開幕前特集最後は大久保秀昭監督。就任2年目の今年こそ優勝、そしてその先にある日本一を手にすべく、連日厳しくも心のこもった指導をしている。開幕を控えた忙しい時期にもかかわらず、選手の練習を見ながら今年の慶大野球部について深く話してくださった。
――監督就任一年目の昨シーズンを振り返っていただけますか
あっという間に終わってしまったと思います。全体としてはやはりずっと時間が足りないと思っていました。結果に対しては、優勝を残して早慶戦まで行ったという点では最低限のものは出せたのですが、そこで早大に四連敗して、目の前で春秋ともに優勝されてしまったというのは非常に悔しかったですね。
――大学野球を経験されて社会人チームとの違いは
責任感の違いはあると思います。学生野球の初々しさというか、成長していく過程の学生に関われる点にやりがいを感じています。
――監督就任一年目から二年目ですが、変えていきたいことはありますか
変えていきたいというか、昨年は僕も一年目というところで学生に少し寄り添いすぎたかなと思います。四年生がやりやすいような形で最低限のことしか言わずに、気持ちよく野球をやらせてあげようというところに苦心していました。代替わりした時に「ある程度僕の色を出していくよ」という話はしていて、去年よりはいろんな部分で学生はもしかしたら窮屈感を感じているかもしれないですね。
――林助監督が就任されました
200人を一人でまとめるのは危機管理を含めていろいろと無理がありますよね。全員に関わりたい、全員を見てあげたいという思いはありながらも、まずは勝つことが大前提です。そこに平等感を持って、レギュラーもそうでないのもみんな仲良くすべて一緒かというと、そうとも言い切れなくて。当然競争の原理というのは生まれますから、難しさを感じながらやっていました。林助監督は投手出身ということもあるし、大人の目が二つあるというのはいろんな意味で助かっています。彼は練習して練習して自分でポジションを勝ち取った努力の人で昔の慶応らしさをちゃんと持った人材ですね。
――昨年と主要メンバーが抜けましたが、今年のチームの色は
チーム力です。それしかないです。すべて繋いで繋いで。スター候補は加藤拓也(政4)がいますけど、ピッチャーはそういう選手がいて存在として助かります。野手では記録がかかっている選手も特にいないですし、ただリーグ戦を経験している上級生もいますから、そういう選手が現状を受け入れて取り組んでいるので僕はいい雰囲気でできていると思います。
――主将には重田清一(環4)選手を抜擢しました。その理由とは
彼の猪突猛進なところですね。彼も受験組で、一つ年を食っています。そしてスーパーレギュラーというわけではないですから、その辺の気持ちもなんとなくわかると思うので、全体に気配りをしながらチームを引っ張っていってほしいなという思いを持っています。
――“Everything is practice”に込めた思いとは
練習は不可能を可能するというのに通じていて、すべては練習の中の中にある、ということとですね。サッカーのペレの言葉です。練習以外から得るものなんて何もない、練習しかないという意味ですね。一に練習、二に練習、三、四がなくて五に練習です(笑)。僕が思うには慶大野球部がスマートにつけて格好つけて野球をやっていても意味がない。慶大野球部こそ、一球にこだわってあきらめないで必死にやる姿を見せないと。天才系の法政、明治などのプロ予備軍のようなところと対峙していくにはそういうスタイルで、なおかつ効率よく頭も使いながらやっていかないと勝てないと思います。
―今年 練習で重きを置かれているところは
自分たちが下手だと思って練習しなさいと言っています。隙のない野球、隙を見せないという取り組みというのは練習からいろんな緊張感でやっていかないと。ただ がちがちになっても仕方ないし、今回のアメリカ遠征にいきましたが、アメリカで得たベースボールの楽しさ、自分が好きな野球をプレーできて楽しいだけではなくて、うまくなるためにアウトをとるためにヒットを打つためにどうしたらよいかを考えて実践していくことでそれが結果に出るかという所の楽しさを本当に分かっているかだと思います。
――アメリカ遠征を通しての選手の変化は
選手に聞いてくれるといいと思います。僕だったら学生時代にこんな経験させてもらったらたまらないなと思います。小さい世界じゃなくてスケール感の違いを感じて、気持ちがいい意味で大きくなって、考え方の柔軟性を身につけてくれることを期待していました。マネージャやスタッフがブログに僕が求めていたこと、感じてほしいことをきちんと書いてくれていたので良かったと思います。
――OP戦を振り返っていただいて
去年と明らかに違うのは、四死球の数が激減しているところです。これは去年の反省も踏まえて投手にはしっかり投げこむ、低めに投げこむ意識をつけて、まずはストライクをとることが大前提だと。アメリカ遠征を通して四死球が激減していい形は出せていると思います。社会人対抗戦は去年なかなか簡単には勝てませんでしたが、今年はちゃんと接戦を勝ち切っていい試合ができているのでそういうのは自信にしてほしいと思います。
――社会人対抗戦では神宮登板が少ない選手や一年生が多く出場しました
勝利と育成が監督の大きなミッションの一つだと思っています。競争したときにどっちかなというときには、やはり新しい方を使いたいですね。そこで淘汰されていくのはいたしかたないと思います。今年はいい選手が入ってきたので期待しています。
――今年のチームの戦い方は
理想は打ち勝つというものを常に持っていますけど、それはいかにピッチャーが失点を少なくするかありきなので、1-0勝てるチーム、10-9でも勝ち切るチーム、最後には勝つチームですね。今年の社会人対抗戦でも6-5でしたが、あんな試合になっても勝ち切ること。いままでだと最後ひっくり返されているような気がします。今年はなんとなく我慢強さというか、そういう雰囲気で練習から取り組めています。社会人としては当然のことですが、最後のダッシュやウォーミングアップから手を抜かないとか、練習10分前には集まって準備をしているとか、そういうチームの方が僕は好きですね。戦い方につながるかはわからないですが、そういう所からきちんとやっていきましょうという感じにスタッフを中心になっていると思います。僕が求めていること、僕がこういうチームにしたいのでは、というのをAチームはなんとなく感じてくれているのではと思います。
もちろん優勝を目指してやっていきます。そのためには応援と一体になるというのは不可欠なので、特に学生には神宮球場に足を運んで、生観戦してほしいと思います。
―お忙しい中ありがとうございました。
取材:反保 真優、写真:木下 恵
今回のインタビューをもちまして、春季リーグ戦開幕直前特集は終了となります。大久保監督の「特に学生には神宮球場に足を運んで、生観戦してほしい」というお言葉に、今一度、慶應スポーツ新聞会として慶大生に体育会の活躍を伝える使命を強く感じました。リーグ戦期間中はTwitter速報やWeb戦評を通じてみな様に慶大野球部の姿をより早く、多く、正確に伝えていけるよう、全試合全力で取材して参ります。野球部の皆さま、この度はお忙しい中取材を快く受けてくださり、本当にありがとうございました。