【ラグビー】スクラムで絶対王者・帝京大を圧倒、今季初黒星を喫するも健闘/関東大学対抗戦④帝京大

SH中鉢のトライに駆け寄る選手たち

SH中鉢のトライに駆け寄る選手たち

前試合で日体大から9トライを奪い、開幕3連勝を飾った慶大。第4戦は大学選手権7連覇中の絶対王者・帝京大が相手だ。慶大は前半からスクラムで相手に優位に立つ。先制を決めたのは慶大。スクラムから好機を作りSO古田がトライすると、幸先の良いスタートを切る。しかしその後修正した帝京大FW陣から得点を奪えず、リードされて前半を折り返す。後半運動量の落ちない慶大は怒涛の3トライを挙げ、反撃を見せるも、帝京大の猛攻にあと一歩及ばず。31-42で敗れ、対抗戦今季初黒星を喫したが、随所で帝京大と互角に戦い、次につながる善戦を見せた。

 

関東大学対抗戦vs帝京大 2016/10/23(日)14:00K.O.

@秩父宮ラグビー場

 

得点

慶大

 

帝京大

前半

後半

 

前半

後半

T

1

G

0

PG

0

0

0

0

DG

0

0

10

21

小計

21

21

31

合計

42

 

得点者(慶大のみ)

T=古田、中鉢、渡邊、松岡

G=古田4

 PG=古田

ポジション

 先発メンバー

 交代選手

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細田隼都(商3・慶應)

→ 後半22分 渡邊悠貴(経2・慶應)

2.HO

松岡大介(環4・小倉)

 

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角田匠輝(法4・慶應)

→後半34分 吉田雄大(総3・秋田)

4.LO

豊田祥平(総4・ 國學院久我山)

 

5.LO

佐藤大樹(総3・桐蔭学園)

 

6.FL

廣川翔也(環4・東福岡)

→後半10分 山中侃(商2・慶應)

7.FL

松村凜太郎(商3・慶應)

 

8.No.8

鈴木達哉(環4・茗渓学園)

 

9.SH

中鉢敦(経4・慶應)

 →後半25分 江嵜 真悟(商2・小倉)

10.SO

古田京(医2・慶應)

 

11.WTB

清水祐輔(環4・明和)

 →後半10分 今成哲(経

3・城北)→後半38分 齋藤大介(商4・慶應)

12.CTB

堀越貴晴(総3・茗渓学園)

 

13.CTB

木口俊亮(経4・仙台第三)

 

14.WTB

高野慎也(商3・慶應)

 

15.FB

楠本遼(経4・慶應)

 

 

ブレイクダウンにフォーカスしていた慶大

ブレイクダウンにフォーカスしていた慶大

「Beat the Breakdownというテーマで試合に臨んだ」(鈴木主将)。その言葉通り、ブレイクダウン、スクラムで慶大の強さが随所に見られた。前半6分、帝京ボールのスクラムでは慶大FWの力が勝り、帝京大のペナルティを誘う。ここから試合は慶大ペースに。前半16分、慶應ボールのスクラムからLO佐藤が相手ディフェンスを引きつけると、SH中鉢からパスを受けたSO古田がトライを決める。自らコンバージョンも成功させ、7-0と慶大が先制する。しかし絶対王者がこのトライで目を覚ます。慶大のFW陣の強さに対して、帝京大FW陣もすぐに修正を見せ、ここからは帝京大が試合の主導権を握る。前半21分には慶大のペナルティから相手のモールでトライを許し、同点に。その後もHO松岡やFL廣川が再三鋭いタックルを刺す場面もあったが、帝京大に2トライを奪われ、7-21と逆転を許す。それでも前半終盤、SH中鉢からCTB木口にボールが渡ると、6フェイズの粘り強い攻撃を見せ、相手のアーリータックルのペナルティを誘う。相手ゴール前で慶大はPGを選択。SO古田がきっちりと決め、10-21で前半を折り返す。

 

精度には改善の余地を残したラインアウト

精度には改善の余地を残したラインアウト

後半、帝京大のキックオフに対し少しでも点差を縮めたい慶大だったが、開始早々にペナルティを犯す。帝京大の得意のモールからトライを決められてしまい、点差を広げられてしまう。あきらめない慶大は後半21分、相手陣内でラインアウトを成功させると、スクラムからSH中鉢、CTB堀越からFB楠本と変幻自在のパスワークを見せる。相手のディフェンスを左右に揺さぶり、最後は右サイドにパスを受けた中鉢がトライ。17-28と追い上げを見せる。しかし帝京大も自身のリズムでその後2トライを決め、17-42と慶大を突き放す。このまま大量失点を許してしまうかと思われたが、この日の慶大は一味違った。後半33分、相手陣内でマイボールスクラムからR山中がボールを持ち出し、ファーストフェイズで大きなゲインを見せると、最後はR渡邊が押し込んで、トライを決めた。この勢いのまま後半38分、相手ボールのスクラムでターンオーバーに成功し、古田の絶妙なキックで陣地を大きく回復すると、相手のペナルティで5mラインまで攻め込む。ラインアウトを成功させると、そのままモールで松岡がトライ。古田のコンバージョンにより、11点差まで詰め寄るも、ここでノーサイド。31-42で、敗れた。

 

真正面からぶつかるLO佐藤

真正面からぶつかるLO佐藤

打倒・帝京大を掲げる慶大が素晴らしい善戦を見せた。昨年の対抗戦では10-89、今年の夏の練習試合では0-52と完敗であったが、この日の試合は接戦。試合終了まで両校どちらが勝ってもおかしくないと観衆に感じさせるような試合であった。接戦の要因は何であるだろうか。それはまさしく慶大FW陣の頑張りであろう。ブレイクダウンでは帝京大と互角に競る場面が目立ち、特にスクラムでは終始優勢を保っていた。また今までの帝京大戦では後半、疲れがたまってきた所で大量にトライを奪われ、惨敗という試合が多かった。しかしこの試合では後半30分を過ぎてからはむしろ疲れがたまった帝京大に対し、慶大が攻撃し続け、それがトライにもつながった。「自分たちのやってきたことが一つ正しかったと思える試合だった」(鈴木主将)といえるのも、自分たちのラグビーを80分間貫き通すことができ、王者を追い詰める所まで行ったからこそ出てきた言葉だろう。次戦は対抗戦4連勝中の明大と対戦する。フィジカルが強い相手に対抗戦では2013年以来3年ぶりの勝利をものにすることができるのか。注目したい。

 

 

【ケイスポ的MOM】ディフェンスでもアタックでもボールに絡むジェネラリスト No.8 鈴木達哉主将

No.8の位置に入った山中に代わりスクラムではFLをつとめた

No.8の位置に入った山中に代わりスクラムではFLをつとめた

「入部したときからずっと打倒帝京として目指している試合」と、この日にかける思いは主将としても、4年生としても人一倍あったのは、No.8鈴木達哉主将。

ディフェンス面ではラックの際の球際での強さが光る。アタック面でもこの男にボールを持たせると、相手はなかなか止めることができないほどのフィジカルの強さが持ち味である。今季からはラックの際に相手からボールを奪うジャッカルにもさらに磨きをかけた。主将としてもNo8としても彼のタックルをする姿、ボールに絡む姿を見て、部員はこれまで何度励まされたことがあるだろうか。次の明治戦チームを背負って立つこの男の活躍から今後も目が離せない。

 

(記事・後藤理央)

 

HC・選手コメント

金沢HC

(今日の試合を振り返って)まずスクラムをはじめとする今日の選手の戦いぶりにつきましては、すごく誇りに思います。しかし結局結果としては負けてしまって、何を達成したというわけでもないので、次に向けてしっかり準備をしていきたいと思います。やはり6トライ取られてしまうと、今の慶應の力ではそれを取り返す力がアタック面ではなかなかないので、もっと自分たちのスタイルをだしていかないといけないと思います。(あと3トライ減らすには)今日に関していうと、自陣も敵陣も含めてハーフウェイライン付近をどう過ごしていくのかということですね。春からの課題ではあるのですが、そこをどう過ごすかがラグビーでは最も難しいところだと思っています。そこでのペナルティがスクラムやラインアウトにつながりどんどんトライを取られてしまうので、そこを修正できればもう少しトライを抑えることができるのではないかというのが今日の印象です。(点数の取り方の質はよかったように感じたが攻撃面を振り返って)自分の正直な印象でいうと攻撃面はあまりよくはなかったですね。ただその中でも特にセットプレーでプレッシャーをかけて、FWはよく前に出てくれたところが得点につながったと思っています。そこはすごくシンプルなところですが、フィジカル面で春からやってきたことがだいぶキャッチアップできてきているからだという印象です。(メンタル面では)お互いタイトな試合だったので、メンタル面でいうとお互いに少し緊張感があったくらいですね。そのことで判断がよくなかったところは最初にいくつかありましたが、帝京大が相手だったことを考えると、良いメンタルで臨めていたと思います。(明大戦に向けてフォーカスしていきたい点は)自分たちのスタイルをしっかり貫く、特にディフェンスのところにもっとプライドをもってそこにフォーカスしてやっていきたいと思います。(帝京戦まではブレイクダウンにフォーカスしていたがそれも継続してやっていくか)そうですね。帝京戦までの一つとしてブレイクダウンにはフォーカスしていましたが、ジェネラルプレーでいつでも必要なプレーなのでそこは継続してフォーカスしていきます。

 

No8鈴木達哉主将(環4)

(今日の試合を振り返って)今日の試合はBeat the Breakdownというテーマでやってまいりました。前半自分たちのブレイクダウン、あとはセットプレーで相手にプレッシャーをかけることができて、慶大のペースでゲームを進めることができました。ですが帝京大の力強いアタック、ブレイクダウンは慶大がフォーカスをしていたのにその部分では上回れてしまったのでこのような結果になってしまいました。結果としては勝っていないので何もなしえていないですが、自分たちのやってきたことが一つ正しかったと思える試合だったのでこれからも精進してまいりたいと思います。(どのような点で方向性は間違ってなかったと言えるのですか)王道であるセットプレー、ブレイクダウンのような自分たちが体を張っているプレーで逃げないということを自分たちは目標にしていました。帝京大に上回れてしまう部分はありましたが、昨年より、夏より戦えている。それがこのような点差になっている、結果としてついているのだと思います。(スクラムで押していたが、狙いはあったのですか)自分たちのスクラムを貫くということに尽きます。フィジカルでは他大学に比べて劣る面があるので必ず低くスクラムをする、自分たちのスクラムを相手に合わせないということを春から目標にしていました。それが実を結んだと思います。特に狙いがあったというわけではないです。(最後のトライの前のターンオーバーでのコツは)ターンオーバーを狙う時は常にFWが後ろの方から8人で必ず押すということを意識しています。個々は強くても自分たちがまとまりになって押せたのかなと思います。(明大戦はどのようなゲームにしていきたいですか)やはりディフェンスの面で今回課題になった1対1のタックルで明大もフィジカルが強いチームで勝負を仕掛けてくるので今日の反省を生かして、前で止める、ペナルティを増やさないで自分たちのペースでしっかりと試合を進められたらと思います。(アタック面としては)セットプレーの安定を保っていて、ファーストフェイズでしっかりゲインを切れていきたいです。(明大戦に向けての意気込み)今日負けてしまって、対抗戦優勝が難しくなってしまったのですが、残りの試合を全勝で終えるためにも次の明大戦はしっかりと勝ち切りたいと思います。

 

LO豊田祥平(総4) (試合を振り返って)フィジカルの面では通用する場面もありました。ただ、特にFW陣がこだわってきたセットプレー、全体を通してはディフェンスセットの部分で穴があって、こういう結果になってしまったのだと思います。(試合前のミーティングではチーム全体でどのような話をしましたか)先々週の筑波戦から2週間、ブレイクダウンにフォーカスして相手を「ブレイクダウンで圧倒する」ことを目標にやっていて、そこは帝京大にも通用する部分もありました。ただ、相手にテンポが出たときにやられてしまう場面もあったので、今後よりこだわっていきたいと思います。(スクラムで帝京大に容易に押し負けなかったという点で今日は一定の成果が出たように見受けられた。帝京大のプレッシャーはどうだったか)スクラムは相手の形に付き合わず、自分たちのスクラムをやろうということを意識していました。(ラインアウトは)アタックでミスが出てしまったのと、モールのディフェンスで相手の湧いて出てくる巧いプレーに対応しきれなかったですね。(後半の2トライ目を決めて以降は完全に慶大ペースになった。あのときのチームの雰囲気は)あのときはみんなが「いける」という気持ちで一致団結していて、アタックでは全員が前に出よう、ブレイクダウンでも相手を倒そうと集中力が一番高まった時間帯でした。(ただ、結果としては善戦できたものの、あと一歩で勝利には至らなかった)結果が全てなので勝ちにこだわりたかったんですけど、ディフェンスセットやフィジカルの部分でもっと改善して次の試合に向けて修正していきたいと思います。(再来週の明大戦に向けて意気込み)明大はセットプレーに強いチームでフィジカルもあるので、今回帝京大戦で得られた自信と反省を生かして、明大を圧倒したいと思います。

SH中鉢敦(経4)

(今日の試合はどのような攻撃を展開していこうと思って臨みましたか)今日の試合は攻撃というよりもディフェンスにフォーカスして、特にブレイクダウンで相手を圧倒していくということをチーム全体で意識して臨みました。(ディフェンスの面では、スクラム、タックルともに機能していたように思うが、前半を振り返って)スクラムでFWが勝ってくれたのは本当に心強かったんですけど、相手のテンポに乗せられてしまうとそのままトライまで繋げられていたので、そこで悔しさが残るし今後の課題かなと思います。(後半15分にはご自身もトライをきめましたが)FWが前に出てくれたので、自分の前が空いてトライすることができました。FWに感謝のゴールでしたね。(今日の試合での収穫は)この何週間かは、帝京大相手にブレイクダウンで圧倒するということにフォーカスしていたんですけど、今日の試合でそのブレイクダウンが通用することが分かって、練習してきたことが間違いではなかった、このまま積み重ねていけば上に行ける、ということを確信した試合でした。(今後ポジション争いもあると思いますが中鉢選手の強みは)ディフェンスの部分と今日のトライにあったように、前が空いたときに前進して行けることが自分の強みだと思います。116日の明治戦に向けて)このままブレイクダウンを意識してやっていくと思うのですが、BKのアタックの部分でもトライが奪えるように自分も貢献していきたいと思います。

 

SO古田京(医2)

(今日の試合を振り返って)自分たちがやってきたことを出そうと思っていて、それができた部分もありましたが、勝負としては勝負所で帝京大の方が分があった印象です。(先制点見事なトライでしたが)本当に序盤からFWがすごい良く戦ってくれてたまたま僕がトライを取れただけだと思います。(ご自身のプレーで今日良かった部分は)差が開く60分、70分くらいまでは集中力を保って良いゲームメイクができたと思います。キックの部分では帝京大の松田力也さんに完全に劣っていたと思うのでその部分は改善点だと思います。(次の明大戦はどのような試合にしたいですか)とにかくいい試合を作って勝ちに行くことだと思います。

 

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