4月25日(月)東京六大学野球春季リーグ 明大3回戦
1敗1分で迎えた第3戦。加藤拓也(政4)・柳裕也の慶明両エースが、再び先発のマウンドで対峙した。9回までに生まれたヒットは両軍合わせてわずか5本。互いに譲らず、1回戦同様に延長戦に突入した。すると延長10回、沓掛祥和(商4)が柳の128球目を捉え、これが決勝本塁打に。緊迫する我慢比べにけりをつけ、対戦成績を五分に戻した。
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 計 |
慶大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 | 1 |
明大 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 |
慶大:○加藤拓(2勝0敗)―須藤
明大:●柳(2勝1敗)―牛島
◆慶大出場選手
| ポジション | 選手名(学部学年・出身高校) |
1 | [4] | 倉田直幸(法3・浜松西) |
| H | 西口貴大(総4・濟々黌) |
| 4 | 小原和樹(環1・盛岡三) |
2 | [6] | 照屋塁(環3・沖縄尚学) |
3 | [5] | 沓掛祥和(商4・慶應義塾) |
4 | [9] | 山口翔大(環4・桐光学園) |
5 | [7] | 岩見雅紀(総3・比叡山) |
| 7 | 重田清一(環4・佐賀西) |
6 | [3] | 清水翔太(総3・桐蔭学園) |
7 | [8] | 柳町達(商1・慶應義塾) |
8 | [2] | 須藤隆成(環3・創志学園) |
9 | [1] | 加藤拓也(政4・慶應義塾) |
プロ注目の二人の投げ合いに、多くのスカウト・報道陣が詰めかけた一戦。両エースの意地と意地とがぶつかり合う手に汗握る投手戦は、月曜日の神宮を熱くした。
一昨日の試合では、柳から8回16三振を喫した慶大。抜群のコントロールで投げ込んでくる柳相手には四死球はあまり見込めないと踏んだのか、この日はファーストストライクから積極的に狙っていく様子がうかがえた。しかしそこは相手の方が一枚上手だった。フルカウントまで粘るシーンは再三見せたものの、なかなか出塁できない展開が続く。柳の前に6回まで無安打、四球1つと序盤から中盤にかけては全くチャンスを作れなかった。
一方、慶大の絶対的エース加藤拓は初回こそ三者凡退に抑えたものの、その後はなかなか波に乗りきれない。2回先頭の佐野恵にヒットを許すと、続く打者のバント処理の判定を巡って試合中断。大久保監督も出てくるが判定は変わらず。この回、加藤拓は終始マウンド上で投げづらそうな仕草を見せた。3回は、センター返しを意識したシュアなバッティングをしてくる明大打線に苦戦した。二死満塁のピンチを招くと、4番佐野恵の鋭い打球に遊撃手照屋塁(環3)が素早く反応しショートライナー。この回も0で凌いだ。4回には中堅手柳町達(商1)が、右中間方向の大飛球をフェンスにぶつかりながらのランニングキャッチ。守備に精彩を欠いた昨日とは一転、好守でエースを盛りたてた。
慶大に初ヒットが生まれたのは7回。先頭の照屋が狙いすましたバントヒットで塁に出た。しかし後続が続かずチャンスメイクできず。9回にも先頭打者が出塁したものの、次の打者のバント小フライの打球処理の判定を巡り、再び審判団が集まった。大久保監督も鬼の形相で詰め寄るも、またも不運な形で試合は進んだ。
中盤以降も決して本調子とは言えない加藤拓。回が進むにつれ、ボール先行の厳しいピッチングを強いられた。それでも「低めに投げる練習をしていた」通り、打たせて取る大人の投球でホームベースは踏ませなかった。Everything is practice まさにここにあり。低めに制球された変化球と自慢の直球の緩急を生かし凡打の山を築いた。
そのまま試合は0行進。両投手譲らず、試合は延長戦へ。
歓喜の瞬間は突然訪れた。10回表一死バッター沓掛、初球の甘く入ったストレートを逃さなかった。この試合唯一と言ってもいい柳の失投を捉え、レフトスタンドへ劣勢を跳ね返す値千金の先制本塁打を放った。実に26イニングぶりの得点となる沓掛の一打は、勝利を大きく手繰り寄せた。
その裏、明大も反撃開始。ヒットとバッテリーミスで一死2塁のピンチを迎えると、たまらず大久保監督マウンドへ。「お前しかいないから、後は頼む。頑張れ」絶大な信頼があるからこそのこの言葉。託されたエースは迷いなく腕を振った。最後の打者を空振りの三振に仕留めガッツポーズ。息詰まる投手戦をものにした。
1点差での勝利に、監督は「強いチームに出来る勝ち方」と振り返った。一般的に、同点で迎える延長戦は後攻が有利である。その中で一昨日は引き分けに持ち込み、今日は勝ち越した。負けない強さ・接戦をものにできる強さ。1対0も10対0も同じ一勝。実力伯仲の六大学では、今後も僅差の試合が必ずあるだろう。勝負所での一球一打で結果を残せるか。粘り強く、そして泥臭く、全員野球を体現できた先に最高の瞬間は待っている。火曜日は勝ち点をかけた第4戦。さあ、混迷の様相を見せる戦国六大学をリードせよ。
【Keispo pick up】 5戦3発!ここぞで決めるお祭り男 沓掛祥和
打った瞬間、誰もが本塁打を確信した。劇的な一発は、今季二度目の勝利打点に。三年春からレギュラーを張るも、昨季は打撃不振でスタメンを外れることもあった。副将として臨む今季は、すでに自己最多の3本の本塁打を放った。明るい性格でチームを引っ張る沓掛が、バットでも大きな存在感を示している。
記事:若林 晃平
◆打撃成績
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| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 |
[4] | 倉田 | 空三振 |
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| 見三振 |
| 空三振 |
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H | 西口 |
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| 空三振 |
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4 | 小原和 |
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[6] | 照屋 | 空三振 |
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| 邪三飛 |
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| 三犠安 |
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| 見三振 |
[5] | 沓掛 | 一直 |
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| 四球 |
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| 遊併殺 |
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| 左本① |
[9] | 山口 |
| 投ゴロ |
| 二ゴロ |
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| 見三振 |
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| 三安 |
[7] | 岩見 |
| 右飛 |
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| 遊ゴロ |
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| 空三振 |
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7 | 重田 |
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| 投犠打 |
[3] | 清水翔 |
| 一ゴロ |
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| 空三振 |
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| 右飛 |
| 投ゴロ |
[8] | 柳町 |
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| 左飛 |
| 見三振 |
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| 空三振 |
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[2] | 須藤 |
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| 右飛 |
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| 中飛 |
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| 四球 |
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[1] | 加藤拓 |
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| 遊直 |
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| 見三振 |
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| 投併殺 |
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◆投手成績
| 投球回数 | 打者数 | 球数 | 安打 | 三振 | 四死球 | 失点 | 自責 |
○加藤拓 | 10 | 39 | 157 | 5 | 6 | 4 | 0 | 0 |
◆監督・選手コメント
大久保秀昭監督
しんどい試合だったが、1対0で勝つという強いチームに出来る勝ち方だった。そういう試合ができたというのは非常に大きな収穫。去年から僕が目指している1対0でも勝つ、勝ち切るという野球ができて良かった。加藤は本当にいいピッチャーで、点数を与えないことの部分はしっかりやれたので非常に信頼もしているし、本当に成長している。打撃陣の調子は良くないが、相手のピッチャーも良いので、なかなか簡単には打ち崩せないけれどそこを何とかもうひと踏ん張りしてほしい。柳は沓掛には投げづらそうにしていた。明日勝たないと勝ち点は取れない。いい戦いはしているので加藤以外のピッチャーにも頑張ってほしい。
重田清一主将(環4)
今日は勝ちたいという気持ちをみんなが前面に出して粘れていた。加藤が踏ん張って、本当は野手陣はもっと点を取りたかったが、結果的に勝てたので良かった。試合前のミーティングでは「昨日負けた悔しさを前面に出して、もう何が何でもどういう形でもいいからしっかり勝とう」と言った。一昨日も柳投手に抑えられていて、今日はしっかりあまいボールを打とうと言っていた。それでも、なかなかそんなに点は取れないだろうと思っていた。自分たちに絶対チャンスはあるからと言って我慢した。きわどい判定がいくつかあって、どちらもこっちに不利な判定だったが、気持ちを切らさず、スキを見せずに我慢我慢だと言い続けた。延長戦も15回全部やってやるぞという気持ちで、楽になろうとせずに我慢我慢だとみんなに言い聞かせた。今日の勝因は加藤がよく頑張ってくれた。そしてみんなの勝ちたいという気持ちが沓掛のホームランにつながった。明日勝たないと勝ち点とれない。今日のように何が何でもどんな形でもいいので勝ちたい。
沓掛祥和副将(商4)
守備でも打撃でも一時も気が抜けなかった。神経を使った試合だった。ホームランは狙ってた。真っ直ぐを打ったが、打った瞬間入ったなと。昨日に横尾さん(現日本ハム)から電話があって、「お前が打たなきゃダメ」と言われたので、加藤も頑張って投げていたし、ランナーためて一打よりもホームランしかないなと思った。加藤にホームラン狙っていいか聞いたら狙っていけと言われたので。注目されているピッチャーとの対戦だったが、特に意識はせずに、どのピッチャーが相手でも絶対に打ってやると思っている。甘い球を振ればこっちのペースに持っていける。1戦目2戦目があったからこそ、今日打てたと思う。反省すべきところは2戦目での守備エラー。気合いで明日も勝ちに行きたい。絶対勝つので応援してほしい。
加藤拓也(政4)
延長になったが、全員で粘り強く戦っていた。大久保監督からは、1-0で勝つのが理想の試合、と言われていたのでそのスコアで勝てたことが本当に良かった。中1日で登板し、疲れがない訳ではなかった。もちろん投げられない、ということでもなかったので、何とか行ける所まで、1回1回を投げ切ることを目標に投げていた。昨日はバッティング練習の間にジョギングをしたり、ストレッチをしっかりするなどして調整した。去年のシーズンが終わってから、変化球やストレートのコントロールを良くするために、低めに投げる練習をしていたので、今日の試合ではそれを上手く出せた。打線の援護がなくても自分がマウンドに居る以上、0点に抑えることを目標にしている。「何とか点を取ってくれ」と思ってはいたが、マウンドに居る時は目の前にバッター、目の前の一球に対して自分が出来ることをやろう、ということしか考えなかった。9回の犠打が併殺打となってしまったのは僕のミスなので、反省して練習しなければならないが、試合の中ではそれは終わったこと。次のマウンドに向けて切り替えるように意識した。沓掛の本塁打は「粘った甲斐があったな」と思ったが、それもまた終わったことなので、10回裏のマウンドに向けて気持ちを切り替えた。1点を取ったからといって、僕のピッチングが変わる訳ではないし、相手の打線が変わる訳ではない。どの場面でも同じように投げられるように準備した。10回裏のマウンドでは監督に、「お前しかいないから、後は頼む。頑張れ」と声を掛けられた。試合終了の瞬間は、「やっと終わった」という心境だった。明日ももちろん勝たないといけない試合。僕が投げる機会があれば頑張るが、それ以上に声を出したりなど、チーム全体で勝つ為の役割をこなしていきたい。
照屋塁(環3)
今日は結構厳しい戦いだったが、勝ち切れたので本当に良かった。7回のバントヒットはとにかくなんとかしないといけないという気持ちしかなかった。あとは自分の調子を考えてバントを選んだ。守備では3回の満塁の場面でのショートライナーを取れたのでよかった。明日は本当に大事な試合になる。しっかり勝ち切って勝点を取りたい。