2020年12月19日、全日本弓道選手権で連覇を果たした男子弓術部。今年度さらなる飛躍を誓う部員の皆さんにお話を伺った。インタビューに答えてくださったのは主将の前原栞太(政4・浦和)選手と宮脇颯真(法2・慶應)選手。
昨年度のインカレ優勝について
――インカレ2連覇、おめでとうございます。
前原:ありがとうございます。特に昨年はコロナウイルスの影響で大きく活動が制限される中での優勝だったので、喜びもひとしおだったかなと思います。
――当時1年生ながら勝利に大きく貢献した宮脇選手は。
宮脇:先輩方が連覇だということで、1回目の優勝の時よりもさらに喜んでいたのかなと。そういった場面を見られて非常に嬉しかったなという記憶があります。
――1番緊張感のあった試合は。
前原:西日本工業大学との試合だったかなと思います。リモート試合ということで今回は日吉の道場で試合をやったのですが、アリーナではないので時間が経てば日が沈んで、あたりもすごく真っ暗になって、12月でしたので気温もぐっと下がっていて、そんな中での試合だったというのも相まって一番精神力が試された試合だったのかなという風に振り返って思いますね。
コロナウイルスの影響をものともしない強さ
――リモート試合というのは退場してから結果を知るものなのか。
宮脇:そうですね。退場して「相手○中だったんだ」と初めてわかるという感じになってます。
――それにもかかわらず、2019年の初優勝から内容的にもレベルアップしていたのでは。
前原:メンタルの強化と基本的な姿勢の見直しの2点の部分が1番的中の安定に繋がったのかなと思っています。メンタル面の強化に関しては、メンタルトレーナーの方を昨年からお呼びして、それがプレッシャーのかかる中でのパフォーマンスに良い影響を与えたのかなと。基本的な姿勢の確認についても外部のコーチの方に来ていただいて、弓道だけではなく普段の姿勢から徹底的に見直そうということで、それが射の技術向上にも確実に繋がってきたのかなと思っています。
――オンライン試合はやはりやりにくいのか。
宮脇:敵が見えないという恐怖がだいぶ緊張を高めていたとは思いますが、ひとつ自分の中でよかったなと思うことは、オンライン試合で「自分のことだけに集中する」ということに強くなれていたというのはありますね。
どんな時でも淡々と
――1年生にもかかわらずインカレ2連覇がかかるというプレッシャーは。
宮脇:結果にこだわるというのはもちろん大事なのですが、逆に結果にとらわれすぎて自分のやるべきことを見失うというのが一番もったいないことなのかなと。なので、入場したらとにかく自分のやるべきことだけ考えるという風にしていました。
――今年度のインカレについて意気込みは。
前原:そうですね、もちろん僕たち日々日本一を目標に活動している部活ですので、当然3連覇を目指したいという気持ちはあるのですが、ぐっとそこは堪えて、日々コツコツ練習を積み重ねて、結果的に良い成果をもたらすことができたら嬉しいなと思っているので、気を緩めずに練習に取り組んでいきたいなと思っています。
宮脇:2回目の優勝も、ひたむきに真面目にやったからこそ「優勝」という結果が得られたと思うので、とにかく自分が目指す目標が何なのかというのを明確にして、練習に取り組みたいかなと思います。
さらに高みを目指し挑戦していく今年度
――現在I部リーグに所属しているが、リーグ戦にかける思いは。
前原:今年の僕らの代というのは、これまでの代とは違った目標を掲げていて、しっかりI部で優勝しようというのに本気で取り組んでいるというのが言えることかなと思います。これまでのリーグ戦の結果というのはなかなか厳しいものがあって、他の強豪校に勝てない現状が続いていたんですけれども、そこにあえてしっかり挑戦していこうという姿勢は見せているかなと思います。
宮脇:リーグ戦というのはインカレよりも出場する選手が多いので、部の層の厚さ、層の厚さというのは決して弓の実力だけではなくて、部活動としてのサポート体制というか、様々な要因が重なったうえでの強さというのが出てきてしまうと思うんですね。なので、ある意味リーグ戦での優勝というのはインカレでの優勝よりも部としての強さを示す一つのデータになるのかなという風に思っています。そういった側面を持ったリーグ戦で優勝を目指すというのは、部として強くなるためには必要不可欠なことなのではないかなと思っています。
――期待の新人に宮脇選手を挙げていたが。
前原:彼の弓道の技術に卓越したものがあるのはもちろんですが、それ以上に感心している部分は、一部員でありながら主将のような視点で部活を見ているところです。先ほどもⅠ部リーグでの優勝について詳しく話していましたが、このような発言ができるのは普段から宮脇自身が周囲のために何ができるのか、全体を俯瞰した視点をもっているからこそで、そこが彼のすごいところだと思い、僕も評価して期待しているポイントです。
――これを踏まえて、宮脇選手の今年度の抱負は。
宮脇:春から2年生ですが、まだまだ下級生なので大事なのはとにかく元気に弓を引くことなのかなと思います。先輩方も僕とかの的中が振るわずに落ち込んでいると元気がなくなってしまうと思うので、まずは楽しく弓を引くというのが今年のコンセプトの1つになるのかなと思っています。あとは、基本に忠実に弓を引くことです。これは弓を引くことだけにとどまらず、部活をするうえでの報告・連絡・相談などにもつながってくるので、とにかく基本に忠実な1年にしたいかなと思います。
最後に
――主将として意気込みは。
前原:全日本2連覇を受けての主将就任ということで、正直かなり重圧がかかる気持ちでいます。ただ、やるべきことは変わらず、高い目標を掲げると同時に日々の練習に打ち込むことが必要だと思っていて、それを変えるつもりはありません。ただ、今年のチームの目標としてⅠ部優勝というのをかなり強く意識して練習しているので、これから様々な困難があると思いますが部員と励まし合いながら、主将として模範となるような行動を心掛けながら、チーム一丸となって頑張りたいなと思います。
――新入生へのメッセージをお願いします。
宮脇:僕は弓道経験者ですが、大学1年生は弓道においてもそれ以外でも非常に成長できた1年間だったなと思っています。経験者の方は、今の実力に諦めたりせず、大学でも続けていれば必ず上達できるのかなと思っています。初心者の方に向けても、部内のだいたい半数の部員が大学から弓道を始めた人たちで、新人戦での出場のチャンスやリーグ戦、インカレのメンバーとして活躍する部員も増えているので、これまでの経験関係なく成長できる場所が弓術部にはあるのかなと思います。
――ありがとうございました
主務の八尾貴大(経4・慶應湘南藤沢)は「選手が凛として弓を引いている姿は、少しでも自分たちが貢献できたのかなと思わせてくれる瞬間」であり、「優勝という形で選手と応援していた僕らとがつながれた」と語る。どんな状況でも、部員誰一人として力を抜かず、ひたむきに努力し続けたからこそ掴めた昨年の連覇。
選手と応援が一体となり、さらに進化を遂げる慶大弓術部。3連覇の夢を実績にすべく、今日も目の前の1本に向き合い続ける。
(取材はオンラインで行いました。)
(取材:白井美琴・佐藤有)