試合に出場することはないお二人だが、石井主務は常にベンチから選手たちを鼓舞し、また勝見マネージャーは試合中、おなじみの場内アナウンスでチームを支えている。そんなお二人の慶大への、そして野球部への想いを聞いた。
―マネージャーになったきっかけは?
石井主務 2つあって。選手で入ったけど元々肩をケガしていて、選手として限界かなと思っていたのがきっかけで、それに追い討ちをかけたのが、同期に男子マネージャーがいなくて、選手から出さなきゃいけなかった。それで話し合いを重ねてきて、結局は自分で手を挙げました。
あとは、チームに何かしら直接貢献できることって何かなって考えたときに、自分にしかできないことをやれる役職って何かなって考えると、それがマネージャーだったので。じゃあやってやろうって思ってやりました。
勝見マネージャー 私も2つあって、中高女子高でいろんなスポーツをやってきて、大学でも何かスポーツをやりたいって思っていて、どうせやるなら大学では女子高にないスポーツに関わってみたいなって思って。野球とかラグビーとかサッカーとかいろいろ考えて、単純にルールがわかるのが野球だったから、じゃあ野球かなって(笑)。そんな理由が1つと、受験生の時から慶應には憧れがあって、早慶戦は入る前に見たことがあって、独特な雰囲気で、たくさんの人たちに応援してもらえるあんなに華やかな部活の一員になれたら、大学生にしかできない貴重な経験ができるんじゃないかなって思って入部しました。
――今までマネージャーをやっていて、嬉しかったことと、逆に苦しかったことは?
石井 やっぱり(昨季の早慶戦で)勝ったことですかね。あとはお客さんがたくさん入ってくれたこと。盛り上がった中で勝てたのは最高でしたね。ただ勝ったということだけではなくて、(慶早戦支援委員会や応援指導部など)目に見える形で野球部を支えてくれている人たちと関わって、なおかつ勝てたっていうのは、野球部員として、そしてマネージャーとしての両方の喜びがあったのが、春の優勝でしたね。
辛かったことはもうありすぎてありすぎて(笑)。とにかく責任が重過ぎるってことですかね。責任の重さって2つあって、マネージャーとしてこの175人の部員全員の管理をしなければいけないってことが1つと、慶應野球部を背負ってるということの重大さ。目に見える形で言うと、お金の管理。もう、学生で扱えるような大きさのお金じゃないんですよ。だから1つの失敗は物凄く大きな失敗になるし、その1つの失敗が、応援してくれているたくさんの人の期待を裏切ることになる。外向けの発言も選手よりマネージャーの方が多くて、自分たちの言動がそのまま慶應野球部の言動になるっていうことで、その重大さっていうのはこの4年間でかなり感じましたし、自分の失敗でいろんなものが崩れ去っていくということが、今までで1番辛かったですね。なんか凄いまとめすぎてて気持ち悪いですけど(笑)
勝見 嬉しかったことは優勝したことですけど、優勝っていうのは4年間、部員全員が一生懸命やってきた結果の集大成だと思うんです。私は優勝に付随して本当に嬉しかったのが、パレードしている時に、後ろを歩いている人たちが1年生だったみたいで、要は初めて来た早慶戦が優勝だったわけで、その1年生たちが「野球とかよくわかんないけど、本当に慶應に入って良かったよね」って言ってくれていて、部の一員として普段は顔も名前も知らないような学生さんが、私たちが活動していることに対してそれだけ喜びを感じてくれることが本当に嬉しくて、いろんな人から応援してもらえる部になって欲しいって思ってずっとやってきたので、本当にそれは嬉しかったですね。
逆に辛かったことは、極論を言うと自分が女であることで、マネージャーの仕事でそんなに辛いって思ったことはないですけど、野球をやったことがないので選手の気持ちがわからなかったりとか、今何が必要なのかをマネージャーの仕事からは気付けても、グラウンドにいる時は気付けなかったりして、それが辛いし歯がゆく思うことは何度もありました。それでも応援してくれる人だったり、同期も支えてくれましたし、それで乗り越えられたかなって思います。
――そんな4年間苦楽をともにしたお二人ですが、勝見マネージャーから見て石井マネージャーは、石井マネージャーから見て勝見マネージャーはどんな人だと思いますか?
勝見 私はグラウンドで戦うリーダーはキャプテンですけど、部全体で戦うリーダーはキャプテンと同じくらい主務って責任があると思ってて、さっき責任が重過ぎるって言ってましたけど、たぶん相当苦労したと思うんですよ。だから、3年半一緒に仕事をしてて、喧嘩することもたくさんあったし言い合いもたくさんしてきたけど、4年になって本当に自覚が芽生えたなって思うんですよ。顔つきが変わってきたなって。一緒にいないところで本当に凄く努力したんじゃないかな。だから凄い努力家だし、たぶん1番チームのことが好きなんじゃないかなって思います。けっこう熱い人ですよ。
石井 僕よりも半年前からマネージャーをやっていて、正直こいつに負けたくないって思ったんですよ。それだけの気持ちを出させてくれる人なの。男に勝るくらいの、言い表せないくらいの凄い強さを持った人。客観的に物を見ることができて、それをはっきり言える人なんですよ。自分たちが間違った方向にいこうとすると、きっちり釘を刺してくれるし、そういう意味で絶対に欠かせない人ですね。むちゃくちゃパワフルな人ですね。後にも先にもなかなかこういう女子マネージャー出てこないと思うんで、ほめてるかけなしてるかわからないけど(笑)
勝見 本当こういうひどいこと平気で言う人なんですよ(笑)。でも私、この人が同期じゃなかったら絶対辞めてると思います。やっぱりいい意味でお互い遠慮してないんですよね。
――マネージャーの視点から見て今年の4年生はどのような人たちですか?
石井 監督が変わるタイミングで凄いもめたんですよ。話し合いはたくさんした。そういう苦しさを経験してきた代だけに、やらなきゃいけない時は物凄くまとまるんです。自分たちがやらなきゃいけないと思った時は、誰が言うわけでもなくちゃんとまとまれる。だから普通うちも他の大学もそうなんですけど、4年生のメンバー外は自分が出ないってわかったら、普通練習に出でこなかったりするんですよ。むしろ逆に今年は、監督も4年生がうまくやらないと勝てないって言ってたのもあるけど、全く腐らずに自分から積極的にバッティングピッチャーやったり、神宮に他大の試合を偵察しに行ったり、いろんなメンバーがいるけど、みんなが同じベクトルを向いてやってるのが今年の4年生ですね。
――それぞれ選手へのメッセージを
勝見 立教の5連戦だったり法政の2連敗とか本当に苦しい状況が続く中で、一戦一戦集中してここまでの状況を作ってくれたことに感謝しています。なので、早慶戦は4年生にとっては最後だし、のびのびと楽しく、自分の後悔がないように戦ってほしいって思います。
石井 もうみんな楽しんでくれってそれだけですね。長﨑も言ってましたが、優勝を掛けた早慶戦になるっていうここまでの状況を作れただけでも、つきがあったなって感じがする。何度も崖っぷちに立たされたがここまでこれたのは、「何か」あるんじゃないかって思う。こんな場面はこの先もそうないだろうから、とにかくこの舞台を思いっきり楽しんでくれってそれだけです。
――最後の早慶戦への意気込みを
勝見 7回目の早慶戦で、こんな凄いことになってしまったって思ったのが今年の春で、今まで早稲田の方が慶應よりお客さんが多かったけど、今年の春の3戦目は、慶應の外野は埋まっていて、早稲田は埋まってなかったんですよ。やっとここまで来たんだって思って、本当に部員の一人で良かったって思いました。だから、もう1回同じ思いをしたいですし、もう1回日本一を決める舞台に行きたいです。みなさん応援にきてください。
石井 本当に最後なんで、結果はどうであれ今の状況が幸せなんで、楽しみたいですね。優勝した場合には、パレードとか春いろいろ失敗してしまったんで、今度こそミスなく完璧にやりたいですね。4年生を壇上に上げたいんで。春は松尾と青山を呼んでなくて、あとで2人に叱られたんですよ(笑)だから今度こそ呼べるようにしたいですね。
時にユーモアも交えながら、4年間の想いを語ってくださったお二人。お忙しいところ本当にありがとうございました。
また、ここでは取り上げられなかった選手も早慶戦の際に発売する秋野球号では多く取り上げておりますので、こちらも是非、ご覧ください
そして最後に、取材にご協力頂きました野球部の皆様にこの場をお借りして感謝申し上げます。
By Shunsuke Yanami、Kento Yamada
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