12月1日(日)、少林寺拳法部の早慶定期戦が行われた。新人の部では、昨年の早慶戦にも出場した千田、多田両名の活躍で逆転勝利を挙げる。昨年の雪辱を誓った本戦の部。代表戦までもつれる白熱の一戦は、早大に軍配が上がった。
≪新人の部≫
| 慶大 |
| 早大 |
先鋒 | 諸江優(政2・慶應・一級) | 〇2-0 | 笠井直樹(政経2・駒場東邦・二級) |
次鋒 | 岡田希美(政1・女子学院・五級) | ●0-3 | 籾実吹(社1・大阪産業大付属・三段) |
中堅 | 西山航生(文1・厚木・五級) | ●1-2 | 下村裕太郎(政経2・聖光学院・二段) |
副将 | 千田有希乃(薬2・桐生・二段) | 〇3-0 | 小林果鈴(文1・Harrison High School・五級) |
大将 | 多田光伯(商2・逗子開成・一級) | 〇3-1 | 芝田健自(商2・城北・三段) |
≪本戦の部≫
| 慶大 |
| 早大 |
先鋒 | 金大玄(法2・清州大成・一級) | △1-1 | 鬼頭良空(文2・明和・二級) |
次鋒 | 友田陽太(経3・志学館・三段) | 〇1-0 | 渋谷錬(法3・新潟第一・二段) |
中堅 | 佐藤ひかり(商3・普連土学園・初段) | △0-0 | 山口琴弓(教3・桐蔭・四段) |
副将 | 入江誠志郎(経3・慶應・初段) | △1-1 | 大橋知直(文構3・早稲田実業・三段) |
大将 | 坂井康太郎(文3・東京都市大付属・初段) | ●1-2 | 岩田悠一朗(人科3・川越東・三段) |
代表戦 | 入江誠志郎(経3・慶應・初段) | ●0-1 | 大橋知直(文構3・早稲田実業・三段) |
《競技説明》
今大会は2年生以下が出場する「新人の部」と、部内セレクションを勝ち上がった部員が出場する「本戦の部」に分かれて行われる。試合は前後半ともに1分ずつで、スピード感あふれる攻防が見どころの種目だ。判定は技ありのみで、その本数の差によって試合の勝敗が決する。また、最終的な早慶定期戦の勝敗は、本戦の部における勝ち数で決定される。
《新人の部》
先鋒戦 諸江優(政2・慶應・一級) 〇2-0 笠井直樹(政経2・駒場東邦・二級)
部員からの大きな声援を合図に、新人の部が始まった。慶大の先鋒を務める諸江は、早慶戦初出場。一方の早大は、昨年度新人の部で大将を務めた笠井を先鋒戦に送り込んできた。チームの勢いを決する重要な一戦。その重圧を和らげるため、主将・坂井がさっと近寄り、声をかける。諸江は晴れやかな顔で立合へと向かった。
先に試合を動かしたのは諸江。立合開始直後の一撃だった。その後は相手の反撃をうまくしのぎ、無失点のまま試合を折り返す。1点リードで迎えた後半戦も、諸江は攻め続けた。33秒には上段突きが入って勝負あり。早慶戦初出場で見事勝利をつかんだ。
次鋒戦 岡田希美(政1・女子学院・五級) ●0-3 籾実吹(社1・大阪産業大付属・三段)
続く次鋒戦は女性拳士同士の立合。慶大の岡田が実力者・籾に挑んだ。試合序盤に先制を許すも、臆せず前に出て1点差のまま後半へ。1分間のインターバルではほかの部員から「のぞみ」コールが起こった。この後押しに応えたい岡田。しかし、全国レベルの壁は高かった。後半に2つの有効をとられ、最後まで籾の牙城を崩すことはかなわなかった。
中堅戦 西山航生(文1・厚木・五級) ●1-2 下村裕太郎(政経2・聖光学院・二段)
勝敗を大きく左右する中堅戦。西山と下村は互いに初出場だ。西山は突きを中心に攻め込み、前半30秒で一本目の有効を奪取。しかし、試合は簡単には終わらない。後半29秒、両者がほぼ同時に攻勢をかけ、紅白の旗がそれぞれあがった。審判団が集まり、協議が始まる。命運を握る一点は、早大に入った。この有効で流れを失い、残り10秒のところで勝ち越しを許した。
副将戦 千田有希乃(薬2・桐生・二段) 〇3-0 小林果鈴(文1・Harrison High School・五級)
1勝2敗と追い込まれた慶大。しかしここで副将千田が意地を見せる。前半は有効こそなかったものの、終始攻め込み、相手に隙を与えない。すると後半24秒、44秒さらには試合終了間際にも蹴りが入って3-0の快勝をあげた。
大将戦 多田光伯(商2・逗子開成・一級) 〇3-1 芝田健自(商2・城北・三段)
勝負は大将戦に託された。この一戦は奇しくも、昨年度の早慶戦と同じ組み合わせ。一年越しの再戦という格好になった。本戦の部に出場予定の部員からも激励の声が飛ぶ。両者が決戦の舞台に立ち、最後の一戦が始まった。前半12秒、さっそく早大・芝田が仕掛ける。この一本が有効となり、多田は先制を許す厳しい展開に。1分間の休息の間、部員たちが多田の周りに輪を作り、声をかけた。輪が解け、後半が始まる。はっきりと流れが変わった。後半開始直後、上段に強烈な突きが入って同点。折り返しとなる30秒には中段に突きが入って勝ち越し。そして仕上げの一発、上段に3度目の突きが入った。後半怒涛の攻撃で相手を圧倒した多田が見事大将戦を制し、新人の部勝利を決めた。
《本戦の部》
先鋒戦 金大玄(法2・清州大成・一級) △1-1 鬼頭良空(文2・明和・二級)
新人の部の興奮冷めやらぬ中、本戦の部が始まった。先鋒は昨年の新人戦で大将を務めた金。序盤から積極的に攻めるものの、相手に上手くかわされ技ありを取れずにいると、後半26秒に一瞬の隙を突かれ技ありを許す。このまま終了かと思われた試合終了間際、金の上段突きが入り、1−1での引き分けとなった。
次鋒戦 友田陽太(経3・志学館・三段) 〇1-0渋谷錬 (法3・新潟第一・二段)
続く次鋒戦には友田が出場。前半は両者相手を牽制しあう形でなかなか攻めることができず0−0で終わった。後半は一転して両者が果敢に技ありを取りに行く中で、20秒に中段蹴りが決まり先制に成功する。その後も相手の攻めを守りきり、本戦初勝利を飾った。
中堅戦 佐藤ひかり(商3・普連土学園・初段) △0-0山口琴弓 (教3・桐蔭・四段)
女性拳士が出場する中堅戦。慶大からは佐藤が出場した。前半はなかなか踏み込むことができなかったが、相手の動きをしっかりと見切り、技ありを取らせることなく大きな引き分けを手にした。
副将戦 入江誠志郎(経3・慶應・初段) △1-1 大橋知直(文構3・早稲田実業・三段)
副将の入江誠志郎の相手は3年連続で大橋。過去2年は引き分けに終わっているこの二人は前半様子を見ていたが、後半に入ると大橋が入江の攻撃をかわし逆に技ありを決める。しかし入江も再開直後に中段蹴りで技ありを取り同点に追いついた。その後も勝つために技ありを両者狙うも奪えず。結果、3年連続の引き分けに終わった。
大将戦 坂井康太郎(文3・東京都市大付属・初段) ●1-2岩田悠一朗 (人科3・川越東・三段)
引き分け以上で勝利が決まる大将戦、主将を務める坂井に前半アクシデントが襲う。30秒に相手に蹴りで技ありを取られた際に足首を痛めてしまったのだ。それでも気迫溢れる攻めを見せ同点に追いつこうとするが、後半30秒に再び蹴りで技ありを取られてしまった。これで万事休すかに思われたが、45秒に渾身の突きが決まり1点差に詰め寄る。しかし反撃もここまで。1−2での敗戦となり早慶戦の勝利の行方は代表戦に委ねられた。
代表戦 入江誠志郎(経3・慶應・初段) ●0-1大橋知直 (文構3・早稲田実業・三段)
代表戦の出場者は、慶大から入江、早大から大橋となり、これで3年間で4度目の顔合わせとなった。これまで全て引き分けという2人の戦いだったが、23秒に大橋が技ありを決め、先制する。早慶戦勝利のため、入江は同点さらには逆転を狙う。しかし、なかなか技ありを取れず時間は刻一刻と進んでいった。これまでかと思われたが試合終了直前、入江の蹴りが入る。同点の一撃かに思われたが、審議の結果認められず、2年連続の早慶戦敗北が決まった。
「状況を呑み込めず、呆然としていました」。坂井は敗戦が決まった時のことをこう振り返る。2年ぶりの勝利を目指した早慶戦。両校の差は紙一重だったように思える。代表戦直後、入江、大橋の両者は健闘をたたえ合い、熱く抱擁した。すべてを出し尽くした末の敗戦、得るものはきっと大きかったことだろう。この無念を胸に、慶大少林寺拳法部は新しい一歩を踏み出した。
(記事:野田快、國本葉月 写真:澤田夏美、野田快)
《試合後コメント》
入江誠志郎(経3・慶應)
――率直に大会を振り返って
去年の慶早戦で敗れて以来、必ずや雪辱を果たすと誓い今年の慶早戦勝利に向けて努力してきただけに、とても悔しいです。
――3年連続で早大大橋選手との対戦となりました。どういう意識で試合に臨みましたか
今年こそはこの因縁の戦いに決着をつける、まずはその一心で試合に臨みました。彼とは3年連続で戦うわけですから、既にお互い手の内をほとんど知り合っている状態です。それまでの彼との戦績は全て引き分けでしたから、もう自分の力を全て懸けて体当たりするしかない、そう思いました。
――初戦は引き分けという結果になりました。この結果についてはどうお考えでしょうか
初戦については2つの見方ができると思います。1つ目は、個人の戦いでみた時、早大大橋君との戦いでまたも引き分けに甘んじてしまったというネガティブな見方。3年連続で彼と戦い、いよいよ決着をつけることができなかったことを悔やみました。2つ目はチーム全体としてみた時、引き分けて良かったと思うポジティブな見方。慶早戦本戦は計5試合あり、勝ち星の多いチームが勝利します。私は4試合目の副将戦で引き分けた時点で、チーム慶應としては1勝3分0敗でしたので、大将が引き分け以上で終われば勝ちという、圧倒的有利な状況に持ち込むことができ、ほっとしていました。
――代表戦の拳士として選出されました。あの時の心境を教えてください
副将戦が終わった時点でチーム慶應の勝利をほぼ確信していただけに、自分の出番が再度訪れ、内心驚いていました。やはり慶早戦は何が起こるか分からないなと。大将の坂井が自分を代表戦の拳士に選出してくれた時は、「もうやるっきゃない」と腹を括っていました。
早大の代表拳士も予想通り大橋君で、決着をつける最後の機会を神様がくれたのかな、という気持ちでもありました。緊張はほとんどなく、むしろ冷静でした。
――最後は0-1で敗れるという結果になりました。敗因はどういったところにあったのでしょうか
敗因は、予想以上に長く見合ってしまった点だと思います。まず前提として、大橋君は相手の攻撃に対するカウンターが得意な「待ち拳」タイプ、対して僕は相手との間合いが詰まった瞬間、先に早い攻撃を仕掛ける「攻撃型」タイプです。にもかかわらず、試合中予想以上に見合ってしまい、気づいたら自分が待ち拳側に回ってしまっていたことが大きな敗因だと思います。中々先手の攻撃を仕掛けることができず、自分の強みが活きない中で相手の蹴りをもらい、とうとう取り返せずに敗北しました。
――早慶戦には惜しくも敗れましたが、ここから新チームが始動すると思います。最後に来年の目標を教えていただけますか
まずは来年度最初の大会である、関東学生大会で演武、立合両部門での優勝です。我々61期が幹部となって最初の学生大会のため、この悔しさを糧に、チーム一丸となって優勝を目指します。
坂井康太郎(文3・東京都市大付属)
――まずは新人の部についてお伺いしたいと思います。新人の部では、坂井主将が後輩に声かけをするシーンが目立ちました。どんなことをお話ししていたのでしょうか
新人の部は直接の勝敗に関係ないので、「プレッシャーは感じずに思いっきり相手に向かっていけ」と声掛けをしていました。
――新人の部を振り返って、坂井主将から見た後輩たちの収穫と課題をそれぞれ教えてください
新人の部では今年度日本一に輝いた早稲田大学相手に勝利したということで、収穫という意味では、何よりも「自信」がついたのではないでしょうか。
慶應義塾體育會少林寺拳法部の部員としてのプライドを持てるようになったのではないかと思います。
――本戦には大将として出場されました。ご自身の出番まで、どういった心境で過ごされていましたか
とにかく自分のことは最後に置いておいて、部員一人ひとりに声を掛けて鼓舞することを意識しておりました。後輩たちや同期が緊張やプレッシャーを感じる必要は無いと考えており、できるだけ彼らの緊張を緩和して思いっきり試合ができるように、という心境でした。
――ご自身の戦いを振り返って、率直な感想をお願いします
率直に、「悔しい」の一言です。しかし、同時にやり切ったという清々しい気持ちです。
――代表戦には入江さんを選出しました。あの決定はどのように成されたものなのでしょうか
一週間以上前から、万が一代表戦になった時のことは話し合っておりました。入江がチームの中で一番優れたスピードを持ち、かつ高身長なので前々から入江が代表戦に出場することは決めていました。
――最終的には惜しくも敗れてしまいました。敗戦が決まった時の心境を教えていただけますでしょうか
どうして負けたのかわからないという心境でした。状況を呑み込めず、茫然としてしまいました。敗戦直後に悔しさは感じませんでした。
――ここから新チームが始動します。主将として、どのようなチーム作りをしていこうとお考えですか
部員一人ひとりを大切にするチームを作ります。部員がいなければ、慶應義塾體育會少林寺拳法部は存在できません。部員一人ひとりが、我が部に入部したことで何か一つでも学びが得られたと思えるチーム作りをしていきます。それを前提として、勝利にはこだわりたいと思っています。単なる仲良しクラブではなく、必要とあらば互いに本音をぶつけ合い、切磋琢磨できる仲間に囲まれた最高のチームを作り上げていく所存です。