本日から3回に分けてお届けする應援指導部特集。初回のテーマは応援席を一つにまとめる「応援指揮」。この伝統ある大役を務めているチアリーディング部のJさん(2年)は、応援指揮に強い特別感を感じていた。そして彼女が応援指揮を執ることは、新しい應援指導部の象徴でもあった。
応援指揮としての責務
野球の応援席、楽器を演奏する吹奏楽団員や声と踊りで選手にエールを送るチアリーディング部員の中でも、一際目立つのが、「応援指揮」である。応援席のメイン台に立ち、指揮を執ることで応援席を一つにまとめるという大役を務めているのが、チアリーディング部の2年生・Jさんだ。応援指揮は誰にでもできるわけではない。「その機会がない人もいるので、機会があるならなおさらチャレンジしたい」と思い、自ら応援指揮に立候補した。
応援指揮を主に務めているのはJさんと、同じくチアリーディング部2年生のKさんだ。Jさんは立候補した人が自分1人だったとしても応援指揮はやるつもりだったと、応援指揮に対して強い思いを持っている。それ加え、同じく応援指揮を務めている同期は、精神的な支えにもなるし、お互い高め合うことができる貴重な存在である。
ただでさえ週に5~6日練習がある應援指導部。普段のチアリーディング部の練習に加え応援指揮の練習もしなければならない。試合中もチアリーディングの衣装で踊り、指揮を振るときはセーターを着る。決して楽な役割ではないし、全員に務まるものではないだろう。さらに応援指揮の練習では長時間腕を振り続ける。男子部員に比べると力が弱くキレが違うと本人も実感しているという。そこでJさんは、目力や姿勢などで堂々とすることを意識して取り組んでいる。
「腕の形の見栄えが応援指揮の見栄え、そしてそれが応援席の雰囲気に直結する」と語り、強い責任感を持って、誰よりも応援のことを本気で考えているJさんだからこそ務まるのかもしれない。そして同期・先輩たちもそんなJさんの指揮に感化され一体となった応援を見せるのだ。
初めての指揮、そして慶早戦という大舞台
初めて応援指揮を執ったのは野球部の東京六大学春季リーグ戦の立大戦だった。周囲からの期待もありプレッシャーを感じ、さらに本番までの練習はたったの5~6回ということもあり、とても緊張していたというが、当日は応援指揮の役割を全うした。その時の景色は今でも鮮明に覚えているという。試合後には、「応援指揮は唯一無二のもので言葉に形容できない」と、その特別さを改めて強く感じた。
応援指揮をやる前に抱いていたイメージは「厳格で格式高く特別なもの」であった。今もその思いに変わりはないが、実際にやってみて良い意味で応援指揮を身近に感じることができた。憧れていた応援指揮を務めることができたという達成感とともに、「これからは自分が応援を指揮する」という強い決意の表れだったのかもしれない。立大戦後から指揮を執っているが、相変わらず緊張するという。しかし、上手くなったと声をかけてもらえるようになり、試合を重ねるごとに成長していることを本人も実感している。
数ある応援の中でも特別なのは野球の慶早戦である。準備段階から気合が入っており、有志の企画や早慶合同のデモンストレーションもある。盛り上がりは東京六大学の他の試合とは別格で、大勢の観客が神宮球場を訪れ、テレビでも放送される。その分責任は重大であり、大学の代表としての意識も持つようになった。秋は従来通り、内野席で応援ができる可能性が高い。その時には、より一層迫力のある魅力的な応援が見られるに違いない。
新生・應援指導部
應援指導部は変わった。6月18日に行われる「六旗の下に」で、他大学では応援指揮を行うのは主に4年生。しかし慶大では、その舞台でもJさんやKさんら2年生が応援指揮を行う。もともと男子部員しかやってこなかった応援指揮を女性の2年生が任されていることは大きな変化だ。「みんながやりたいことをできる環境」という理想に少しずつ近づいていることを象徴している。慶大の強みは、性別や部門にとらわれずに全員が、どうしたら応援が届くのかという視点を持てていること。形式だけの伝統を変え、新しいことに挑戦していく應援指導部の目指すところは、熱い想(おも)いを届け、皆で一つの応援を作りあげることだ。そんな思いを背負い、応援指揮としての自覚と誇りを胸に、彼女らは日々指揮を振り続けている。
※写真はすべて慶大應援指導部提供
第2弾はこちらから→【塾生注目! 應援指導部特集②】応援企画責任者対談~観客と一体の応援を部員全員で作り上げる~ | KEIO SPORTS PRESS (keispo.org)
(取材・記事 長沢美伸)