【野球】春季リーグ戦開幕前特集 ⑥ データ班 ~鶴田圭佑~

鶴田さん.1開幕直前特集第6弾はデータ班。過去のいろいろなデータを分析し、弱点を克服する練習メニューの提案をしたり、選手の力をより引き出す手助けをしたりしている。総勢およそ200人に及ぶ慶大野球部。9人のスターティングメンバー、25人のベンチ入りメンバーだけが慶大野球部員であるわけではない。ベンチ外から神宮を目指す選手はもちろん、陰で選手を支える部員も含めて慶大野球部であり、その部員の助けがあってこそ出来るのが全員野球だ。今回は裏で選手をサポートする部員としてデータ班に取材へ伺ったところ、鶴田圭佑(文4)が快く応じてくださった。

 

 

――データ班では、どのような活動を行っていますか

データ班というのは、基本的には学生スタッフである僕が中心になって、データに興味がある有志の選手の15人ぐらいで一緒にやっています。過去のリーグ戦を分析して、どの水準になればリーグ戦レベルになるかとか、優勝チームとの差とか、そういうのを数字で出すことによって目標値を設定したり、あとは実際にオープン戦とか紅白戦とかの結果も数字で見て、足りてないところとかを出しています。

 

――学年は

基本的には上級生です。

 

――鶴田さんは何年生の時からデータ班の仕事をしていましたか

僕は3年生のときからしていました。その時はまだ選手だったんですけど、昨年の秋、4年生として自分達の代になって学生スタッフになって、自分中心にやるようになりました。

 

――データ班が発足したのはいつですか

昨年の春です。監督が変わったタイミングで発足しました。

 

――監督の意向ですか

そうですね。

 

――データ班になろうと思ったキッカケは

一番大きかったのは、一個上の先輩がやっていたことです。本格的に自分達の代でやっていこうと思ったのは、今年のチームで足りていないのはどこかと考えた時です。僕がチームに一番貢献できる形がデータ班かなと思いました。

 

――実際にやってみていかがでしたか

まだ全然データの勉強からも秋から一から始めたばかりで、まだ試しの段階です。本当にデータが生かせるのは夏以降かなと考えています。今はいろいろ試している段階です。

 

――何を参考にしていますか

本とかを読んで勉強しています。あとは、野球に関わらずスポーツのデータのイベントに参加して、実際にどういうことが行われているのかを聞いたりしました。

 

――どのような作業をしていますか

基本的には試合を見ること。そしてDVDでもう一回見ること。あとは、スコアを見て、集計してデータを数字で出したりしています。データにもいろいろ種類があって、まずストライク率とかの割合は地道に計算で出して、例えばタイムとかもデータの一つで、六大学のDVDを見ながら、足が速い選手のタイムを計って六大学で一番速いのはこの選手、このタイムだから内野手はこのタイムまでに送球するようにしましょうっていうのもデータ班としての活動の一つです。もう一度試合をDVDで見て、印象をチェックしてここはこうだよねっていうところもデータになっています。スコア見てエクセルで集計して、っていうのもあります。

 

――作業は夜遅くまで続いたりしますか

基本的には、学生スタッフなので練習を運営するのが一番の仕事です。なので、まずは練習です。そのあと、自分の時間でデータをやっています。

 

――分析の対象は

二種類あって、相手の分析と自分達の分析です。後者の方でいうと、練習のうちからリーグ戦レベルを提示して、その水準を目標にしています。そうやって六大学野球のリーグ戦のレベルを浸透させることが自分達を高めることになるかなと考えていて、今年は特に4年生だと去年、力のある選手が抜けてしまって、経験が少ないチームというのが特長としてあるので、その経験を埋めるという意味でもリーグ戦レベルを練習のうちから意識させるために数字を使っています。今の自分達のレベルを数字として出して、そしてリーグ戦レベルの数字を提示し、それを目標として、自分達のスキルを高めていく。そこに力を入れています。

 

――以前と比べて野球の見方は変わりましたか

それは全く変わりましたね。以前は選手を印象で見ていたのが、データで実際に数字として出すと、「実はこの選手こんな特徴があるんだ」ということが発見出来たりしますし、大きく変わったと思います。

 

一から熱心に話してくださいました

一から熱心に話してくださいました

――データ班としてやりがいを感じる瞬間は

僕自身は2軍、3軍の選手だったので、1軍の選手と関わる機会はあまり多くなかったんですけど、データ班の仕事をやるようになって、1軍の選手と密にコミュニケーションを取るようになりました。1軍の選手が野球をやる上で、力になる情報を与えることがデータ班の仕事なので、主将の重田(清一=環4)、副将の木村健人(政4)、沓掛(祥和=政4)と特に連携を取っています。監督さんともお話をする機会が増えました。表立った仕事ではないかもしれないですが、チームを動かしている実感があります。以前、自分が選手だった時よりも、チームに貢献出来ている形を見つけられたので、そういった部分でやりがいを感じています。

 

――実際に試合を見ていて、データの必要性を実感した瞬間は

昨年のオープン戦を見ていて、試合が終わったあと、課題をそのまま流してしまっているところが多いなと思ったことがありました。「ここで打てば、実は勝っていたんじゃないか」という部分も、流されてしまっていて。それが、チームの為になっていないんじゃないか、と思うようになりました。そういった部分をスタッフになって、改善していければと思ってやっています。まだ試行錯誤の段階で、これからもっと色々なことをやっていきたいと思います。

 

――集めたデータが練習メニューに影響を与えたことは

ありましたね。昨年、うちはバントの成功数が他大学と比べて少なかったのですが、これは単純にバントの試行数が少なかったのではなく、失敗数が多かったということがデータによって判明して、それをチームに伝えたところ、今年からバントの練習が増えました。また、与四死球の数も他大学と比べると多かったので、投手陣はコントロールを良くする練習に今取り組んでいます。

 

――集めたデータはどのように選手に伝えますか

それは様々な方法があって、個人で必要な場合は紙に書いて渡したりします。前にやっていた工夫としては、2軍戦で投手のストライク率を出す時があったのですが、ただ表にするだけでは分かりづらいということで、グラフにして、さらに目標線を赤線で付け加えることで、目標にどれだけ足りていないのか、分かりやすく示すようにしました。逆に、数字のインパクトによって伝えたい時は、表を大きく載せたりします。このように紙にして渡すことも多いですが、共有したい時はLINEで伝えることもあります。

 

――選手からデータの要望が出たことはありましたか

それはありますね。新チームが始まった時から、選手の方には「欲しいデータがあったら言って下さい」ということは伝えてあるので。リーグ戦も近くなってきたので、要望は大分増えてきました。具体的には、沓掛が「カウントごとの打率を教えて欲しい」と言ってきたので、オープン戦の結果をすべて集計して本人に渡しました。

 

――選手から感謝の気持ちを伝えてもらうことはありますか

そうですね、みんな結構優しいので(笑)。今年の選手、キャプテン重田にしろ沓掛にしろ木村健人にしろ、みんな優しくて毎回毎回「ありがとう」と言ってくれます。それはやっぱり嬉しいですね(笑)。初めて、「チームの為に何かしている」ということをそこで実感出来ますね。

 

――4年生ブログリレー(慶大野球部ホームページにて昨年連載)にはデータ班への感謝の気持ちを示す言葉が多くありました

昨年は、僕は中心となってやっていなかったのですが、それを見ても嬉しかったですね。実際に役に立っていたんだなということを感じることが出来ましたし、決して感謝される為にやっている訳ではないですが、貢献しようと思ってやっている活動の結果が選手の力になったと思ってくれることが一番嬉しいですね。

 

――鶴田さんから見た、今年のチームの印象は

中心は何と言っても加藤(拓也=政4)ですね。ただ、個人的な考えなのですが、2戦目がキーになると思っています。分かりやすい例を挙げると、昨秋の早稲田は、明治戦以外2戦目を全部勝っているんですよ。2戦目の勝率が圧倒的に高いです。僕は、今年のチーム、2戦目を取れるか取れないかが焦点になってくると思います。やはり2戦目となると、「この投手で完投」という訳にもいかなくなると思うので、色々なピッチャーで、色々なバッターで、2戦目を全員で勝ち取る、という形が出来れば、良い結果が出ると考えています。

 

――個人的に注目する慶大の選手は

スコアを見たり、Aチームの試合をビデオで見て振り返る中で挙げると、倉田(直幸=法3)ですね。昨年はそんなに試合に出ていた訳ではないですが、今年はおそらく中心選手になると思います。チームに新しい風を吹かす存在なので、僕は個人的に注目しています。

 

――警戒する他大学の選手は

今年の関しては、「どこが勝ってもおかしくない」という言い方をされるのですが、正にその通りで、どのチームも力があって、特にこのチームが劣っている、ということもないです。警戒するべき選手というのは、昨年から出ている中心選手だと思うので、明治の柳(裕也)、立教の澤田(圭祐)、法政の柴田(圭輝)だとかチームを引っ張っている選手を勢い付かせてしまうと、そのチーム自体が乗ってきてしまうと思うので、そこはチェックしないといけないですね。

 

――もし仮に他大学にも「データ班」が存在するとして、ここは負けたくない、という点は

データは、そもそもデータが主体となるのではなく、あくまでも補助なので。データで競うことよりも、いかに選手の力を引き出すことが重要だと思います。結局、僕は「勝てれば何でもいい」です。一見、優れたように見えるデータでも選手から見たらそうではなかったりしますし、とにかく選手に必要なデータを与えて、その結果選手の力に少しでもなって、勝つことが出来れば僕は満足です。

 

――ずばり、今シーズン慶大は優勝出来るでしょうか

もちろんです!

 

――今シーズンの目標をチーム、個人としてお願いします

チームが優勝する為に、どうやって貢献出来るかと考えた時に、僕はデータを見つけたのですが、全員が優勝したいという思いは一緒だと思いますし、200人弱いる部員全員がそれぞれの形で、チームの勝利に貢献出来る、と確信出来た時にチームは一つになれると思うので、その思いを一つにしたいということがチームとしての目標です。僕個人としては、データによって、選手が少しでもプレーしやすくなるように。その結果、優勝するということが目標です。

 

取材:小沢 光市、若林 晃平 写真:木下 恵

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