まさに意地と意地のぶつかり合い。大歓声がこだまする中、第14回早慶女子サッカー定期戦が行われた。慶大は前半19分、堀井美月(環3・常盤木学園高)のシュートで欲しかった先制点を挙げる。そのまま前半をリードして終えるも、後半に痛恨の失点。定期戦としての初勝利が懸かっていたが、今回もお預けとなってしまった。
2015/7/1(水)16:30KO@等々力陸上競技場
慶應義塾大学1-1早稲田大学
【得点者】
〔慶〕19分 堀井美月
〔早〕56分 正野可菜子
◇慶大出場選手
GK野村智美(総2・作陽高) |
DF松本朋子(総4・十文字高) |
DF田中康子(総3・常盤木学園高) |
DF宮田あずさ(環3・文京学院大学女子高) |
MF遠藤未来(環4・村田女子高) |
MF下山田志帆(環3・十文字高) |
MF栃木栞(環3・十文字高) |
MF中島菜々子(総1・十文字高)→78分平田諒子(文4・福岡女学院高) |
MF赤羽紗里(総4・スフィーダ世田谷)→59分傍田捷子(総4・スパルターク) |
MF堀井美月(環3・常盤木学園高) |
FW二宮早紀(環4・常盤木学園高) |
「終始応援の声が聞こえた」(松本) 「グラウンドから見た景色が去年と違った」(赤羽)。年に一度だけの定期戦は、まさに最高の雰囲気で開幕。優秀な選手を数多くそろえる早大に対し、「試合に出ていない部員や、ソッカー部に関わってくれた方々」(松本)を含めた全員で初勝利を目指した。
序盤からボールを持たれたものの、「想定内」(松本)の展開。3分にはFKから、8分にはペナルティエリア外からそれぞれシュートを打たれたが、ゴールを割らせなかった。一方の攻撃面では、前線にボールを運ぼうとしても二宮早紀(環4・常盤木学園高)や堀井美月(環3・常盤木学園高)に対して厳しいマーク。なかなかシュートに結び付けられない時間が続いた。
しかし、そんな苦しい状況を19分に打ち破る。左からのCKを獲得すると、キッカーは二宮。その流れから堀井が左足で放ったシュートは、GKの股下を通ってゴールに吸い込まれた。これは事前に「選手たち主導で何回もシミュレーションをしていた」(岩崎監督)形。狙い通りの先制点に、ベンチ裏のスタンドは大いに沸いた。
以降もパスは回されるものの、「本当に守備陣が一生懸命守ってくれた」(堀井)。27分にはディフェンスラインの裏に抜け出され、野村智美(総2・作陽高)もかわされるが、折り返しを田中康子(総3・常盤木学園高)がカット。その他にも松本朋子(総4・十文字高)のカバーリングや、宮田あずさ(環3・文京学院大学女子高)の体を張ったブロックなどでしのいでいく。
すると、40分に反撃。中島菜々子(総1・十文字高)のプレスからボールを奪い、最後は二宮が思い切りよくミドルシュート。これはGKに処理されるも、リードしたままハーフタイムのホイッスルが鳴る。
前半は「自分たちの戦い方がしっかりできていた」(松本)。待望の初勝利に向け、残すは40分。しかし、前半から大きくボールを動かす攻撃の対応に追われたことで、徐々に体力が消耗し始めてしまう。53分にはシュートのこぼれ球を押し込まれるも、オフサイドの判定。その4分後にも相手をフリーにし、危ない場面を立て続けに迎える。すると60分。左サイドからクロスを上げられると、その流れから豪快にゴールに蹴り込まれ、同点に追い付かれてしまった。
嫌な流れを変えるべく、慶大は赤羽紗里(総4・スフィーダ世田谷)に代わり、傍田捷子(総4・スパルターク)を投入。しかしピンチは続いた。72分には相手のヘディングシュートがポストをはじき、80分にも決定機を献上。それでも野村の好守を中心に、チーム一丸となって追加点を許さない。そしてスコアは1-1のまま試合終了。
格上と見られる相手に引き分け。互角以上の戦いを見せたと思われた。岩崎監督も「素晴らしかった」とたたえた。だが、選手たちの感想は違った。「勝てた」。たとえ攻められる時間が長くても、途中までリードをしていたことに変わりはない。だからこそ、試合後のインタビューでは言葉の端々に悔しさをにじませた。
ただ、それを払しょくするチャンスはまだ残されている。秋に開幕する第29回関東大学女子サッカーリーグ戦。初めて一部で戦う慶大が、いきなり対じするのも今日の相手、早大だ。「自分たちの代で倒したい」(松本)。見つかった課題を修正し、場所を変えて再び決戦に挑む。
(記事 木下彰)
試合後コメント
岩崎陸監督
(今の率直な気持ちを)まずはパッと見たらスタンドにものすごい多くのお客さんに来ていただいていて、本当にそれが選手の励みになったと思います。この定期戦を盛り上げてくれてありがとうございますと伝えたいですし、感謝の気持ちでいっぱいです。(試合内容を振り返って)前半の立ち上がりから我慢しながら、ファーストチャンスを決め切ったことは非常に素晴らしかったと思います。その後も、相手に決定的なチャンスを作らせずにしっかり守っていたと思います。後半、一つ前に出て行くためには、自分たちがもっと能動的に守備をしていかないといけないと感じました。良い形で奪った場面はあったんですけど、そこでカウンターからシュートまで持ち込めずにボールを失って、逆に厳しい状況に追い込まれて、といったところは大きな課題です。失点シーンもそういった流れから喫してしまったので。(セットプレーから得点が生まれましたが)狙っていましたね。選手たち主導で何回もシミュレーションをしていたので、あのゴールは素晴らしかったと思います。(選手たちに伝えたいことは)いやもう、皆きつかったと思うんですけど、最後体を張って、しのぎ切ったことは素晴らしかったと伝えたいです。ただこれで終わりではなくて、関東大学リーグで早大と初戦を戦うことが決まっているので、そこに向けてどれだけ今日の引き分けをつなげていけるかが大事だと思います。
松本朋子主将(総4・十文字高)
(試合が終わったときの率直な気持ちを)試合に出ていない部員も含め、ソッカー部に関わってくれた方々も「今年こそ」という思いはすごい強かった分、勝ちという結果を残せなかったのですごい悔しいです。(守備の時間が長くなりましたが、チーム内で話していたことは)守備の時間が長くなることはもちろん想定内だったんですけど、なかなかどこで収めるかとか、どこから一歩攻めるかとか、細かい部分までは追究し切れていなかったと思うので、今後も一部の舞台では守備の時間が長くなると思うので、その中で点を取るために課題としてやっていきたいと思います。(大観衆の中でのプレーとなりましたが)終始応援の声が聞こえて、後半は皆体力的にもきつかったんですけど、そういう時に応援席を見てとても励みになりました。(内容面を振り返って)先取点を取って前半を終えたところまでは自分たちの戦い方がしっかりできていたんですけど、後半まで一貫し切れなかったですし。引き分けということで負けてはいないですけど、内容的には負けているような試合でした。(今後への意気込みを聞かせてください)今年は一部に上がれたということで、ありがたくまた早大と試合ができますし、そこで必ず借りを返して、自分たちの代で早大を倒したいと思います。
赤羽紗里(総4・スフィーダ世田谷)
(1対1の引き分けに終わり、今の気持ちは)とにかく勝ちしか見ていなかったので、前半にいい形で点を取れて、「このまま守り切って勝つ」ことだけを考えてやっていたので、単純に悔しいです。(4年生で最後の早慶戦となったが)1年目、2年目、3年目と早慶戦を重ねるごとに、早慶戦というのはいろんな人が関わってくれていて、その人たちのために勝たなければいけないという思いで今年4年目やってきて、4年生とはいつもそういう話をしていて、だからこそ勝ちたかったのですけど、勝てなくて悔しいです。(会場の雰囲気はどうだったか)今年はメインスタンドができて、ベンチの裏に慶應の応援団がいたということで、グラウンドから見た景色が去年と違って、本当にいろんな人が応援してくれているのをすごく感じて、本当にすばらしい場所でやれているなと思いました。(ご自身のプレーについて)全然納得はいってないです。チームに貢献できるいいプレーができなかったと思っているんですけど、前のポジションでやっていて、後ろの選手たちがとにかく頑張ってくれていたのでもっとチャンスを作ってボールに絡んでゴールに向かいたかったのですけど、それができなかったので悔しいです。(レベルの高い相手なので収穫もあったと思うが)そうですね。それなりに準備をしてやっていたので、そこがうまくはまった部分と、相手の個の力が強くて、上手く自分たちのやりたいようにやれない部分があって、セットプレーで点を取れたことは1つ大きな収穫なんですけど、またその率を上げていって、次の早慶戦に、次の早稲田との試合に向かっていきたいと思います。(大学リーグに向けて)まだ大学リーグまで1か月以上あるので、今の早稲田との試合で出た課題というのをとにかくみんなで埋めていって、インカレ出場のためにやるべきことをやるだけなので、そこに向かってみんなでやっていきたいと思います。
遠藤未来(環4・村田女子高)
(今日の試合を振り返ってください)自分たちも今までで一番早稲田に勝てると思ってて、チームのみんなもそう思っていました。早稲田に回させるような試合展開にして、しっかりついていこうという話をしていました。セットプレーでいい形で点を取れたんですけど、最後決められてしまって悔しかったです。去年は引き分けでも満足していたけど、今日は本当に勝てた試合だったので。(一失点で済んだという印象なのか、一失点してしまったという印象なのか)やはり、決められてしまったという感じです。(早慶戦の雰囲気は)去年けがで出られなくて、初めてこういうたくさんのお客さんの前でやれて良かったです。
堀井美月(環3・常盤木学園高)
(試合を終えて、今の率直な気持ちをお願いします)本当に自分が決めたかった点を決めることができたのはすごく嬉しかったんですけど、本当に守備陣が一生懸命守ってくれた中で、相手に得点を与えてしまったことが大きな反省で、それに加えて形から早稲田に攻撃できなかったことが本当に大きな課題で、1か月後にまた早稲田との試合が控えているのでそれに向けてどうやって攻撃していけばいいかとかたくさん課題の残る試合だったと思います。(自身のゴールシーンを振り返って)早慶戦での初めての得点だったので、率直にうれしかったです。(関東大学女子サッカーリーグに向けて、1部のチームのレベルはどうだったか)1部は私自身初めての舞台で、早稲田くらいレベルの高い相手と戦っていくうえで、守備もそうですけど、自分は攻撃陣の中心としてどうやって相手の堅い守備組織を崩していくかが課題だと思います。
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