2季連続で早慶戦が優勝決定戦となった今季。だが、慶大を取り巻く情勢は昨季よりも厳しい。優勝の条件が、早大は早慶戦で1勝すればいいのに対し、慶大は2連勝し、さらにその後に行われる早大との優勝決定戦にも勝利しなければならないからだ。ドラフトに指名された3投手がいる早大相手に3連勝、果たしてそのようなことは可能となる糸口はどこにあるのか、詳しく検証していきたい。
投手陣 早大・三本柱に挑む慶大の新・三本柱
1回戦の先発が予想される斎藤・竹内大の両エースの調子はいまいち。斎藤は今季はここまで4勝を挙げているものの、防御率は3.16でリーグ9位。さらに、これまで負けたことのない東大に金星を献上した。また、昨季はリーグ最多の6勝を挙げた慶大・竹内大も今季は立大1回戦以来、勝ち星なしと調子が上がってこない。
対照的に、好調なのが2回戦の先発陣。早大の福井優は勝ち星こそ少ないものの、抜群の安定感を誇り、防御率も1.80と斎藤よりもはるかに良い成績を残している。他方、慶大・福谷も現在、絶好調。立大5回戦以降、3試合・18回と1/3連続で無失点に抑えている。早慶戦の投球いかんでは、最優秀防御率のタイトルも見えてくる。
さらに、先発投手陣の後に控える抑えも準備万端だ。大学球界No.1の抑え投手の呼び声高い早大・大石は、東大1回戦こそコントロールに苦しんだが、立大との2試合では見事、復活。慶大の前に大きな壁となって立ちはだかることは間違えない。一方の慶大・田中宏は実績では大石に劣るものの、ピンチの場面での勝負強さは折り紙つき。慶大投手陣唯一の4年生として、最後の早慶戦で早大相手に意地を見せて欲しいところだ。
その他、早大は貴重な左のリリーフ要員・大野健、慶大は山形・金子の両1年生に登板の機会があるかもしれない。
野手陣 好調の中軸にチャンスで回せるか
昨季は、最後まで波に乗れなかった印象のある早大。だが、今季はシーズンが進むにつれ調子を上げてきた。特に、好調なのが打率リーグ1~3位を占める山田・土生・宇髙の3人。それぞれ3番、4番、6番という中軸を打つ打者であるだけに、慶大としてはなんとしてもこの3人の前にランナーを置くのは避けたい。
一方、慶大は昨季に比べ、5番以降の打順がほぼ毎試合のように変わってきたことからもわかるように、打線に苦しんだ感がある。だが、その中で宮本真・伊場・奥橋ら昨季は出場機会に恵まれなかった選手たちの活躍は大きな収穫となった。1番・渕上、3番・山口など当たっている上位打線でチャンスを作り、5番以降を打つこの3人に回すことができると慶大としては大きなチャンスになりそうだ。
また、今季も激戦が予想される早慶戦だけにレギュラーだけでなく選手層の厚さも大きなカギを握ってくる。
控え野手陣を比較すると、代打要員については山﨑錬、竹内一ら好打者が控える慶大の方が有利か。早大にも櫻庭、後藤らがいるものの調子はいまいちだ。
だが、代走要員となるとほぼ互角か。早大には打席に入ると、守備陣にランナーがいなくとも前進守備を敷かせるほど、足の速い佐々木、斎藤と同じ早実出身の4年生佐藤らが代走として出番を待っている。一方、慶大には忘れてはいけないこの男、代走のスペシャリストこと新谷がいる。昨季の明大1回戦で逆転のホームを踏んだあの大激走はもはや伝説と言っても過言ではないだろう。その他、俊足・辰巳の代走起用もあるかもしれない。
ケイスポ的勝負のポイント カギは初戦、勝利だけでなく流れもつかめ!
とにかく2連勝して、優勝決定戦に持ち込むしかない慶大としては、初戦が重要な意味を持ってくる。もちろん勝利が絶対条件だが、2連勝した昨秋のように大差をつけて勢いにのることが必要だ。2回戦の先発が好調の福井優であることを考えると、1回戦で斎藤を完膚無きまでにたたいてしまわなければならない。
そこで慶大のキーマンとなってくるのは伊場だろう。慶大のムードメーカーであり、今季は立大5回戦では劣勢の中、起死回生の同点本塁打を打ち、明大2回戦ではダメ押しの3点本塁打を放った。さらに、昨季の早慶3回戦では、この伊場のあたりを早大のセンターが後ろにそらしたがために大きな決勝点が入るなど、ラッキーボーイ的要素も持っている。時にタイムリーエラーをしたりすることもあるが、とにかくこの男が打つと慶大に勢いがつくことは間違えない。1回戦の早い段階で伊場に当たりが出るかどうかが、慶大優勝へのポイントとなりそうだ。
他方、早大のキーマンとなるのはおそらく斎藤だろう。いくら1勝すれば優勝が決まる早大とは言え、2回戦・優勝決定戦を待たずにさっさと優勝を決めてしまうに越したことはない。とすると、1回戦で先発する斎藤がポイントとなってくる。今季と全く同じ状況であった08秋は、1回戦で斎藤が7回1失点に抑える好投で早大勝利し、早々に優勝を決めてしまった。絶好調だった当時と比べ、今回は調子があまり上がってきてはいないようだが、その時と同じような投球をできれば4季ぶりの優勝が大きく見えてくるだろう。
2010年東京六大学野球の最後、そして、最も熱く、最も激しく、最もし烈な一戦の幕が今、開けようとしている。
By Michio Ikezawa
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