春季リーグ戦で優勝し、全日本大学野球選手権大会では準優勝を果たした慶大。春秋連覇・日本一を目指して臨んだこの秋は、一時首位を独走するも、第4節・明大戦で勝ち点を落とし、優勝の行方は最終週の早慶戦に持ち越された。明大が立大から勝ち点を獲得したことで、慶大は早慶戦で2連勝すれば優勝、2勝1敗なら明大との優勝決定戦、勝ち点を落とせば明大の優勝となる。
一方、ワセダは5勝5敗で現在4位につけており、早慶戦の結果次第では2位に浮上する可能性もある。優勝の可能性はないものの、慶大にとって難敵であることに変わりはない。4年生の有終の美を飾り、”忘れ物”である日本一をつかむためにも、まずは早慶戦で2連勝し、春秋連覇を成し遂げたい。そこでケイスポは、早慶戦を前に闘志を燃やす慶大の選手・スタッフ・首脳陣にインタビューを行った。
今回は山口瑛士(商4・県立郡山)チーフコーチです!(このインタビューは10月28日に対面で実施しました。)
――まず自己紹介をお願いします!
慶應義塾大学4年の山口瑛士です。奈良県立郡山高校を卒業しまして、現在は慶應大学のチーフコーチとして活動しております。 部員が200人以上いる中で、監督とかコーチ陣と選手を繋ぐ役割を中心にやっています。
――競技経験を教えてください
キャッチャーをしていました。中学時代はサードとキャッチャーをやっていて、高校はずっとキャッチャーで、大学もキャッチャーやっていました。
――チーフコーチになったなりゆきは?
まず僕が大学入ったときの目標が日本一になることで、日本一になるために僕は選手として活躍しようと思って大学に入ってきたんですけど、新チームになる際の幹部を決める時に、同期から「僕(山口瑛)がチーフになった方が日本一に近づけるんじゃないか」っていう言葉をもらいました。そこから自分自身考えて、僕の目標は日本一になることでそれを達成するために僕自身も選手を辞めるという決断をして、新たな道を選んでチーフになることを決めました。
――チーフコーチの役割
まず一番大事なのはリーグ戦のベンチメンバーであったり、スタメン、打順を監督と相談する裁量権があるというところと、あとは普段の練習メニューであったり、練習を円滑に進めるために声掛けであったり、メニューを展開すること。そして選手に対しての声掛けですけれども、選手に監督から「こういう指示があった」というのを僕自身が伝える時もありますし、一方で選手が「こういう意見あります」というのを僕自身が監督に伝えることもあるという大体3つの役割ですかね。
――選手のマネジメントやコンディションを整える上で大変なことや意識していること
一番は勝つために何が必要かというのを選手に伝えなければいけないのが、一番難しいです。どうしても楽な方に進みたくなる気持ちは僕も選手やっていたのでわかるんですけど、それでは勝てないし、練習もいいものにならないですし、強くなっていかないなという実感があったので、勝つために必要なことを指示し続けるというのが選手の気持ちもわかる分大変な面かなと思いますし、それを言い続けるというのが意識していることかなと思います。
――監督との橋渡しにおいて意識していること
監督は論理的というか筋を通して勝つために必要なことなのかという話を大前提に話を進めると話をしっかり聞いてくださるので、まず筋道立てて話すというところが目上の方に話すときいつもそうですけど、基本的に大事にしてることかなと思います。勝つために必要なことというところから紐解いて、「僕ら学生コーチはこういう意見を持ってます」だったり、「選手はこう思ってます。だからこうした方がいいと思います」というのを伝えることで、監督は聞いてくれる方なので、しっかり筋道立てて論理的に話すことは意識してるかなと思います。
――チーフコーチにとって堀井監督とは
僕が知っている中で一番野球が大好きで、野球に詳しい監督だなと思います。理由としては今まで関わってきた選手のことをほとんどというか、全ての選手を覚えてるんじゃないかというぐらい経歴まで覚えておられて、かつどういう試合をしたとか、この試合の何回の何アウトのプレーはどうだったとかも鮮明に覚えてる方なんで、そういうところがすごいなと思います。知識に関してもこういうことをすれば野球をうまく進められるというのを、監督からここまで高校まで真剣にやってきた中でもまだまだ学びがあるなと思ったので、野球に一番詳しくて一番熱い方だなというのは端的に言うと思います。
――チーフコーチになってから堀井監督への印象は変わったか
そうですね。コーチになって監督の横にずっと居させてもらってるので、選手やっていた時とは野球の理解度、解像度がだいぶ上がったなと思います。具体的には、戦術面もそうですけど、監督が横で「今のスイングはこうだったな」とかそういうのを一言一言聞いていく中で、僕もその選手に良いアドバイスができるようになったりとか、そういうのもあったので、監督の横に居続けて試合を見続けられたっていうのは、この1年とても貴重な経験だったなと思います。
――ベンチのメンバー決める役割の難しさはどのようなところにありますか
対戦相手、他の五大学にも特徴があって、選手1人1人のコンディションも違って、その中でのベストメンバーというのを選ばなきゃならないところです。選手がベンチ入りにどれだけの思いをかけてるかというのは僕自身も理解してますし、慶應を代表するというのは理解してるんで、心が痛いのもあるんですけど、そこは心を鬼にして勝つために必要なメンバーを選ばないといけないというのが選手と近い分、心が痛苦しいなという部分もあります。ベンチに入るために頑張ってる選手をベンチに入れないという選択をすることもあるので、そこが難しい部分かなと思いますし、そこをぶらしてしまうとベンチメンバーに情が入ってしまうというか、勝つために必要なメンバーじゃなくなってしまうので、そこを意識しています。監督と相談するようにしてるかなと思います。
――選んだメンバーの中でベンチの雰囲気を良くするために行っていることは
まず僕がずっと意識しているのは、練習の時もそうですけど、ベンチで僕自身が一番熱い場所であり続けようというのを意識しています。それは自分が一番声を出すとかもそうですし、選手はプレーしながら声を出すというのは難しい部分があるので、僕自身は選手の表情とか仕草を見ながら適切な声掛けをできたらなというのを1年間ずっとやり続けてきました。それを実践できているからこそ、選手を観察する面も養ってこれたかなと思います。
――試合中は大村昊澄(法3・慶應)選手と一緒にベンチを盛り上げているが、2人の間で決めていることはありますか
そうですね。守備イニング終わった後に選手をハイタッチしながら迎え入れて、全員帰った後に大村とハイタッチするみたいな。あれは取り決めたわけじゃないですけど、勝手にそうなってました。あれはいいっすね。
――一番こだわりを持っている仕事を教えてください。
一番こだわりを持っているのはバッティングピッチャーですかね。バッティングピッチャーをほぼ毎日やるんですけど、その選手の状態によって、多少工夫している部分があります。外から見たら同じに見られるかもしれないですけど、例えばめちゃくちゃ引っ張ってるバッターだったらちょっとセンターに打ってほしいなという時は外多めに投げたりとか、思いっきりも打たせて飛ぶところに投げるべきだなと思ったら、自分が打ちやすいところを投げたりとか、工夫が選手の成績に直結する部分があるので、バッティングピッチャーはその選手の打撃に一番直結する部分なので、僕はこだわってますね。こだわりたいですね。
――バッティングピッチャーをする中でも選手のコンディションや打順、ベンチ入りなども決めていますか。
そうですね。後ろから見て分かる部分と前から投げて見て分かる部分は全然違ったりするので、正直監督とかより僕が投げてる状態を見る方が理解できるんじゃないかなと思います。監督が後ろから見て僕がバッティングピッチャーしながら見るっていう違う視点から見れるという部分でもバッティングピッチャーから状態を見るっていうのは大事かなと思います。
――吉開鉄朗(商4・慶應)選手は元捕手という視点からどう見えていますか。
努力家というか、チームが勝つためにやらないといけないことを自分で明確にずっとやり続けてくれてる選手だなと思っています。もちろん僕キャッチャーだったからわかるんですけど、自信を持ってサイン出すためにはデータもそうですけど、自分自身のストッピングとかそういう自分のスキルがあるからピッチャーを引っ張れるっていうのがあると思います。そこに対しての努力を惜しみなくやっているからこそ、あそこまで堂々とピッチャーを引っ張れて、ここまで失点は少なくできているんかなと思います。
――夏から秋にかけて1番成長したと思う選手は
誰やろうな。寳田裕椰(経4・三重)じゃないですかね。春はあんまりベンチにできなかったですけど、こうやって秋は必要なピースとして活躍できてるっていうのは、あいつ自身の頑張りもありますし、チームとして熱い存在でいてくれるというのは心の支えになってるかなと思います。
――いろいろな仕事がある中で1番相談しやすい人は
結局重要な話は今津(今津慶介=総4・旭川東)と話してるのが多いかなと思います。監督も今津を信用してるんで、今津の意見を聞いて、僕の意見を聞いて、谷口(=谷口航大、経4・慶應)の意見を聞いて、最終的に監督が決めてくれることが多いので、今津と僕でチームの方針であったり、どういう練習をするべきかという話を一番することは多いかなと思います。「今の雰囲気がこうだからこういう練習をするべきだよね」というの今津が教えてくれて、僕が声を出す時もありますし、僕が今津に「こうやって言うべきだと思うで」と言って、今津が言ってくれる時とかもあるんで、二人の関係は良いと思いますね。
――印象に残っている試合は
勝ち試合で言うと早稲田に勝って最後優勝を決めた時です。あの試合を勝ち切ったからこそ優勝できたので、あの1試合は結構大きいものがあったなと思っています。一方で何が1番印象に残ってるかと言われると関大に負けた全日本(大学野球選手権大会)の決勝かなと思っています。あそこまで絶対に勝てるじゃないですけど、勝てる準備をしていたにも関わらず、あそこまで完敗してしまったのはまだまだやれることあったんだなという中で、春終わって夏やって、秋始まっているので、あの試合は忘れたくないし、忘れられない試合やったなと思います。
――今津選手がドラフト会議で指名されたが、プロ野球選手をマネジメントしていたことに関してはどのような思いがありますか
この1年間今津に対して1番投げてきた自信があるし、僕の球をずっと打ってたという自覚もあると思うので、僕自身めちゃくちゃ嬉しいです。努力が報われるというか、虎視眈々と準備し続けて春リーグ活躍して、大学日本代表にも選ばれて活躍もする。それで夢であるプロ野球選手になるという僕も憧れていたプロ野球選手に同期がなるというのはすごい感慨深いですね。
――プロの世界に入ってからどのような活躍を期待したいですか。
侍ジャパンになってほしいですね。あいつはここぞの集中力は僕が知ってる野球選手で一番あるんで、そういうのが必要なのがプロ野球やと思います。そういうところはピカイチで抜けてる分、技術とかはまだまだ成長していくと思うので、そこには期待できるかなと思います。
――入部した時に初めて仲良くなった部員を教えてください。
寮の部屋が同じやったのが福井怜侑(商4・三重)と渡邊功喜(総4・湘南学院)という同期なんですけど、その3人は今もずっと仲良いし、いろんな遊びに行ったりもそうですし、野球したりします。最初慶應に入って誰も友達いない中で不安やったんですけど、その2人に最初は支えられたので、2人と出会って、そこから寳田とかも仲良くなりましたね。親友って言える存在かもしれないです。
――チーフコーチに就任してからここまでを振り返ってみて
本当に良い決断したなというのは心の底から思っています。選手辞めるって相当な決断ですし、僕自身野球でキャリアを作ってきたので、野球をするために慶應に入ってきたのに選手を辞めるって決断は人生で一番重い決断でしたけど、心の底から良かったなと思える瞬間ばかりで。それはもう春優勝した時もそうですし、負けて悔しいと思った関大戦もそうですけど、ここまで真剣にというか熱くなれる場所を作ってくれた同期に心から感謝したいです。それを同期が勧めてくれたからこそ僕自身が最も活躍できる場で活躍できているんじゃないかなと思います。あと1ヶ月ないくらいですけどまだまだやり残したことあるなというかやれることはあるなと思うので、このチーフコーチを1年間やりきったと言い切れるように、最後の最後まで走り抜けたいなと思うんで、気を抜かずに同期に厳しく、そしてメンバーにも厳しくやっていきたいなと思います。
――野球部の強さはどこにあると考えますか。
今年の強さは同期の野球への思い入れというか、愛が強い部分かなと思います。理由としては部員がこれだけ多いといろんなところにベクトルが向きがちなんですけど、今しかできない慶應での野球に真剣に向き合ってる選手が全員というのが、一番の強みかなと思います。それはBチームにいてもAチームにいても同じで、4年生が頑張っていると3年生以下もついてきてくれますし、そのチームビルディングが一番学生野球において正しい作り方だと思うので、その4年生を頑張らせるという部分では僕自身もそうですけど、選手1人1人がとても頑張ってくれてる印象で、それが1番の強みだと思います。それに加えて、後輩たちが活気良く僕らについてきてくれてるというか、それは3年生も2年生も1年生も同じで4年生が記した道をた辿ってきてくれてるというか、後ろを支えてくれてるなっていう感覚もあるので、そこが良いチームの作り方というか、強い慶應を作るためには必要なんじゃないかなと思います。
――惜しくも明大戦で勝ち点を落としてしまいましたが、チームの雰囲気をどのように盛り返していきますか。
勝ったら優勝という試合が結局難しかったなという印象です。その一戦に全力をかけて戦おうとはするんですけれども、やっぱり意識してしまう部分があったなと思うんで、そこから運良くというか(早慶戦は)3週間後の試合やったんで、これだけ日付が空いたのはラッキーだったなというか、気持ちを作る上ではとてもやりやすいスケジュールだったなと思います。持ち直し方で言うと、次の試合勝ってまだまだ自力優勝があるってところが僕らのモチベーションであり、早慶戦で早稲田に負けるというのは相当なものなので、伝統ある早慶戦を勝ち切ることと六大学の優勝。その二面性においては、その2つをしっかりやり切るというかどっちも取り切ろうとしている選手1人1人の意識を感じるんで、完全に早慶戦で優勝に向かってるなという印象です。
――ワセダの警戒選手を教えてください。
それはエースの髙橋煌稀(スポ3・仙台育英)投手ですかね。あのピッチャーを打てたら勝てるし、打てなかったら負けると思いますし、相当いいピッチャーだと思うのでそのピッチャーをどうやって打つかというのを日々検討しているというか、実践して対策しているような状態です。
――早慶戦でキーマンになる選手を教えてください。
野手でいうとやっぱり今津かなと思います。今津が打てばチームは乗ってきますし、チャンスで回ってくるのが不思議と今津なんで、今津が打てば点が入るというようなチーム状況なんで、今津の1本への価値っていうのは非常に大きいなと思います。バッテリーに関しては、吉開がどれだけ点を防げれるかっていうのは期待してますし、必要なピースかなと思います。吉開の粘り強さという部分とリードというところで失点を防いで、今津が打って点を取るっていうのが理想の形かなと思います。
――最後の早慶戦への意気込みをお願いします!
必ず日本一を取り取るっていうのは僕自身の目標であり、チームの目標なので、日本一取るまで引退できないなというのは全員思ってることです。早慶戦に関しては、あそこまでお客様が入って野球できるというのは、人生でもうないんじゃないかなと思いますし、貴重な経験をさせてもらってるなというのは春感じました。その経験からこの秋もう1回早慶戦ができるというのは本当に幸せなことだなと思いますし、あの環境で野球ができる幸せを感じつつ、必ず勝ち切るという部分を1人1人が意識できれば必ず勝てる相手だと思うので、そこをぶらさずやりたいと思います。早慶戦で勝って、優勝決定戦も勝って、神宮大会優勝するまで短いようでまだまだ長い道のりなので、そこまでしっかりやり切りたいなと思います。
(取材、記事:奈須龍成)

