【野球】猛打奮う法大打線撃破へ 先発陣の粘投と中軸の決定打に期待/2025秋季リーグ戦 法大戦展望

野球イベント・その他

 9月13日、東京六大学野球秋季リーグ戦が開幕する。慶大の開幕カードの相手は、春季4位の法大。春は激闘の末、4戦目で勝ち点を逃し、法大には2季連続で勝ち点を落としている。今季は法大の重量打線をどう封じるか、また中軸の一振りで主導権を握れるかが鍵となりそうだ。

 春季の慶大は5勝7敗で法大と勝ち点2で並んだものの、勝率の差で2季連続の5位。これは2002(平14)年春秋以来、6度目の屈辱となった。ただ2000(平12)年秋季には2季連続5位から優勝した例もある。春季は1点差で敗れた試合が4試合。その中でも今秋の開幕カードで戦う法大との3回戦では、最大4点差を追いつく粘りを見せたが、最終9回に主将・松下歩叶(営4・桐蔭学園)の適時打で勝ち越された。先発・渡辺和大(商3・高松商業)が1回1/3で降板し、救援陣が粘投したものの最後は力尽きた。これらの苦い経験を経て、オフ期間の約2か月でAチームだけで41試合ものオープン戦を実施。「接戦を勝ち切る」ための鍛錬を積み重ねた。8月末の全早慶野球戦では3連覇中のワセダ相手に2試合連続で先制を許したが、いずれも引き分けに持ち込み、今夏の成果を示した。

 

 法大投手陣は篠木健太郎(令6卒・現横浜DeNAベイスターズ)と吉鶴翔瑛(令6卒・現東芝)の両輪が抜け、野崎慎裕(営4・県岐阜商)がエースナンバー「18」を背負い、先発陣の柱となっている。野崎は春季9試合に登板しチーム最多の3勝を挙げ、今秋の開幕戦でも先発が予想される。2戦目は春季に慶大戦4試合すべてに登板し、計5回1/3を自責1に抑えた山床志郎(文2・高鍋)が有力だ。春季のチーム防御率は4.80とリーグ5位(東大に次ぐワースト2位)ながら、救援陣の層は厚い。春季慶大3回戦でリーグ戦初勝利を挙げた赤間梢吾(キャリア4・法政二)、ルーキーながら8登板を経験した槙野遥斗(営1・須磨翔風)らに要注意だ。さらに故障離脱していた永野司(営4・倉敷商)が万全なら、慶大打線は一層攻略に苦しむだろう。

 

 一方の慶大打線は、多くのオープン戦で1番・今津慶介(総3・旭川東)、2番左翼・小原大和(環3・花巻東)、4番右翼・中塚遥翔(環2・慶應)を固定。春季にOPS1.048と好成績を残した今津はユーティリティープレーヤーとして、今秋も複数ポジションでの起用が見込まれる。春季正捕手・渡辺憩(商2・慶應)の三塁転向に伴い、加藤右悟(環1・慶應)と吉開鉄朗(商3・慶應)の正捕手争いも続く。直前のオープン戦での起用パターンから、吉開の開幕スタメンが有力視されるが、シーズン中は併用が濃厚だ。さらに林純司(環2・報徳学園)が二塁から遊撃、吉野太陽(法3・慶應)が三塁から二塁へと守備位置を変更。右の強打者・森村輝(総4・小山台)、オープン戦では指名打者で存在感を放った小山春(政4・鎌倉学園)、チーム最多タイ3本塁打の常松広太郎(政4・慶應湘南藤沢)、チームの副将・今泉将(商4・慶應)らラストイヤー組の集大成にも期待がかかる。

 中でも注目は中塚だ。春季は全14試合に出場し14安打のうち長打が6本と勝負強さを見せ、チームトップタイの10打点を記録した。ただ法大戦では13打数2安打、6三振と苦しみ、打率1割5分4厘と最も相性が悪い。さらにシーズン21三振はリーグ最多。秋季は確実性を高め、勝負どころで走者を還せるかが焦点だ。

 

 慶大の開幕戦の先発は渡辺和が有力。春は8試合に登板し1勝2敗、防御率4.25と不本意なシーズンを送った。特に法大戦では4登板で2先発し、防御率13.50と相性は最も悪い。そんな渡辺和だが、リーグ戦前最後の登板となった9月6日、青山学院大とのオープン戦では5回3安打無失点と復調をアピールした。昨秋最優秀防御率を獲得した圧巻の投球で神宮のマウンドを支配できるか、注目だ。2戦目は外丸東眞主将(環4・前橋育英)が有力だが、コンディション次第で水野敬太(経2・札幌南)がリーグ戦初先発の可能性もある。また荒井駿也(商4・慶應)が7日・東洋大とのオープン戦で復帰。左腕救援不足を補う貴重な存在となる。右腕陣も前田晃宏(商4・慶應)、小川琳太郎(経4・小松)、田上遼平(商3・慶應湘南藤沢)、松井喜一(経2・慶應)ら経験者が揃い、坂中大貴(商4・高松商業)のリーグ戦初登板もあり得る。

 法大打線は過去に3季連続ベストナインを受賞した主将・松下を核に、新人ながら打率3割5分5厘でベストナインを獲得した境亮陽(営1・大阪桐蔭)、3割4分でリーグトップ8盗塁を記録した俊足巧打の藤森康淳(営3・天理)、昨秋首位打者の熊谷陸(人2・花巻東)ら強打者が揃う。チームは春季リーグトップの134安打を放ち、どこからでも得点機をつくれるのが特徴だ。特に春季は2本塁打と決して一発は多くないが、広角への鋭い打球と得点圏での勝負強さを見せる松下の前に走者を出さないことが重要である。

 

 目標は2連勝で勝ち点獲得。達成すれば、日本一にも輝いた2019年秋季以来6年ぶりとなる。難敵ではあるが投手陣の粘投と主軸の奮起で勝ち点を奪えば、“天皇杯”奪還へ大きな弾みとなる。今年は東京六大学野球連盟創設100周年。春は宿敵・ワセダに優勝を譲ったが、今季こそ“陸の王者”慶大が六大学の頂点に返り咲く。

 

(記事:加藤由衣)

タイトルとURLをコピーしました