今年で第90回を数える東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)、その予選会が今年も立川で行われた。慶大は出走した12人のうち、半数が4年生という経験豊富なメンバーで臨んだ。結果は10時間59分19秒と昨年のタイムを切ったものの、全体の28位。残念ながら箱根路への切符を掴み取ることは出来なかった。
第90回東京箱根間大学駅伝競走予選会
10月19日(土) 9時30分スタート 陸上自衛隊立川駐屯地〜立川市街地〜国営昭和記念公園
「箱根の山は天下の嶮 函谷関もものならず」。その天下の嶮に大学生が挑戦する正月の風物詩である東京箱根間往復大学駅伝競走(箱根駅伝)も今回で90回目となった。今回は90回を記念して例年に比べて出場枠が3枠増加し、23校が東京・大手町から遥か遠くの箱根・芦ノ湖を目指す。またルール変更により学連選抜が廃止されたため、実質は4枠の増加となった。箱根駅伝本戦での上位10校はシード権を獲得しているため、残りの出場枠はわずか13枠。その13枠を獲得しようと44の大学が東京・立川市に集結した。
予選会当日の朝、立川の空は厚い雲に覆われていた。気温も低くランナーにとっては決していいコンディションとは言えなかっただろう。
夏の苦しい練習を乗り切り慶大競走部からは内山雄貴(商4)、岡田健吾(理4)、坂庭大輝(総4)、玉井秀明(政4)、松岡宏史朗(総4)、門出康孝(理4)、栗田貴明(商3)、河田健太郎(法2)、中崎正大(商2)、横松丈周(文2)、板橋正寛(理1)、榎本悠希(文1)の12人が出場した。予選会では各校上位10名の合計タイムにより出場校を決定するため、出場するメンバーは誰一人として遅れを取ることは出来ない。 20㎞という長いレースの中で山場は早めに訪れたようだ。「5㎞地点くらいでだいたいどの集団につくかというのが決まってくる。自分の場合はうまく集団を見つけることができて流れに乗ることができてよかった」とレース後に内山はこう語ってくれた。5㎞地点というとレースが始まってまだ間もない。しかし自分がどういった走りをしたいかを考え、自分に合った集団を見つけなければならない。内山とは対照的に岡田は「5kmあたりまではライバル校のペース走につけていたが、そこから踏ん張りすぎてしまい腹筋をつるような感じになってしまった」と語った。意外にも5㎞地点はレースの明暗を分ける地点であったようだ。
15㎞地点では10㎞地点まで慶大トップを走っていた門出に代わり、内山がトップに立った。内山はその後も粘りの走りを見せつけ慶大トップの1時間02分58秒でフィニッシュ。しかし慶大10人の合計タイムは10時間59分19秒で全体の28位。残念ながら箱根路への切符を掴み取ることは出来なかった。
4年生にとっては最後の箱根駅伝本戦出場への挑戦。様々な思いを胸にこの予選会に臨んだ。また岡田は「今年の夏からコーチをされている大塚さんのもとでしっかり考えながら、慶應らしいところを残しつつ、ちょっとずつ順位を上げて最終的には箱根を走ってもらいたい」と後輩に向けての言葉をくれた。箱根駅伝本戦でタスキをつなぐことは出来ないが、4年生から後輩へのタスキを着実につなげているのが慶大だ。何も物を身に着けず自分の体一つで長い距離と闘い、チームのためにタスキをつなげるのが駅伝。その最高峰がやはり箱根駅伝だ。いつか白地に「K」のユニフォームを着て箱根路を快走する慶大ランナーの姿を見てみたい。慶大の箱根駅伝本戦出場への戦いはすでに始まっている。
(記事・河合佳祐)
コメント
門出康孝(理4・長距離パートリーダー)
(自分の走りを振り返って)個人としては納得のいく走りではなかったのですけれども、チームとしては本当に層が厚くて、去年と比べて12分程度の短縮になったので、チームとしての層が上がってきていると思います。(何㎞地点が一番苦しかったか)13㎞くらいですね。(苦しい時はどんなことを考えていたか)本当に周りの応援がすごかったので、それを糧に頑張ることだけを考えていました。(競走部で得た経験をこれからどのように生かしていきたいか)これまで何事もなく頑張ってこれたので、それをこの後大学院に進むので、またそちらの方でもやることは全然違うんですけれども、その意識だとかそういったところで生かしていければと思っています。
内山雄貴(商4)
(レース全体を振り返って)自分の設定通りのペースでいけたのかなと思います。というのも、もともと去年の門出君のタイムである62分30秒を目標としていたので、それと同じくらいのラップで刻むことができたので、なかなかよかったのではないかと思っています。(今日の自分のコンディションについて)1年半前にコンパートメント症候群というケガをしました。そのケガが1週間ほど前に再発してしまったんですが、お医者さんに時間外診療していただいたり、トレーナーさんにケアをしていただいて、何とか出場することができたので感謝の気持ちでいっぱいです。(レース全体の中での山場はどのポイントだったか)やっぱり5㎞地点くらいだと思っています。5㎞地点くらいでだいたいどの集団につくかというのが決まってくると思いますので、自分の場合はうまく集団を見つけることができて流れに乗ることができてよかったのではないかと思っています。(チーム全体としてはどうだったか)今年は4年生が全員エントリーしていて、2人走れなかったんですけど、やっぱり4年生になってちゃんとエントリーできるというのは実力が上がっているという証拠なので、やはりそういう面ではよかったと思います。また1、2、3年生が納得のいかない結果だと思いますので、それは来年改良してほしいなと思います。(箱根予選会を4年間走ってどうだったか)去年自分の場合は走れなかったので、すごく悔しくて泣いて、自分何やってるんだろうってことになってしまったんですが、やっぱりあきらめなくてよかったという思いがとても強いです。
岡田健吾(理4)
(レースを振り返って)予定より結構遅くなってしまいました。5kmあたりまではライバル校のペース走につけていたんですが、そこから踏ん張りすぎてしまい腹筋をつるような感じになってしまいました。それが7kmくらいで出てしまいましたが、去年一昨年も悔しい思いをしたので、最後の年だしこのままでは終われないと。上半身が痛くても足で走るんだからと割り切って走りました。公園に入ってからは例年より踏ん張れたと思います。(ラストイヤーということで気持ちが入った)ここまで頑張ってきた自分のためにも、ある程度の結果は残したいという思いがありました。そこは意地で走りました。(競走部での4年間は)だいたい辛いことばかりですが、時として記録が出たり、仲間の記録が出たりしたときに喜べたのはよかったです。本当に苦しいことばかりでしたが。今日は最後に4年生みんなでエントリーして行くぞという感じでしたが、二人走れなかったので、その分しっかり走りたいと思いました。(後輩に期待したいことは)今日走った後輩も強いですが、エントリーされなかったメンバーも強いので。正直こんな弱いままじゃみんな嫌だと思うので、今年の夏からコーチをされている大塚さんのもとでしっかり考えながら、慶應らしいところを残しつつ、ちょっとずつ順位を上げて最終的には箱根を走ってもらいたいですね。
粟田貴明(商3)
(今日の走りを振り返って)自分の走りとしては、昨年よりも1分以上遅いタイムになってしまって、非常に情けない結果となってしまいました。(体調・コンディションはどうだったか)直前まで体調が非常に悪くて、やらなければいけない練習ができていなくて、後半、公園内に入ってから両足がつってしまって、そこからは非常に苦しい走りになってしまいました。公園に入ってから右足がつって、16㎞ぐらいで左足もつって、そこでもう両足動かなくなってしまって、そこがいちばん辛かったですね。(その状況でラストどう踏ん張ったか)最後はもう19㎞の、あと1㎞の地点で、誰か覚えてないんですけど「切り替えろ」っていう声が聞こえて、それだけ頭の中でこだましてたので、他はもう頭が真っ白で走ってました。(今後、来年に向けて)後輩が非常に距離を走れる人が多いので、すごい来年以降楽しみなんですけど、ちょっとスピード不足な部分があるので、距離もスピードも出せるように。それから今回は上級生がうまく走れなかったので、上級生が引っ張って行けて下級生が押し上げるっていうチーム、層の厚いチームを目標にしていきたいと思っています。
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