近藤琢哉主将(商4)が、第82回全日本フィギュアスケート選手権大会(12月21〜23日、さいたまスーパーアリーナ)に出場する。まずは第1回、昨季の悔しさをバネにして強い気持ちで臨んだ今季について語っていただいた。その後のインタビューで、さらに近藤選手の魅力が感じられるようなお話を伺うことができた。第2回ではその模様を掲載する。(全3回)
※このインタビューは、11月8日に行われたものです。
「世の中には化け物がいるなと思って、そこから悔しくて(フィギュアスケートが)面白くなっていった」
―フィギュアスケートを始めたきっかけを教えてください。
「これを言うのはいつも恥ずかしいんですけど、小さい頃、本当はフィギュアをやるつもりはなくてアイスホッケーをしたかったんです。でも入ったクラブがフィギュアで、間違えてしまったんです。」
―それでも続けてこられたんですね。
「最初はクラブがフィギュアしかないと思っていて、そのうちにホッケーができると思っていたんですけど、しばらくしたらそうじゃないんだなということに気づきました。最初は本当にしぶしぶフィギュアをやっていました。」
―それでだんだんフィギュアスケートが楽しくなっていったのですか。
「いや、楽しくなっていったというわけではありません。それでも試合とかには出ていて、習い事としてちょっとトントン拍子でいっていました。それで全日本ノービスに小学4年生ぐらいのときに初めて出たんですけど、無良崇人選手や小塚崇彦選手が1位とか2位とかでした。殿上人みたいな人たちを見て、世の中には化け物がいるなと思って、そこから悔しくて面白くなっていったという感じです。」
―近藤選手が理想とするフィギュアスケートとはどのようなものですか。
「難しいですね。いろいろ思いついてしまうんですけど、一番はやはり観ていて感動するような演技です。ジャンプが得意だとか、スピンが上手だとか、そういうどれかではなくてプログラム全体を通して感動する、というが理想です。だから、全部が高いレベルにないとダメだと思います。」
―目標や憧れとするフィギュアスケーターを教えてください。
「エマニュエル・サンデュというカナダの選手です。その人はすごくエンターテイナーだと思いますし、観ていてすごくワクワクしますね。そういうふうになれたらなと思っています。でも最近思ったんですけど、全然自分とタイプが違いますね。だけど魅せるという気持ちだとかは同じだと思います。」
―いつからエマニュエル・サンデュ選手のことがお好きなのですか。
「中学生・高校生のときは、ひたすら上手い選手のビデオを観ていて、そのぐらいのときに一番観ていました。」
―ご自身の長所は何だと思いますか。
「結構世の中の流れでは、今は男子でも体の柔らかさだったり、スケーティングのきれいさだったり、演技のなめらかさだったり、ある意味ちょっと女性的な部分が求められているかも知れません。だけど僕は、それに逆行するかのように、粗削りで武骨なんですよ。そこが人とはちょっと違うかなと思います。自分もちょっと(前者のようなスケートを)やろうとしたんですけど、全然できなくて。やっぱり(粗削りで武骨な)そっちの路線でいこうと思って、今はやっています。」
―反対に改善したいところは何ですか。
「ジャンプを今はパワーばかりで跳んでいるので、それだとやっぱり安定感というのはなかなか得られません。スケーティングを生かしてジャンプを跳ぶという練習をひたすらやっています。」
―好きな技は何ですか。
「ループジャンプです。ループジャンプが得意というわけではないんですけど、降りたときにパワーじゃなくて技術で跳べた気分になれるので、ループが好きです。」
―反対に嫌だなと感じる技はありますか。
「フリップジャンプです。怖いので、今シーズンは封印しました。」
―好きな滑走順はありますか。
「滑走順はこだわらないようにしています。1番滑走でも6番滑走でも気にしません。」
「応援を肌で感じられて、僕は幸せ者だなと思います」
―今までで最も印象的だった試合を教えてください。
「大学1年生のときに出た全日本と、高校3年生のときに出た全日本ジュニアです。時系列で話すと、高3のときの全日本ジュニアというのは、正直高校最後だしジュニアの中では歳も上だったので、すごく上位を狙って臨んだんですけど、何もできませんでした。結果も残せず、ちょうど大学進学の時期だったので、スケートもここでやめようかなと正直思っていました。だけど、そこでタイミングよくユニバーシアードが大学1年の終わりにあったので、それ(ユニバーシアード出場)を一つ目標にしてやろうということで、そこから1年間練習して、大1のときに全日本に臨みました。そして全日本に行って練習していたら、転んだときに脚を折ってしまって。せっかくやってきたのに、と思ったんですけど、やっぱり1年間やってきたというのがあったので、もったいないからとりあえず出るだけ出ようと思って出たら、何とかユニバーシアードに行くことができました。そうやって、試合に向けて1年間頑張ってきたというのがあったので、思い出深い試合です。それが高3の全日本ジュニアから大1の全日本にかけてのシーズンです。」
―近藤選手の試合のときはバナーが飾られたり、ひときわ歓声があったりと、たくさんの方々から応援をされている印象がありますが、その点はいかがですか。
「自分で言うのは手前味噌かも知れないんですけど、この夏にアイスショーに出させていただいて、そこでいろいろな方に「頑張って」とか「全日本絶対行ってね」とか、結構言われました。バナーとかを張っていただけるのもそうですが、そういう応援を肌で感じられて、僕は幸せ者だなと思います。」
―夏に出演されたアイスショーに出演では、何か影響を受けましたか。
「かなり受けました。日本だけではなく外国の選手など、トップスケーターの人がいっぱいいました。そういう人の練習の仕方というのはもちろん勉強になったんですけど、一番勉強になったのは、練習でそんなに成功率が高くなくても本番ではビシッと降りるという、そのあたりの集中力の持っていき方とか、上手さとかです。経験なのかも知れないんですけど、そこが一流選手の違いなのかなと感じました。」
―今年度は慶大スケート部フィギュア部門の主将も務められていますが、その点はいかがですか。
「正直やっぱり難しいです。というのは、今まで僕は本当に個人競技としてやっていて、言ってみれば自分のことをどれだけ深く考えられるかというのが、競技の成績や自分が強くなることにつながりました。だけど部活というのはそうではなくて、どれだけ部員に目を配れるかとか、本当に個人競技と言えどチームプレーなんです。そういうところに関しては、僕は初心者なので、そこが今難しいと言えば難しいですし勉強中です。」
―近藤選手は、慶大スケート部フィギュア部門の中でどのような存在ですか。
「うーん…頼りないというか、よくいじられています。主将っぽくないと思います。」
―後輩部員からもいじられますか。
「はい、いじられます(笑)。」
―大学4年生ですが、学業の両立はいかがですか。
「それは今までもなんですけど、あまりできていなくて。一応、低空飛行で勉強はしのいでいます。でも、ちゃんと卒業はしようと思っています。」
―趣味は何ですか。
「趣味・特技を全日本のパンフレットに書かないといけないんですけど、昨日一日中考えたのに何も思いつきませんでした。」
―東日本選手権のパンフレットには趣味・特技を載せていらっしゃらなかったですよね。
「書かなかったんです。チキったんですよ(笑)。趣味は、一つはラーメン二郎を食べに行くことです。でもそれは他の部員に却下されて。…特技でもいいですか。」
―では、特技は何ですか。
「特技は、自己紹介です。スケート部で、1年生のときは必ず自己紹介をするんです。それが僕は滑舌が悪すぎて、4年生になった今でも必ずさせられているんです。すごくシャウト系の自己紹介で、シャウトしすぎて滑舌が悪いと言われます。」
―ラーメンがお好きなのですか。
「大好きです。でも試合前は食べません。終わってから食べるから、やっぱり嬉しいです。」
―食事には気を付けていらっしゃるのですか。
「いいえ、気を付けてはいないんですけど、試合前になると緊張してきてあまり食べられなくなってしまうんです。だから体重はうまくコントロールされます。」
―練習の合間の息抜きは何ですか。
「基本的にスケートは一人で練習しているし、一人でいる時間というのが自然に多くなってしまうので、一人で映画を観に行ったり、それこそ一人でラーメンを食べに行ったり、本を読んだり、漫画を読んだりという感じです。気づいたら一人で何かをしています。」
第3回とつづく。
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