【競走】慶大競走部107年の軌跡 箱根駅伝予選会直前特集①

競走

かつて箱根駅伝の歴史を創った慶大競走部。第1回大会から出場し、1度の優勝や3度の準優勝を果たした強豪だった。そんな慶大も低迷期を迎え、第70回大会を最後に本戦から遠ざかっている。三色旗の襷が箱根路から消えて30年。彼等は今年、復活を遂げようとしている。今回は、慶大競走部の現在までの軌跡を振り返るとともに、その“今”の姿に迫る。

 

夏合宿での練習風景

復活の兆し〉

慶大競走部が今年、復活を果たそうとしている。注目すべきは“過去一番”と評される選手層の厚さ。現存メンバーでは、5000mで4人/10000mで5人が塾歴代記録TOP10に名を連ねる。トラックのみならずロードでも結果を残してきた。昨年の予選会では、木村有希(総・当時3年)がハーフマラソンの塾記録を大幅に更新。今年の関東インカレでも田島公太郎(環・4年)がハーフマラソンで8位となり、この大会、長距離種目で慶應義塾大学において30年ぶりの入賞者となった。昨年の予選会は全体22位に終わったが、出走したタイム上位10名全員が当時3年生以下だった。実績や経験値を踏まえると今年は箱根駅伝本戦に出場する絶好のチャンスと言えよう。

 

ハーフの塾記録を持つエース木村

〈強豪慶大〉

そもそも、「箱根駅伝」と「慶應義塾大学」にはどのような関係があるのか?両者を連想する方は今でこそ少ないかもしれない。しかし、その間には大会黎明期からの歴史がある。箱根駅伝は1920年から開催され、慶大はその第1回大会に参加した4校の一つだった(その他:早大・明大・東京高師/現筑波大)。戦前から戦間期には、1度の優勝や3度の準優勝を果たすなど強豪として大会の歴史を築いた。戦後も出場を続け、その回数は「30」に上る。

 

〈強豪から古豪へ・訪れた長い低迷期〉

そんな慶大も1970年代以降は低迷期に入った。その背景の一つには“箱根駅伝の変化”がある。箱根駅伝は近年、テレビ中継の開始によるメディア注目度の高まりや留学生の登用、高校生スカウトの熾烈化などによる競技レベルの高まりを受け、大会の規模やレベルを急激に伸ばしてきた。スポーツ推薦入部を導入せず、練習でも選手の自主性が良くも悪くも重視され続けてきた慶大では、駅伝チームの抜本的な強化が困難であり、他大学との差は徐々に広がっていった。近年は、関東学生連合に選出された1名がオープン参加で出走することが数年に一度あるだけで、チームとしては本戦から30年間遠ざかっている。

 

気づけば30年間箱根路から遠ざかる

〈背景にあった新たな試み〉

では何故、今年慶大は上り調子なのか?その裏には、近年始まった本格的なチーム強化の試みがある。

それが「箱根駅伝プロジェクト」だ。このプロジェクトは2017年・創部100周年を機に始動。湘南藤沢キャンパスに新たに研究所を設立し、体育会と研究所が連携する形で医学・生理学・ITを活用したチーム強化方法などの研究を進めている。他にもメディカルサポートの充実や一貫教育校との連携など、様々な強化を行っている。

 

箱根駅伝プロジェクト

中でも特筆すべきは、保科光作氏を長距離コーチとして招聘したことだ。保科氏は学生時代に日体大で4度箱根に出走し、実業団でも活躍を続けた名ランナー。指導者としても日清食品グループでコーチ経験を持つ。就任当時の心境を保科氏は次のように語る。「箱根を目指す大学で指導をしてみたいという強い思いはずっとありました。その中で慶大から誘いをいただき、お互いの目指すビジョンが一致したのでお引き受けしたいと思いました。」

 

2017年より駅伝チームを率いる保科(写真左)

他の強豪との資金面での差を埋めるために、2022年からは学生主導でクラウドファンディングを実施。今年は総計900万円以上の資金が集まった。主将の田島は今大会に向けてこう意気込む。「チームの実力はトップ層・ミドル層と全体的に昨年度は比にならないほどレベルアップしています。応援してくださる皆さんの期待に応えるためにも、絶対今年で決めたいです。」

 

キャプテン田島はチームの精神的支柱

近年、長年箱根路から遠ざかっていた伝統校が続々と復活を遂げている。2020年には26年ぶりに筑波大学が、2023年には55年ぶりに立教大学が本戦出場を果たした。両校とも慶大同様に長期的なプロジェクトを進めたことが実を結んでいる。「箱根駅伝プロジェクト」始動から8年。慶大も紆余曲折を経て本戦に出場できる陣容を整えてきた。努力を結実させるため、彼らは並々ならぬ思いを胸に予選会に臨む。

 

彼らの努力は実を結ぶのか

 

(記事:竹腰環、編集:ウジョンハ、小田切咲彩、山口和紀)

 

最後までお読みいただきありがとうございます。ケイスポでは今後も競走部についての記事を上げていきます。特集は明日以降も続きますのでお楽しみに。

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