息詰まる投手戦の主役は、やはりこの男だった。慶大のエース・加藤拓は4点差をひっくり返され、まさかのサヨナラ負けを喫した一昨日の鬱憤を晴らすような快投。打線もエースの好投に応えるべく、少ないチャンスをことごとく点に繋げ、勝ち点1を得た。
10月10日(月)東京六大学野球秋季リーグ 法大2回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
慶大 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 | 0 | 1 | 0 | 0 | 3 |
法大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 1 |
慶大:○加藤拓 ―郡司
法大:●菅野、三浦、熊谷―森川、伊藤士
◆慶大出場選手
| ポジション | 選手名(学部学年・出身高校) |
1 | [5] | 沓掛祥和(商4・慶應義塾) |
2 | [4] | 倉田直幸(法3・浜松西) |
3 | [7] | 岩見雅紀(総3・比叡山) |
| 7 | 重田清一(環4・佐賀西) |
4 | [3] | 山本瑛大(商4・South Torrance) |
| 3 | 清水翔太(総3・桐蔭学園) |
5 | [9] | 山口翔大(環4・桐光学園) |
6 | [2] | 郡司裕也(環1・仙台育英) |
7 | [8] | 柳町達(商1・慶應義塾) |
8 | [1] | 加藤拓也(政4・慶應義塾) |
9 | [6] | 照屋塁(環3・沖縄尚学) |
一昨日のショッキングな敗北、打線がつながった昨日の快勝を経て、1勝1敗となったこのカード。3戦目らしい意地と意地のぶつかりあいとなった。
慶大の先攻で始まったこの試合。法大の先発は1回戦と同じく右腕・菅野。前回の対戦では4点を奪っているが、この日の初回の攻撃は三者凡退に打ち取られ、先制点を奪えない。
一方、慶大の先発は加藤拓也(政4)。こちらも中1日で初戦に続く先発となった。その立ち上がり、2四球で1死一、二塁のピンチを招くが、法大4番・金子凌を空振り三振、一昨日には2ランを被弾した5番・中山を遊撃フライに打ち取りピンチをしのいだ。
ピンチの後にはチャンスがあった。2回、先頭の山本瑛大(商4)の右翼への当たりはラッキーな2塁打となった。山口翔大(環4)が初球で送り1死三塁とこちらも先制のチャンスを迎える。ここで打席には郡司裕也(環1)。見事に左翼線にタイムリーを放ち、先制点を奪った。さらに柳町達(商1)も安打で続いたが、後続が倒れて追加点とはならず、この回の得点は1点止まりとなった。
援護をもらった加藤拓は2回、3回と法大打線を三者凡退に打ち取るピッチングを見せ、安定感を取り戻した。しかし4回、四球とヒットで1死一、二塁のピンチを招いてしまう。ここで法大・大崎が放った打球を三塁・沓掛祥和(商4)が見事にキャッチ。同点のピンチでファインプレーが飛び出した。続く打者は死球で2死満塁としてしまうが、8番・菅野を遊ゴロに打ち取り、この回も無失点に抑えた
エースの力投に呼応するかのように5回、再び打線が繋がる。先頭の柳町が左翼へ2塁打を放ち、無死2塁と追加点のチャンスを迎える。加藤拓の犠打、照屋塁(環3)の四球で1死一、三塁とチャンスを広げ、ここで打席には先ほど好守のあった沓掛が入った。2ストライクと追い込まれながらも、何とか右翼へ飛球を放つ。ここで3塁走者・柳町が果敢にスタートを切った。タイミングはアウトだったが、柳町は捕手のタッチをかいくぐり、追加点のホームを踏んだ。
追加点をもらった加藤拓は5、6回の2イニングを三者凡退と再び安定感を取り戻す。すると7回表、慶大が再び追加点を奪う。郡司、柳町の1年生コンビで無死一、二塁とチャンスを作ると、加藤拓が今日2本目の犠打を成功させ、1死二、三塁とした。続く照屋は左翼へ強烈なライナーを放つ。打球は惜しくも野手の正面を突き、ヒットとはならなかったものの、犠飛となり貴重な追加点を奪った。
さらに点差を拡げ完封も見え始めた7回裏、法大に1点を返される。四球とヒットで2死一、二塁とピンチを招くと、法大・小林のゴロは遊撃右へ。照屋が必死のダイビングでなんとか一度はグラブに収めるも、グラブの先から打球がこぼれヒットに。この間に2塁走者が生還し、1点を失ってしまう。なおも2死一、二塁。一発が出れば逆転の場面だったが、ここは加藤拓が後続を空振り三振に切ってとり、最少失点で切り抜けた。
気迫を見せる加藤拓は、8回を三者凡退、9回も死球の走者こそ出したものの、危なげなく3つのアウトを奪い、9回1失点の内容で見事完投勝利を飾った。
【Keispo pick up】復活のスーパールーキー 柳町達
彗星の如くリーグ戦に現れ、見事ベストナインを受賞。一躍リーグのスターの一人となった春から早くも半年が経ち、この男はもがき苦しんでいた。骨折の影響もありオープン戦から調子が上がらないままシーズンに突入。思うようにボールを捉えられず打率も低迷し、代打を送られる場面もあった。しかし2週間を経ての試合となったこのカード一気に復調の気配を見せた。そして今日、3安打猛打賞の活躍で見事勝利に貢献。もはや完全復活と言ってもいいだろう。悲願の優勝に向けて、この男の活躍が不可欠なのは言うまでもない。
記事:天野 拓真
◆打撃成績
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| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
[5] | 沓掛 | 三ゴロ |
| 三ゴロ |
| 右犠飛① |
| 左飛 |
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[4] | 倉田 | 遊ゴロ |
| 二ゴロ |
| 遊直 |
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| 遊ゴロ |
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[7] | 岩見 | 空三振 |
| 遊ゴロ |
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| 空三振 |
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| 重田 |
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| 空三振 |
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[3] | 山本瑛 |
| 右2 |
| 左飛 |
| 見三振 |
| 見三振 |
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| 清水翔 |
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[9] | 山口 |
| 三犠打 |
| 空三振 |
| 投ゴロ |
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| 空三振 |
[2] | 郡司 |
| 左安① |
| 見三振 |
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| 四球 |
| 右安 |
[8] | 柳町 |
| 右安 |
|
| 左2 |
| 中安 |
| 四球 |
[1] | 加藤拓 |
| 空三振 |
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| 投犠打 |
| 一犠打 |
| 三直 |
[6] | 照屋 |
| 見三振 |
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| 四球 |
| 左犠飛① |
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◆投手成績
| 投球回数 | 打者数 | 球数 | 安打 | 三振 | 四死球 | 失点 | 自責 |
○加藤拓 | 9 | 36 | 153 | 3 | 8 | 6 | 1 | 1 |
◆監督・選手コメント
大久保秀昭監督
ロースコアの展開で、攻撃陣は少ないチャンスをしっかりものにして、エースが役割をしっかり果たした本当にいい試合だったと思う。勝負を分けたのは、第一に相手の中軸をしっかり抑えられたこと。第二はギリギリのクロスプレーで2点取れたこと。本当にイチかバチかのところだったけど、そこで2点取れた。この2点に尽きるかな。加藤拓は安心して見ていた。序盤は少し制球に苦しんだけど、力のあるボールは行っていたし心配はなかった。攻撃陣は明治のピッチャーには抑えられたから心配だったけど、この3試合で調子が上がって来た選手もいるし、今後に繋げて欲しいと思う。柳町はやっと体が動き始めたのかなと思う。骨折の影響もあって、スピードボールに力負けしているような状態が続いていたが、そこを修正して、しっかり対応できるようになってきた。郡司は期待感を持って起用しているので、それにしっかりと応えてくれていると思う。今日も攻守に渡ってチームの勝ちに結びつくいいところが出ていた。次の立大戦は相手も優勝がかかっている以上、気合が入っていると思うので、いい準備をして臨みたい。
沓掛祥和副将(商4)
勝てたことが一番嬉しい。ただ今日は守備のミスがあり、それをなくしていかないと立教戦は勝てないと思う。4回の三塁線へのライナーは取れそうだったので(ピッチャーの)加藤拓を助けてやろうという思いで夢中でダイビングキャッチした。2点目の犠牲フライは自分にできる最低限の仕事をしようと思って打った。あわよくばヒットが良かったが、バッティングの調子が悪いので自分にできることをした。ベンチからは特に指示はなかったので、自分で考えてできることをやった。優勝は明治次第になってしまったが、次週の対戦相手である立教とは、チーム状況を考えれば十分連勝できる相手だと思うので、自分たちの力を発揮していきたい。
加藤拓也(政4)
1戦目やられたが、2戦目はみんなが繋いで勝ってくれた。なんとか勝とうと思って臨んだので勝てたことは良かった。疲れはあったが、特に投げるのに影響することではなかったので気にしていない。調子はいつも通りだった。7回に失点した後のピンチでは真っ直ぐで三振をとった。直前に変化球が逸れてしまったことは関係なく僕自身真っ直ぐで抑えようと思ったし、お互い真っ直ぐでいいという判断で投げた。前半からずっと飛ばしていけるところまで行こうと思っていた。1回1回の積み重ねなので9回まで投げようというペース配分はなかった。8回の150キロはギアが上がったわけではないが、体をうまく使ってバランス良く投げられたかなと思う。9回チャンスの場面では監督に「相手の熊谷投手は真っ直ぐが多い。思い切って真っ直ぐ狙って振っていけ」と言われた。もう勝つしかない。目の前の1戦僕の投げる試合に全力で準備して最高のパフォーマンスを出せるように頑張る。
郡司裕也(環1)
負けられない試合だったので、勝ててほっとしている。加藤拓投手は一試合目よりも調子を上げていたし、疲れを感じさせなかったのでタフだなと思った。2回のタイムリーはチャンスはそれほど多くないと思っていたので、少ないチャンスをモノにできて良かった。加藤拓投手が先発で何としても点を取りたかったので、良かった。課題だった2戦目の投手陣の出来がとても良くて勝つことができたので、チームとしてはいい方向に向かっていると思う。あとは細かい守備のブレなど反省するところがまだあるので、そういうところを詰めていきたい。チームは上向きになってきていると感じるが、もう一回謙虚になってしっかり細かいところを練習して、立教戦にのぞみたい。
柳町達(商1)
今日は、なかなか点を取れず、苦しい試合だった。粘り強く加藤拓さんが頑張ってくれて、1点は取られてしまったが、我慢して守備ができた。少ないチャンスを生かすことができて良かった。(対法政戦3戦を振り返って)今まで2戦目がなかなか勝てなかったが、今カードでは勝てたことが勝ち点につながったと思う。前の2カードは全然打てなかったので、今日は取り返すことができた。次、もっと良い内容の打席ができればと思う。二塁打は、逆方向に飛ぶ打球はあまり多くなかったので、良い感じに振り抜けて良かった。今日の試合は気温が低かったので、特にアップをいつもより長めに取ったり、ウェアを着て暖かい恰好をしたりして試合に臨んだ。明治には負けてしまったが、優勝の可能性はまだなくなってはいないので、次の立教戦も勝って、優勝へ繋げたい。