ついに迎えた大一番、大学リーグ入れ替え戦。引き分けでも1部への道が閉ざされる慶大は序盤からボール支配率で圧倒し、完全に主導権を握る。佐藤幸恵(総1・十文字高)の鮮烈なミドルシュートを皮切りに前半だけで3点のリードを奪うと、ややトーンダウンした後半にも2点を追加。5-0の完勝を収め、見事1年での1部返り咲きを決めた。
第31回関東大学女子サッカーリーグ 1部2部入れ替え戦
2017/12/10(日)13:30KO@東京国際大学坂戸キャンパス第3グラウンド
【スコア】
慶應義塾大学 5-0 関東学園大学
【得点者】
1-0 10分 佐藤幸恵(慶應義塾大学)
2-0 18分 松木里緒(慶應義塾大学)
3-0 27分 小川愛(慶應義塾大学)
4-0 53分 山本華乃(慶應義塾大学)
5-0 71分 鈴木紗理(慶應義塾大学)
◇慶大出場選手
GK野村智美(総4・作陽高) |
DF佐藤幸恵(総1・十文字高)→ 84分 齋藤宇乃(理4・慶應義塾湘南藤沢高) |
DF加藤楓琳(総2・常盤木学園高) |
DF熊谷明奈(総1・十文字高) |
DF足立智佳(環1・大阪桐蔭高) |
MF松木里緒(環2・常盤木学園高)→86分 庄司夏穂(総2・聖和学園高) |
MF工藤真子(総2・日テレ・メニーナ) |
MF中島菜々子(総3・十文字高)→79分 石川結菜(総1・静岡高) |
MF小川愛(総1・神村学園高)→79分 勝木日南子(総2・大和高) |
FW鈴木紗理(総1・十文字高) |
FW志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)→35分 山本華乃(理1・山手学院高) |
東京国際大学坂戸キャンパス第3グラウンド。1年前、筑波大に敗れ大学リーグ2部降格の屈辱を味わったこの場所で、今季2部2位の慶大は挑戦者として1部9位の関東学園大との入れ替え戦に臨んだ。レギュレーション上、引き分けに終わった場合も慶大は1部昇格がなくなる。目指すはただ1つ、勝利のみ。
序盤から、慶大はゲームを支配。センターバックの2人とダブルボランチを中心にリズム良くボールを回し、相手のプレスをかわしてゴールに迫る。ファーストシュートは9分。立ち上がりからいつも以上に高い位置をとっていた左サイドバックの佐藤幸恵(総1・十文字高)が得意のミドルシュートでゴールを強襲したが、ここは相手GKの好セーブに遭った。しかしこれで得た左CK、鈴木紗理(総1・十文字高)の蹴ったボールが跳ね返されたところに、再び佐藤。低い弾道のミドルシュートがネットに突き刺さり、開始10分で慶大が先制に成功した。勢いそのままに、慶大は関東学園大を攻め立てる。18分、佐藤のファーサイドへのクロスに松木里緒(環2・常盤木学園高)が走り込みボレーシュート。豪快なゴールで追加点を挙げると、27分には小川愛(総1・神村学園高)が自ら得たPKを沈め、スコアは早くも3-0に。35分に志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)が負傷交代を余儀なくされるアクシデントもあったが、ピンチらしいピンチもほぼなく、終始ワンサイドゲームのまま前半が終了した。
後半も危なげなく試合を進める慶大。
「最短で1部に上がらないといけないっていうプレッシャーが大きくて、苦しい時期も多かった」(中島)。伊藤洋平監督を新たに迎えて始まった今季、関東リーグや早慶定期戦で魅力的なサッカーを展開してきた慶大だったが、最大の目標であった“大学リーグ1部昇格”への道のりは決して簡単なものではなかった。優勝争いに敗れ、なんとか逆転で入れ替え戦出場を決めたのは最終戦。そして迎えたこの日、2部チームに不利な条件下での大一番で「今季最高のパフォーマンス」(伊藤監督)を披露し、1部チームを圧倒した。苦しんで、それでも力を証明して返り咲いた1部の舞台が、彼女たちにふさわしいものであることに異論を唱える者はいないだろう。主力のほとんどは来季もチームに残り、成長著しい荒鷲たちの新たな挑戦が始まる。慶大ファンは皆、今から心を躍らせているに違いない。そして、野村智美(総4・作陽高)主将率いるTEAM2017のラストゲームは、来年1月に行われる関東リーグ入れ替え戦だ。昇格の喜びも、降格の悔しさも知っている4年
(記事 桑原大樹)
試合後コメント
伊藤洋平監督
(今の気持ちは)まだ実感がないですね。(1部で戦ってきたチームに対して対策や準備は)うちのサイドバックが高い位置をとれば相手のサイドハーフが下がって6-2-2みたいになるので、まずしっかりビルドアップして1列目を剥がそうと、そこから芋づる式に空いてくるスペースを使おうという練習をしていて、おおむねプラン通りでした。(早々に試合を決めたが、この展開は予想していたか)いえ、全く予想していなくて、本当に選手たちがこういうプレッシャーの中で今季最高のパフォーマンスを発揮してくれて、正直言って驚いています。(シーズンを通して自分たちのパスサッカーを貫いた)今まではどちらかというと“守備とカウンターの慶應”だったんですけど、「今年いる選手たちの潜在能力を一番発揮できるサッカーは何か」と考えた時、こういうサッカーになりました。ミスもいくつもありながらも、継続してやってこれたのが大きかったと思います。(今日も5得点全て違う選手が挙げたように、どこからでも点が取れるチームになった)そうですね。アシストも大学リーグで(中島)菜々子と(鈴木)紗理と(小川)愛が並んでトップになっていて、どこからでもパスを出せて点が取れるので、的を絞らせないのが今年のチームの特長だと思います。(来季、1部で戦っていく自信はあるか)はい。2年目にはもっと良いサッカーができると思います。もちろん1部の厳しさも分かっているので、この1年積み上げてきたものをもう1段階上積みさせられたらと思います。(最後に関東リーグ入れ替え戦が残っている)まずやっぱりこのメンバーでもう1カ月戦えることが純粋に僕にとって幸せなことで、さらにもっと良いサッカーを追求して、応援してくださる方々に結果という形で恩返しできればと思います。
野村智美(総4・作陽高)主将
(1部昇格を決めた)実感がないんですけど、応援してくれている方が喜んでいるのを見てやっと実感が湧いて、良かったなっていう。安堵の気持ちですね。(昨季に降格を味わった地で昇格を決めた)そうですね。私は1年生の時に昇格をここで経験していて。去年の思い出は忘れ去り、良いイメージを持ってここに来て、良いイメージで昇格を決められたので、良かったです。(ゴールラッシュだったが後方から見ていてどうだったか)元々できたこともたくさんあったんですけど、それ以上に今年1年でできるようになったことがすごく増えていて、ただ上手くなっただけじゃなくてやっている中で「楽しい」という言葉が最近よく出ていて、それを結果として残せたのがすごく嬉しいです。(1カ月後にもう一度この喜びを味わうチャンスが残されている。関東リーグ入れ替え戦に向けて意気込みを)今日も1部という格上の相手に対して無失点で勝って慶應の強さをしっかり示せたと思うので。今季残せる最大の結果をしっかり次の試合でも残して、「TEAM2017の慶應もすごかったんだ」というのを示した上で、来季、次のステップに繋げていってほしいと思うので、しっかり勝ち切ります!
中島菜々子(総3・十文字高)副将
(1部昇格を決めた)今季最短で1部に上がらないといけないっていうプレッシャーが大きくて、苦しい時期も多かったんですけど、本当に勝てて良かったです。安堵です。(昨季に降格を味わった地で昇格を決めた)去年降格した時にの4年生の崩れ落ちる姿っていうのが本当に忘れられなくて。そういう姿を絶対にもう見たくなかったし、4年生といっしょに結果を出したいっていう気持ちが強かったので、本当に良かったです。(今季ベストゲームだったのでは)こんなに点が入ると思っていなくて。1,2年生が本当にキレキレで、「すげー」って思いながらやっていました(笑)。(1カ月後にもう一度この喜びを味わうチャンスが残されている。関東リーグ入れ替え戦に向けて意気込みを)このチームで年を越せるってなって、まだまだ成長できると思うので、もう1回喜べるように頑張ります!
志鎌奈津美(環3・常盤木学園高)
(今の気持ちは)嬉しいです。ほっとしたというのが大きいです。(試合を振り返って)最初の方でリズム良く3点取れたのが良かったと思います。入りからみんなかなり集中していたので、そこでしっかり3点取って、交代選手も活躍しながら本当にチーム全員で戦えたのが良かったと思います。(ケガの具合は)先週ちょっと痛めてしまって、今年最後なので何とか間に合わせたんですけど、自分のシュートで自爆してしまって。でも1部昇格を1年間ずっと目指してきたので、この場に立ってそれに貢献できたというのは今後にもつながるし、素直に嬉しいと思ってます。(最後に関東リーグ入れ替え戦が残っている)絶対にW昇格して、来年はひとつ高い舞台で上を目指していきたいと思っているので、必ず勝ちたいと思います。
加藤楓琳(総2・常盤木学園高)
(今の気持ちは)去年の入れ替え戦で涙を流して、今年は絶対勝って泣こうと思っていたので、本当に勝てて良かったです。(関東リーグ入れ替え戦に向けて)このチームで長くできるっていうことに感謝しながら、W昇格に向けて全員でまた1から頑張りたいと思います。
松木里緒(環2・常盤木学園高)
(1部昇格を決めたが今の気持ちは)やっと実感が湧いてきたんですけど、TEAM2017が始まって目標を「早慶戦勝利」と「1部昇格」に決めていて、早慶戦は勝てなくて、1部昇格のために今までずっとやってきたんで、それがやっと実ってほっとしています。(昨季はここで降格して、今季はここで昇格となった)去年スタートから出させていただいて、何もできずに負けて降格してしまってすごく悔しさがあったんですけど、去年のことは考えずに「また1部の舞台でやりたい」っていう気持ちで勝てたかなと思います。(ゴールシーンは豪快に叩き込んだ)ドンピシャでさち(佐藤)からのクロスが来て、決めるだけだったので、仲間に助けられたゴールかなと思います。(もう一度この喜びを味わうチャンスが残されている。関東リーグ入れ替え戦に向けて意気込みを)1カ月後で期間は空いてしまうんですけど、TEAM2017最後の試合までしっかり1部昇格のためにできる準備をみんなでやって、W昇格できるように頑張っていきたいと思います。
工藤真子(総2・日テレ・メニーナ)
(今の気持ちは)去年は入れ替え戦で負けてしまって非常に悔しい思いをしたので、今日はその悔しい思いを晴らすというか今回は絶対勝とうと思っていたので、まず入れ替え戦で勝利できたことはすごく嬉しいです。(関東リーグ入れ替え戦に向けて)期間は空くんですが、今まで通り自分たちのサッカーを貫き通して、次の入れ替え戦も必ず勝ってW昇格できるようにチーム一丸となって戦っていきたいです。
鈴木紗理(総1・十文字高)
(今の気持ちは)1部昇格して良かったという気持ちと、3年生が泣いている姿を見て、実感が湧いてきました。(試合を振り返って)勝つしかないという状況の中で、緊張感がとてもあったんですけど、早い時間で何点か入ったので、そこからは慶應のパスサッカーでうまく翻弄できたと思います。(最後に関東リーグ入れ替え戦が残っている)今日1日喜んで、明日からはまた切り替えて全員が同じベクトルで頑張りたいと思います。
山本華乃(理1・山手学院高)
(今の気持ちは)ずっと目標にしていた1部昇格が実現して嬉しいです。(試合を振り返って)今までなかなか結果を出せていなかったので、今日は頑張ろうと思って臨みました。(得点という結果を残した)(鈴木)紗理から良いボールが来たので流し込むだけだったんですけど、点を取れてとても嬉しいです。(最後に関東リーグ入れ替え戦が残っている)あと1ヵ月くらいあるので、またみんなで良い準備をして1部昇格したいと思います。
足立智佳(環1・大阪桐蔭高)
(1部昇格を決めたが、今の気持ちは)正直まだ実感はないんですけど、やっぱりこのチームで1部昇格を決められて素直に嬉しいです。(試合を振り返って)絶対に勝たないといけない状況だったので緊張もあったんですけど、この1年間でできることはすごく増えていたので、そういう意味では自信はありました。(関東リーグ入れ替え戦に向けて)このチームで戦う最後の試合になるので、やっぱりチームとか4年生のためにも絶対に昇格を決めて終わりたいと思います。
熊谷明奈(総1・十文字高)
(今の気持ちは)今年1年ずっと1部昇格を目標に頑張ってきたので、今回それを達成できて本当に嬉しいです。(関東リーグ入れ替え戦に向けて)オフがあるのでお餅を食べ過ぎずに自分の体重をコントロールしてコンディションを整えて、センターバックとして無失点で抑えられるように頑張りたいと思います。
佐藤幸恵(総1・十文字高)
(1部昇格を決めたが、今の気持ちは)1年間目標にしていた1部昇格というのが、まだ関東リーグの方が残っているんですけど、とりあえず(大学リーグの)1部昇格が決まったので、本当に嬉しく思っています。(試合を振り返って)自分たちは勝ちしかなくて、全員前向きで行こうということで、最終的に5点という大量得点で勝てたことはすごく良かったと思います。(自身も先制点を決めたが)今日はもう試合前から「得点に絡もう」という強い気持ちでいて、シュートチャンスがあればどんどん打っていこうと思っていたので、それで決められたこともすごく嬉しかったし、2つ目の得点にも関われたことも嬉しかったです。(関東リーグ入れ替え戦に向けて)1月末の入れ替え戦も決して簡単な試合にはならないと思うので、またチーム一丸となって1月末に向けて練習に励んで、絶対に1部昇格をまた成し遂げたいと思います。
小川愛(総1・神村学園高)
(1部昇格を決めたが、今の気持ちは)1部昇格はチームの目標として掲げていたことなので、それが達成できて嬉しいです。(試合を振り返って)チームのためにピッチの上で自分ができることは精一杯できたのかなと思います。(PKでの得点について)勝たないといけない試合で、結果的に5点をチームで取れた。その中で自分も1点取れたというのは、すごく良かったと思います。(1月末に行われる関東リーグの入れ替え戦に向けて)もう1つのリーグも1部昇格できるように、チーム一丸となって戦いたいと思います。