4月9日(土)東京六大学野球春季リーグ 法大1回戦
「また、神宮に春が来た」。東京六大学野球春季リーグが開幕。約2ヶ月にわたり繰り広げられる熱戦が始まった。4季ぶり優勝を狙う慶大の初戦は法大。先発加藤拓也(政4)が8回1失点の力投を見せると、打線も4回に一挙6点を奪い試合を決めた。6回には柳町達(商1)が7回には沓掛祥和(商4)が本塁打を放ち、16安打11得点の大勝で開幕戦白星を飾った。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
法大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 |
慶大 | 1 | 0 | 0 | 6 | 0 | 2 | 2 | 0 | × | 11 |
法大:●熊谷、森脇、谷川、新井諒、上條―中村浩、森川
慶大:○加藤拓、原田―須藤
◆慶大出場選手
| ポジション | 選手名(学部学年・出身高校) |
1 | [4] | 倉田直幸(法3・浜松西) |
2 | [6] | 照屋塁(環3・沖縄尚学) |
3 | [5] | 沓掛祥和(商4・慶應義塾) |
4 | [9] | 山口翔大(環4・桐光学園) |
5 | [7] | 岩見雅紀(総3・比叡山) |
| 3 | 清水翔太(総3・桐蔭学園) |
6 | [3] | 山本瑛大(商4・South Torrance) |
| 7 | 重田清一(環4・佐賀西) |
7 | [8] | 柳町達(商1・慶應義塾) |
8 | [2] | 須藤隆成(環3・創志学園) |
9 | [1] | 加藤拓也(政4・慶應義塾) |
| H | 明渡稜(政3・桐蔭) |
| R | 小原徳仁(文3・慶應義塾) |
| 1 | 原田匠(商2・慶應義塾) |
春の日差しが降り注ぐ暖かい陽気の中迎えた開幕戦。学生は応援席入場無料であったため、多くの学生がスタンドに詰めかけた。開幕カードは、奇しくも昨春の開幕戦で苦杯をなめさせられた法大が相手。
慶大先発は、自身4度目の開幕投手となる加藤拓也(政4)。立ち上がりから落ち着いた投球を披露。調子自体は「あまり良くなかった」ものの、変化球を積極的に織り交ぜた丁寧な投球で法大打線に的を絞らせない。対する法大先発の熊谷は、慶大戦は過去4試合に登板し防御率5.83と慶大を苦手にしている。その熊谷の立ち上がり、初回簡単に2アウトをとられるも沓掛祥和(商4)、山口翔大(環4)、岩見雅紀(総3)の三連打で先制に成功し、試合の流れを呼び込んだ。
加藤拓は3回、先頭打者に安打を許すも、次の打者の三遊間に飛んだ打球を遊撃手照屋塁(環3)がバックハンドで捕球し二塁送球、そのまま一塁に送られ併殺打完成。4回は無死一、二塁のピンチを招くも、クリーンアップをぴしゃりと抑えリードを守った。
するとその裏、慶大打線に火が付いた。先頭岩見の安打を皮切りに山本瑛大(商4)、柳町達(商1)が塁に出ると、加藤拓がライトの頭を超す適時二塁打を放ち、差を広げた。さらに倉田直幸(法3)、照屋とつなぎ、先発熊谷をノックアウト。その後も3本の安打が飛び出し、この回だけで一挙7安打6得点。試合を決定づけた。
大量援護をもらった加藤拓は、もはや崩れる気配すら見せなかった。過去2度の最優秀防御率に輝いた男はその後も淡々とアウトを積み重ねていく。5回にはレフト岩見が後ろ向きのランニングキャッチを見せ、絶対的エースにバックも応えた。球数が100球を超えてもなお、フォームは崩れず制球が大きく乱れることもなかった。8回に1点を失うも、8回を投げ失点1、被安打4、四死球3、奪三振10と、オープン戦の調子そのままに素晴らしい投球を展開した。
打線は6回、1年生ながら開幕スタメンに抜擢された柳町が本塁打を放つと、7回には慶應義塾高校の先輩沓掛が後輩には負けじと、直球を跳ね返しレフトスタンドへ。終盤の2本の本塁打で法大をさらに突き放した。
9回は原田匠(商2)がマウンドに上がった。140km/h代中盤の力強いストレートで上位打線をしっかり抑え、試合をクローズ。投打がかみ合い11対1の大勝で初戦を飾った。
今シーズンのスローガンは「Everything is practice」。サッカーの王様ペレの言葉の一つで、「すべては練習の中にある」という意味だそうだ。今年はフロリダキャンプを行った慶大野球部。それはただのバカンスではない。チーム・個々の弱点を洗い出し課題を見つけ、そこを意識的に練習に励んだ。そしてチーム全体として「隙を見せないチーム」を目指す共通意識のもと、つないでつないでつないでつなぐ「全員野球」を体現しようとしている。守備・走塁で随所に好プレーが見えた開幕戦。新生慶大が春の嵐を巻き起こす。
【Keispo pick up】 感性で打つホームラン 柳町達
「彼のプレーは頭一つ抜けてる」「僕より全然レベルが高い」大久保監督がそう絶賛する期待のルーキー。1年生ながら開幕戦7番センターで起用されると、初打席で見事なセンター返しを披露し初安打を記録した。第2打席では相手のエラーを誘うセカンド強襲の当たりを放ち、初打点。極めつけは第3打席。ランナー一人を置いて、ライト方向に伸びた大きな当たりは風に乗ってスタンドイン。甘く入った変化球を逃さなかった。外野を守るのは中学以来、高校ではサードを守っていたが自慢の打力でレギュラーをもぎ取った。デビュー戦を最高の形で飾った柳町。「谷田成吾2世」と呼ばれる日もそう遠くはないだろう。
記事:若林 晃平
◆打撃成績
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| 1 | 2 | 3 | 4 |
| 5 | 6 | 7 | 8 |
[4] | 倉田 | 遊飛 | 遊ゴロ |
| 右安① |
| 死球 |
| 空三振 | 空三振 |
[6] | 照屋 | 二飛 |
| 二ゴロ | 中前安① |
| 見三振 |
| 右飛 |
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[5] | 沓掛 | 右安 |
| 遊ゴロ | 中飛 |
| 一邪飛 |
| 左本② |
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[9] | 山口 | 二安 |
| 空三振 | 右安② |
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| 空三振 | 右安 |
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[7] | 岩見 | 中安① |
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| 左安 | 中前安 |
| 空三振 |
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3 | 清水翔 |
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| 右安 |
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[3] | 山本瑛 | 空三振 |
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| 四球 | 左安 |
| 死球 |
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7 | 重田 |
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| 一ゴロ |
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[8] | 柳町 |
| 中安 |
| 二失① | 一ゴロ |
| 右本② |
| 空三振 |
[2] | 須藤 |
| 左邪飛 |
| 一ゴロ |
| 二ゴロ | 中飛 |
| 空三振 |
[1] | 加藤拓 |
| 空三振 |
| 右2①
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| 死球 |
| 四球 |
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H | 明渡 |
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| 三内安 |
R | 小原徳 |
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1 | 原田 |
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◆投手成績
| 投球回数 | 打者数 | 球数 | 安打 | 三振 | 四死球 | 失点 | 自責 |
○加藤拓 | 8 | 28 | 107 | 4 | 10 | 3 | 1 | 1 |
原田 | 1 | 4 | 16 | 0 | 1 | 1 | 0 | 0 |
◆監督・選手コメント
大久保秀昭監督
開幕の初戦という難しいなかで、加藤がしっかりペースを握り、ゲームをつくり、いい働きをしてくれた。打線は2アウトから先制できて、いい形で入れたかなと思う。ルーキーの柳町がスタメン起用に応えてくれた。まだ間もないが、彼のプレーを見てやはり抜けているなと思ったのでずっと起用している。それに、彼は結果を出して応えている。一打席目に初ヒットを打ったっていうのは僕の一年次と比較しても全然レベルが高い。ピッチャーは原田の調子がいいので、今後もオールマイティーに使おうと思う。打線はヒット出ないよりは打った方が選手一人一人の気持ちが楽でしょう。今年はチーム力で戦い、つないでつないで隙を見せないというところを徹底して取り組もうとしている。今日はそれがいい方向に出た。明日は明日なので。明日勝って勝ち点とったら喜びたいと思うが、相手も死に物狂いで来るだろうから、いい試合をしたいなと思う。
重田清一主将(環4)
ピッチャーがしっかり守ってくれて、打線も運よくつながったのでいい開幕戦だった。16安打だったが、うちは本来そんなに打てるチームではない。1点1点という意識の積み重ねが打線のつながりに現れた。去年と同じ開幕法大戦でまず1勝したが、リーグ戦は勝ち点を取らないと意味がないし、勝率も後々関係してくることもあるので、しっかり明日も勝って二連勝したい。(メガホンをもってベンチから大声を出していた)本当はプレーでチームを盛り上げたいが、なかなか調子が上がらないので、やれることをしっかりやろうと。リーグ戦の経験の少ないみんなが一生懸命やっているのはいいこと。法大も今日の試合を踏まえて修正をしてくると思う。ピッチャーの誰かをしっかり投げさせてくると思うが、こっちは早く先発ピッチャーを下す。そして1点1点積み重ね、守備からリズムを作って、連勝したい。
沓掛祥和副将(商4)
勝てて良かった。オープン戦ではみんなあまり打っていなかったので、こんなに打てると思わなかった。単打で繋ぐという意識が打線好調に繋がったと思う。7回のホームランは加藤が塁に出たので、長打で返してあげたいと思っていた。(自身のバッティングについて)相手投手に関係なく、自分のバッティングができれば良い結果に繋がる。今日はチャンスで打てずにもったいなかった。明日は全員が打って勝てたら嬉しいが、たとえヒットが出なくてもタッチアップやスクイズで1点を取って、ロースコアで勝ちたい。
加藤拓也(政4)
勝てて良かったということが一番。開幕戦で流れを付けようと思って、今日のマウンドに上がった。自分の仕事はなんとか出来たと思う。今日は低めにボールを集めることが出来たので、長打を打たれなかった点が良かった。調子自体はあまり良くなかった。なるべくストレートと変化球を低めに集めて、的を絞らせないようにした。ストレート一本だと、球数が増えてしまうので変化球を多めにした。先発ということでオープン戦から須藤と話しあって、変化球を上手く取り入れるようにしている。(打撃面でもタイムリー二塁打を放った)一、三塁の場面だったので、三振は良くないと思い、なんとか当てに行った。(次戦以降に向けて)まだ一試合勝っただけ。勝ち点を取るために、全力で準備して、登板する機会があったら抑えられるように頑張る。
山口翔大(環4)
まだチームがリーグ戦を通してどういう状況にあるのかわからないので、自分の役割はしっかり果たそうと思って本日を迎えた。今日は岩見選手の盗塁の際の悪送球や暴投といった、相手のミスを無駄にせずに活かした結果、大量得点に繋がった試合だった。打撃園では特に第2打席はチャンスで回ってきて、4番としてここで打たなくてはいけないと思って打席に立った。自分でうまく追い込んでできた。昨年は横尾選手や谷田選手がチャンスで1本、本塁打を打って大量得点だったが、今年はそういう選手があまりいない。相手のミスに付け込んで得点したり、チャンスでしぶとく1本打つかなので、チームでやりたいことが今日うまく出た。そこが昨シーズンと今シーズンの違い。明日は今日と同様にチャンスでいかに繋ぐか、自分たちの野球をいかにミスなくやるかなので、今日は大勝したけれど、今日と変わらず明日も謙虚にやっていきたい。
岩見雅紀(総3)
勝てて良かった。皆打てたので良かったと思う。皆が繋ぐ意識を持ってバッターボックスに立っていたから打線がつながり快勝できたと思う。チームでその意識をしっかり打席で示せた。重点的とされていた守備の練習の成果も出たと思う。特に後ろのフライでは。明日もいつも通りがんばりたい。
柳町達(商1)
開会式が終わり、室内練習場でアップしていたときにスタメンが発表された。先輩たちが「思い切りやれ」と言ってくれたので、とても気持ちが楽になり、思い切りプレーすることができた。特に緊張はしなかった。大学では相手ピッチャーの急速とかを含めて全てがレベルアップする。外野は中学の時も守っていたので不安はなかった。木製バットに変わり、金属の頃よりは飛距離が伸びにくくなったので、ホームランは狙っていなかった。なんとかして次のバッターにつなげようと思っていたら甘い球がきたので反応できて嬉しく思う。途中に大久保監督から「チェンジアップは捨てて、まっすぐとスライダーだけを狙って何も考えずに振っていけ」と言われ、ホームラン打てたのも真ん中付近のスライダーだった。初めてのリーグ戦をいい形で終えられた。今日はチームみんな打てたので自信になったと思う。今後もどんどん調子を上げて頑張りたい。明日も全員で、チーム一丸となって法政に2連勝して勝ち点をとりたい。