【競走】「10年越しの共走、最後の箱根へ」島田亘×渡辺諒(後編)箱根駅伝予選会直前特集⑦

競走

箱根駅伝予選会まであと3日!慶スポでは本番を直前に控えた選手方・スタッフにインタビューを行いました。特集7日目の本日は、中学時代の大会で出会い、10年にわたり互いを刺激し合ってきた“さいたま市”コンビ!後編では、支え合い、競い合ってきた4年間、予選会への意気込み、そしてお互いに託す思いを語ります。これを読んで是非当日も声援を送りましょう!

――今シーズンのここまでの調子を振り返っていただけますか?

渡辺:競技に、時間も意識も向けられなかった1年でした。ここ1ヶ月で、ようやく、体とメンタル、陸上に向き合うところも、やっとハマってきました。去年の予選会からの12ヶ月間のうち、調子よかったのはこの1ヶ月間だけだなという感じです。

島田:去年の予選会で出走させていただいてからは、どちらかというと競技にそこまで目を向けられなかったっていうのが結構大きくて。ただ、その影でとりあえず怪我なく走ろうというのは心に決めていました。辛くて苦しいシーズンの中で地道に積み上げてきた距離があったからこそ、今年の夏、1度も怪我なく(保科コーチから)出されたメニューっていうのを一応全部こなすことが、今のところまでできています。夏以降、芽がやっと実ってきたかな。

「夏以降、芽がやっと実ってきたかな」(島田)

――島田選手は、2回の合宿を終えて得られた手ごたえや課題はありましたか?

島田:今まで1~4年と基本的に選抜合宿に参加させていただいていて、特に下級生の頃は練習をこなすことでほんとに精一杯で。毎年疲労でいっぱいになってしまって、走りきれない、完走できないみたいなことがあったんですけど、今回の2回(の合宿)は、若干例年に比べるとこなしやすいメニューになったということはありますが、”4年の余裕”も相まって、各ポイント練習で満身創痍にならず、継続的にちゃんと練習をこなせたことが、手応えとしてあります。

――渡辺選手は、この1ヶ月調子が上向くきっかけは何でしたか?

渡辺:9月頭のミーティングで、「4年全員で白Kのユニフォームを着よう」という話があったことです。予選会メンバーへの執着が全然なかった自分にとっては、確かに達成したいなと思えたきっかけになりました。また、1番はなんだかんだ言って島田の存在みたいなところが僕にはあります。島田がいなかったら僕は今年の7月ぐらいに部活を辞めているので、島田と最後一緒に走るためにラスト1ヶ月は死に物狂いで調子戻したみたいなところはあるので。ノロケ話みたいで嫌ですけどね(笑)。

「島田と最後一緒に走るために」(渡辺)

――その時期、島田選手から何か言葉をかけられたりしたんですか?

渡辺:言葉とかではないですかね。僕1人だとジョグができないので、ジョグに誘ってもらえるだけで全然違うとか、そういうところは結構あるんですかね。ポイント1個とってもやっぱり島田ができてて自分はできないのは悔しい、というよりは申し訳ない気持ちの方が強くて。1個1個の練習で過ごす時間が長いからこそ、ちょっとした刺激みたいなのが自分を戻してくれたのかなっていう風に思います。

――島田選手は、長距離ブロックにおけるご自身の役割をどのように感じていますか?

島田:普段の生活だと潤滑油というか緩衝材みたいだと自認していて、誰とでも結構仲良くできるのもありますし、先輩後輩問わずまんべんなく接してるんで、チームの和をより深められるような立ち回りを自然とやっています。走りの面に関しては、今自分が4年で、Bチームを渡辺と一緒に引っ張ってるっていうのがあるので、安定剤というか、Bチームの要かなと思っています。

渡辺:この夏は、島田の走ってるペースが全員の指標になっていたので、そういう意味では本当に要だなと思います。

「(自分の存在は)潤滑油というか緩衝材」(島田)

――この1年間はどのようなことを意識して練習に取り組まれましたか?

島田:この1年は就活があって、なかなか向き合えないっていうのはあったんですけど、でもその中でも最低限やれることはやろうというか、怪我なく走りきろうみたいなことは絶対意識していて。「なんとか下の学年のためにもやろう」みたいな意地が自分はあったかなっていうのはあります。

渡辺:1年間意識して取り組んだことはないですかね。集中するときは集中してガってやるみたいなやり方なので、1年間何かをするっていうよりは、ほんとにこの1ヶ月間でメンバー入りをするっていうことを強く思ってやっただけですかね。

――シーズン中の山場、正念場だと感じた瞬間、時期はありますか?

渡辺:9月ですね。やっぱり結局予選会メンバーを決める時に、直前で調子をガクって落とすとやっぱ印象悪いというか、当日走れるイメージみたいなのが監督側でも持ちにくいし、選手としても持ちにくいということで、9月のポイントはできる限り外さないっていうのと、確実に1個1個のポイントを踏んで、自分の状態が上がるようにアップの内容もちょっとずつ変化もさせました。

動きの部分についても、自分の頭の中ではしっかり言語化するようにして、それが実を結んで、結局メンバー入りを掴めたので、全ての9月のポイントが僕にとっては山場だったなっていう風に思います。

「9月のポイントが僕にとっては山場」(渡辺)

島田:自分としては8月、9月の夏合宿期間かなっていう風に思っています。先ほど全てのメニュー怪我なくこなせたと言ったんですけど、逆に自分が、最後の砦じゃないですけど、ここで自分が折れないようにと、そういう意識を持って夏合宿に臨めていたのが良かったと思いますね。

――今大会、走りで期待に応えたいと思う存在はいますか?

渡辺中学の顧問の先生です。この10年間振り返って調子よかった時期、相対的に実力があった時期が中学時代なので、その時の顧問の先生に最後いい走りを見せられたらなと思いますね。今年初めて(現地に)来てくれるってことなので、いい走りを最後もう1度見せられたらなという思いはありますね。

島田:もちろん応援に来てくださる方々もですけど、自分としては保科ヘッドコーチだと思っています。それこそ、大学3年生の頭の時期になかなか走りでチームに貢献できない時期があって、「自分は選手じゃなくてマネージャーとかサポートする側で、何かしらチームのためになれるんじゃないか」って保科コーチに相談しに行ったことがありました。

その時保科さんが、「ここで1回休んで地道に継続することが(島田の)強みだと思うから、続けていけば必ず結果が出ていくから」ということを言ってくれて、その言葉があったからこそ、今の自分が夏合宿で飛躍というか、力を貯めることができて、最後の予選会のスタートラインにも立てる状態まで持ってこれた、というのがあります。最後の大舞台で、保科さんが期待する結果をしっかり出して、「よくやった!」と言ってもらえるような走りをしたいなと思ってます。

――予選会当日、ユニフォームを着てスタートラインに立っている時、どういった心境になっていると思われますか?

渡辺:心境で言ったら、8km以降、絶対きついだろうなと思いながらスタートラインに立つことになるかもしれないですね。僕はハーフマラソンの経験値だけで言うと、多分チーム内で2番目に(多く)あるんですけど、毎回8km以降絶対苦しいんで。そこをどう乗り越えるかみたいなところを考えながらスタートラインに立つんじゃないかなと思います。「やってやるぞ」と最初だけガンガン前に行くのはいいんですけど、後半で一気にガクって落ちちゃうっていうのは想定できるので。頭は冷静に、心は熱くスタートラインに立てたらいいなって思います。

「頭は冷静に、心は熱く」(渡辺)

島田:去年は、スタートラインに立って、気づいたらもうスタートしてたっていう感じで(汗)。自分は最後尾だったので、気づいたら「行っちゃった」「あれあれ?」みたいな。「もう出るんだ」って。

渡辺:僕も去年Bチームの先頭を任されて、2km走って後ろ見たら誰もいなくて、「あれあれ」って感じだったんですけど…。

島田:去年は初めての出走で、「箱根に出るんだぞ」って気持ちで臨めていたかというと、正直なところ、持てていなかったところがあって。だからこそ、今年はそういう自覚を持って、「熱い気持ちを持ちつつも、平常心で考える」みたいに全力で走りきれるようにスタートラインに立つ準備はしようかと思います。

渡辺:当日のスタート順は、最近の練習で言ったら島田が前になりそうな感じはありますけど、まだちょっとどうなるかわかんないですね。

島田:今どっちが前とか後ろとかっていうのは特に考えてはないです。

渡辺:今ここでじゃんけんで決めてもいいですけどね(笑)。どっちもペースメイクはチームの中だと得意な方なんで、そのほうが(後輩たちも)安心してついていけるはずなので。行きたい方が行くんじゃないですか。

――予選会に向けて、意気込みをお願いします!

渡辺:個人の目標で言ったら、2年生、3年生で50位ずつぐらい順位上がってるんで、今年も50位上げて250番以内には入りたいなっていうのが順位での目標で、とてつもなく個人的な目標だと、同じレースで負けたことない島田に最後も勝って終わりたいなっていうのは気持ちとしてはありますね。

島田:自分もハーフの持ちタイムとかだと全然結果は出てないですけど、4年生最後の意地みたいなところで、渡辺に負けないように、順位で言うと250位以内っていうところを1つの指標としてやっていって。65分半切りできたら、すごいよくやったって自分で満足できるかなと思うので。250位以内と65分半切りが個人目標です。

――レースの鍵となる部分はどこだと考えますか?

渡辺:間違いなく駐屯地出てから公園内に入るまでの市街地コースが僕は苦手なので、そこでガクって落ちないことが1番自分にとっては大事かなと思っていて。公園内はどの選手もきつくなりタイムが落ちるので、むしろそこまでの公園内に入るまでどれだけリズム崩さずいけるかが大事だと思います。レースの鍵はそこの市街地でどれだけ苦しくなく繋げられるかってところになるかなと思います。

島田:逆に自分は、最初のその駐屯地のところでいかに流れに乗れるかがレースの鍵だなと思ってます。去年、駐屯地で気づいたらみんな行っちゃって、そこで完全に乗り遅れて集団からはぐれちゃったという、情けない過去があるので、今年はそこでいい流れをチーム全体に持っていくために、最序盤ではあるんですけど、駐屯地で流れを掴むことがレースの鍵かなと思ってます。

――予選会では、お互いにどのような走りを期待されますか?

渡辺さいたま市トレインだよね。

島田:自分も渡辺もさいたま市出身で、中学校の地区が一緒で、中学のレースもよく前後でずっと走っていたのでそれが元となった通称です。

渡辺:予選会でも、少なくとも15km地点まではトレインして走りたい。

「15キロ地点まではトレイン」(渡辺)

島田:自分たちだけじゃなくて、後輩たちにも、風よけとか、リズムを刻んでもらって、最後俺たちも負けないようにしないといけないですけど、追い抜いてもらって…。

渡辺:いや、追い抜かせちゃダメでしょ(笑)。安定感あるトレインをやりたいです。

島田:他の対談で、鈴木太陽と関口功太郎は宇都宮高校コンビということで“宇高トレイン”っていうのがあるんですけど、あそこに負けないように、さいたま市の意地を見せたいですね。

 

――島田選手、渡辺選手、ありがとうございました!

 

(取材:吾妻志穂、片山春佳、竹腰環 編集:山口和紀)

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