2025年10月20日(月) 東京六大学野球秋季リーグ戦 立大3回戦 @明治神宮野球場
東京六大学野球2025秋季リーグ戦は、圧倒的な強さを見せた明大が優勝を決め、その翌日に迎えた慶立3回戦。ここまで2試合を戦い、1勝1敗と両チームが勝ち点獲得をかけて臨んだ。2回表、常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)の一発で慶大が1点を先制するも、3回裏に落合智哉(スポ3・東邦)の2点適時打で立大が逆転。さらに4回にも1点を追加した立大のペースで試合は進み、1対3で終盤に突入する。反撃したい慶大は7回表、1死二、三塁と一発逆転のチャンスを作ると、代打・今津慶介(総3・旭川東)が値千金の3点本塁打を放ち、逆転に成功。その裏からは毎回得点圏に走者を背負ったが、2番手・渡辺和大(商3・高松商業)、3番手・水野敬太(経2・札幌南)が1点のリードを守り抜いて4対3で勝利し、今季2つ目の勝ち点を獲得した。
1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 | |
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慶大 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 | 0 | 0 | 4 |
立大 | 0 | 0 | 2 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 3 |
慶大バッテリー:外丸、○渡辺和、水野ー吉開、加藤
立大バッテリー:●小畠、斎藤、竹中、田中ー落合
慶大本塁打:常松1号ソロ(2回・小畠)、今津2号3ラン(7回・小畠)
立大本塁打:なし
◆慶大野手成績
位置 | 選手 | 1回 | 2回 | 3回 | 4回 | 5回 | 6回 | 7回 | 8回 | 9回 |
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[8] | 丸田湊斗(法2・慶應) | 左飛 | 二ゴロ | 空三振 | 右安 | |||||
[6] | 林純司(環2・報徳学園) | 三ゴロ | 二飛 | 中飛 | 遊併打 | |||||
[3] | 渡辺憩(商2・慶應) | 中飛 | 二安 | 遊ゴロ | 捕邪飛 | |||||
3 | 今泉将(商4・慶應) | |||||||||
[7] | 常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢) | 左本① | 右飛 | 二安 | ||||||
7 | 一宮知樹(経1・八千代松陰) | 空三振 | ||||||||
[9] | 横地広太(政3・慶應) | 中飛 | 四球 | 四球 | 死球 | |||||
[4] | 竹田一遥(環1・聖光学院) | 左飛 | 遊ゴロ | 投犠打 | 三ゴロ | |||||
[5] | 八木陽(法2・慶應) | 左飛 | 右飛 | |||||||
H | 今津慶介(総3・旭川東) | 右本③ | ||||||||
5 | 服部翔(政2・星稜) | 中飛 | ||||||||
[2] | 吉開鉄朗(商3・慶應) | 三ゴロ | 右飛 | |||||||
2 | 加藤右悟(環1・慶應) | 一飛 | ||||||||
[1] | 外丸東眞(環4・前橋育英) | 中安 | ||||||||
H | 山本勇太(政1・慶應湘南藤沢) | 左飛 | ||||||||
1 | 渡辺和大(商3・高松商業) | 空三振 | ||||||||
1 | 水野敬太(経2・札幌南) |
◆慶大投手成績
選手 | 投球回 | 打者 | 投球数 | 被安打 | 被本塁打 | 与四死球 | 三振 | 失点 | 自責点 | |
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先発 | 外丸東眞(環4・前橋育英) | 4 | 21 | 68 | 7 | 0 | 1 | 2 | 3 | 3 |
2 | 渡辺和大(商3・高松商業) | 2 2/3 | 10 | 33 | 0 | 0 | 2 | 2 | 0 | 0 |
3 | 水野敬太(経2・札幌南) | 2 1/3 | 12 | 46 | 1 | 0 | 3 | 1 | 0 | 0 |
1925年秋に創設され、今秋で100周年を迎えた東京六大学野球。第6週の早明2回戦にて、明大が早大に勝利したことにより、明大の5季ぶりの44度目の優勝が決まった。慶大は第5週の法明2回戦終了時点でV逸が確定しており、立大も早明2回戦の試合前時点では逆転優勝の可能性も残されていたが、17季ぶりの栄光には届かなかった。両校とも今カードを含め、残りはわずか2カード。1年間の集大成となる秋季リーグ戦で1つでも順位を上げ、来春につなげたいところだ。
慶大は1回戦で先発し、6回2失点の粘投を見せた渡辺和、あるいは1回戦で見事な火消しから流れを呼び込み、通算20勝目を挙げた外丸東眞(環4・前橋育英)のどちらが先発するか注目されていたが、堀井監督が先発のマウンドを託したのは、主将の外丸。早大・伊藤樹(スポ4・仙台育英)の現役最多21勝に並び、大学野球で最後の早慶戦に弾みをつけたいところだ。対する立大の先発は1回戦でも先発し、7回を被安打3、自責点2と好投した小畠一心(営4・智辯学園)。3日後に迫ったドラフト会議に向けても、アピールを見せたい両右腕の投げ合いとなった。

3回戦の先発マウンドに上がった外丸
先攻の慶大は、苦手とする本格派右腕・小畠に対し、先頭の丸田湊斗(法2・慶應)は左飛、続く林純司(環2・報徳学園)は粘るが三ゴロに打ち取られると、渡辺憩(商2・慶應)も中飛で初回は三者凡退に終わる。
一方の外丸も抜群の立ち上がり。強打の1・2番コンビ、山形球道(コミュ4・興南)・小林隼翔(コミュ2・広陵)をテンポ良く打ち取ると、次打者には失策で出塁を許すが、4番・丸山一喜(コミュ3・大阪桐蔭)の右前へ抜けそうな当たりを、球際の強さが光る二塁手・竹田一遥(環1・聖光学院)の好守でアウトにし、無失点に抑える。
2回表、今カード初めてベンチ入りし、4番に復帰した常松が打席に向かうと、カウント1−2から完璧に捉え、打球は左翼ポールを直撃する先制の本塁打に。後続は三者続けて凡退となったが、いずれも外野ウォーニングゾーン手前まで運ぶ大飛球で、小畠攻略の兆しが見え始める。

主砲・常松の一発で先制に成功
しかしその裏、絶好調の落合、続く村本勇海(文2・大阪桐蔭)の連打で無死一、二塁のピンチを招く。ここで迎えるは、立大主将の西川侑志(社4・神戸国際大附)。犠打を試みた西川だったが、外丸が巧みに打ち上げさせて捕飛に打ち取り、主将対決を制す。外丸は後続も打抑えて無失点にしのぎ、リードを守る。
曇天に三色旗がなびいた3回表、1死から”強打者”外丸が通算22本目となる安打で塁に出るが、チャンスを活かせず無得点。その裏、今春三冠王に輝き、今秋も六大学史上初の2季連続三冠王獲得に向けその打棒を見せつけている山形に右前への安打を許し、3番・鈴木唯斗(コミュ4・東邦)にも安打を放たれ、1死一、二塁とされる。4番・丸山の打球は、一塁手・渡辺憩の好プレーで一邪直に打ち取るが、続く落合に左翼手の頭を越える一打を浴び、同点の二走、さらには逆転の一走にも生還され、1対2となる。
逆転された後の4回表、渡辺憩が相手シフトの逆を突く内野安打で出塁し、前日の2回戦で今季初めてベンチ入りした横地広太(政3・慶應)の四球で2死一、二塁とするも、竹田一は遊ゴロに倒れ、二者残塁に終わる。裏の守り、外丸は西川との主将対決第2ラウンドを迎えたが、高いバウンドで三塁手の頭上を越える安打を放たれ、無死一塁。その後、犠打で2死二塁とされ、山形へのストレートの四球でピンチを拡大すると、小林隼に三遊間を破る左前への適時打を浴び、追加点を許す。
反撃に転じたい慶大は5回表、2死無走者から外丸に代え、リーグ戦初出場の山本勇太(政1・慶應湘南藤沢)を代打に送る。これにより、この試合での外丸の通算21勝目はお預けとなった。山本勇はカウント1−2から滞空時間の長い飛球を放つも、左飛。1回以来の三者凡退に抑えられる。

リーグ戦初打席に立った山本勇
5回裏、代打の山本勇に代わり、マウンドに左腕エース・渡辺和が上がり、捕手は吉開鉄朗(商3・慶應)から加藤右悟(環1・慶應)に代わる。渡辺和は先頭を打ち取ると、1死から今カード全試合で長打を放っている落合に対し、147km/hの完璧なクロスファイアで見逃し三振。続く村本には三遊間を抜けそうな当たりを放たれるが、三塁手・八木陽(法2・慶應)が捕球から1回転し、一塁へ矢のような送球を送ってアウトにする好守を披露。三者凡退で流れを呼び込む。

外丸の後を継ぎ、マウンドに上がった渡辺和
しかし6回表は1番からの好打順を活かせず、前の回に続いて三人で退き、小畠のリズムを崩せない。だが渡辺和も負けじと山形を空振り三振に仕留めるなど好投し、終盤戦に突入する。
『若き血』が演奏され、厳粛な雰囲気で迎えた7回表。常松が今度はしぶとい安打で出塁すると、魔曲・『朱雀』を正面から受けた横地が2打席連続の四球でチャンス拡大。続く仕事人・竹田一の見事な犠打で1死二、三塁と一打同点、あるいは一発出れば逆転の絶好機をつくり、堀井監督は八木に代えて今津を打席に送る。前日の2回戦では、2点を追う6回、1死二、三塁で代打起用されるも、走者を還せなかった今津。春季リーグでは絶対的なリードオフマンとして君臨していながら、今季は不振にあえぎ、立大2回戦では春秋通じて今年初めてスタメンを外れた。何としてでも結果が欲しいこの打席で、カウント3ー1からの5球目だった。甘く入った速球を迷いなく振り抜くと、打球は右翼席に飛び込む逆転の3点本塁打に。慶大に勢いをもたらす熱い漢(おとこ)の殊勲の一発でスコアを4対3とし、セントポールのエース・小畠をノックアウトした。

逆転の3点本塁打を放ち、吠える代打・今津
今津の値千金の一発で奪ったリードを守りたい7回裏。渡辺和が2死三塁と一打同点の場面を招いたところで、目覚ましい成長を見せる右腕・水野を投入。水野は落合を四球で歩かせるも、村本を遊ゴロに打ち取る好救援でピンチを脱する。
追加点を奪いたい8回表、この回から登板した2回戦の勝利投手・竹中勇登(コミュ4・大阪桐蔭)に対し、先頭・丸田がフルカウントから一二塁間を破る安打で塁に出たが、林純が6ー4ー3の併殺。続く渡辺憩も倒れ、3人で攻撃を終える。
このまま逃げ切りを図りたいところだったが、簡単に終わらないのが強力縦縞打線。回を跨いだ水野は8回裏、先頭打者への四球と野選で走者を貯めると、犠打を決められ1死二、三塁。一打逆転の場面で迎えるのは、好調・山形。しかし投手転向から1年3ヶ月ながら、春季リーグ戦、フレッシュトーナメント、そして今季のリーグ戦等で数々の難しいマウンドをくぐり抜けて来た右腕は、このタフな場面にも動じず。山形にはフルカウントから低めの変化球を打たせ、浅い中飛に仕留めて三走を釘付けにすると、続く今季4本塁打(リーグ単独トップ)の小林隼には粘られたが、最後は直球で押し切り左飛。無失点の好投で1点リードを守り抜いた。

8回のピンチを無失点に抑えた水野
9回表は、今津に代わって守備から途中出場していた服部翔(政2・星稜)の外野の頭を越えようかという当たりを、中堅・桑垣秀野(コミュ4・中京大中京)が背走しながら捕球する好プレーに阻まれ、無得点に終わった慶大。4対3のスコア変わらず、9回裏に入る。
1点のリードを死守するべく、慶大は9回のマウンドも水野に託す。立大の先頭は3番・鈴木唯。カウント1ー1から内野ゴロに打ち取るが、一塁送球がショートバウンドに。それでもこの回から一塁の守備固めに入っていた今泉将(商4・慶應)が見事にすくい上げ、アウトを奪う。続く丸山も抑え、2死無走者で迎える打者は強打者・落合。ここまで2発5打点と結果を残す落合に四球を許し、同点の走者を出す。続く村本にも中前打を打たれ、二死一、二塁と逆転サヨナラのピンチに立たされた。しかし強心臓の次世代エースは表情を変えずに淡々と投げ続けると、最後は河野優輝(コミュ2・広島新庄)を直球で空振り三振に仕留め、ゲームセット。1点のリードをなんとか守り切り、待望の勝ち点”2”を獲得した。

水野らの好投で立大から勝ち点を獲得した
V逸が確定した状況で迎えた立大とのカード。1回戦は2-2で迎えた延長11回に、打線が大量5得点を挙げ、先勝。2回戦は敗れた中でも、鈴木佳門(経1・慶應)・熊ノ郷翔斗(環1・桐蔭学園)が神宮デビューを果たすなど大きな収穫もあった。そして3回戦は野手陣が小畠に苦戦する中で2点を追う厳しい展開となったが、今津に値千金の一発が飛び出し、この1年で大きな飛躍を遂げた精鋭たちを退けた。

2回戦でリーグ戦初登板を果たした鈴木佳

同じく2回戦でリーグ戦初登板を果たした熊ノ郷
慶大は法大、明大と開幕からの2カードは勝ち点を献上したが、東大、立大から連続で勝ち点を取り、まさに上り調子だ。1回戦で副将の今泉に今季初安打となる勝ち越し打が飛び出し、同試合で主将の外丸が平成以降で30人目となる通算20勝を達成。3回戦では常松が今季1号を放つなど、ラストシーズンを戦う4年生たちも状態を上げている。
残るカードは、最終週の早慶戦のみ。攻守にわたり真価を発揮し始めた”チーム外丸”の最終章となる戦いで、ワセダを『DOMINATE』し、神宮に熱狂を巻き起こしたい。
(記事:柄澤晃希、写真:奈須龍成、神戸佑貴)