【アメフト】どん底から1年で這い上がった”可能性の獣”慶大UNICORNS、滑り込みの全国大会出場決定!/TOP8第7戦

アメフト

関東アメフトTOP8第7戦、慶大は中央大と対戦。負けたらシーズン終了が確定する大一番、慶大はいきなり松本和樹(経4・慶應)から黒澤世吾(商4・慶應)へのパスを決め、幸先よく先制に成功する。その後は須藤大樹(理1・慶應)のフィールドゴールや水嶋魁(商4・海陽学園)のタッチダウンなどで21-7とし、中央大を突き放す。その後も得点を取られながらも何とか逃げ切った慶大は中央大に勝利し、これで4勝3敗。勝ち越しで秋リーグ戦を締めくくった。

また、翌日の他大の試合の結果、慶大は最終順位3位でシーズンを終了。活動休止のどん底から僅か1年にして、大逆転で全日本選手権大会への出場権を獲得した。

11月10日(土)@アミノバイタルフィールド TOP8第7戦

 

慶應義塾大学 UNICORNS

中央大学RACCONS

第1Q

9

0

第2Q

12

7

第3Q

3

7

第4Q

7

14

31

28

 

※おしらせ※

アメフト初心者の方向けのルール・用語・豆知識を簡単にまとめたページを作成しました。適宜リンクがついていますので、記事と合わせてご覧ください。

https://keispo.org/wordpress/unicorns_beginner/

 

ここまで慶大は3勝3敗とし4位につけている。格上の明治・立教を倒しつつ、前節では東大に延長の末痛恨の敗戦。負けると関東3位まで出場可能な全国大会への道が絶たれるという背水の陣でこの日の試合を迎えた。一方の中央大はここまで勝ち星に恵まれず。立教・明治・桜美林には勝利まであと一歩に迫りながらも及ばなかった。中央大としてもシーズン全敗だけは避けたいところで、この試合に一戦必勝で臨む。

昨年は7-3とロースコアゲームとなった一戦だったが、今年は両チームとも攻撃力もアップ。昨年とはひと味違う熱戦が予想される中、お互い一歩も譲れない戦いが幕を開ける。

 

第1クォーター(以下第1Q、他Qも同様)、いきなり慶大オフェンスが火を噴く。今日も先発QBの一角を務める松本から、慶大エースレシーバー・黒澤のもとにボールが飛ぶと、黒澤はそのまま猪突猛進。エンドゾーンまで敵を寄せ付けず、そのままフィールド左端に飛び込む。これが先制のタッチダウンとなった。続くトライフォーポイントのキックは外すものの6点を獲得。スタートダッシュに成功した。このまま流れを離したくない慶大だったが、中大の猛攻をもろに浴びることとなる。ディフェンス陣も奮闘し、小島陽生(経3・慶應)がゴールライン手前で攻撃を止めるナイスプレー。なんとか中大の得点を防いでみせた。続く攻撃、今度は水野覚太(政4・慶應藤沢)が、黒澤に負けじとロングパスを立て続けに捕球。一気に敵陣を侵略していく。相手の反則にも助けられ、ゴールキック圏内となった。ここでキックの出番となるが、本調子まで戻れていない佐々木雄大(経4・慶應)に替えて、慶大はランニングバックが本職の須藤大樹を投入。35ヤードの難しいキックながらここを冷静に決め、貴重な追加点を得て9-0。この後は両者無得点で第1Qを終える。

松本は今日も正確無比なパスで流れを作った

 

第2Q、慶大は松本と水野・黒澤のコンビネーションを成功させるものの得点には結びつかず、相手に攻撃権を返上する。ここで泉山聡真(経2・慶應)が完璧なパントキックを決め、ボールは敵陣5ヤード地点へ。セーフティも狙える位置につけた慶大だが、もっと大きいものを狙わんとする姿勢を見せる。玉川雄基(環4・都駒場)によるファンブルリターンによってボールを奪取すると、最後はQB双璧の片翼・水嶋が身体をねじ込みタッチダウン。トライフォーポイントではギャンブルのタッチダウンを狙うが、ここはパスが僅かに乱れ失敗。それでも点差を15点とし、優位に試合を進める。続く守備、千葉陽太(環3・鎌倉学園)が華麗なパスカットを決めるなど一定の見せ場は作るも、ジリジリと押し込まれていく。最後は31ヤードのパスを通されてタッチダウン。15-7とされ、残り時間は1分ほど。続く攻撃でなんとか追加点が欲しい慶大は、フィールド左側に黒澤へのパスを固め打ち。面白いようにこれが決まり、追加点への期待を抱かせる。ここも相手の反則を誘い敵陣5ヤードまで進むと、最後も決めたのは黒澤。またも左端の僅かなスペースに松本がピンポイントパスをお見舞いし、タッチダウンとした。これで21-7。14点差で前半を折り返した。

流れを引き戻すのはこの男、玉川雄貴!

 

後半第3Q、再びパスとランを織り交ぜた中大の攻撃が襲いかかる。短い距離で相手ランナーを抑えることができず、次々とロングゲインを許していく。一度乗せた勢いを止めるには至らず、タッチダウンを許して21-14。少しずつ迫られてくる状況に、焦燥感に駆られる慶大。さらに次の攻撃も抑えられてしまい、さらに劣勢に追いやられる。なんとかこの状況を打開したいなかで動いたのは去年の中大戦ヒーロー、倉田直(理3・南山)。ファンブルで攻撃権を奪取し、勢いに乗るきっかけは作った。しかし次のプレーで水嶋が痛恨のファンブル。わずか1プレーで攻撃権を明け渡してしまった。いよいよ万事休すかと思われたが、さらに波乱は続く。中大QBはロングパスを放つが、落下点にいたのは中大選手ではなく、なんと丹羽航大(総4・慶應)。明大・東大とインターセプトを決めていた丹羽はこれで今季3個目。チームが傾くときには必ずこの男のビッグプレーが光る、まさに救世主となった。この後はタッチダウンこそ許されなかったものの、佐々木がキックを決めて24-14とし、再び10点差とした。

丹羽、今季3度目のインターセプトに成功。ラストシーズンで煌めく

最終第4Q、中大の守備を1ターンで抑え、中大のパントキック。ここで慶大はキッカーに猛チャージをかけ、キックを乱す。なんとか蹴り上げられたキックを抑えると、辿り着いたのはゴール前1ヤード。またも追加点の大チャンスで、再び水嶋のねじ込みタッチダウンが発動。今度はトライフォーポイントも佐々木が決めて31-14とし、優勢をキープする。後がない中大はここから本気の猛攻撃を仕掛ける。慶大はこの日、今までの試合で見せてきた盤石な守備をなかなか発動できない状況が続いていた。最終クォーターともなればさらに疲れが見えてくるのは必然で、スクランブルを上手く決められ、ロングパスも今までに比べ格段に多く決められてしまう。もはや止める手段は時間切れを狙うことくらいであったが、その間には中大のタッチダウンが2本決まった。31-28まで迫られ、さらにここで絶体絶命のオンサイドキック。取られてしまえば一発逆転すら見えてくる状況で、なんとか耐えることを強いられた。運命のキックはフィールド右側に蹴り込まれたが、ここの運を掴み取ったのは慶大で、ボールをなんとか抑えることに成功。残り時間1分を切るなかでも、中大は諦めず食らい付いてくる。慶大は最後に攻撃権を明け渡し、中大はロングパスを意地でも決めようとする、まさに最終局面。掴んだ方に勝機が傾くロングパス、そのボールは幸いにも玉川の手に渡り、慶大は勝利を決定づけた。これで残り時間を使い果たすことに成功した慶大が逃げ切りで勝利。最終スコア31-28で、薄氷の勝利を掴んだ。慶大の意地が、中大のそれをわずか、いや、ほんの僅かに上回った結果だった。

水嶋は今日も機動力全開。2TDの活躍を見せた

また、翌日に行われた法政-立教戦は法政が勝利を収め、これにより慶應と立教が勝ち点12でシーズンを終了。直接対決を慶大が制しているため、慶大は大逆転にして3位でのポストシーズン、全日本選手権大会への最後の1枚の切符を手にした。

慶應UNICORNS、全国大会最後の1枠に滑り込む!

 

1年前に活動を再開して以来、まさに下剋上と言える展開で関東3位まで上り詰めた慶大は、11/23(土)に前年度日本一・関西学院大学との準々決勝に挑むことになる。次戦、関西との大学が相手となるが、鎌田泰成(R6政卒)前主将は引退時、「関西の大学に勝って欲しい」というメッセージを現在のメンバーに向けて残している。その夢が叶えられるチャンスが、今目の前に転がってきた。ここから先は「負けたら終わり」であり、確かに高く険しい壁。しかし言い換えれば、あと3勝で日本一という頂きに立てるチャンスを得たことも意味しているのだ。ここまでの快進撃を続けられた””可能性の獣”UNICORNSなら、きっと成し遂げられるはずだ。まずはアウェーとなる神戸で、奮闘を期待したい。

(取材:長掛真依、東九龍)

 

試合後インタビュー

水嶋魁(商4・海陽学園)

ーー今日の感想

リーダーとして選手として、完全にいい試合ではなかったというのが本音というところです。結果は良かったですが、内容に拘らなきゃダメかなとは思っているので、まあまあってところですかね。

ーー前節で東大に負け、この2週間オフェンスで変えた、心がけたこと

大枠の面で言えばオフェンダーとして攻める意識、メンタルの部分が弱かったというのが問題点として挙がっていました。なのでそこを変えようというのがまず一つ。加えて、ミクロなことで言えば、ボールを落とさないとか、インターセプトされないとか、できる限りオフェンスがボールを持ち続けようという意識を持ちました。まず今日勝たないといけなかったので、明日(注:当日時点では慶大が全国大会に出場できるかは不明で、翌日の他大試合結果を待つ必要があった)のことは意識せず、今日のことだけを意識して頑張ってました。

ーーパスとランの塩梅

基本的にワイドレシーバーユニットが上手い奴が多いのでパスが多いんですが、そのパスを通すためにはランは必要なんで。両方どっこいどっこいくらいにはなってますね。

ーーシーズンのふりかえり

リーダーとしていうなら、自分としてできたことがあったんじゃないかという点はずっとどうしてもあります。ただ、1人の選手としては、やるべきところをやり切れたところもあるし、難しかった部分はあるので、一言で言えないですが、悔いのないシーズンではありました。

ーー例年よりは楽だったのでは

そうですね、まあ言っていいのかわからないですが1年間まともにできたっていうのは本当に。(笑)よく1年間我慢してやったなと。そこだけでももう十分満足です。

ーー全国へ向かうことになります

全国に恥じないチーム、オフェンスを見せるぞという気持ちでやるしかないかなと思います。あっちも混戦なので、自分たちがコントロールして、うまくできることをうまくやろうという気持ちです。

ーー関西へのイメージ

アメフトは西高東低って言われますし、僕も海陽学園(愛知県蒲郡市)出身で関西側なので、高校の頃に大学と合同練習とかしていても、スピード感だったり、文字通り覚悟が違うというのは感じています。本当に死ぬ気でやっています。うちはどうしても上手くアメフトやろうとか、エンジョイしようという気持ちに引きずられてしまうというのがありますが、あっちはしっかりそういうところを詰めてきて、フットボールとして1枚も2枚も上手(うわて)なので。難しいのはわかっていますが、イケイケドンドンで。俺たちのいいところを出して勝つしかないかなと思っています。

 

倉田 直(理3・南山)

ーー今日の試合を振り返って

今日は4年生とプレーできる最後の試合になるかもしれないので、それを楽しもうというのが一番大きかったです。試合内容については、一番最初に大事な場面で僕がミスをしてしまったので焦っていたのですが、後半は比較的良かったのかなと思います。

ーーディフェンスとして意識したこと

達成することはできなかったのですが、相手の13番・松岡大聖(政3・県立横浜栄)がすごく強い選手なので、その選手をいかに止めるのかというのを意識していました。あとはQBが走るので、これもまたやられてしまったのですが、QBをどう止めるのかというのを全体で共有して頑張っていました。

ーーリーグ戦全体を振り返って

最初の早稲田戦で負けてしまったものの「意外とやれるぞ」というのを掴み、そこからは法政にも負けてしまいましたが、立教と明治に勝てたのはチームとして本当に大きかったのかなと思います。特に、僕としては立教に東京ドームで勝てたのがチームとしてすごく大きかったのかなと思っています。ドームで試合をするのは今年で3回目だったのですが、これまで一度も勝ったことがなくて。やられながらも粘って粘ってチーム全体で勝てたので、すごく良い試合だったなと思います。東大戦については、最後の部分で気持ちが違ったなと感じています。あまりこういうことを言うのは良くないかもしれないですが、プレーをしていて一番強い気持ちを感じたのが東大だったので、今年もそうですけれど来年以降も見習っていきたいなと思います。

ーーリーグ戦を踏まえて全日本大学選手権、来季をどう戦っていくか

「まとまりのある、繋がりの強いチーム」をつくるというのが一番勝利に近いと思っています。一人が強くても意味のないスポーツがアメフトなので、全体でどう繋げていくかを大事にしていきたいなと思っています。

 

大坪英泰(政3・佼成学園)

ーー今日の試合を振り返って

前半はすごく調子の良い立ち上がりだったのですが、後半は自分たちのコミュニケーションミスなどで結構ギリギリの試合になってしまったので、先輩たちに申し訳ないことをしたなと思いますし、自分たちの詰めの甘さが出たなと思っています。

ーーオフェンスで意識したこと

結構パスを多めにコールされていたのでまずはQBをしっかり守るというのと、ランプレーをコールされた時はしっかりDLをしてランビーを届けようという意識でやっていました。

ーー目指していたプレーの達成度は

パスは守れていた部分と守れていなかった部分が両方あるんですけど、ランプレーは本当に全然出せなくて。シーズンを通してランプレーがずっと課題だったので、その課題が最後まで直せなくて反省すべきところかなと思います。

ーーリーグ戦全体を振り返って

直近のシーズンの中では結構良い結果を残せているとは思うんですけれども、前回の東大戦と今回の試合を振り返って、自分たちがプレーオフを狙える良い位置にきた時にチームとして少し浮き足立ってしまってたのが良くない結果として表れたのかなと思います。

ーー全日本大学選手権への意気込み

勝ったら自分たちは関西と試合ができるということで、(強豪ひしめく)関西の学校と試合ができる機会というのは秋シーズンでは関東3位以内に入れた、選ばれたチームにしかないので。関東と関西ではレベルが違うと言われていますけれども、しっかりと関西を倒せるように自分たちが今からできる準備を限られた時間の中でも頑張っていきたいなと思っています。

ーー来年は最高学年としてどのようなチームを作っていきたいか

来年は自分たちが最高学年になるわけなので、今年のチームで出た反省は持ち越さないように改善して良かったところは引き継いで、今年のチームを超えられるようなチームにしたいと思います。

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