箱根駅伝予選会まであと4日!特集3日目の本日は、チームを走りで引っ張る4年生・木村有希選手と2年生・成沢翔英選手のインタビューを掲載します。木村選手は5000m,10000m,ハーフマラソンの3種目で塾記録を持つチームのエース、成沢選手は今年トラック種目で好記録を連発している期待の新星です。性格は正反対、それでも”目指す舞台”は同じです!これを読んで是非当日も声援を送りましょう!
Q陸上を始めたきっかけは?
木村:陸上については“気づいたらやっていた”というのが正しいのかもしれないです。両親がどちらも陸上をやっていて、母が長距離で全国大会に出たことがあるくらい速くて、兄弟が4人いるのですが、全員そこそこ足が速くて、小中とかマラソン大会などに出て、その時から結果が出ていたので、高校でもその成り行きで続けていった感じですね。
成沢:僕は中学までサッカー部で、サッカー部の中で少し足が速くて、中学に陸上部がなかったのでボランティアで大会に出ないかという話を頂いて、出場したら「自分ちょっと足速いかも」(笑)と思って、そこから陸上を始めました。
Q慶大競走部に入部することを決めた理由は?
木村:僕が中学2年生の時(2017年)に「箱根駅伝プロジェクト」が始まって、僕は箱根駅伝というよりかは箱根駅伝プロジェクトがきっかけで入学を決めました。現在ヘッドコーチの保科さんが招聘された際に、地元に保科さんの実業団時代の後輩で結構お世話になっていたという方がいて、その方から保科さんの指導が良いと教えてもらい、慶應に行って指導を受けてみたいと思ったことが慶大競走部に決めたきっかけですかね。
成沢:僕の場合は…まぁオブラートに包むと、実は他大学に陸上での進学が既に決まってはいたんですけど、手続きをちょっと…振り込みを忘れちゃって…(笑)どうしようかと進路を考えた時に「ビリギャル」を観まして、それがきっかけでSFCについて調べたら、「ここに行かなくてどこに行くんだ!」と思って。陸上に惹かれたというよりかはSFCのカリキュラムに惹かれて入学しました。
Q自分の武器や持ち味は何だと思いますか?
木村:大学で陸上を続けている選手で本当にすごい強い人は才能っていうか、生まれ持ったものというか、そういったことを一緒に走っていて感じるんですけど、自分にはそれがあまりないと思っています。自分は長距離は“準備や継続のスポーツ”だと思ってるので、準備の段階から勝負は決まっているというイメージを持ってやっています。朝練とか本練習はもちろんですけど、その前にしっかり時間を取って準備するというのを慶應ではしっかりやっていると思うので、僕の強みは真面目というか…なんだろう?
成沢:あっ、真面目です!(笑)
木村:真面目ですか?
成沢:真面目ですね。継続力、努力家ですね!
木村:自分でも競技に対して抜かりなくやっている感じはあります。
成沢:自分は負けず嫌いなところが一番の強みだと思っています。木村さんみたいにコツコツ積み上げることが逆に苦手で、継続性がないというか、努力することが苦手なんです。でも、木村さんや田島さんらと一緒に走っていると「やっぱり負けたくないな」と思います。とにかく負けたくない一心で今も陸上続けられているので、強みといったら負けず嫌いなところかなと思っています。
Qこれまでの陸上生活の中で一番つらかったことは?
木村:僕は2年前の予選会ですかね。2年前、大学2年生の時の予選会に自分は故障で出場できなかったんです。練習もかなりしていて、チームトップぐらいというか、「自分が出なきゃダメ」ってところで欠場になってしまったので、そこから切り替えて次の試合/次の予選会を頑張ろうとしていたんですけど、気持ちだけが先行してしまい、11月、12月と練習はできていたのに次の大会もまた故障で欠場してしまって。その時に「一生懸命やるだけじゃダメだ」と思って、そこで自分の考え方やエクササイズとかを一から見直しました。その2ヶ月は本当につらかったですけど、それが無かったら自分の考え方を見直す機会は無かったと思うので、自分の今に繋がっている期間だったなと思います。
成沢:辛かったこと…。まぁ、いつも辛いです(笑)。普段の練習もつらいんですけど、そうですねえ…高校3年生の時に怪我で大腿骨を折ったことがあって、その年は全国高校駅伝への出場が決まっていて自分がエースとして出るはずだったんですけど、骨折のため出られずに付き添いをする形で終わってしまいました。その時は、全てがつらかったですね。大学も決まってないし、走れないし、全国大会もエースで出るはずだったのに出られない。それが一番つらかったですね。
Qここまで陸上を続けることができた原動力は何ですか?
木村:僕は“人間的な能力の向上心”が競技のモチベーションの一番大きいところかなと思います。やっぱ、保科さんもそうですし、成沢とか能力がある選手とか、地元の人とか、実業団に活躍されている方とか、辛いことを経験しているからこその“人間的な深み”の様なものを一緒に走っていると感じるんですよね。なので、競技を極めたいというよりかは、競技を通して高いレベルに行くほど自分にプラスになることはたくさん得られると思っています。
成沢:僕は「みんなの応援があるから」みたいな感じで結構言っているんですけど、実を言うと「何で続けているか分かんない」っていうのが現状です。本当は大学で陸上をやるつもりがなかったんですけど、それを「やろう!」って思えたのはキャプテンの田島さんの存在が大きいですね。夏の合宿に参加させてもらった時に(9月入学の成沢は入部時期が少し遅かった)、真剣にチームを鼓舞しているキャプテンの姿を見て「この部に入って長距離やりたいな」って思えたので、どんな形であれ続けられているのは田島さんのおかげです。
成沢:それから、自分はモチベーションによって結構左右されるんですけど、去年は木村さんと戦うのが楽しくて続けることが出来たんですね。競技やろうと思ったきっかけも4年生のおかげだし、今こうして続けられて来られたのも4年生のおかげだと思っているので、モチベーションは4年生の存在ですね。
――「4年生のために」という思いがあるんですね
成沢:はい、完全にそうですね。
Q2人にとって田島キャプテンの存在は?
木村:田島は1年から箱根の学連に選ばれていたので、自分の代ではキャプテンは田島だろと思っていました。高校時代、九州学院という強豪校でキャプテンをやっていて声がしっかり出せるところが田島のいいところですね。僕はそんなにガンガン人に言えるような性格じゃないんですけど、慶応のチームとして強くなっていくためには誰か厳しく言う人がいないとダメだなと思っていたので、田島が練習中に激を飛ばしてくれるお陰で、僕は声かけを個人的にするみたいにして上手くバランスが取れていると思います。田島が言ってくれるから僕も結構動きやすいですし、チームを作っていく上では田島の存在は大きいなと思います。
成沢:僕は、田島さんだすごいと思うことは2つあって。1つ目は、1年生の時から箱根に学連(関東学連選抜)で出たっていうのが大きいと思うんですけど、学連は2回は出られないので、田島さんは後はもうチームで出るしかないんです。去年もキャプテンをやっていて、“自分だけじゃなくてチームも強くしなきゃいけない”ことの労力って自分が箱根駅伝出ることの何十倍、何百倍もきついと思っていて、それを既に箱根に出たうえで「やろう!」って思える精神力はすごいなと思います。
成沢:もう1つは、競走部のくくりだと長距離も全体の組織の中に属するブロックの一つなので、「どうすれば全体の人たちに迷惑をかけずに長距離が練習できるのか」とかに対して僕なんかは結構自己主張強いので「こうやってやればいいじゃないですか」と言うんですけど、田島さんはそれを渋々分かっていながらも全体を見た上で判断しているところがすごいなと思います。
Qお互いどんな存在だと思われますか?
木村:成沢は走るセンスが僕よりあるっていうのは本当に思います。さっき「負けず嫌いです」って言ってましたけど、去年の予選会が終わった後からずっと練習を一緒にやっていた時に、慶應の選手って結構守りに入っちゃう人が多いんですけど、成沢はラストの追い上げとかも余裕があったらガンガン来るんで、自分はコーチに「負けるな!」と発破をかけられていたので結構キツかったです。僕は結構消極的というか、イケイケな感じじゃなかったんですけど、成沢みたいな選手が近くにいるんで「自分も変わらなきゃいけないな」と思いましたね。走るセンスもそうですけど、気持ち的なところも本当に刺激になってますね。
成沢:序盤にも話したんですけど、僕はやっぱり継続力、コツコツやること。長距離選手としては当たり前のことかもしれないですけど、木村さんはその当たり前の質も高いし、量も多いし、なんか、すごいですよね、本当にすごいですよね(笑)。故障したときって気持ちの浮き沈みが結構あると思うんですけど、僕なんかは故障したらもう「陸上辞めたいな」とか思うのに対して、木村さんはその時とかも確実にコツコツとやっていくんで、「本当にこの人めっちゃ強いわ」ってこの予選会直前に一緒に練習して改めて実感しました。試合ごとのパフォーマンスにもムラがないんですよね。なので、自分がもし競技を続けるなら1,2年後の理想というか、一生木村さんを目標にやるんだろうなとは思います。
Q2人にとって箱根駅伝とは?
木村:箱根目指している大学生多いと思うんですけど、僕は「個人的には何区走りたい」という感じで箱根を意識したことがあんまりないっていうか、あまり憧れっていうのはないんです。慶應に入ってチームが箱根を目指す中で、1年の時は実感わかなかったですけど、2年、3年ってやっていくうちに本戦に出たい思いは強くなってます。チームで出るって事を目指した時に「出場できたら自分にすごいプラスになるな」と。箱根に行くためには10人必要で、そこを目指すからこそチームスポーツの大切さみたいなところは学べるかなと思うんで、僕は箱根を目指す過程が結構大事だと自分で思ってるんで、向かっていく目標をしっかり間違えずに過程にしっかり意味を持たせて行きたいと思っています。
成沢:夏合宿を経て自分の中で考えが変わったのは、自分が思っているよりも人に恩返しできる方法って意外と少ないのかなって。チームメイトにもそうだし、応援してくれている人たち、それこそ、取材しに来てくれるケイスポさんとかに「ありがとうございました」ってこう言える機会って意外と無いと思って。そのうちに、「一番の恩返しって箱根駅伝に出ることなんじゃないか」とこの間改めて思ったので、それを話しました。
Q走っている時どんなことを考えていますか?
木村:何考えているかな(笑)。レースと練習ではいろいろ違いますけど、ジョグとか軽い練習で余裕があるときは自分のフォームとか、あと何キロかなとか考えてます。長距離って走っていくと心拍が慣れていって、少し楽になる時があるんですけど、その感覚が結構好き。ジョグの時とかもそういう感覚を目指してやっていますかね。走ると体もそうですけど、気持ちの面でもリラックスすると思ってて。僕にとって走りは本業でもあって、リラックスする瞬間でもあると感じています。レースの時はきついですけど、練習中は自分の体調とか自分の体のことを考えながら走っているって感じですかね。難しいっすね(笑)
成沢:自分は2パターンあって。1個目は、 “どうしても走らなきゃいけない時”、例えば朝練とかって「あと何キロ」とかを考え出すと辛いので、考え事をしていますね。例えば、自分が入ってる研究会で野鳥の研究をしなきゃいけないって時に、たまたま朝練で野鳥が鳴いているのが聞こえると「野鳥のモデリングってどうやってやるか」みたいに考えたりしていますね(笑)。そのうち気づいたら走り終わってたりするんですよ。
成沢:もう1個は、もの凄いやる気がある時、例えば木村さんと戦ったりしている時は、調子がいい時は自分の頭の中で歓声が聞こえてますね。インターハイの決勝に出たことがあるんですけど、アドレナリンが出過ぎてるんで自分の頭の中ではその試合が見えています。ここで負けたら入賞できないとかを感じてやってます。どっちかですね僕の場合は。
Q予選会までどのように過ごしたいか
木村:僕の中では先週ぐらいからレースに向けて徐々に状態を上げてく期間にしています。予選会は体調崩したりちょっとした怪我があったりすると直前の1週間とかで崩れることもあるんです。コロナ罹ったりした大学もあったくらいなんで。練習はちゃんとやらなきゃダメですけど、夏合宿から結構きつい練習してたこともあるんで、練習もやりつつ後は体調管理っていう感じで、「あと1週間だやべぇ」と思いながら生活するよりは余裕を持って気負い過ぎずに過ごしていきたいなと思います。
成沢:自分はかなり思い詰めてしまうので考え始めるとダメです。なので、いつも試合の前までは何も考えないっていうか、試合があるということは認識してるんですけど、余計なことは極力考えないようにしてます、敢えて。
――真逆のタイプなんですね(笑)
成沢:当日になると逆にスイッチが入って「逃げたいけど、逃げられない、やるしかないわ」ってなるパターンが多いですかね。
木村:僕もわかるところはあります
Q予選会への意気込み
木村:僕は去年はそこそこ良い走りができたんですけど順位は日本人12位/総合24位ぐらいだったので、今年はもっと上を目指して“日本人一桁”、“日本人先頭集団で勝ち切る”っていう走りをしたいなと思います。
成沢:自分は今回が初めての予選会なので、すごい沢山経験するだろうと思っているんですけど、「あぁ、終わっちゃた」ってならないようにやりたいなと思っています。それは全てに関連していると思うんです。当日にどれだけ準備できたか、レース中にどれだけチャレンジできたか、どれだけ我慢出来たか等々。なので、そうならないようにやっていくってことが全てなのかなと思っています。
Q最後になにか言い残したことがあれば!
木村:さっきの走っている時に何考えているかの質問で、多分、成沢も似てるかなって思うんだけど“考えないように考える”っていうか「考えたら負けだ」と思っているので、レース中は何も考えないようにしています。あんまり考えないほうが体もゾーンに入りやすいって言われているし、自分も楽なので。音楽聞いて、あとは無みたいな、無意識になるように意識して走るみたいな感じですね。
――お忙しいところありがとうございました!当日の活躍も期待しております!
(取材:小田切咲彩、編集:河合亜采子、鈴木拓己、竹腰環、ウジョンハ、山口和紀)
最後までお読みいただきありがとうございます。特集は明日以降も続きますのでお楽しみに。
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