目前で優勝を決められた屈辱の前節から1週間。今節は、ともにインカレ出場権を争う法大と対戦した。ポゼッションを高め、試合の主導権を握った慶大だったが、前半にセットプレーから先制点を奪われてしまう。後半にも1点を加えられ、0-2と苦しい状況に。しかし、ここから怒涛の反撃を開始。小谷春日(環2・藤枝東高)が得たPKを山本哲平(政4・國學院久我山高)が決め、1点を返すと、終盤には松木駿之介(総2・青森山田高)のゴールで同点に追いつく。逆転には至らなかったものの、貴重な勝ち点1を手にした。
関東大学サッカーリーグ 第19節
2016/10/23(土) 14:00KO @川口市青木町公園総合運動場
慶應義塾大学 2 – 2 法政大学
【得点者(アシスト者)】
[法] 25分 川崎雅哉、63分 紺野和也(ディサロ燦シルヴァーノ)
[慶] 73分 山本哲平、87分 松木駿之介(手塚朋克)
◇慶大出場選手
GK | 田野稔明(経3・慶應義塾高) |
DF | 佐藤海徳(政1・桐光学園高) → 70分 小谷春日(環2・藤枝東高) |
DF | 溝渕雄志(環4・流通経済大学付属柏高) |
DF | 豊川功治(総4・ジェフ千葉U-18) |
DF | 井上大(総4・國學院久我山高) |
MF | 落合祥也(商1・横浜FCユース) → 85分 田中健太(法3・横浜F・マリノスユース) |
MF | 片岡立綺(総3・桐蔭学園高) |
MF | 手塚朋克(環3・静岡学園高) |
MF | 加瀬澤力(総4・清水東高) → 62分 松木駿之介(総2・青森山田高) |
FW | 渡辺夏彦(総3・國學院久我山高) |
FW | 山本哲平(政4・國學院久我山高) |
主将・宮地元貴(総4・東京ヴェルディユース)が累積警告により出場停止のなか、副将・井上大(総4・國學院久我山高)が2試合ぶりにスタメン復帰。CBに溝渕雄志(環4・流通経済大学付属柏高)を、宮地不在のボランチには片岡立綺(総3・桐蔭学園高)を起用した。
この日の慶大は、いつもと異なるサッカーを展開。パスを細かくつなぎ、ポゼッションを高めるサッカーでこの一戦に臨んだ。12分、パスワークで相手を陣内に押し込むと、溝渕雄志が持ち上がり、ミドルシュートを放つ。これは相手GKに阻まれるも、強烈なファーストシュートでチームに勢いをつける。パスサッカーというコンセプトのもと、ボランチを中心としたパス交換に加え、DFラインからのフィードを織り交ぜ、ゲームを支配。
つなぎのミスからボールを失っても、素早いプレスで敵を囲み、相手にボールを渡さない。試合序盤から「自分たちのやりたいサッカーを体現」(井上)した。そんな順調な滑り出しを見せていた矢先のことだった。25分、相手のCKを一度は弾き返すも、浮いたこぼれ球に寄せ切れず。ボレーシュートを決められて、法大に先制を許してしまう。1点を追いかける慶大は、変わらずにボールを保持しながらゴールを狙う。35分には手塚朋克(環3・静岡学園高)のセンタリングを加瀬澤力(総4・清水東高)が落とすが、シュートは打てず。その後もワンツーやスルーを上手く使い、バイタルエリアに侵入するも、なかなかシュートまで持ち込むことができない。結局前半のシュート数はわずか2本に留まった。
後半開始早々、中央で渡辺夏彦(総3・國學院久我山高)がボールを引き出すシーンが増え、チャンスを作る。49分、渡辺がドリブルで持ち込み、加瀬澤へ。右足を振り抜くも相手DFにブロックされてしまう。対する法大もロングボールから決定機を迎えるが、シュートはわずか右へ。62分、加瀬澤に代えて松木を投入し、反撃を図った慶大。しかしその直後、自陣右サイドで裏を取られると、センタリングから最後は冷静に決められ、2点のビハインドを負う。攻めるしかない慶大は、70分、佐藤海徳(政1・桐光学園高)に代え、小谷を投入。すると、その小谷がすぐさま起用に応える。71分、PA内で仕掛けると、相手DFがたまらずファール。このプレーで得たPKを山本が落ち着いて沈め、1点を返す。また、ファールを犯した相手DFは2枚目の警告により退場。
数的有利を追い風に、慶大が反撃に出る。83分、溝渕、松木とパスをつなぎ、渡辺へ。抑えたシュートは惜しくも左に外れてしまう。85分には落合祥也(商1・横浜FCユース)に代えて田中健太(法3・横浜F・マリノスユース)を投入し、さらに攻勢を強める。87分、右サイドでのスローインから抜け出した手塚が敵陣深くまで切り込む。折り返しに途中出場の松木が合わせ、2-2の同点に追いついた。得点後も勢いの止まらない慶大は、アディショナルタイムに片岡のクロスに小谷が合わせるが、惜しくもポスト。あと一歩逆転には及ばなかったものの、「価値のある勝ち点1」(須田監督)を手にした。
今節の結果によりインカレ圏内の6位をキープしたが、降格圏までも4ポイントと、足元をすくわれる可能性も大いにある。ただ、自分たちの目指したサッカーを貫き、劣勢をはねのけた今節の勝ち点1は「次につながる」(溝渕)ものだ。残り3試合、1つも落とすことのできない状況のなか、次節、慶大の前に立ちはだかるのは宿敵・早大。現在降格圏に沈むライバルに土をつけ、インカレ出場に向け大きく前進したいところだ。
(記事 氏家滉登)
試合後コメント
須田芳正監督
(今日の試合を振り返って)残り4試合ということでメンバーと戦い方を変えた中で、選手たちが我々の目指しているサッカーをしっかりと出来ていたのでとても良いゲームだったと思います。特に0-2から最後追いついて取った勝ち点1というのは価値ある勝ち点だと思います。(パスサッカーを目指したことについて)ここ2試合、しっかりと守ってカウンターサッカーをやっていたのですが、ある意味今年のチームでこのサッカーは限界があるということで、今週から行いました。もちろん守備のベースは今までの積み重ねがあるけれども、もう少しボールをキープしてゴールを目指そうというサッカーをやったなかで、そういった選手を置いたので、すごくテンポよくボールを回せていたのではないかなと思います。(途中交代の選手が得点に絡みましたが)切り札として3人は考えていたので、ゲームプランとしては90分で勝利しようというのを考えていました。相手は5枚、4枚で守備をしてくることはスカウティングで分かっていたので、前半から間のパスであったり、裏へのパスで合ったり、それが通らなくても、ジャブとなって後半効いてきたのではないかなと思います。後半時間が経ってくれば相手だって疲れてくるし、速い選手であったり、松木のようにゴール前に飛び込んでいける選手であったりを使うことは決めていたので、それを選手がよく理解してプレーできて良かったと思います。(次節に向けて)続けていくことが大切だと思うし、それはゲームだけの問題ではなくて、この試合が終わった瞬間から次のゲームのホイッスルは鳴っているわけだから、また今週一週間最高の準備をして、早稲田との試合に臨みたいと思います。
井上大(総4・國學院久我山高)
(今日の試合を振り返って)ボールを大事にしてプレーをしていこうということだったので、そのコンセプトはしっかり貫き通せたので良かったと思います。ただ、守備の部分で自分を含め少しミスがあったので、そこは修正していかなければいけないと思います。(勝ち点1をどう捉えているか)勝てればよかったのですが、2点先行されてしまいました。勝ち点1でしたが、今までの勝ち点1と違うのは、何とか追いついての勝ち点1というものではなく、自分たちのやりたいサッカーを体現しての勝ち点1なので、これは次につながるのかなと思います。(なかなかシュートまで持ち込めないシーンが多かったが、焦りはなかったか)練習からシュートに行けなくても、ボールを持って焦れずにつないでいけば、チャンスは来ると思っていました。なので、そこまで焦りはなかったです。ただ、アタッキングサードになかなか入っていけなかったので、修正すべき課題として認識して、修正していかなければいけないと思います。(2試合ぶりの出場でしたが)駒大戦で肩を脱臼してから、痛いのは当たり前なのですが、今までの歴代の4年生はどこか身体が痛くても気持ちで戦ってきていたのを僕は見ているので、そういうなかでただ1回の脱臼でコンディションを落としてしまうのは、気持ちが弱いのかなと自分自身感じていました。いつか自分に出番が来ると思っていたので、出たときには自分のやるべきことをしっかりやれるように準備していました。(次節、早慶戦に向けて) 残留はもちろん、まずはチームの目標であるインカレ出場に向けて大事な試合になるので、そういう認識でこの一週間取り組んでいきたいと思います。それに加えて早慶戦なので、自分は出場して2回しか勝ったことないですし、終わりよければすべてよしということで良い形で絶対に勝って、僕の大学最後の早慶戦を締めくくりたいと思います。
溝渕雄志(環4・流通経済大学付属柏高)
(今日の試合を振り返って)0-2という劣勢の中から最後にしっかり全員で得点を取りに行って結果、勝ち点1を獲得できたのはいいことだと思います。内容的にも今シーズンやろうとしてきたボールを動かすサッカーができたので、ポジティブに次につながる試合だと思います。守備も内容としては良かったと思うんですけど、結果的に相手に2点取られているので、そこをもう一度見直せばもっと良くなるかなと思います。(CB起用となったが不安はなかったか)特になかったです。SBでも元々守備重視の選手ですし、高校3年生の時の最後の選手権でもCBをやっていたので、CB自体に不安はなかったです。(得点に至ったスローインについて)あれは練習で1回もやっていなくて、僕が流経大柏高校でよくやっていたやつで、背中に当ててプレーを始めるというやつですが、手塚は静学で、静学と流経はよく試合をしたので、「背中」と言ってあのプレーが思い浮かぶのはあいつくらいなんですけど、あいつも良く反応してパッとはじめられたので、面白かったです。点が入ったので良かったです。(早慶戦に向けて)下も詰まってきていますし、逆に言えばすごくチャンスだと思うので、宿敵をしっかりたたくことが必要です。僕らのインカレに対しても大きな影響を与えると思うので、今日はいい試合ができたとはいえ、ダメなところもあったので、もう一度1週間見直して、早稲田相手にどう戦うのかを整理して、しっかり勝ち切りたいと思います。
山本哲平(政4・國學院久我山高)
(今日の試合を終えて)当然毎試合勝ちを目指してはいるんですけど、今日は0―2にされてから追いつけたという事で、そういう部分での収穫はあった試合だったのかなと思います。(1点目のPKの場面について)相手が1人レッドカードで退場していたので決めたら勢いに乗れると思っていたし、特に外すイメージは無かったので、自信を持って蹴って決められてよかったと思います。(攻撃面について)今日はショートパスを繋いで自分達がボールを保持する戦い方だったので、多少のミスはあってもそれはしょうがない部分でもあるので、全体的には手応えのある感じでした。(メンバーが変わったことでの違いについて)この1週間でしっかり調整して選手の特徴も抑えていたし、チームとしてやることは変わらないので問題はなかったです。(次節、早慶戦に向けて)早稲田は今降格圏にいるので、まず自分たちがしっかり勝って残留を決めて、その勢いを持ったままインカレ出場圏内に入れるようにやって行きたいです。
手塚朋克(環3・静岡学園高)
(今日の試合を振り返って)戦術が変わったというか、今週やってきたことが貫けたということが成果だと思うんですが、こういう試合で勝ちきれないとインカレ出場という目標は達成できないと思うので、失点の部分など締めないといけない部分があったと思います。(2得点目のアシストについて)相手が1人少ない状況で、どんどん仕掛けられる状況だったのでボールを貰ったら自分の持ち味である縦への突破ということを心掛けていたので、結果的には綺麗なアシストでは無かったのですが、ゴールへの勢いなどは全員で意識統一できたと思います。(変わった形でのスローインとなったが)あのスローインは溝渕くんの出身校と試合をした時に、警戒していたことでした。それで今日溝渕くんから「背中、背中」と言われたのでアレだなと思って背中に当てました。ある意味即興のトリックプレーができたと思います。(クロスを上げる際中に高い選手が少なかったが)早いボールと、3バックだったので真ん中にDFが多くいるということでキーパーとDFの間に早いボールを入れれば、最悪DFに当たって入るということもあるのでそういうところを意識しました。(今日の繋ぐことを意識したサッカーについて)こうやって繋ぐことを意識したサッカーをする中で、やっぱりゴールへ向かう意識が低くなっていたので、そういうところを強く意識を持って、個人的には自分の特徴を出すということがチーム作りで重要になってくると思うので次節ではもっとドリブルで仕掛けていきたいと思います。(次節の早慶戦に向けて)前期1試合出て勝って、そのあとは怪我で定期戦、アミノバイタル、天皇杯と出られなくて、その3試合とも負けているので自分が出れば早稲田に勝てるというのを証明したいです。チーム全体としてリーグ戦の1戦にしろ、早稲田に絶対に負けちゃいけないと思っているので、今週1週間早稲田に勝つために突き詰めていきたいと思います。
渡辺夏彦(総3・國學院久我山高)
(今日の試合を振り返って)この一週間やろうとしていたサッカーがしっかりできました。1失点目も2失点目もやろうとしたことの弱点が出ただけなので、そこまで悲観的になることはなく、仕方ないという意識でプレーし、その後2点を取り返せたのは良かったと思います。(そのやりたいサッカーについて)パスを回し、ポゼッションしつつも前にドリブルで仕掛けていこうというサッカーをしました。(2失点したあとのプレーについて)ポゼッションしつつも、いかに相手のペナルティエリアに入っていくかを考えてプレーしました。単にパスを回し続けるだけにならないようにしました。前半の途中からしっかり意識はしていましたが、後半はさらに意識して仕掛けて、ペナルティエリアの中に入る回数が増えたことでPKをもらうことができたので、90分として2得点することができたと思います。(次節に向けて)残り3節で、来週は早慶戦なので、これまで通り1週間しっかり準備をして、いかにプレーの質を高めていけるかが重要です。皆で勝ちに行こうという意識で、皆でサッカーを細かいところまで追求して来週の早慶戦に向けていけるのかが大事だと思います。
小谷春日(環2・藤枝東高)
(今日の試合を振り返って)個人的には悔しいの一言です。自分が最後に決めていれば勝てたので、勝ち点が逃げていった感じでしたね。(PK獲得につながったドリブル突破のシーンを振り返って)自分の持ち味のドリブル突破を見せて、うまく相手を引き寄せて、うまくファールをもらえてよかったです。(投入されたときの監督からの指示)自分のプレーを出していけと言われました。最初のプレーで向こうのファイブバックが崩れている印象がなかったので、ドリブルで崩していこうと思っていました。(次節早稲田戦に向けて)次勝つか勝てないかで一部に残れるか、インカレに出られるかも決まるので、点を取りたいです。
松木駿之介(総2・青森山田高)
(試合を振り返って)ああやってリードされている中で追いついて勝ち点1取れたのは大きかったことですけど、まあ相手の人数も1人少なかったので勝ち点3が欲しい試合ではありました。(前半ベンチで見ていてどのように感じていたか)ポゼッションサッカーをやるという中でそれはすごくチームとしてできていたと思いますし、リアタックもしてすぐボールを奪い返してっていうサッカーができていたのであとは最後ゴールに向かうところっていうのが少し怖さがなかったかなと思います。(投入の際の監督の指示は)いつも一緒なんですけど、とにかく自分は左サイドですけどゴール前に入って行けと。最後やっぱりゴールを決めることが求められているので、そこはいつもと変わらずやってこいということでした。(ゴールシーンを振り返って)右サイドの手塚さんがクロスを上げるときに、クロスのコースが見えなくて自分自身すごく悩んで感覚でいれたポジションにボールが相手に当たってこぼれてきて、自分のそういった勘というのが活きた自分らしいゴールだったと思います。(久々のゴールだったが)須田さんからの話でもう選手全員ノってると思いますし、俺もここからノっていきます。(次の試合に向けて)やっぱり早稲田ですし、去年は優勝争いをする中で早稲田に負けて早稲田に優勝をかっさらわれてしまって。今年は状況は違いますけどインカレ出場または残留を懸けた試合になるので、本当にここで勝った方がインカレ出場できると思いますし負けた方は降格するんじゃないかなって思います。本当に来週が1年で一番大事な試合になるかなと思います。
落合祥也(商1・横浜FCユース)
(今日の試合を振り返って)今節からポゼッションサッカーにするということで、自分たちのペースで試合を進めたかったんですけど、セットプレーとかで余計な失点をしてしまって、後半も追加点を決められて、そこの失点がすごくもったいなかったです。(前節からどんなことを意識して練習してきたか)前回は引いて守るサッカーだったので今回からはポゼッションサッカーをやってきて、今週の水曜日の練習があまり雰囲気良くなくて、そこから選手自分たちでミーティングをしてこれからやるべきこととかをはっきりさせて、選手主体となって取り組めたので今日の試合も自分たちのサッカーができたと思います。(ボランチとしての役割について)自分が攻撃の起点というよりも相方の立綺(片岡)さんの方がセンスがあってボールをまわせるので、どっちかというと自分はセカンドとか守備を重視してチャンスがあったらボールに絡んで、という感じでやっていました。(インカレ出場という目標達成に向けて)残り3試合で結構1敗でもしたら残留争いに巻き込まれるので、本当に1戦1戦大事にして、次は負け越している早稲田なので勝ってインカレに近づきたいと思います。(次節へ向けて)今年は早稲田に1勝3敗しているので、特にアミノ杯のときは自分のせいでボロボロにされたのでその借りを返したいと思います
☆この試合の写真はこちら