4月14日の開幕が明日に迫った東京六大学野球2018年春季リーグ。その開幕戦で慶大は東大と対戦することとなる。
開幕週である今回は、昨季勝ち点を挙げた東大の戦力分析を昨季のデータから振り返っていきたい。
初戦の東大戦というと思い出してしまうのが昨秋。優勝を目指した開幕戦でまさかの敗戦。その後連勝で勝ち点を獲得したが、苦しい戦いを強いられた。
これまでの東大を考えると、どうしてもエース宮台康平(H30法卒・現・北海道日本ハム)の活躍に目が向きがちだが、昨秋の躍進はなんといっても打線の影響が大きい。これまで1試合当たりの得点数は約2点だったが、昨秋は4.09点と大幅にアップ。慶大3回戦では14年ぶりに2桁得点を記録し、勝ち点を取った法大戦では2試合で17得点を挙げている。
シーズン | 1試合あたり得点 | 1試合当たり失点 | 勝利数 |
15春 | 1.46 | 5.91 | 1 |
15秋 | 2.00 | 5.00 | 1 |
16春 | 2.23 | 6.46 | 3 |
16秋 | 2.09 | 6.18 | 1 |
17春 | 2.10 | 9.40 | 0 |
17秋 | 4.09 | 6.36 | 3(勝ち点1) |
そんな得点力アップの原因は長打力アップにありそうだ。チーム本塁打率(HR数/打数)はなんと慶大に次ぐ2番目。純粋な長打力が現れる数値IsoP(長打率-打率)でも慶大を除く5大学と比べても遜色ない数値を記録している。そんな強力赤門打線の昨年クリーンアップを打った楠田創(H30教育卒)、田口耕蔵(H30教育卒)、山田大成(H30教育卒)のトリオは昨年卒業。破壊力は低下しそうだが、昨秋の慶大戦で本塁打を放った新堀千隼(教養3・麻布)や辻居新平(法3・栄光学園)など、残ったメンバーももちろん侮れない。どんどん力をつけている赤門打線。黄金世代が卒業したとはいえ、一筋縄ではいかないだろう。
チーム | HR率 | IsoP |
慶大 | 0.028 | 0.162 |
明大 | 0.019 | 0.141 |
法大 | 0.012 | 0.117 |
立大 | 0.0219 | 0.112 |
早大 | 0.011 | 0.103 |
東大 | 0.0222 | 0.108 |
対する慶大投手陣。開幕投手は昨秋最優秀防御率の佐藤宏樹(環2・大館鳳鳴)が濃厚だ。昨季のけがの状態も戻っており、今年も頼もしい存在になるだろう。2戦目は同じく2年の関根智輝(環2・城東)。ルーキーながら昨春の開幕戦で先発し勝利を挙げた相手に再び良い結果を出したいところだ。ブルペン陣も髙橋亮吾(総3・慶應湘南藤沢)をはじめ津留崎大成(商3・慶應)など昨年も登板を経験した投手たちが揃う。昨秋の東大戦は投手陣に苦しんだだけに、リベンジと行きたい。また、昨秋の東大1回戦と3回戦ではエラーからピンチを招いてしまっただけにミスを少なくすることも今後に向け大事な要素となる。
秋の東大投手陣を分析すると、ここ3年と比べ防御率などほとんどの数値に変化がなかった。変化した点で言えば被長打の数値だ。ここ3年のHR/9(被HR数をイニングで割り9倍したもの)は0.9だったが昨秋は0.47と半減。被IsoPはここ3年が0.166だったが、昨秋は打高のシーズンながら0.121と他大学並みになった。長打を打たれにくくなったことで、1イニングでの大量失点が減り、余裕が出たのではないだろうか。しかし、エース宮台が抜けたことで、投手陣は大きな再編が必要になる。新たに背番号1を背負うのは昨秋の法大2回戦で先発し、勝利投手となった宮本直輝(教育3・土浦一)だ。その試合でホームランを放つなど、ずば抜けた野球センスを持っている。宮本に続く投手陣も山下大志(教養3・豊田西)、小林大雅(経3・横浜翠嵐)、濵﨑貴介(医3・鶴丸)と油断できないメンツが揃う。投手戦に持ち込まれると東大の思うつぼ。早めに先手を取っておきたい。
チーム | HR/9 | 被IsoP |
慶大 | 0.53 | 0.131 |
明大 | 0.79 | 0.096 |
法大 | 1.13 | 0.135 |
立大 | 0.48 | 0.125 |
早大 | 0.27 | 0.099 |
東大 | 0.47 | 0.121 |
東大3年平均 | 0.925 | 0.166 |
そんな東大投手陣に立ち向かう慶大打線は、新チームとなり陣容は大きく変わる。特に昨年の”内野カルテット”が全員卒業したことがネックになりそうだったが、心配はない。不動のセンター・柳町達(商3・慶應)が内野にコンバートされたことを皮切りに内野争いが激化。切磋琢磨してそれぞれがアピールするオープン戦となっており、リーグ戦に入っても期待できるメンバーが揃っている。一方外野陣に目を向けても、主将の河合大樹(総4・関西学院)を中心に期待のルーキーも加えた競争は内野より激しいと言える。慶大の魅力ともいえるパワフルさはやや影をひそめるものの、チームとしての団結力は高い。「つなぐ野球」を掲げるTEAM河合。冬と春の成果が得点力としてまずこの東大戦に現れるかがカギになるだろう。
秋春連覇、そして日本一を目指す新たな旅が間もなく始まる。その旅の終わりにみんなが笑っていられるように、スタートダッシュは全速力で決めたい。
(記事・尾崎崚登)