【パリ五輪特集】オリンピアン対談 豊田兼×飯村一輝 第3部

フェンシング

スポーツの祭典、オリンピック。今年8月フランス・パリにて開催された2024年夏季大会に、日本からは400人を超える選手が参加し、そのプレーで多くの人々に感動と勇気を与えた。その中には、慶大在塾生の名前もあった。ケイスポではパリ五輪特集と題し、日本代表として男子400mハードルに出場した豊田兼選手と男子フルーレ個人・団体に出場した飯村一輝選手にロングインタビューを行いました。最終回となる今回は、2人が所属する慶應體育會競走部、慶應體育會フェンシング部について取り上げます。入部の経緯、體育會の魅力、OB/OGの存在など様々な質問に答えていただきました。

第3部

 

――ここからはお二人が所属する慶應義塾体育会についてお伺いします

Q慶應義塾大学にはどのような経緯で進学されたのですか?

豊田:自分は高校3年生の時に陸上を続けたいという思いが強くあって、学業と競技を両立できる大学を探していました。その際に慶應が上がったので、そこで進学を決意しました。自分の高校の先輩が結構慶應の競走部で競技していたので、先輩方からいろいろ話を聞いて決めました。

飯村: 僕もほとんど一緒ですね。中高時代から文武両道を心がけてフェンシングと勉強に取り組んできて、それをどちらもより高いレベルでやりたいってなった時に、1番に思いついたのが慶應だったので、高校2年の時に受験を決めて、無事に入学できたからよかったと思っています。

「フェンシングと勉強どちらもより高いレベルでやりたいって思いはありました」(飯村)

 

Q“慶應義塾大学体育会あるある”は何かありますか?

飯村:練習後の蝮谷(※①)の階段がきつい。

豊田:あー。フェンシングって階段の下?テニスコートの?

飯村:奥のところですね。あそこマジでやばいっすね。練習終わりでヘトヘトなのにその後あの階段上るのは地獄でしかないです。1年生の時によく練習来てたんで、そのときの印象が強いですね。

豊田:競走部は…いろんな人がいる、みたいな(笑)。150人くらい部員がいるんで。

飯村:めっちゃ多いっすね(笑)。

豊田:各ブロック40人くらいいるので、日本代表に選ばれるような人やバイトや勉強とうまく両立している人、大学で新しく始めた人など色んな人と一緒に練習できるんですよ。これは競走部に限らず他の部もそうなのかなと思います。

※①読み方:まむしだに。日吉キャンパスの裏手に広がる広大な谷地。テニスコートのほか洋弓場や合気道場、空手場など様々なスポーツ施設が並ぶ。この辺りは以前は湿地帯であり、周囲に雑木林が茂り、そこに多くのマムシが生存していたことから、いつしかこの呼び名になったと言われる。

競走部では主将を務めた豊田(写真左)

 

Qいろんな人がいる中で、大きな大会に向けてはどういった目的意識を持って練習に取り組んでいるんですか?

豊田:慶大競走部は、各自が定めた目標に向けて日々練習することを基本としてるんですけど、競走部全体で目指す目標、例えば関東インカレや全日本インカレ、箱根駅伝予選会などの大きな公式戦ですね。その6つの目標に向けては、個人戦であれ団体戦であれ全員で貢献する意識でいます。そうしてチームの目標と個人の目標とを明確に分けて取り組んでいると思います。

 

Qフェンシング部と競走部、それぞれの良さは何ですか?

豊田:さっきも言ったように、本当に様々なタイプの仲間がいて、自分でやりたいように計画を立てて練習ができる環境が一番の良さだと思います。もちろんコーチが付いている部門もあるんですけど、いないところもあるんで。そういう点では自主性が尊重されていると思います。そのお陰で自分もこれまで前例があまりなかった“ハードル競技二種目でオリンピックを目指す”ということにも挑戦出来ましたし。

豊田:ただ一方で、その自主性を履き違えて自分勝手な行動をとってしまう恐れもあるので、今後も体育会競争部としての自覚を一人一人がしっかり持つことが大切だと思います。

「自主性が尊重されたお陰でこれまで前例があまりなかった挑戦ができました」(豊田)

――先ほどコーチと4年計画で取り組んできたと仰っていましたが豊田選手にとってコーチはどういう存在だったんですか?

豊田:自分を強くしてくれた、無くてはならない存在ですね。普段指導していただいている方が山縣亮太(H27卒)さんや寺田明日香さんも指導されていて、日々の練習の中でその方から頂いたアドバイスを4年間かけて一つ一つ自分のものにしてきたからこそ五輪という舞台に立てたと思います。

飯村:フェンシング部の良さで真っ先に思い浮かぶのは練習設備が充実してることですかね。最近体育館が改装されてすごく良い建物になったんですよ。設備自体も本当に良くなったので、そこで練習出来る事は良いことだと思います。

飯村:他にも、それぞれの部員が直近の課題/中間課題/長期課題を自分たちで設定して、そのために何をするのかという逆算をノートに書いたり、ミーティングで話したりしていると思うので、向上心のある部員が多いという印象を受けています。僕としても、オリンピックで得たことなどなるべく多くの事を部に還元したいと思っていますし、そうやって互いを高めあえる関係を築けていることも慶大フェンシング部の良さかなと思います。

「部員一人一人が本当に向上心があると思います」(飯村)

 

Q慶大のOB/OGにオリンピアンがいることは2人にどんな影響を与えていますか?

豊田:高校の時に進路を考える上でオリンピアンの方がいるっていうのも結構大事なポイントというか、目指せる環境があることの証明なのかなと思っています。卒業生にそういったトップで活躍されている方がいるとすごい追いかけたくなるというか、自分のモチベーションになりますね。

飯村:今大会に出場された宮脇花綸さん(※➁)だけなく三宅諒さん(※③)もいらっしゃいますし、文武両道というか慶應とフェンシングを両立されてきた方の歩んできた道が明白なので、目標にしやすい存在です。三宅さんも実際フェンシング部のコーチをされていた時もありましたし、宮脇さんもイベントでは顔を出されることもありますし、そうやってオリンピアンが身近な存在にいることは僕たち部員にとっても、これから入ってくる学生にもすごくいい影響を与えていると思います。

※➁慶應義塾體育會フェンシング部OG。2019年、同大学経済学部卒業。今年のパリオリンピック・女子フルーレ日本代表に選ばれ、女性種目史上初の銅メダル獲得に貢献した。

※③慶應義塾體育會フェンシング部OB。2013年、同大学文学部卒業。大学4年時にはロンドンオリンピック・男子フルーレ日本代表に選ばれ、団体・銀メダル獲得に貢献した。

「卒業生にトップで活躍されている方がいることがすごい自分のモチベーションになります」(豊田・写真右)

 

Q最後に、未来の後輩たちに向けてエールをお願いします

豊田:慶應競走部は、高みを目指せる環境が全て揃っていると思います。あとはそういう素晴らしい環境の中でどこを目指していくのか自分で決めて頑張っていくだけです。是非入部して慶應競走部の発展に貢献していただければと思います。

飯村:フェンシング部は、自分のやりたい事とか目指すべき目標、今やらないといけない事を明確にできる場所です。なので、自分のやりたいことが決まっていない人であったり、将来に不安を感じる人はフェンシング部に入ると、おそらくスポーツだけじゃなく、人間としても計画性や逆算する方法、自分をスケジューリングする能力だったりが鍛えられると思います。是非来てください!

大志を胸に未来へ翔け!

【オリンピアン対談・完】

豊田選手、飯村選手、そして競走部、フェンシング部の皆様。今回は貴重なお時間をいただきありがとうございました。これからも一層のご活躍を願っています。

 

(取材:竹腰環、岡澤侑祐  編集:大塚隆平、河合亜采子、キムムンギョン、野村康介、小田切咲彩)

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