【野球】秋季リーグ戦開幕前インタビュー 第5弾 大久保秀昭監督 〜Familyの父、今想う〜

野球対談

9月14日から開幕している東京六大学野球秋季リーグ戦。慶大は第2週より開幕のため明日が初戦となる。
それに先立ち、慶應スポーツでは秋季開幕前インタビューを実施しました。最終回となる今回は慶大野球部を勝利に導く名将・大久保秀昭監督にお話を伺いました。

――春季リーグ戦を振り返って

優勝を争った明治戦で連敗してしまったことが痛かったですね。

 

――森下選手(明大)を攻略できなかったことが挙げられますか

攻略できなかったこともそうですが、やはり(明大1回戦で)初回に2点を簡単に取られてしまったことですかね。それが明治戦の流れを悪くした要因だったと思います。先制されてしまう試合がほとんどでした。ですが、優勝していたときは、粘り強く、先制されても追いついて逆転することができていました。だからこそ、優勝できたのだと今では思います。今年のチームは、良いところまでいくのですが、試合をひっくり返すまでにはいきませんでした。

 

――春季は増居翔太選手(総1・彦根東)や下山悠介選手(商1・慶應)など、1年生の活躍もありました

素質のある選手たちなので、期待通りだったと思います。

 

――2017年秋季リーグ戦以来の早慶戦勝利でした

昨春は優勝が決まった後だったので、(早慶戦に)全力でいかなかったのは僕の責任であると思います。ただ、三連覇がかかった昨秋は、明らかに投手の枚数が足りなくなってしまいました。勝敗は監督の責任といえますが、故障やけがでメンバー入りしていた投手が5人も離脱するという状況になってしまったことは、悔やまれることだったと思います。髙橋佑樹(環4・川越東)一人でよくあそこまで戦えたなと思うのが正直なところです。

 

――同リーグの明大が全日本大学選手権で優勝しましたが

六大学の代表として、慶應はベスト4で終わってしまいましたが、一昨年の立教同様、強さを見せてくれてよかったと思います。ですが、本来なら慶應がそこにいかなければならないと思っています。

 

――8月の北海道キャンプ、そしてカナダ遠征について

練習については、北海道ではそこそこやったと思います。カナダでは、ほとんど練習ができませんでした。全体練習などもありませんでしたが、練習以上の国際交流の面がはるかに大きかったのではないですかね。それを学生がどう感じてくれるか。「練習できなかったな」という風にマイナスに捉えるのか。そうではなくて、プラスアルファなことをちゃんと考えて将来に繋げてくれるほうが、よっぽど大きいことだと思います。

 

――ここまでのオープン戦を振り返って

まったくもって順調とは言えません。8月のスケジュールをふまえた上で、チームとして練習する時間が少ないことは始めから分かっていました。なので、8月に関してはまるっきり心配していません。思っていたようになっています。その代わり、開幕が通常より1週も遅いような日程ですし、また(慶大は)第2週からの登場ということで。9月に入ってからじっくりやれることもあるとも思っていましたし、これからですね。オープン戦の残りはあと4試合ですけど、チームとして形を作れるような時間を9月に取れているというのは良いことだと思います。

 

――侍ジャパン大学日本代表に郡司裕也選手(環4・仙台育英)、柳町達選手(商4・慶應)が選抜されました

彼らは去年の選考合宿も呼ばれて行きました。選ばれずに悔しい思いをしながらも成長したことを全日本の監督やスタッフは見ていてくれました。佐藤(宏樹=環3・大館鳳鳴)や正木(智也=政2・慶應)も選考合宿に行きました。「慶應の選手はよく練習している、しっかりと鍛えられている」と言っていただけたので、彼ら自身もですけど、チームとしてもそのような評価を嬉しく思います。

 

――代表としても活躍した郡司選手はじめ、下級生のときからチームを支えてきた4年生たちは最後のリーグ戦となりますが

当時は人がいなくて、僕が4年計画で彼らを起用していたわけではありません。毎年、そのときのベストメンバーで戦おうとしています。3年前は実力に加えて、選手層の薄さもあったので、1年生でベンチ入りすることが可能だったのだと思います。その積み重ねが4年間になったということです。一般的に、1年生から試合に出ていたり、名前のある選手がいたりすると、簡単に優勝候補といわれます。ですが、やっているほうからしてみるとまるっきりそんなことはありません。他大の選手は、1年だろうが4年だろうが関係ありません。素材や素質でいえば、全国トップクラスの甲子園でも結果を残してきた、U-18に入るような子が多くいるチームです。そのようなチームと戦わなくてはいけないことを考えたら、(優勝することは)簡単ではないですよね。

 

郡司、柳町は別として、中村(健人=環4・中京大中京)にしても、小原(和樹=環4・盛岡三)にしても、良い成績を常に残してきたわけではないですし。それらをふまえた上でチームの課題は、6番以降が打撃でどれほど打点を稼ぎ、チャンスで一本を打つかということです。明確なのは、瀬戸西(純=政3・慶應)と小原、嶋田(翔=環3・樹徳)、そして投手陣の打率がなかなか上がってこないと、簡単ではないことですよね。投手の負担が大きくなっていってしまいます。

 

――監督は今現在、打撃が一番課題であると感じますか

もう打てないと思っています。点数を取りたくても、簡単には取れないと秋は特に思います。4年生から出始めた選手も、新しく出た選手も、その成績をふまえて研究するし、また研究されます。攻め方も見えてきます。春季に3割、4割打ったからといって秋も同じように打てるわけではないので、全体的に戦力はちょっとマイナスになるのかなと。また、投手力が同じだと足りないので、防御率を下げなければいけないと思います。

「野球以外のことも教える。」学生野球の監督ならではの考えも伺えた。

――秋季リーグ戦、期待している選手は

4年生は期待していますね。皆に期待しています。

 

――竹内(大助=H25・環卒)助監督が就任されて約半年、何かチーム内で変化はありましたか

前任の林助監督は、一寸の隙も見逃さないような厳しいところがありました。竹内助監督自身が、手探りの状態だと思います。(選手たちが)今まで言えなかったことが言いやすくなるような良い面は当然あると思います。逆に言えば、今まで許されなかったようなことが見逃されている面もゼロではないです。今の4年生は、(林前助監督に)3年間言われ続けてきたことがあるので、身についていることもあるでしょうし、現状がちょうど良いのかなと思います。対して1年生は、わからないことが多いので色々と指導する人のほうが良いのかもしれませんね。

 

――ここまで監督が選手たちを語る言葉や視点には、「選手の育成」にとどまらない「人間性の育成」を強く感じました

野球人を育てているわけではありません。(今は)野球で勝つことを求められています。ですが、勝つことに限らず、経験を通じて、社会に出たときに、「やっぱり慶應の野球部出身は違う」と言われるように人材になっていってほしいと思っています。教育ではないですが、そのような思いで指導しています。先日のチームミーティングでもどのような思いで指導をしているのかを選手たちに伝えました。

 

――開幕間近の秋季リーグ戦に向けての意気込みを

僕がどうしたい、勝ちたいというよりも、関わっている子どもたちが幸せな姿が見たいという思いだけです。僕はそのために最大限の努力をしますし、指導は惜しみません。僕は必要以上に与えすぎないこと、あまりにも何か間違っているときに注意することだけです。基本は選手たち自身がどうありたいか、そこは強く伝えていきたいですね。

 

――選手たちは完全優勝を意識していると思いますが

そう思っているんじゃないですかね。僕は常にどの試合も負けたくないですし。だからといって、僕の理想にはめすぎるのは違うと思っています。

 

――最後にメッセージをお願いします

この秋もワクワク、ドキドキ、球場で応援しがいのある慶應野球部だと思いますので、応援よろしくお願いします。最後の一押しには、皆様の力が必要ですので。

(取材:青木満智子)

(この取材は9月6日に実施しました。)

タイトルとURLをコピーしました