と同じ11名をピッチに送り込んだ。
カテゴリーが違うこともあり、日本航空高は試合開始から極端な守備姿勢を取る。慶大は圧倒的にボールを保持するものの、「6バックみたいな形で後ろを固めてきた」(伊藤監督)相手をなかなか崩すことができない。3分に鈴木紗理(総1・十文字高)が放ったファーストシュートをはじめ、37分の工藤真子(総2・日テレ・メニーナ)のシュートや前半アディショナルタイム1分の中島菜々子(総3・十文字高)のシュートはいずれも遠目から狙ったもの。日本航空高のブロックの前に慶大は苦戦を強いられる。工藤がやや低いポジションに下りてビルドアップに加わるが、前線のコンビネーションもうまくかみ合わず、決定的なチャンスを作り出せないまま前半を終えた。
後半も状況は変わらず。慶大としてはじれったい時間が続く。ボールは持てど、相手の守備ブロックに引っかかり、シュートシーンを作り出せない。不用意なボールロストから相手に攻め込まれる場面も徐々に増えるが、ここはGK野村智美(総4・作陽高)ら守備陣が落ち着いて対処。攻撃陣の援護を待つ。刻一刻と時間は過ぎ、気づけば試合は終盤へ。2戦連続の引き分けも頭をよぎった90分、慶大は右サイドバックにポジションを移していた熊谷明奈(総1・十文字高)が敵陣で仕掛ける。中には松木里緒(環2・常盤木学園高)だけしかいなかったが、熊谷は迷わずクロスを供給。これに「絶対クロスが入ってくる」と信じてニアサイドに入った松木が足で合わせ、ようやく慶大が先制に成功する。その後はきっちりと試合を終わらせ、待望の関東リーグ今季初勝利を挙げた。
高校生チームとの対戦ということで、試合内容を素直に評価することはできないかもしれない。ただ、何よりも重要なのは勝利したこと。昨季、慶大は関東リーグと大学リーグで計2勝6分け15敗と敗戦を重ね、両リーグとも降格の憂き目に。完膚なきまでに叩きのめされ、失意の1年となった。この日の勝利は、昨季を戦った選手たちにとっては自信を取り戻す1勝、今季から慶大に加わった選手たちにとっては新たな環境での手ごたえを感じる1勝であったに違いない。再び1部に挑戦するために、今必要なのはまず「勝ち癖」を付けることだ。次節はホーム・下田グラウンドでの一戦。「応援してくださる方と本当に心から喜びあえるように」(野村)――。声援を背に、昨季は一度も達成できなかった連勝を狙う。
(記事 小林将平)
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試合後コメント
伊藤洋平監督
(試合を振り返って)あっちがもう6バックみたいな形で後ろを固めてきたというのもあって、ボールは常に持っていたんですけど決して僕らのペースとは言えなかったし、本当にみんなが最後まで信じたからああいったゴールにつながったと思います。(相手のカテゴリーが違うので純粋に評価するのは難しいかもしれないが、ただこの勝ち点3は大きいのでは)大きいですね。僕らは去年1部でほぼ勝っていないような状態で落ちてきたので、そういう意味で上っていう認識はなくて、昨日からしっかり「チャレンジャーとして試合に臨もう」という話をしていました。ただ相手が必要以上に僕らをリスペクトしてきたので、少しやりづらかったですね。(やはりあそこまで引かれると難しい)そうですね、決して何かが悪いというわけではなくて、人海戦術じゃないですけどあそこまで引かれると点差は開かないと思うし、まあどっかで1点ぽこって入ったら分からなかったですけど、結果的に90分でどっちが点取っているかっていう勝負なので。(ビルドアップに工藤選手がかなり加わっていたがそこは戦術的に重要なポイントなのか)そうですね、前にあまりスペースが無かったんで、どうしても落ちてくる真子や鈴木というのを見つけながら攻撃のスイッチを入れていこうという話をしていたので、ああいうシーンが増えたのかなと思います。(課題は)結局きれいにはゴールって決まらないもので、取ってから10秒15秒以内の得点がほぼ多数だっていう話をよくしているので、今日もパスを回すことに満足してしまうとか、あとは取り返す意識というのが希薄になってしまうところもあったんで、そこをもう一回締め直して、あくまでもショートカウンターだったり取ったあと素早くゴールを目指すというサッカーをもう一回再認識して次の試合に臨みたいと思います。(ホームでの次戦に向けて意気込みを)前節も多くの方々に応援に来ていただきながらも引き分けという結果に終わってしまったので、ぜひ本当に応援してくださる皆さんと勝利を共有したいなと思います。
野村智美(総4・作陽高)主将
(試合を振り返って)勝てたことが何よりまず大きかったんですけど、嬉しさよりも安どの方が大きくて、やっぱり自分たちペースの中でなかなか点を決められずにっていう流れだったので、最後の最後本当に気持ちで押し込んで勝ち切れて良かったなと思います。(試合を通して支配している時間が長かったもののなかなか得点を奪えなかったが、後ろで見ていて感じていたことは)相手がブロックを作ってきたというのはあるんですけど、その中でも自分たちが何をやりたいのかというのがまだまだお互いで合わせきれていないなというのはすごく感じて。それぞれがやりたいことはあるんですけど、そこに対して要求するとか、良かったプレーに対してリアクションするとか、細かいところを自分たちでもっとやっていかなきゃなと感じました。(守備ではシュートを打たれる場面がほとんどなかったが、その中でも備えるというのは難しかったのでは)何本かカウンターとか自分たちの取られ方が悪くて攻め込まれる場面とかがあったんですけど、そこでの集中力というのはディフェンスライン含めすごくやりづらくて、だからそのためにも悪い失い方をしない、攻撃の形で終わるというのは全体として意識していたので、そこはこれからもっと突き詰めていきたいなと思います。(次の試合に向けて意気込みを)次はホームなので、先週ホームで勝ちきれなかったというのもあるのでホームで応援してくださる方と本当に心から喜びあえるようにまた頑張っていきたいと思います。
松木里緒(環2・常盤木学園高)
(試合を振り返って)結構自分たちがボールを保持している中で、シュートはあったんですけどなかなか決定的なシュートまでできていなくて、内容的には勝たなきゃいけない試合だったので最後に点を取ることができて良かったです。(じれったい時間が続いたがその中で考えていたことは)タイミング良く受けて相手を引き出して数的優位になった状態で空いたスペースを使いながら決定的なシュートを打てるようにというのを考えていました。(ゴールシーンを振り返って)中が私1人だけで、熊谷明奈選手がサイドの高い位置でえぐってきたので、「これは中1人だけど絶対クロスが入ってくるな」と思って信じて中に入っていけました。(決まった時の気持ちは)まずほっとしたという気持ちが大きくて。やっぱり勝たなきゃいけない試合で勝ち切れないというのは去年から続いてきて、そこでいかに勝ち切るかというのがすごく大事たと思うので、本当にほっとしました。(課題は)やっぱりどんな試合でも勝ち切ることが大事だと思うので、私に求められているのはやっぱり得点という部分だし、チームとしてももっとシュートを増やして攻撃的に攻めていって全部の試合で勝ち切るというのが課題だと思います。(次の試合に向けて意気込みを)次の試合もしっかり得点を取って勝ちたいと思います。