大学では春休みが始まり、近頃では寒さも和らいできている。慶大バレー部は、4月7日に開幕する春季関東大学バレーボールリーグ戦に向け、練習とミーティングを重ねる毎日だ。私たちは、「復活の春」に向けて奮闘する富澤太凱(経2・慶應)を取材した。
富澤のポジションはオポジット。サーブレシーブには参加せず、すぐにスパイクの助走に入る、攻撃特化のポジションだ。実際、富澤は多くの試合でチーム1番の得点を稼ぎ出している。当然マークも厳しくなるが、意外にもそれが嬉しいと答えた。「そんなにキャリアもない自分を気にしてくれているんだ、って少し誇らしい」。だが、それだけが理由ではない。「自分が決めれば相手のブロックが自分に寄ってきて、その分他の選手も決めやすくなる」。ポイントゲッター富澤の活躍は、チームに相乗効果をもたらすのだ。
富澤のエースとしての自覚をひと際強くさせた試合がある。それは、昨春の青学戦だ。最終第5セット、14-11と慶大が先にマッチポイントを握ったものの、富澤のスパイクがブロックされるなどして失点が重なり、まさかの大逆転負け。「早く決めてくれよっていう雰囲気の中で勝ち切れなくて、本当に責任を感じた」。この試合以降、富澤の中で一球一球の重みが増した。「それが1セット目の1点目であっても、フルセットのマッチポイントであっても、気持ちは変えちゃいけない」――
昨秋のリーグ終盤、富澤は右脚に違和感を感じていた。違和感はやがて激痛に変わり、練習中に立ち上がれなくなるほどにまでなってしまった。2回戦敗退となった全日本インカレも、富澤は応援席からチームを見守ることしかできなかった。「4年生が笑って引退できるようにって言っていたのに、チームに全然貢献できなかったのが本当に悔しい」。引退後に4年生が隣で呟いた「お前がいたら勝てたかもしれないな」という言葉が今も心に残っている。
だからこそ、強くなって帰ってきてみせる。「今年こそ、4年生が笑って引退できるように。勝ちにこだわっていきたい」――少し前まではジャンプを含む練習などは控えていたが、現在ではチームの練習に合流している。「毎日、他人よりちょっとだけ努力しよう」。これが富澤のモットーだ。厳しい冬を乗り越えた先に待つ春、富澤の努力はきっと開花する。
(記事:藤澤薫)
◇連載企画◇ リレーインタビュー
先月取材した、岩本龍之介副将(商3・仙台第二)からの質問です。
――今まで買った仮面ライダーグッズで一番高価なものは何ですか?
22000円の変身ベルトです。大学生になると自由に使えるお金が増えるから買っちゃうんですよね(笑)。
◇プロフィール◇
富澤太凱(とみざわ・たいが)
1997年9月1日生まれ/経済学部2年/慶應義塾高/192cm/オポジット