本日9月10日(土)、味の素フィールド西が丘にて第73回早慶サッカー定期戦(早慶クラシコ)が行われる。慶應スポーツではクラシコにあたり、計14人の選手に取材。第6弾は田村主将と川野副将。けがで離脱を余儀なくされた両選手。激動の今季ここまでを振り返りつつ、最後の早慶戦にかける思いを語ってくれた。
――今シーズンここまでを振り返って
田村:今年は昇格を大きな目標としてここまでやってきました。昇格に向けてなんとしても2位以内での自動昇格、3位に入っての入れ替え戦を目標としています。ただ現時点では6位と言うところで前期途中まではよかったかなと言うところなんですが最後の3戦などは自分も離脱してしまったりとか、チームとしても上位対決で勝ちきれなかったところがありました。混戦ではあるんですけど結果としてはまだまだ満足いく結果は出てないのかなと思います。
川野:リーグ優勝、昇格を掲げる中で序盤は良かったんですがだんだん失速していってしまいました。最初は勢いが良かっただけに相手にも対策されてしまったことが失速につながったかなと思います。これを受けて中断期間を使いながら、新たな戦術や対策されてもそれを上回れるような対策をしているのでこれから目標達成に向けて勢いをましていけるかなと思います。
――個人をここまでを振り返って
田村:なかなか4年になるまでシーズン通してスタメンで出続けると言うことが正直なかくて。しかし今年主将であるからには出続けなければいけない、結果を出さなければいけない立場になって、スタメンとして出してもらえるようになりました。シーズン始まってから自分なりに数字を残すという目標の中、アシストだったりゴールで数字を残せた部分もあるとは思うんですけど、自分としては主将としてピッチで戦ってなんぼと思っているので前期は8試合しか出ていなくてそれ以外はけがで欠場していると言うのは不甲斐なく情けないなと思っています。
――どういったけがでしたか
田村:関東リーグ戦、試合中でのけがでした。早いスピードでドリブルする中で全体重が膝に乗っかる形になってしまいました。そこで右膝のお皿を骨折してしまったこととその下の腱も断裂してしまっていると言うところでかなり大きなケガで、通常だと全治4〜6ヶ月と言われています。ただ幸いなことに最短で10月に復帰できると言うところで、11月にリーグ戦は9試合あるのでそこでなんとか復帰したいです。
――けがをしてしまった時の心境は
田村:正直今まで膝のけがは一度もしたことがありませんでした。あの試合、倒れて膝を触った時にもう大きなけがだとわかって、色々なことを考えたし動揺もして、膝の骨折れているのかな、靭帯切れているのかなとか、膝だと復帰まで半年から1年だともう引退かなとか、色々なことを考えて最初はすごく言葉にできないくらい悔しさもありましたけど、チームは上位対決を控えている中で試合に出られない、この先昇格に向けてピッチに立てないと言うことをすごく考えて自然と涙が出たり、辛かったと言うのが正直なところでした。
――リハビリを経て心境に変化は
田村:今はけがをしてから二ヶ月が経ったのですがここまで順調に来ているというところでけがから大体一ヶ月、一ヶ月半あたりからグラウンドには顔を出すようになって、自分がいない中でも各選手が主体となって声を出して頑張っている姿をみました。入院中にもみんなの頑張っている姿をオンラインでもみてきてそう言う姿を見るとすごくリハビリにも熱が入るというか早く戻らないといけない、待ってくれている人がいるなら自分も1日でも早く戻りたいなと言うそこの思いはすごく強くなったし、ピッチの外でも自分のできることをしようという思いが強くなりました。
――主将の大きな怪我、川野選手はどうお考えになりましたか
川野:当然戦力として絶対的な存在なので最初はそういった存在がいなくなることが残念に思いました。ただけがに関してはどうすることもできないし、試合中頑張ってくれた結果そうなってしまったので後はみんなでどうカバーできるかと言うところで。言い方は難しいですが主将がけがをしたことである意味チームが団結したと言うか、それまで多くを背負ってくれていた主将の分をみんなで、特に4年を中心に支え合うことで団結したかなとは思います。
――川野選手は個人的にここまでを振り返って
川野:去年の主力だった4年生が抜けた中で、チームを勝たせられる選手になりたいと思って臨みました。理想は昨年の橋本健人選手のようにゴール、アシストと結果を出せるサイドバック、攻撃的なサイドバックを目指してプレーする中で実際まだゴールは決められておらずアシストも少ないと言うところで数字の面ではあまり満足できていないです。また(田村)裕二郎が抜けた後のリーグ戦3試合では1勝もできなくて、そこで自分がキャプテンマークを巻かせていただいて、チームを勝たせることができなかったところが反省で、穴を埋めきれなかった自分にも原因があるのかなと思っています。今はけがをしてしまっているんですが後期に関しては裕二郎が戻ってきた後も副将としてチームを支えたいです。
――どういったけがですか
川野:自分は左膝の内側の半月板を損傷していてこの後(8月中旬時点)手術になります。ただ簡単な手術ではあるのでリーグ戦後期や早慶戦には戻れる予定です。裕二郎より早く戻れる予定なので、チームを勝たせられるように頑張りたいです。
――ここまで印象に残っている試合は
川野:前期、ホームの日大戦です。試合は先制しながらも逆転されて、その後自分たちが再び逆転すると言う試合でした。その試合の逆転ゴールのアシストをしたのが自分で、ホームグラウンドで限られた人数ですが応援も来てくれていた中で苦しい状況を逆転でき、しかも自分のアシストで勝利に導けたと言うところで、先ほど言ったチームを勝たせられる選手ということが体現できたと印象に残っています。
田村:自分も日大戦は印象に残っています。ホーム3連戦があった中で1戦目を落としていて、ホームで連敗は避けなければいけないし昇格に向けてもホームで勝てないと話にならないと思って臨んだ試合で後半にひっくり返すというところでひっくり返したのも2、3分の間にひっくり返したという試合でした。ピンチも多かったですが体を張って守って、逆転して勝つというところはチームの成長を実感した試合だったと感じます。
――ご自身の強み、持ち味は
田村:多分これは(川野)太壱も言うんですけど、お互い左利きなのでチームにとって左利きは希少で、今シーズン左の前を主戦場としてやっているのでそこでいかに攻撃の起点になれるか、決定的なシュートやパスを出せるかという左足の精度が自分の中で大きな武器だと思っています。ドリブルなどで仕掛けるというところは長所だと思いますね。
川野:自分はDFでサイドバックなんですけど、長所は攻撃だと思っています。中学3年までFWをやっていて、高校2年生からサイドバックをやっている中で自分は攻撃的なサイドバックとしてチームの攻撃を活性化させられるところです。特に仲間を追い越して前線へ攻撃参加する、走る力がストロングだと思っています。苦しいところでも妥協せず走って、仲間のおとりにもなるし自分で切り開くし、というところを90分続けられるところですね。
――お互いの魅力は
川野→田村:サイドハーフの中でも左利きが貴重で、特に右サイドもできる左利きの選手がこのチームでは少ないんですけど、僕としてはそれがとてもありがたいことで。左足で中に切り込んでくれると左サイドまでボールが回ってきてくれるんですよ笑。なので祐二朗がキープして切り開いてくれたところを最後一番美味しいところで右サイドに持ってきてくれるのでそうしたシーンがさっき述べた日大戦でもあったので自分としてはいいなと思うとこえろです。
田村→川野:身体能力が高いので、攻撃の部分でも守備の部分でもここ最近太壱のいない試合というのは守備も結構やられるシーンも多くて、攻撃でも守備でも走れて戦える選手なので、安心して見ていられる部分があります。また今年からボールを回すスタイルを作っている中で落ち着きどころにもなるし運べる選手だと思うので相手が来た時にパスへ逃げるのではなくてドリブルで剥がすこともできる大切な選手かなと思います。
――主将、副将に就任した経緯は
田村:例年話し合いが多いのですが、年によって決め方には違いがあります。今年は立候補は募らないという中で最初から投票という形で、そこから話し合ってと言う形でした。自分は1年生の頃から上のチームでやらせてもらっていたと言うのがあってミーティングなどで仕切る場面も多くて同期はみんなから票を入れてもらいました。そこは信頼を感じて自分のやる気にもつながって、主将として今シーズンチームに全てを捧げたいなという心意気ができました。
川野:副将を何人にするかはさまざまな案がありましたね。
田村:そうですね、4年生全員で引っ張っていきたいなというのがある中で副将を多くすると彼らに頼ってしまうことになるんじゃないかとなりました。主将と副将一人づつにすることでその2人を4年生全体で支えるという体制にしようという感じです。
――お互いにどういう主将・副将ですか?
川野:祐二朗は「どっしりタイプ」ですね。背中で引っ張るタイプですね。プレーもそうですし私生活も含めて早寝早起き、健康的な食事で(笑)。アスリート的な尊敬できる部分が私生活からピッチ内まであります。
田村:自分よりも本当にいろんな人と関わってきた経緯がある選手だと思っているのでいろんな人の立場、それはトップチームだけじゃなくてそれ以外の選手たちの思いや気持ちもわかる選手なのでいろんな人の意見を聞きながらチームのマネジメントをしてくれます。自分もチームを引っ張っていく過程の中で助けになっている部分かなと思います。
――主将・副将となり昨年と変わったところは
川野:去年まではあまり試合に出ていなかったこともあるんですが自分のためにプレーしていた部分がありました。自分が試合に出るためとか勝利よりも自分がうまくいくか、でした。悪い時だと同じポジションの選手の活躍をよく思わなかった自分がいたんですけど今年は立場もそうですし試合にも出るようになって自分が活躍できるかよりチームがどうやったら勝てるか常に考えながら試合中も、サッカーしていない時もどうやったら勝てるか、仲間や後輩が上手くなるか、常に考えながらプレーしているところが大きな違いかなと思います。
田村:基本は今言ってくれたところは同じで、4年生というところもあって何を残せるかというところを結構考えています。やっぱり100年近く続く組織の中で4年間、何かを残していかなければいけないという中で、ピッチ内外で下級生や今後の組織に向けて何を伝えていけばいいか考えながら下級生ともコミュニケーション取るようになったかなと思いますね。
――早慶戦には出場できそうですか?
田村:個人的に出場は厳しいことは厳しいんですけどそこを目指すことによって10月からの試合には良いコンディションで臨めると思うので目指したいとは思っています。
川野:手術を控えていることはあるんですが短期間で治るような治療法をお医者さんにも無理を言って選択していただいたりとかチームドクターにも頼んでいたりとか残りの大学サッカー人生でなるべくピッチにいられるように配慮していただきました。おそらく早慶戦にも出れると思います。
――どのようなプレーを見せたいですか
川野:基本はいつも通りですね。早慶戦だからといって独りよがりなプレーをしたら先ほど言ったような自分のためにプレーするような選手になってしまいます。どうやったらチームを勝たせられるかを常に考えています。そのように考えていると仲間が輝いている瞬間も好きなのでアシストでもいいですしアシストのアシストでもいいですし、自分のプレーで仲間が輝く、そんなプレーを引き出したいです。
――田村主将はどんな姿を見せたいですか?
田村:ピッチに立っていても、立っていなくても、試合に出られなくてもあいつのためにプレーしたいと思ってもらえる存在でありたいと思っています。早慶戦はいろんな人の夢が詰まっていると思っていて自分が出たい、輝きたいと思うような舞台だと思うんですがそうした舞台で誰かのために戦いたい、自分だけじゃなくてその舞台に立ちたくても立てない選手が多くいる中でそういう人たちのためにプレーしたいと思ってもらえるくらい、ピッチに立っていなくても支える側としてもチームのためにできることをやりたいです。
――早慶戦はやはり特別な舞台ですか
川野:初めて早慶戦を見たのが高校3年生で、自分は内部進学なので慶大への進学が決まった中で観戦しました。当時は1万人近く観客が入っていて、大学サッカーでこれほどまでに熱狂する試合があるのかと感じました。プロのサッカー選手を目指していた自分もいたのでこのような試合ができるのは本当に素晴らしいなと思いましたね。そこからどうしても早慶戦というのは自分の中でも出たいと思う特別な存在であったので、プレーはいつも通りと言っても気持ちが昂る部分はやはりありますね。
田村:自分は1年生の頃にベンチに入れてもらってコロナ前の観客1万人以上の等々力競技場の熱狂を見て、2、3年はメンバーを外れてサポート側に回るという、ピッチの中からも外からも早慶戦を見てきて、もちろんみんなメンバーに入りたいと思ってやっていますけど、入れなくてもその悔しさを押し殺しながらピッチ外でその舞台を作り上げる奮闘を身近に感じてきて、早慶戦は作る側にとっても夢が詰まった舞台だと思っているし、独特な舞台だと思っているので各選手には頑張ってもらいたいですし、個人的にはそこに立てなくともその雰囲気を味わいながら連覇を成し遂げたいなと思っていますね。
――警戒する選手は
川野:小倉陽太(スポ3・横浜FCユース)ですね。ユース時代の一つ下の後輩で、来年横浜FC内定が決まっています。大学を経由してもう一度も解いたクラブに戻るということは素晴らしいことで、ただ一個下の後輩であるからこそ負けられない、内定を向こうが決めたからこそ負けられない気持ちは湧いてくるので、個人的に注目しています。
田村:ピッチにいる全員がプロになる能力を持った選手だと思います。慶應から見るとそういう人たちを相手にするのは燃えるものが必ずあると思うので、個の力に負けない総合力、組織力、その戦いは見どころはあると思います。相手の柴田徹主将(スポ4・湘南ベルマーレU-18)も前十字靭帯のケガをしているというところで同じような境遇で早慶戦を迎えるというのは特別な存在かなと思います。
――チーム全体としての目標は
田村:間違いなく連覇というのはあります。おそらくこの前の大きな連敗の前が連覇だったはずです。ここで連覇できれば自分達の代でも歴史を作れるというのは大きいと思います。M連覇できればた来年以降も3連覇4連覇と目標ができてくると思うので後輩たちにも連覇の可能性を残すという意味でも2連覇の価値はあるのかなと思っています。
――1部を戦う相手とチーム全体としてこういう試合がしたいというのはありますか
田村:基本的には普段と変わらずだと思います。連覇がかかっているとはいえチャレンジャー側だと思うので、だからこそ相手のうまさに対してどうやって大事にしているハードワークのところ、相手より走って戦うという、一歩一秒にこだわるという泥臭さのところは見応えがあると思います。
川野:リーグで見たらもちろんチャレンジャーですけど、早慶戦でみれば相手もチャレンジャーなので、リスペクトしすぎず、いつも通り一丸で戦いたいですね。
――スローガンに込めた思いは
田村:「For One〜一への拘り〜」というスローガンを掲げています。昨年関東リーグ2部降格となってしまいましたがあと一勝していれば残留、最終節であと一点取っていれば入れ替え戦に回ったりなど、あと一勝、あと一点という「一」というものがどれだけ重要か痛感したので、1試合1試合全力で戦いながら1点でも多く取り、一失点でも少なくそう言った戦いをしながら1歩、一秒に全員がこだわるサッカーがしたいという思いを込めました。
――リーグ戦への意気込みをお願いします
田村:今年はコロナ禍もあり消化試合数に差があります。相手の勝ち点などを見ながらというのが難しいと思うので自分達の目の前の1試合1試合を大事に戦う、そして昇格を争う相手には絶対に負けないというところが大事になると思います。特に10月11月の連戦は勢いが大切だと思います。勢いに乗れば一気に連勝もいけると思うので一試合でも多く勝ち星を重ねて可能性がある限り昇格に向けてチャレンジしたいと思います。
川野:昨年一昨年と一部で残留争いをしてきて、苦しみながらもがき続けてきた中で、今自分達はリーグ優勝を狙える位置にいるというところを意気込みながら、楽しむというところも忘れないでいたいです。目標に向けて固くなりすぎず、楽しく結果を出していければと思います。
(取材:松田 英人)