慶大男子ソッカー部開幕前特集第2弾は今季から新たに指揮を執る淺海友峰監督にインタビューを行った。
かつて自身も所属し、昨季にはコーチも務めていたソッカー部に対する思い、彼が選手に求めるプレー面の”オンザピッチ”、グラウンド外の”オフザピッチ”でのあるべき姿とは――。
(取材日:3月28日)
――自己紹介をお願いします
今季から監督をさせていただきます。淺海です。よろしくお願いします。昨季はコーチをしていて、9年ぶりに戻ってきました。
――慶應の男子ソッカー部の監督について
すごく伝統のある部なので、身が引き締まる思いですね。僕が主役ではなく学生が主役なので、彼らにいろいろなことをやらせてどうするのかを考えています。
――ご自身も所属していた男子ソッカー部にはどのような思いが
僕はこの部に育てられたというのがあって、だからこそ恩返しをしなければならないなと思います。一般入試で入学して、ソッカー部はスポーツ実績のない僕を拾ってくれ、育ててくれた場所なので僕も同じように学生と向き合わないと、と思っています。
――プレイヤー時代との違いは
全く違いますね(笑)。選手時代は身体能力を生かしてがむしゃらにハードワークする選手だったのですが、今は全体を見て動かさないといけないので全然違います。
――コーチと監督の違いは
昨季はBチームのコーチをしていて、コーチは監督が決めてくれた大枠の中でオリジナリティーを発揮するものだったのだけど、今年は僕が大枠を決める側になるので違いがありますね。
――今季に入ってからチームの雰囲気はどうですか
僕から見ると悪くないと思うのですが、そう思うだけにシーズン開幕してふたを開けないとわからないという怖さはあります。
――これまでの収穫は
監督が代わればすることも変わってくるので、それが組織に浸透してきたというのと今季はフィジカル的な要素、けが予防に取り組んでいて、それがある程度の結果が出てきたと思います。トレーナーの三浦さんや学生トレーナーたちが頑張ってくれてそれ(けが)が少なくなっています。
――チームの強みは
すごくまじめなところだと思っているのと運動量はほかには負けないし、負けてはいけないと思います。
――逆に課題は
正直に言うと高さのある選手が少ないところですかね。
――課題を解決するために必要なことは
同じ舞台に立たないことだと思っていて、僕たちのやり方を突き詰めることです。
――新入生の印象は
技術のある選手が多いなという印象です。非常に将来有望な選手が入ってくれたなと思います。
――新入生で特に注目している選手は
トップチームでプレーしている田村祐二朗(環1・藤枝東)がいて、彼の技術と持っているものがすごいと思っています。考えてやっていると思うのですが、ゴールを決められる位置にいるのと、与えられたギフト(才能)の部分があると思います。田村以外にもいい選手がいて、慶應のいいところは一般入試できた子や、高校時代頑張って1浪して入って子が数年かけてトップチームで活躍するところですね。そういう点ではみんな期待しています。
――新入生以外で特に注目している選手は
4年全員ですね。特に海徳(佐藤=政4・桐光学園)、八田(和己=総4・桐蔭学園)は調子もいいしリーダーシップも発揮してくれているしすごく期待しています。
――主将とのコミュニケーションの取り方は
彼と八田にはほかの選手には伝えないようなことも話していて、一緒にチームを作っていく立場だと思っています。彼らがどう思っているかはわからないですけど(笑)
――主将、副将以外の選手とコミュニケーションを取るときに意識していることは
オンザピッチのところは基本的に双方向のコミュニケーションが必要だと思っていて、こちら側がやろうとしていることと選手の感覚があまりにもずれていたらいい方向にいかないと思っているから、プレーしている彼らの感想を大切にしています。一方でオンザピッチ、オフザピッチにかかわらずこちらが言わなきゃいけないことは言わないとだめなので、そこは関係性の難しい部分だと思います。
――主将、副将に果たしてもらいたい役割は
よく学生主体と言われていて僕も学生主体でやってほしいと思うのですが,主体性を持って行動することには責任が伴うので、やはり足元の部分を固めてリーダーシップをとってほしいです。
――期待している4年にはどのようなプレーをしてほしいか
彼らは大学サッカーを長くやっているので、よくわかっている部分があります。チームはまじめな一方、まじめすぎる部分があるのでチームがしんどい時にどう逆境を乗り越えるか、経験の多い4年には期待しています。
――2,3年にはどのようなプレーを期待しているか
ポジションによっても違うと思うのですが、まずはチャレンジしてほしいなと思います。やっていいこととやってはいけないことがありますがその枠の中でチャレンジして自分の良さを出してほしいです。
――オフザピッチでは
学生のいいところは年を重ねるほど責任感が増して自分たちで組織を回そうとするところで、体育会の強みだと思います。1年と4年は子供と大人くらい違うから大学の4年間で(責任感を)身に着けてほしいです。
――目指すチーム像は
僕はオンザピッチ、オフザピッチにかかわらずチームが規律をもって、その中で自主性を発揮して活動できるようなチームにしたいです。そして選手にもそれを求めています。
――その目指すチーム像のために監督自身ができることは
いい悪いによらず僕らがいる意味は社会を知っているということで、社会に出る1歩前の彼らを導くことだと思います。僕らは学生だからと言って社会で認められないことをやっちゃいけないし、熱くなると難しいのですが、社会的にどうなのだというところを突き詰めてやっていきたくて、彼らには考えてもらい、僕らが示すことが将来この部にいてよかった部分になるのかなと思います。
――今季の目標は
オンザピッチでは学生が掲げた目標を達成させてあげたいなと思っていて、オフザピッチでは規律、組織ですね。サッカー自体がチームスポーツで多くの部員がいる中でリーグ戦に出られる選手は11人じゃないですか。じゃあほかの人たちはチームのことを考えなくていいのかというわけではなくて、まずはこの部を愛してほしいし、好きだったら自分から何を行動すればいいかオフザピッチから変わっていくと思います。今はまだ僕がやらせている時で、怒っています。今はまだ合宿所はきれいですけどめちゃくちゃ汚い時があって、どうしたらきれいになるのかと考えて、世界で活躍している先輩を呼んで話してもらうなどいろいろなことをしています。
――オンザピッチでの具体的な目標は
ホームページにも載せたのですが、最少失点で関東大学リーグ2部優勝、早慶定期戦、総理大臣杯ですね。
――意気込みをお願いします
振り返ったときにもっとこうすればよかった、準備をすればよかったとならないために、最大限努力して全力でやっています。前日に選手にも伝えたのですけど主役は選手自身だからオンザピッチで困ったときに解決策を示せるようにしたいです。そもそも選手が困らないように準備したいと思っています。
――最後に応援している人たちにメッセージをお願いします
土日開催で仕事が休みの日にわざわざ来てくださったり、Jリーグと被っているときにも来てくださったりするので、そのことの意味を僕自身が受け止めて、選手にも最後のホイッスルが鳴るまで走り抜けと言っていますし、あきらめずにやっていきたいと思います。それを最後の試合まで続けていきます。よろしくお願いします。
――お忙しい中、貴重なお話をありがとうございました!
(取材:室留裕介 写真:左近美月)