今年、飛ぶ鳥を落とす勢いで数々の好成績を残す慶大がこのリーグ戦でも快進撃を見せた。二部リーグでの出場となった今大会、慶大は初戦の駒大戦で惜敗し黒星スタートを切るも、続く試合では次々と勝利を重ねていく。さらに「苦手意識があった」と話す法大を相手に接戦を繰り広げ、みごと勝利をもぎ取った。結果、6勝1敗37点で54年ぶりの二部優勝を達成。翌日行われた一部・二部入替戦では明大に敗れ一部昇格を逃すも、今大会で大きな飛躍を遂げた。
第68回東日本学生相撲リーグ戦
10月5日(土)・6日(日)10時開始 @靖國神社境内相撲場
二部リーグ戦
◇慶大出場選手◇
先鋒 胡華興(薬4・慶應義塾)
二陣 中村隼輔(商1・慶應義塾)
三陣 長谷川貴規(総2・木造)
中堅 大森慎之助(環3・東京学園)
五陣 石井良(経4・慶應義塾)
副将 長谷川大起(総4・木造)
大将 北原英嗣(政3・慶應義塾)
◇試合◇
<1回戦>
慶大 3対4 駒大
胡○(すくい投げ)●松田
中村隼○(押し出し)●舘野
長谷川貴●(寄り切り)○三浦
大森●(吊り出し)○安ケ平
石井●(押し倒し)○白坂
長谷川大●(引き落とし)○高橋
北原○(寄り切り)●千葉
7人制で行われる二部リーグ戦、開幕戦の相手は拓殖大。6月の東日本学生相撲選手権大会では1勝も出来なかった強敵だ。
まず土俵に上がった先陣・胡が突っ張りを交えた激しい取り組みを粘り勝ちで制すと、続く二陣・中村隼も自慢の腕力を生かした喉輪を有効に使い、送り出しで勝利する。このまま波に乗るかと思われたが、後に続いた長谷川貴、大森、石井、長谷川大が相次いで敗れ、1回戦は黒星発進。それでも大将・北原が意地の押し出しで勝ち星を掴み取り、強豪相手に3点をあげ、1戦目としては悪くないスタートをきった。
<2回戦>
慶大 7対0 防衛大
胡○(押し出し)●細井
中村隼○(押し倒し)●平山
長谷川貴○(押し出し)●山根
大森○(寄り切り)●近藤
石井○(極め倒し)●赤塚
長谷川大○(押し出し)●田内
北原○(押し出し)●芦立
続く2回戦の相手は防大。1回戦と同様に胡、中村隼が白星を挙げて流れを作ると、その後も全選手が立ち合いから相手を圧倒する素早い押し相撲を見せ、7戦全勝し手堅く勝利点を重ねた。
<3回戦>
慶大 4対3 専大
胡○(押し倒し)●福田
中村隼○(送り出し)●奥川
長谷川貴●(寄り倒し)○吉田
大森○(はたきこみ)●石岡
石井●(押し出し)○牧園
長谷川大●(下手投げ)○工藤
北原○(寄り倒し)●山本
7連勝の勢いそのままに臨んだ専大戦。四陣・大森が技ありのはたき込みで勝利するなど、四番を終えた時点で3勝1敗と2戦連続の勝利に王手を掛けたが、五陣、副将が相手に土俵際で体勢を入れ替えられるなどして勝ち星を逃し、3勝3敗で逆王手を掛けられる展開に。
そして勝負のかかった大将戦、ここでも北原は落ち着いていた。激しい立ち合いで相手の体勢が上ずった瞬間を逃すことなく、右の下手で廻しを掴むと、左も上手で相手で廻しを取る。このまま付け入る隙を与えず押し倒しでこの一番を制し、大きな1勝を手にした。
<4回戦>
慶大 6対1 大東文化大
胡●(すくい投げ)○橋本
中村隼○(押し出し)●阿部
長谷川貴○(寄り切り)●城代
大森○(突き落とし)●有川
石井○(不戦勝)●幡谷
長谷川大○(引き落とし)●小野里
北原○(押し出し)●和田
選手らの調子も上がってきた4回戦、ここまで勝ちの続いていた胡が土俵際で粘り切れずに先陣戦を落とすも、後続がそれぞれ自分の相撲で勝利を重ね大東文化大を圧倒。終わってみれば6-1と差をつけて3勝目をもぎ取った。
<5回戦>
慶大 4対3 法大
胡○(送り倒し)●杉山
中村隼●(上手投げ)○松浦
長谷川貴○(寄り倒し)●望月
大森○(押し出し)●上平
石井●(押し出し)○橋本
長谷川大●(押し出し)○一佛
北原○(寄り倒し)●雑賀
5回戦は「苦手意識があった」(石井)と話す法大との対戦。まずは先陣で土俵に上がった胡が粘りの相撲で1勝目を挙げると、三陣・長谷川貴、中堅・大森が力強く相手を押し出し、弾みをつける2勝を持ち帰った。この時点で慶大が先に勝利へ王手をかけるが、宿敵・法大も簡単には勝たせてくれない。石井、長谷川大がともに倒れ、勝敗の行方は大将・北原にかかった。プレッシャーのかかるこの局面、北原は先に相手のまわしをつかむとそのまま土俵際まで追いやり、最後は綺麗に投げた。北原の値千金の勝利により法大を下し、慶大は優勝をぐっと引き寄せた。
<6回戦>
慶大 7対0 東大
胡○(突き出し)●益田
中村隼○(突き出し)●山添
長谷川貴○(押し出し)●佐賀
大森○(押し出し)●須山
石井○(不戦勝)●小山
長谷川大○(押し出し)●野口
北原○(はたき込み)●松本
<7回戦>
慶大 6対1 立大
胡○(押し出し)●石井
中村隼○(寄り倒し)●前之園
長谷川貴○(寄り切り)●玉真
大森○(押し倒し)●長谷川
石井●(小手投げ)○横田
長谷川大○(押し出し)●小佐野
北原○(押し出し)●井上
因縁の相手・法大を倒した慶大の勢いはもう止まらなかった。6回戦の東大戦を驚異の7戦全勝で終えると、続く立大戦も6勝をもぎ取る盤石の戦いぶりで、リーグ全7戦を終えた。
大一番での勝負強さが光った慶大は、最終結果を6勝1敗37点とし、1965年以来じつに54年ぶりとなる二部優勝を決めた。さらに、この日を全勝で終えた北原が敢闘賞に輝き、慶大相撲部の歴史的快挙に花を添えた。
※選手コメントは記事の最後にまとめて掲載します。
一部・二部入れ替え戦
◇慶大出場選手◇
先鋒 胡華興(薬4・慶應義塾)
二陣 中村隼輔(商1・慶應義塾)
三陣 関野大輔(商4・慶應義塾)
四陣 長谷川大起(総4・木造)
中堅 北原英嗣(政3・慶應義塾)
六陣 長谷川貴規(総2・木造)
七陣 大森慎之助(環3・東京学園)
副将 石井良(経4・慶應義塾)
大将 中村一稀(経4・慶應義塾)
◇試合◇
慶大 3対5× 明大
胡○(寄り倒し)●片村
中村隼●(突き落とし)○村上
関野●(突き落とし)○藤原
長谷川大●(引き落とし)○東
北原○(寄り切り)●佐藤
長谷川貴○(寄り倒し)●福井
大森●(押し倒し)○八幡
石井●(押し出し)○太治
勢いそのままに臨んだ翌日の一部・二部入れ替え戦。一部からは7月の全日本大学選抜相撲金沢大会で辛勝した明大がこの場に回ってきた。入れ替え戦は9人制で行われるため、慶大は関野大輔(商4・慶應義塾)と中村一稀(経4・慶應義塾)を布陣に加え、まさに部の総力を挙げてこの大一番に臨んだ。
この日の先鋒はリーグ戦と同じく胡が務めた。立ち合いから勢いよく突きで相手を圧倒すると、最後は土俵際まで相手を追い込み見事場外へ倒しこんだ。明大から1勝を先取する絶好のスタートを切る慶大だが、二陣・中村隼が立ち合いでバランスを崩し、黒星を喫する。さらに三陣・関野が力負けに終わると、四陣で登場した主将の長谷川大も接戦の末に引き落とされ、手痛い3連敗で逆転を許した。1-3と追いつめられた局面で希望をつないだのが北原、長谷川貴の次世代を担う下級生たちだった。まずは中堅・北原がじりじりと相手を土俵際へ追いやり勝利を挙げると、続く長谷川貴が力強く前へ前へと詰めていき、接戦をものにし、スコアをタイへと戻した。先に2勝を収めた方が勝つ緊迫した状況の中、七陣・大森は素早い動きで相手を翻弄しながら善戦するも、上体の浮いたところを投げられ惜敗。さらに粘りを見せた石井も力負けに終わり、慶大の敗戦が決まった。
「悪い相撲を取っている人はいませんでした」。入れ替え戦後、長谷川大主将は清々しい顔でこう語った。その言葉通り、出場した全選手がそれぞれ自分の相撲で熱戦を繰り広げた。慶大相撲部は決して粒ぞろいのチームではない。選手の中にはけがを負いながらも戦い抜いた者もいる。悲願の一部昇格は叶わなかったものの、一人一人が仲間のために戦うという、慶大相撲部のチームとしての強さが今大会を通してはっきりと見て取れた。まさにチームが一枚岩となり、二部優勝という歴史的な快挙を成し遂げたのだ。そんな今年のチームを見られるのも、残すところ11月のインカレのみとなった。創部100年目の代の集大成として、有終の美を飾れることを期待したい。
(記事・写真:栗栖翔竜、堀口綾乃)
◇選手コメント◇
<リーグ戦後>
長谷川大起(総4・木造)
――二部優勝を果たした今のお気持ちは
嬉しいし、良かったです。ほっとした気持ちですね、良かったなという。
――印象に残っている試合は
やはり法政戦ですね。ずっと法政には勝てなくて苦手意識もあったのですが、よく後輩たちが粘ってくれて勝ってくれたなと思います。
――ご自身の取り組みを振り返って
悪い取り組みはなかったのですが、勝ち星にはあまりつながらなかったという印象です。明日はかっこいいところを見せられるように頑張ります。
――優勝できた要因としては
色々あったとは思いますが一つは、1回戦で駒沢に敗れた後に、チーム全員が気持ちだったり集中力だったりを切らさずに次の防衛大戦に持っていけたことが大きかったと思います。
――入れ替え戦に向けて
明日は9人制になるということで総力戦になるので、チーム一丸となって1部昇格できるように頑張りたいと思います。
石井良(経4・慶應義塾)
――今のお気持ちは
感無量ですね。その一言に尽きます。心のどこかで予想外のいい結果が出るのではないかという思いもあったので、まさにその期待通りみんなが応えてくれて、すごく嬉しいです。
――ご自身の取り組みを振り返って
今日は不戦勝で2回勝てたということですが。1点でも落としていたら優勝できなかったので、貢献はできたのかなと思っている部分も少しありますが、やっぱり自分の中で納得のいかないところはあって。落ち着いて相撲は取れていましたが、明日に向けてもう一回自分の相撲を取れるように頑張りたいな、と反省の意の方が強いです。
――印象に残っている取り組みは
法政戦で3-3で回ってきた北原が大将戦で勝ったところですね。うちは法政に対して苦手意識があったので、そのプレッシャーにも負けずに彼は勝ってくれて、来年以降も期待ができると感じました。
――入れ替え戦に向けて
今日はあまり納得できなかったので、1勝できるように頑張りたいと思います。
胡華興(薬4・慶應義塾)
――優勝した今のお気持ちを
団体戦で初めて優勝に貢献できて嬉しいです。
――印象に残った一番を振り返って
初戦の駒大ですね。相手も格上でしたが、先鋒として勝つことができたので流れを作れたかなと思います。
――優勝できたその要因は
全員で勝ち星を挙げて、取りこぼしもなく勝ち切れたからだと思います
––––入れ替え戦への意気込みを
先鋒としてしっかり勝利して、勢いをつけて行きたいと思います。
大森慎之介(環3・東京学園)
――優勝した今のお気持ちを
ホッとしています。ケガしてからチームに貢献できていなかったので、この大会でこれまでの分も貢献出来たのではないかなと思います。
――印象に残った一番は
大東大戦です。戦った相手とは高校時代も対戦していたのですが、プレッシャーのある中で勝てたことで調子を取り戻すことができました。
––––入れ替え戦への意気込みを
気持ちを切らさず、いつも通りの相撲をとることができれば勝てると思うのでしっかり戦いたいと思います。
北原英嗣(政3・慶應義塾)
――今のお気持ちは
めちゃくちゃ嬉しいですね。
――個人としては敢闘賞をもらいました
今日はチームのために頑張ろうと思った結果、敢闘賞もいただけて。特に意識していたわけではないですが、チームが優勝できそうだったので一つ一つ集中して取り組みました。
――印象に残っている取り組みは
法政大学との取り組みです。3-3で私のところに回ってきたときの相撲が今日一番印象に残っています。私の同期の大森も後輩の長谷川貴規もけがをしている中、しっかりと勝ちを法政から取ってきてくれて、私も彼らに負けないように奮起して臨めました。今日一番いい取り組みが法政戦だと思っています。
――入れ替え戦への意気込みを
今日は全勝だったので、明日も必ず勝ちたいと思います。
長谷川貴規(環2・木造)
――優勝した今のお気持ちを
久々の優勝が100周年という節目の年という事で、金沢、十和田と戦ってきた中で結果が出たのは良かったです。ただ明日もあるので切り替えて頑張りたいです。
――印象に残った一番は
法大戦です。ケガがをしていて調子が悪かったのですが、気持ちを出して勝利できたので流れが出たかなと思います。
––––入れ替え戦への意気込みを
二部のトップ校として気持ちを入れて勝ちを狙っていきたいです。
中村隼輔(経1・慶應義塾)
――優勝した今のお気持ちを
率直に嬉しいです。
――ご自身の活躍も目立ちました。印象に残っている一番は
初戦の駒大ですね。二陣で出場していて流れを作る役目があると思っていたので、いい相撲で勝てたのが良かったと思います。
――入れ替え戦への意気込みを
1年生なので勝ち負けにこだわらず、勢いのある相撲で流れを作りたいと思います。
<入替戦後>
長谷川大起(総4・木造)
――試合前チームでどんな話をしていましたか
挑戦者なので気楽に立ち向かっていこうという話をしました。
――入れ替え戦を振り返って
悪い相撲を取っている人はいませんでしたが、相手が強く慶應の力が足りなかっただけです。
――来月にはインカレが控えています。意気込みを
インカレは1部からのスタートになるので、逆に2部から上がってくるチームと戦うという事で、力を発揮して1部に残留できるように頑張ります。次の大会まで短いようで長いのでしっかり調整していきたいです。