10月20日(木)、2022年度プロ野球ドラフト会議が開催される。慶大野球部からは、東京六大学野球連盟最多の6名がプロ志望届を提出し、秋季リーグ戦で優勝争いを繰り広げながら、野球人生の岐路となる1日を待ち続けている。今回はプロ志望届を提出した6名について、公式戦での活躍を振り返っていく。
◆萩尾匡也選手(環4・文徳)
高校通算43本塁打の強打者として熊本・文徳高時代から注目を集めた萩尾は、2年春のリーグ戦・明大戦で初出場を果たした。「5番・右翼」で先発した萩尾は、リーグ戦初打席でリーグ戦初本塁打を記録し、鮮烈デビューを飾った。3年になると徐々にスタメン出場が増えていき、3年秋には規定打席未到達ながら打率.333をマークし、その後迎えた明治神宮大会では、決勝戦で衝撃のバスター本塁打を放ってみせた。4年春には打率.339(リーグ7位)、5本塁打(リーグ最多)の活躍で、自身初のベストナインを獲得。今季も第6週時点で打率.429、4本塁打、17打点と全部門でリーグトップの成績を残し、戦後16人目となる3冠王を視界に捉えている。
◆下山悠介主将(商4・慶應)
高校時代は慶應高の主将として、チームを春夏連続の甲子園出場に導いたキャプテンシーの持ち主で、1年春からリーグ戦に出場して規定打席未到達ながら打率.353を記録し、打撃技術の非凡さを見せつけた。同年秋には三塁手でスタメン出場し、打率.349でベストナインを獲得した。以降も上位打線や中軸を任され、2年秋には2度目のベストナインを獲得。3年秋の明治神宮大会準決勝・神奈川大戦ではサヨナラ3ランを放つなど、勝負どころでの一打でチームの窮地を救ってきた。主将に就任した昨季は.250、今季はここまで.213と不振に陥るも、明大とのカードで4安打を放ち復調の兆しを見せている。
◆朝日晴人選手(環4・彦根東)
後述の増居とともに2季連続で甲子園出場を果たし、18年選抜高校野球大会では下山が主将を務めた慶應高と対戦したことは良く知られているが、入学後はすぐに結果を残すことができず、リーグ戦初出場は2年春の立大戦だった。結果その年は4試合の出場にとどまったが、朝日が頭角を現し始めたのは、不動の遊撃手であった瀬戸西純(令2政卒)が卒業した3年春であった。シーズン序盤から遊撃手のレギュラーに定着すると打率.324をマークし、いきなりベストナインに輝く。4年春には明大・宗山塁(商2・広陵)との激しい首位打者争いに敗れるも、強力打線の火付け役として十分に機能し、リーグ2位の打率.391を記録。今季も東大3回戦での猛打賞含めマルチ安打を4度記録するなど、安定した成績でチームに貢献している。
◆山本晃大選手(総4・浦和学院)
高校球界の名門・浦和学院から1年の浪人を経て入学を果たした苦労人。1年春に早速リーグ戦初出場を果たすも、起用法は代走や守備固めなど限定的であった。そこから3年間で7試合の出場にとどまり、不遇の時を過ごすこととなる。それでも神宮球場で活躍する姿を夢見てバットを振り続けた結果、4年春に「5番・右翼」でレギュラー奪取に成功する。山本は昨季全13試合にスタメン出場し、打率.340、リーグ戦初本塁打を含む2本塁打をマークし、ベストナインにまで輝いた。今季は立大3回戦でサヨナラ3ランを放ち、明大3回戦では先制3ランを放つなど、記憶に残る活躍を見せている。
◆増居翔太投手(総4・彦根東)
前述の朝日とともにチームを2季連続の甲子園大会へ導き、計4度甲子園のマウンドに上がった経験豊富な左腕。1年春にリーグ戦初登板を果たすと、1年秋には6試合に登板して防御率0.00を記録し、中継ぎの一角として明治神宮大会優勝に貢献した。3年時は第2先発として前エース・森田晃介(令3商卒)とローテーションを回り、4勝1敗、防御率2.10の好成績でバッテリーを組む福井章吾(令3環卒)とともにベストナインを受賞した。副将に就任した4年春は調子を崩し、防御率4.54、30四死球と精彩を欠いたが、今季はここまで防御率1.42、無傷の6勝をマークする大車輪の活躍で、現役最多勝利数を17に伸ばした(第6週時点)。また増居は打撃でも非凡な才能を見せており、ここ3シーズンは規定打席未到達ながら打率2割台後半を維持している。
◆橋本達弥投手(環4・長田)
高校時代の甲子園出場こそないものの、進学校の兵庫・長田高時代は好投手として名を馳せ、報徳学園高・小園海斗(現広島東洋カープ)と対戦し、無安打に封じた経験を持つ。初登板の機会が訪れたのは2年春の明大戦、最終回に登板しリードを保って試合を締めた。3年になると、増居、生井惇己(総4・慶應)、渡部淳一(政4・慶應)など同学年の投手たちがベンチ入りする中で守護神を任され、春・秋ともに防御率0点台の活躍で大学4冠を目指したチームを後押しした。昨季の開幕戦となった東大1回戦ではリーグ戦初先発を経験し、7回4失点でマウンドを降りた。その後は中継ぎに復帰し防御率1.53をマーク。初めて規定投球回に達し、最優秀防御率のタイトルを受賞した。今季もここまで防御率0.52と、守護神として申し分ない好成績を残している。
1年からリーグ戦出場を果たした選手たちも、遅咲きとなった選手たちも、大学4年間でプロの世界へ飛び込めるほどの自信をつけたからこそ、プロ志望届の提出に踏み切ったのだろう。昨年は正木智也(令3政卒・福岡ソフトバンク)と渡部遼人(令3環卒・オリックス)が指名を受け、プロの世界で活躍している。果たしてこの中から指名を受ける選手は誰か。10月20日、いよいよ運命の日を迎える!
(記事:宮崎秀太)