2024年度の秋季リーグ戦は「5位」と苦しんでいる慶大。一方の早大は、圧倒的な強さで連戦連勝。あと1勝で優勝というところまで来ている。ここまでの戦いは力の差が見受けられる両チームだが、慶大にも意地がある。いよいよ今週末に迫ってきた早慶戦。リーグ戦の一部ではあるものの、対抗戦として意味合いも強いこの一戦に燃える選手たちに話を聞いた。今回は、チームを率いる堀井哲也監督!
──今季ここまでの戦いに点数をつけるなら
点数というのはちょっとつけられないですね。頑張っている度合いとか過程を考えると、選手に対してはそんなに厳しい点数ではないんですよね。私自身につけるなら、「40点」でしょうね。春の1番の反省であった規定打席到達者が3人しかいなかったという、チーム編成上の課題を克服できなかったので。春の時点で言うと、外丸東眞(環3・前橋育英)に次ぐ投手を確立できなかった。秋は渡辺和大(商2・高松商業)がそういう位置に来ているんですけど、それをもっと早く私が見極められれば、と。私の「眼力」が徹底的に不足していたなという意味で、40点ですね。
──渡辺和大投手がこの秋に大成長
球速も含めてボール自体の質が上がってきて、変化球の質も上がっている。そこに本人が自信を持ち始めていると。ちょうど外丸が出てきた時に重なるんですけど、非常に伸び盛りの時期がまさにこの秋のリーグ戦だったな、ということですね。
──前田晃宏(商3・慶應)投手が肘の怪我から復帰
前田がしっかりと後ろで確立してくれたので、ピッチャー陣としては前田まで繋ぐという1つの形ができた。ただ、本人からしても、私からしても彼のポテンシャルからすると、そこまで結果には繋がっていない。まだまだ伸びる余地があると思っています。
──エースの外丸投手は登板数が少ない
肩の不調ですね。そんなに大きな損傷かと言われると、そうでもない。ただ、実際にバッター相手に投げるにはもう少し段階的に時間が必要、という感じですね。
──今季、スタメンは流動的
本来はワセダさんみたいに固めたいんですけど、私の「眼力」の無さで、ベストオーダーが固まらずに来ています。調子の良し悪しでスタメンが変わっているというのが現状ですね。ただ、ここに来て法大戦くらいから見えてきたとこもあるんです。ですから、早大戦に関しては、チームとして腰を落ち着けて戦えるのではないかと、思っています。
──現段階でのスタメン(インタビューは11月3日に行われました)
1番(遊):水鳥遥貴
2番(左):吉野太陽
3番(右):中塚遥翔
4番(一):清原正吾
5番(中):横地広太
6番(三):本間颯太朗
7番(二):林純司
8番(捕):渡辺憩
9番(投):渡辺和大
5番、6番は相手投手の右左で前後するかもしれないですけど、現状はこうですね。なんでも喋っちゃうね(笑)。でも、オープンにしています。全部ホームページに載せてますし、ファンの方とか親御さんとか、高校時代の関係者とかね、みんなが期待して見てくれていると思うので、僕はそこに対してしっかりと情報公開しますね。相手にも取られますけど、まずはやっぱり身内に対しての感謝を、「元気だよ」という姿を見せる。それを1番に考えています。
──三遊間の水鳥選手と本間選手をリーグ戦開幕前に入れ替え、今季はここまで戦ってきた。しかし早慶戦は元に戻す
これも結構本質的な話で、腹の内を話します。水鳥、本間、斎藤快太の3人を使うと僕は春前に考えていました。しかし春のシーズンが終わってやはり水鳥のショートの守備に課題があって、ショートに斎藤を入れようと。ところが、斎藤の打力がどうしても上がってこないので、ショートに林を入れた。そこで課題になったのが本間のセカンドの守備ですよね。そこで、本間を使うならやはりサードかなと。そうすると水鳥がショートに持っていくことになった、という感じですね。
──流動的なスタメンの中で、清原選手は唯一全試合、4番(一)でスタメン
やっぱり4番は今の時点で彼しかいなかったですね。実際それで東大戦は彼で勝ちましたし。打率とかはもう1つなんですけど、そうは言っても他に思い当たる選手がいない。中塚を4番で清原を3番という手もあるんですけど、私が中塚を使えると判断した時期がこれまた遅かったと。ここまで来たら、最後まで清原で行こうと思っています。
──どのような段階を踏んで打線を考える
僕は守備から決めます。守備が決まったら、打線を決めると。セイバーメトリクスはMLBの160試合を考えた場合のものなので、アマチュアの十数試合のデータが適しているのかと言われると、必ずしもそうではない。そうは言っても、僕は共通点があると思います。そこで、セイバーメトリクスと私の経験も考えて、バッターを3群に分けます。まず第1群として、「1番」「2番」「4番」。第2群に「3番」「5番」「6番」。そして第3群に「7番」「8番」「9番」と。ですから、第1群に重要な選手を置くというのが大事なポイントだと思っています。
──セイバーメトリクスはよく参考にする
めちゃくちゃ見てますね。見た上で、大学野球と何が違うと言ったら試合数とカテゴリーが不安定な世代ということ。その中でも、共通点はあるだろうと。
──明大3回戦の延長戦、無死一塁の場面、丸田湊斗選手にバントをさせなかったのも得点期待値のデータからの判断
あれは、2つ理由があります。1つはシンプルに丸田の脚ならダブルプレーはないだろうと。もう1つは、打線が非常に厳しい状況だったということ。チャンスを広げていかないと点は取れないんじゃないかという。天秤をかけての作戦でした。
──継投のタイミングはどのように考える
これは中根助監督のアドバイスが相当大きいんですが、私はバッター出身なのでバッター目線で、球がうわずってきたとか、芯に当たり始めたとか、バッターを差し込む感じがなくなってきたとかを見てますね。助監督はピッチャー目線で、ピッチャーの状態そのものを見ています。その噛み合わせですね。
──打者でこの秋に成長した選手
吉野ですね。打率は2割台ですけど、ホームランが3本。試合がなんとかなっているのは彼の活躍が大きいかなと。元々ボールを捉える能力は高かったんですけど、それが六大学のピッチャーにアジャストしてきた。秋の経験値で対応の部分が大きく成長しました。
──今季の早大は圧倒的な強さ
非常に充実していると、選手には言っています。今年は「充実のワセダ」ですね。春のリーグ優勝、選手権準優勝、秋もあと1勝で優勝という成績が裏付けられるように非常に強力なチームだと思います。
──その早大を倒すには
うちのピッチャーの良いところを十分に出すしかないというのが1つ。それから打ち取った打球をしっかりとアウトにし、余計な点をやらないと。ピッチャーが最大限のパフォーマンスを出せるようなコンディショニング、配球、声がけ、それをまずやっていこうと。
──早大で警戒する選手
やっぱり1番は吉納かな。ランナーを置いて長打で大量点というのが1番防がなくてはならないことなので。ランナーを置かないことが1番ですけど、そう計算通りにはいかないので、ランナーを置いた時の吉納への攻めが1つポイントになりますね
──どのようなゲーム展開なら勝ち筋が見える
3点勝負。勝つとしたらロースコアで2−3なのか1―2なのか。早大のピッチャー陣を見たら、簡単に5点、6点は取れないので。
──早慶戦の投打のキーマン
「投」は、渡辺和大ですね。ワセダの優勝を阻止するという点では2連勝しかないんですけど、勝ち点を取るということを目標にした場合、渡辺が1戦目、3戦目しっかりと投げ切って勝ち点を取ると。
「打」は、吉野と中塚ですね。清原と水鳥は安定して活躍しているので、ワセダから3点を取るには、この2人にかかってますね。
──早慶戦への意気込み
ワセダは優勝まであと1勝というところまで来ていて、優勝という点ではモチベーション120点で来る。ただそこのモチベーションの有無に関わらず、リーグ戦の最後に組まれている早慶戦。ここにどれだけチームの力を結集して勝負に結びつけられるかというね。まさに慶應野球部の真価が問われる試合だと思います。そういう年だと思います。ですから、なんとしても優勝を阻止するために2連勝。できなくとも勝ち点は絶対に取ります。
(取材:大泉洋渡)