慶應スポーツ新聞会

【ラグビー】新年度特集③野澤武史HCインタビュー

野澤武史ヘッドコーチ

蹴球部新年度特集の第3弾は、野澤武史ヘッドコーチのインタビュー。慶大ラグビーの顔とも言える男が指導者となってから一年。HCとしてチームを支えた昨季の反省、そして今季の抱負を語っていただいた。ラグビーに対して真っ直ぐであり続けた野澤HCが語る慶大ラグビー部とは。

 

――昨年度の対抗戦を振り返って

 

苦戦の理由としては、慶大がやりたいことができていなかったことが大きかったと思います。特定のチームが圧倒的に強くて、歯が立たないというよりはそこが原因でした。

 

――昨年度はFwd戦で苦戦することが多かったと思いますが

 

やはりラグビーって基本だと思います。幹の部分がしっかりしていることが大事だなと。チームを引き継いだときに感じたのは、新しいことを加えるということは難しいことだと。プラスをすると、どこかが抜けてしまうことがありますよね。今年は、そこに今までの慶大の良い部分というものがあったのかもしれないです。

 

――対明大戦の反省は

 

いい場面も多かったですが、けっこう押されていましたね。コンタクトの局面であったり、フェーズが重なってインプレーが長くなるときに、慶大には不利な展開になったと思います。

 

――コンタクトの場面で押されることが多かった理由は

 

コンタクトで勝つために体を大きくしようという方針だったのですが、慶大の良い部分であるフィットネスが落ちてしまいました。そこは後手を踏んだところです。もうひとつは、強みを作りきれなかったところです。

 

――対早大戦の反省は

 

後半の最後15分くらいなのですが、慶大が継続して順目にボールを運び始めた場面から良いラグビーができました。最後にトライをとったのですが、あのトライは大学選手権での方向性を示してくれましたね。

 

――大学選手権まではどのような点に特化して練習したのですか

 

内側からの運動量(インサイドワーク)とタックルですね。簡単に言えば春から取り組んできたことを止めました。具体的には判断・圧力のかけ方・立ってプレーすることなどですね。時間的にも迫っていたので、苦渋の決断でした。練習内容もガラッと変えました。試合の前には、ディフェンス面では規律(ディシプリン)を設定するようにしました。規律を設定すると無駄な部分が出てしまうのですが、決め事があったほうがあの時の慶大には良かったのかなと思います。

 

――決断に迷いはなかったでしょうか

 

早慶戦の結果を受けてということがあったので、導入しやすかったです。

 

――大学選手権一回戦の流経大戦を振り返って

 

試合前はチーム全体にここで負けたら何も残らないという危機感が漂っていました。対抗戦でも負けて、選手権でも負けたら本当に何も残せないという状態でした。だから気持ちの入りがこれまでとは違っていたのも特徴的でした。

 

――大学選手権二回戦の天理大戦を振り返って

 

前半は耐えて、後半に勝負というイメージを持っていたのですが、風上・風下が入れ替わってしまったのもありました。選手権前の三週間で、慶大が調整してきたインサイドワークと運動量という部分を天理大もしっかり準備してきていましたね。天理大の方がフィットネスは落ちていなかったですしね。そしてFWが予想以上に強かったです。反省があるとしたら、トライの取られ方です理大がそれまで得点源としてきた3次攻撃までのトライは防ごう、と試合前に話してきましたが、やはりとられてしまいました。

 

――大学ラグビーの指導を1年間やってきてどんな思いを抱きましたか

 

現役の時と変わらないのは、学生がラグビーに対して一生懸命で、タックル一つにプライド持っているところですね。逆に変わっているところもありましたね。昔の方が良い意味で人の言うことを聞かなかったですよね。自分が現役の頃は試合中に方針を変えたりもしましたが、今の学生は指示を欲しがっていますね。

 

――昨年度から今年度の慶大ラグビーに活かす点としては

 

インサイドワークですね。去年の財産なのでしっかり活かしていきたいです。選手起用でもそこがポイントになります。去年は体を大きくすることに主眼を置いていたのですが、今年はより試合中に機能できるようにしようと思います。動けない選手は試合には出られません。ボールを持ってゲインする能力を持つような一発の運動量よりも、しぶとく何度でも働いてくれる選手を求めています。

 

――この春の試合に関しては

 

リーグ戦の上位校と当たることはないのですが、得られることはたくさんあると思うので楽しみにしています。早大・明大・同志社大などとは定期戦という形で戦います。本当に真剣勝負の場を用意していただいてありがたいです。

 

――このオフにHCとして考えていたことは

 

まずは自分が勉強しないといけないということですね。シーズン中に反省しきれなかったことを次に活かそうとしています。次の代が順調にスタートすることが、仲宗根達のためになるかなと。完全燃焼した感じが自分の中で無かったので、天理大戦が終わって二日後くらいから動き始めました。トップリーグの練習を見に行かせてもらって、意見交換をしました。様々な練習を見て、合っていたという部分と改善した方が良かったなという部分を把握しました。

 

――茂木組が始動したが雰囲気はいかがですか

 

まだ始まって二週間なので、モチベーションは高いですね。真価が問われるのはこれからですね。何度でも同じことをやれる人間が最後に勝つと思います。

 

――大学ラグビー界において、慶大が果たすべき「伝統校」の責務とは

 

格好よく言えば、人間これだけやれるという生き様を見せるということですね。試合前の整列の時に、慶大って驚くくらい小さい選手が多いですよね。その中で、これだけ鍛えて考えればこういうラグビーができることを示すってことですね。言葉で表現するのは簡単ですが、実際に人間がやり切るためには越えなければいけない壁がありますよね。大きいチームに対して、いかに体を張ってプレーをするかということです。一番慶大が表現しやすい点ですから。

 

――「理屈を超える」という概念は指導者になってからも変化はないですか

 

まだ自分も指導者歴が短いので、日々勉強です。やはり理屈を超えるということは理屈を知らないと駄目ですよね。突き詰めている間に自然と超えるのかなと。始めから越えようとすると、それは単なる暴論になってしまいますからね。まあ一生勉強だと思っています。

 

――2019年に日本で開催されるW杯に向けて、思うところは

 

コーチとして、世界でも通用する選手を育てることは大前提として、それを抜きにして、他のことを考えるなら、人と人がつながれる関係を作ることと、ラグビーの本当の楽しさを伝えることを忘れずにやっていきたいです。

 

――お忙しいなか、ありがとうございました!

(取材 黒瀬 健太郎)

 

野澤 武史(のざわ・たけし)

小・中・高・大と慶應義塾一筋でラグビーを学ぶ。「理屈を越える」を信条とする若き指導者は、現役時と同じように日々成長を追い求めている。現役時代のポジションはFL。日本代表の経験もある。

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