遂に慶早戦を迎えた。特別な想いで挑む慶早戦は、外野応援席や試合前企画の運営など、まさに総力戦で挑むこととなる。その様子をレポートする。
5月31日(土)慶應義塾大学 ⚫2-11⚪️早稲田大学 (第1回戦)
~試合概要~
激しい雨の中、先発マウンドに立った外丸東眞(環4・前橋育英)が連打を浴び、1回・3回に計5点を失う。打線は中塚遥翔(環2・智辯和歌山)のソロ本塁打、常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)の適時二塁打で2点を返し、その後継投で凌ごうとするも、8回・9回に計6点を追加され最終的に11-2の大敗。春季リーグ最終カードである早慶戦は苦しいスタートとなった。
慶早戦の初戦はあいにくの雨予報。試合開始は1時間遅れの14時となった。雨による混乱の中、試合開始直後の1回表から外丸が3失点。この厳しい場面でも、應援指導部員は「初回からドラマティックな展開です」と前を向いた。
迎えた1回裏、壇上に立った枝廣代表は、「まずは立ってほしい」と呼びかけ、「華の慶早戦の始まりだ」と応援席を鼓舞。慶早戦への熱い想いを観客に伝え、重い空気を一変させた。4回には代表自らファウルボールをキャッチし、観客を湧かせた場面もあった。
5回裏が始まる頃には、雨は止んだ。うっすら広がる青空の中、「Blue Sky KEIO」が演奏された。この応援歌は、早慶戦90周年を記念して早稲田大学と共同で作成された曲で、歌詞の「KEIO」「WASEDA」以外の部分は、両校共通の歌詞となっている。試合中早大の応援席から、「Blue Sky WASEDA」が聞こえる場面もあり、慶早戦ならではの伝統を感じさせた。
慶早戦では普段のリーグ戦とは異なり、應援指導部員が特設の壇上でマイクを使用し、一球ずつ声をかける。9回表、一死満塁とピンチの場面では、「立ち上がって選手に声援を届けよう」と守備中にも関わらず、観客に起立を指示。「現在4点差だが、次の回満塁ホームランで同点、そのあと1点取れば逆転だ」「そのためにはこの回ゼロで抑えないといけない」と伝えたあと、部員は壇上を走り回り、観客を鼓舞した。しかし、早大打線を止めることは出来ず、11-2で大敗を喫した。
「悔しい結果とはなりましたが、慶應らしい応援席を作り上げることができた」と、試合終了直後に代表は想いを伝えた。
6月1日(日)慶應義塾大学 ⚫5-6⚪️早稲田大学 (第2回戦)
~試合概要~
2点ビハインドで迎えた7回、2死一、二塁から中塚遥翔(環2・智辯和歌山)が適時二塁打を放ち、同点に。しかし8回、不運な形で1点の勝ち越しを許し、最終回の攻撃で意地を見せるも、最後は早大のエース・伊藤樹(スポ4・仙台育英)の前にあと1本が出せず、敗戦した。
前日とは打って変わり、この日は快晴。神宮球場は満員となり、慶早戦特有の雰囲気がつくりあげられた。 応援席での試合前企画も予定通り実施された。ジャズダンスサークルによる発表に加え、「ステップス企画」と呼ばれる企画では應援指導部員が通常と異なる衣装や立ち振る舞いで観客を魅了した。慶應スポーツ新聞会も出演し、野球号の紹介やクイズ大会などを行った。
初回、壇上に上がった部員は「今日の応援テーマは熱い応援席にすることだ」と宣言。2回裏、失策から1死二・三塁のピンチを迎えた場面では、「ここは応援席が支える場面だ」と観客に呼びかけ、その直後に併殺で無失点に切り抜けるなど、応援がチームに力を与える瞬間も見られた。
3回には、應援指導部の先導のもと、配布されたボードを掲げて観客全員で三色旗をつくる演出を実施。するとこの回に打線が繋がり、得点した。
5回、壇上に上がった部員は「慶早戦にはそれぞれの人がそれぞれの目的で来ているが、全員が“早稲田に勝ちに来ている”という点では一致している」と力強く呼びかけ、スタンドの士気をさらに高めた。
慶早戦では、通常のリーグ戦と異なり、外野席でも応援が展開される。この日は新入部員も総動員で外野席を担当し、応援対象が倍以上となる中でも一体感を創出。場内マイクを活用し、「全員が声を出せる」応援を目指して工夫が凝らされた。
1点ビハインドで迎えた最終回、このまま早大が勝利すると、後日明大との優勝決定戦が行われることとなっていた。この状況に対し「早稲田は明治を意識しているが、早稲田のライバルは慶應である」と檄を飛ばし、最後の瞬間まで声を張り上げた。結果としては敗れたものの、選手と応援が一つになった時間となった。
試合後には、セレモニーが開催された。「慶應讃歌」、「三色旗の下に」、「若き血」の3曲が演奏され、コアなファンを中心に慶應への愛を再確認した。
試合後インタビュー
代表:枝廣二葉さん
Q.春の慶早戦を終えて、率直な感想を教えてください。
枝廣:2連敗という悔しい形になってしまいましたが、内野席・応援席・外野席と、たくさんの塾生や塾員の方々にご来場いただき、一体感のある応援をつくることができたと思っています。誇らしい2日間でした。
Q.慶早戦ならではの実況、外野席の存在など、通常の応援とは異なる難しさもあったと思います。その中で工夫された点はありましたか?
枝廣:慶早戦では実況マイクがあるため、応援指導の声が全体に届きます。だからこそ、「全員が歌える」「全員で声を出せる」ようにすることを意識して、マイクを通じて応援席に一体感が生まれるよう工夫しました。
Q.春の慶早戦を一区切りとして、次に見据えている目標は何ですか?
枝廣:塾野球部は、秋の優勝に向けてすでに動き出しています。我々應援指導部も、彼らの力になれるよう、これからさらにパワーアップして「野球部に一番届く応援」を目指していきたいと思います。
満員の慶早戦において、球場はいつも以上の熱気に包まれ神宮がまさに「特別な舞台」として彩られた一日だった。春は悔しい結果となったが、まだ秋がある。夏を経て、應援指導部がどのような進化を遂げるのか、我々は見届けたい。
(記事:岩切太志)