【野球】谷村の本塁打含む3打点&完封で2連勝 待望の勝ち点を獲得! 東大②

野球戦評

5月1日(月)東京六大学野球春季リーグ戦 東大2回戦 @明治神宮野球場

今季初の勝ち点に王手をかけている慶大。東大に2連勝して勝ち点を取り切りたいところ。慶大先発・谷村然 (環4・桐光学園)は、3回までを危なげない投球で無失点に抑える。3回裏、先頭の横地広太 (政1・慶應)が四球で出塁し、続く斎藤快太 (商3・前橋)が犠打で送り1死二塁とすると、先発の谷村が左越2点本塁打を放ち、2点を先制する。自身を援護する先制弾により勢いづいた谷村は、4回と5回を三者凡退にしとめる。しかし6回、2本の安打と盗塁で1死一、三塁とピンチを招くと、打席には2番・矢追駿介(農4・土浦一)を迎える。初球を打った当たりは谷村の正面への併殺打となり、無失点でここを切り抜けた。追加点が欲しい慶大は、下位打線で1死一、二塁のチャンスを作ると、続く谷村が左翼線への適時二塁打を放ち、1点を追加し3−0とした。谷村は、回転の効いた直球とカーブを交えた緩急のついた投球で、9回を96球、3被安打7奪三振で初完封・初勝利をあげた。東大に2連勝した慶大は、勝ち点1を獲得した。

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東大0000000000
慶大00200010X3

◆慶大出場選手

打順守備位置  
1[3] 8吉川海斗(法4・慶應)
2[5]本間颯太朗(総3・慶應)
3[4]廣瀬隆太(商4・慶應)
4[9]栗林泰三(環4・桐蔭学園)
5[7]斎藤來音(環4・静岡)
6[2]宮崎恭輔(環4・國學院久我山)
7[8]横地広太(政1・慶應)
3小川尚人(環4・三重)
8[6]斎藤快太(商3・前橋)
9[1]谷村然(環4・桐光学園)

 

東大バッテリー:●松岡、平田ー和田

慶大バッテリー:○谷村ー宮崎

 

東大本塁打:なし

慶大本塁打:谷村1号2ラン(3回)

1回戦は16安打11得点と、打線が爆発し初の2桁得点をあげ先勝した慶大。日曜日は悪天候のため試合中止となったが、活気付いていた打線が色褪せることなく力を発揮できるかがこの試合のカギを握っていた。これまで4番を打ってきた本間颯太朗 (総3・慶應)が2番に入り、4番には打撃好調の栗林泰三 (環4・桐蔭学園)、5番に齋藤來音 (環4・静岡)と、中軸を組み替えてきた。投手陣では、先発・谷村の投球に注目が集まった。今春の法大2回戦、4年生ながら神宮初登板を果たし、明大戦では先発含め3試合連続登板を経験するなど、激動のシーズンを送っている谷村。勝ち点奪取は、本試合でも谷村が持ち味を遺憾なく発揮できるか、そして慶大打線が谷村をどこまで援護できるかにかかっていた。

1回表、谷村の立ち上がり。東大打線のリードオフマン、酒井捷(文Ⅱ2・仙台二)を直球で簡単に打ち取ると、後続も抑え落ち着きのある投球を見せる。一方、制球が良く粘り強い投球が持ち味の東大先発・松岡由機(経2・駒場東邦)も、慶大打線を内野ゴロ3つに抑え、こちらも安定した立ち上がりを見せた。

2回表、谷村は4番・別府洸太朗(教育4・東筑)に右前安打を放たれ、その後2死三塁と先制のピンチを迎える。ここで谷村は一気にギアを上げた。それまで直球の球速は140キロ前後だったものの、7番・青貝尚柾に対し最速となる146キロの直球を続け空振り三振に仕留めた。勝ち点奪取に向け、「先制されてたまるか」という谷村の気迫がマウンド上で渦巻いていた。

先制したのは慶大だった。先頭の横地広太 (政1・慶應)がバットを一度を振ることなく四球を選ぶと、続く斎藤快太 (商3・前橋)が犠打で送り1死二塁とチャンスを作り、打席には谷村を迎える。初球をファールした後、東大捕手・和田泰晟(農4・海城)の構えはアウトコース。谷村へ松岡の投じた2球目、ど真ん中に抜けたスライダーの失投を、谷村がコンパクトに振り抜いた打球は自身を援護する左越2点本塁打となった。貴重な先制点は、谷村のバットから生まれた。

先制点の好機を作ったルーキー・横地

 

谷村の一発で先制に成功した

初打点をあげた谷村だが、あくまで狙うはこの試合のチームの勝利である。気持ちが乗ってきた谷村は4回5回を三者凡退、それもわずか15球で東大打線を封じ、試合の流れを完全に慶大に寄せる投球を見せていた。

5回裏、谷村に追加点をプレゼントしたい慶大の攻撃。先頭の斎藤快が初球を捉えるも、二塁手の山口真之介(薬3・小山台)が必死に飛び込み、打球は堅守の一、二塁間を抜けず。先頭打者を出塁させたいところを、相手の攻守に阻まれた。続く谷村は三球三振に倒れるも、谷村はバッターボックスの足場をならしてから、自軍のベンチに下がった。相手に流れを奪われたくないという思い、後続の1番・吉川海斗(法4・慶應)からの攻撃に援護点を託す思いが、打席が終わってからの姿勢に表現されていた。

結局序盤を2−0で折り返し、谷村の投球数は51球。相手に付け入る隙すら与えてこなかった谷村が、6回、試練を迎える。先頭の代打・大井温登(教育4・小松)に右前安打を許すと、次打者を抑えた後、打順は1番・酒井に回る。2球目、大井に二盗を許して1死二塁とされ、打率3割超えをマークしている酒井との勝負となった。一打同点のピンチで投じた直球は、酒井のバットをへし折るも無情にも外野に運ばれ、1死一、三塁とピンチを拡大される。迎えるは、1回戦で適時打を含む2安打を放っている矢追。初球だった。矢追の正面への打球は谷村のグラブに収まり、谷村は本塁送球を試みるも、三塁走者が本塁へ突っ込んできてないことを確認すると、冷静に二送。1−6−3の併殺打に打ち取り、ピンチをしのいだ。谷村の冷静さは、どのような場面でも決してブレることはなかった。

直後の6回裏、慶大は本間が懸命な走りで三塁手の失策を誘い、廣瀬隆太(商4・慶應)が変化球を流し打ちし、無死一、二塁とチャンスをつくる。ここで新4番・栗林を迎えるが、初球を引っかけ遊撃手への併殺打に倒れる。齋藤來も二ゴロに倒れ、追加点をなかなか奪えない。

7回裏、試合が再び動く。宮崎恭輔 (環4・國學院久我山)の中前安打で無死の走者が出塁すると、斎藤快の四球も絡み1死一、二塁とする。ここで打席には谷村が向かった。ベンチには代打の切り札・佐藤一朗 (商4・慶應)や俊足巧打の村岡龍 (商1・慶應)、本試合初登録の上江洲礼記(商2・都立小山台)が控える中、堀井哲也監督は動かない。この試合は谷村に全てを託したということなのだろう。そんな堀井監督の采配に応えるかのように、谷村は松岡の初球、今度が直球を左翼線へ適時二塁打を放ち、投げては7回無失点の谷村が、またもや自分のバットで魅せてくれた。勝ち点に向け、自身初完封・初勝利に向け、大きな3点目となった。

9回表、勝ち点まであと3人。谷村の球速は落ちることなく、140キロ台の直球をひしひしと投げ込んでいく。好打者の酒井を変化球3球で見逃し三振に仕留めた後、矢追には全球直球勝負を挑んだ末、栗林が右飛をしっかり捕球し試合終了。谷村の慶大全打点をあげる活躍、97球で相手打線を完封し、慶大は今季初の勝ち点を獲得した。

谷村の投打にわたる、まさに二刀流の大活躍を見せてくれた本試合。谷村は、投げる方では初勝利、初完封を収め、打つ方では初安打、初本塁打、初打点と、初物づくしの記念すべき日となった。序盤から投球間の時間をあまり空けず、テンポ良く直球と変化球を、緩急をつけながらコーナーに投げ分けていた。要所で球速を上げるなど、試合を通しての緩急も見られた。この試合で勝ち点を取り切るんだという熱さもある一方、6回には好判断でピンチを切り抜けるなど、冷静さも光った投球だった。テンポが良いので、守る側も守りやすいのか、無失策で谷村を盛り立てた。打つ方では、好投手の松岡と平田康二郎(教育3・都立西)を前に、7安打とあまり振るわなかった。6回にはチャンスをつくるも、あと一打が出ず、7回も谷村の適時打に上位打線が続けなかった。慶大は今季、打順の調整に悩まされている印象を受ける。1回戦では佐藤駿 (商3・慶應)が1番を打ったが、本試合では出場なし。4番も廣瀬や本間、栗林などが務めるなど、どの打順も固定されていない。本試合では谷村、また法大2回戦での村上真一朗 (文4・城北)など、日替わりで主人公が生まれているここまでの慶大。昨年ほどの実績と経験を備えた選手がいない中、盤石な強力な打線と投手陣を築きあげることは難しいかもしれない。しかし、個の力が「強力」あらずとも、皆が「協力」する全員野球で闘ってほしいところだ。廣瀬や外丸東眞 (環2・前橋育英)だけではなく、一人ひとりが主役の意識を持って、チームに貢献してくれる慶大野球部のこれからに期待したい。

 

◆選手コメント

谷村然(環4・桐光学園)

今日の試合はテンポ良くストライクをとっていけたことがまず良かったと感じています。
また、試合全体を通じてストレートを力強く投げ込めたことも良かった要因だと思います。
バッティングは来たボールに素直にバットを出せたことが結果に繋がったと思います。
次の立教戦に向けて最高の準備をしていきます。

投げては97球完封で“マダックス”を達成した

(記事:野上賢太郎、写真:長沢美伸、北村可奈

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