ついに明日、9月20日(金)にラグビーワールドカップ日本大会が開幕する。その期間、慶大蹴球部が所属する対抗戦Aグループは試合が行われない。そのため、例年より早く開幕し、これから1ヶ月以上試合がないという変則的な日程だ。ワールドカップが始まる前の3試合を消化した現在、慶大は2勝1敗で4位につけている。ここまでの「前半戦」の戦いを振り返っていきたい。
◇星取表(9月15日試合終了時点)
帝京大 | 早稲田大 | 慶應義塾大 | 明治大 | 筑波大 | 青山学院大 | 日本体育大 | 成蹊大 | 勝敗 | |
帝京大 |
| 11/10 | 11/30 | 11/24 | 11/4 | ○80-7 | ○59-30 | ○78-7 | 3勝 |
早稲田大 | 11/10 |
| 11/23 | 12/1 | ○52-8 | ○92-0 | ○68-10 | 11/4 | 3勝 |
慶應義塾大 | 11/30 | 11/23 @秩父宮 |
| 11/10 | ●14-17 | ○35-3 | 11/4 | ○101-0 | 2勝1敗 |
明治大 | 11/24 | 12/1 | 11/10 |
| ○59-33 | 11/4 | ○103-0 | ○139-5 | 3勝 |
筑波大 | 11/4 | ●8-52 | ○17-14 | ●33-59 |
| 11/30 | 11/24 | 11/10 | 1勝2敗 |
青山学院大 | ●7-80 | ●0-92 | ●3-35 | 11/4 | 11/30 |
| 11/10 | 11/24 | 3敗 |
日本体育大 | ●30-59 | ●10-68 | 11/4 | ●0-103 | 11/24 | 11/10 |
| 11/30 | 3敗 |
成蹊大 | ●7-78 | 11/4 | ●0-101 | ●5-139 | 11/10 | 11/24 | 11/30 |
| 3敗 |
まずは星取表。昨年度同時優勝を果たした帝京大と早大、そして対抗戦4位枠からの出場ながら大学選手権を制覇し日本一に輝いた明大が3連勝を飾り、同率1位。そして慶大、1勝2敗の筑波大と続き、3敗で青学大、日体大、成蹊大が並んでいる。
◇得失点
学校名 | 得点(○が最多) | 失点(○が最少) |
帝京大 | 217 | 44 |
早大 | 212 | ○18 |
慶大 | 150 | 20 |
明大 | ○301 | 38 |
筑波大 | 58 | 125 |
青学大 | 10 | 207 |
日体大 | 40 | 230 |
成蹊大 | 12 | 318 |
続いて得点は、慶大は4位の150。しかし失点は2番目に少ない20と、他校と比べてロースコアでの試合を展開しているといえる。
ちなみに最多得点は100点ゲームを2度も演じてみせた明大の301。最少失点は早大の18だ。
ここからは、各試合を振り返っていく。
例年よりも早い9月1日(日)に長野県・菅平で迎えた開幕戦は、青山学院大と対戦。例年勝ち星を挙げている相手に、35−3と今年も快勝した。開始早々から相手にペナルティゴールを決められ先制を許すも、その後のスクラムで押し込んでトライを奪い、逆転に成功。「自分たちがやろうとしていたスクラムを組むことができた」とPR有賀光生(総4・國學院久我山)が振り返るように、この試合ではスクラムで優位に試合を進め、その後も得点を重ねていく。後半も青学大を圧倒すると思われたが、ゴールライン付近でミスが見られる場面が続き、なかなか追加点とはいかなかった。苦しい時間帯をなかなか抜け出せないという課題こそ残ったが、相手をノートライに抑えて幸先よくスタートを切った。
翌週、8日(日)に行われたのは筑波大戦。春季大会は1勝4敗と勝ち星が遠かった慶大にとって連勝といきたいところだった。序盤から敵陣に攻め込むも、筑波大のディフェンス陣が粘りを見せ、苦戦を強いられた。ラックからスペースを突いたFL川合秀和(総4・國學院久我山)のトライで先制し、試合はほとんど慶大ペースではあったものの、決め切れない展開が続く。14―7とリードして迎えた試合終盤だったが、終了間際に2トライを連続して叩き込まれ、ラストワンプレーでの逆転負けを喫した。試合後、栗原徹HC(ヘッドコーチ)は「FWとBKがアタックで分離してしまった」と振り返った。フィールド場の15人がリンクし、全員がオプションとなって攻撃するという今年度のテーマが達成できず、この敗戦は結果以上に重くのしかかった。
「FWも含めて15人でアタックするマインド(中楠一期)」を意識して臨んだ14日(土)の第3戦は、成蹊大に101―0と100点以上差をつけての完封勝利。15個のトライのうち、FW陣によるものが13個と多くを占めていたことから、前週の課題を克服できたといえよう。アタックのテンポを速くしてきたことも功を奏している。
ここまでの戦いを振り返って、今年の慶大が持つ強み、抱える課題が見えてきた。
まず、”Unity”をスローガンに掲げ、全員で戦うラグビーを持ち味としている通り、スタメンを張る選手とベンチに控える選手たちの戦力差が大きく開いていないことは大きな強みと呼べるだろう。勝利した2試合はいずれもベンチ入り選手を全て動員している。慶大はベンチ入り選手を、試合終盤にチームを勢いづける選手として「ブースター」と呼んでいるが、途中出場した選手たちはまさにチームを「ブースト」する役割を果たしているのだ。対抗戦3試合を終え、試合に先発出場する選手は固まってきたように見えるが、ベンチも含めた全員での戦いが今年の慶大の持ち味。使える選手が多いことは、試合をする上での選択肢が多いことを意味する。約1ヶ月半後に控える後半戦、そして大学選手権で相見える個性豊かな、高い実力を誇るライバル校を相手にこの強みが効果を発揮してくるだろう。
また、SO中楠一期(総1・國學院久我山)が普段はゴールキックを蹴っているが、成蹊大戦の後半はWTB高木一成(商4・慶應)がキッカーを務めた。中楠はここまで、コンバージョンキックを9割以上成功させており、その右脚は慶大の重要な得点源となっている。高木も成蹊大戦では8本蹴ったうち、7本が成功。たかが2点、されど2点だ。昨年度の大学選手権準々決勝において、慶大は早大を相手にわずか1点差で敗れた。このチームは、1点の重みを誰よりも知っている。
しかし、それ故の課題もある。多くの選手が出場するということは、より緻密な連携が必要となってくることを意味する。大学選手権に向け負けられない戦いが続く中、ひとつの細かいミスが命取りとなる。青学大戦では早々に先制のペナルティゴールを献上してしまい、筑波大戦では敵陣ゴール前までボールを運んでも取りきれない場面が続いた。小さなミスから好機を生かしきれず、相手に得点を与えてしまうことは防ぎたい。無失点で勝利した成蹊大戦でも、自らのペナルティや、ディフェンスの間を突かれ自陣に切り込まれることがあった。アタック、ディフェンス双方において連携を高め、数字に出ないミスまで徹底して減らしていくことが求められる。
関東大学対抗戦Aグループに所属する8チームのうち、大学選手権に進めるのは上位4チームだ。現在4位につける慶大はまさに背水の陣。だが、強豪校との対戦を控え、まだ対抗戦優勝の可能性が消えたわけではない。創部120周年となるメモリアルイヤー、日本一を目指す慶大の戦いはまだまだ終わらない。
(記事:竹内大志)
◇今後の対抗戦日程
11月4日vs日本体育大学 14:00K.O.
@上柚木公園陸上競技場(東京都)
11月10日vs明治大学11:30K.O.
@秩父宮ラグビー場(東京都)
11月23日vs早稲田大学 14:00K.O.
@秩父宮ラグビー場(東京都)
11月30日vs帝京大学 11:30K.O.
@秩父宮ラグビー場(東京都)
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