秋季リーグ戦もいよいよ大詰め。最後のカードである早慶戦を迎えた。優勝こそ逃した両校だが、意地がぶつかり合ったこの一戦は緊迫した好ゲームに。試合は1対1の同点で迎えた七回、郡司裕也(環1)が大学初ホームランを放ち勝ち越しに成功。投げては先発の加藤拓也(政4)が1失点完投勝利を挙げ、現役最多を更新する25勝目を挙げた。バッテリーの活躍が目立った慶大は、5季振りの早慶戦勝ち点奪取に向け、大事な初戦を白星で飾った。
10月29日(土)東京六大学野球秋季リーグ 早大1回戦
| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 計 |
早大 | 0 | 0 | 0 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 1 |
慶大 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | 0 | 2 | 0 | × | 3 |
慶大:○加藤拓 ―郡司
早大:●小島、柳澤―小藤
◆慶大出場選手
| ポジション | 選手名(学部学年・出身高校) |
1 | [5] | 沓掛祥和(商4・慶應義塾) |
2 | [4] | 倉田直幸(法3・浜松西) |
3 | [7] | 岩見雅紀(総3・比叡山) |
| 7 | 重田清一(環4・佐賀西) |
4 | [3] | 山本瑛大(商4・South Torrance) |
| R | 小原徳仁(文3・慶應義塾) |
| 3 | 清水翔太(総3・桐蔭学園) |
5 | [9] | 山口翔大(環4・桐光学園) |
6 | [2] | 郡司裕也(環1・仙台育英) |
7 | [8] | 柳町達(商1・慶應義塾) |
8 | [1] | 加藤拓也(政4・慶應義塾) |
9 | [6] | 照屋塁(環3・沖縄尚学) |
4年生にとっては最後のカードとなる早慶戦。慶大先発は加藤拓、早大先発は小島でプレーボールした。
加藤拓は初回、打たせて取る投球が冴え早大打線を三者凡退に封じる。するとその裏、沓掛祥和(商4)が相手のエラーで出塁を果たすと、その後二死三塁の場面で現在打率ランキング首位の山本瑛大(商4)がタイムリーを放ち、幸先良く1点を先制した。
初回以降も加藤拓は順調な投球を披露する。三回まで被安打0、5三振の快投で早大打線をねじ伏せた。しかし四回、自身のけん制悪送球で走者を二塁に背負うと、相手五番の佐藤晋にタイムリーを許し、試合は1対1の同点に。
勝ち越しを狙う打線だが、小島を打ちあぐねる。三~五回にかけて走者を出すことが出来ず、得点の糸口をつかめない。
六回、倉田、岩見が連続して四球を選び、一死一、二塁と得点圏に走者を進める。続いて迎えるは初回にタイムリーを放った山本瑛。しかしこの場面は併殺打に倒れてしまい、勝ち越し点を奪うことはできなかった。
四回こそ得点を許した加藤拓だが、その後は粘りのピッチング。毎回のように走者を許すも要所を締め、スコアボードにゼロを並べた。
七回裏、均衡していた試合が動く。一死走者なしの場面で打席に立った郡司が5球目を上手くすくい上げると、打球は慶大応援席の左翼スタンドへ。郡司の大学初ホームランが飛び出し、慶大は待望の勝ち越し点を挙げる。さらに続く柳町達(商1)、加藤拓の連打で一、三塁とすると、ここで照屋塁(環3)が絶妙なセーフティスクイズを成功させ、3対1とリードを2点に広げた。
援護をもらった加藤拓は尻上がりに調子を上げる。八回には相手主将・石井からこの日11個目の三振を奪い、通算300奪三振を記録。史上わずか16人目という偉大な記録を達成した。最終回のマウンドにも上がり、最後は岡を三振に切って取り試合を締めた。加藤拓は1失点完投勝利を挙げ、現役最多を更新する25勝目。慶大は5季振りの早慶戦勝ち点奪取に向け、大事な初戦を白星で飾った。
慶大打線は今季防御率1位と調子のいい小島に苦しみ、なかなか得点を挙げることが出来なかった。そのような状況下においても勝利を手にすることが出来たのは、他ならぬ加藤拓の力投によるものだ。四球を7つ許すなど毎回のように走者を背負ったが1失点に抑え、決して相手に流れを渡さなかった。郡司の決勝アーチも、その好投が導いたといっても過言ではないだろう。エースの力投で初戦をものにし、明日は、勝利すれば悲願の勝ち点獲得という運命の一戦。慶大野球部の総力を結集し、何としても勝利をつかみたい。
【Keispo pick up】 大舞台で決勝ホームラン! 飛躍への第一章 郡司裕也
高校時代は甲子園準優勝、そして侍ジャパンU-18メンバー入り。華々しい経歴を引っさげ慶大に入学した。「いずれは大学野球界を代表する選手になれる」(大久保監督)と周囲からの期待も高く、1年生ながら正捕手に抜擢された逸材だ。今季は全試合にスタメン出場し、打率は3割近く。ベストナインも十分に狙える好成績を残している。そして迎えた自身初の早慶戦。見せ場は第3打席にやってきた。内角低めの変化球をうまく捉えると、打球は左翼席に吸い込まれるホームランに。大舞台での見事な一撃に、同級生の柳町も「あの場面で打てるのは、甲子園に出て、日本代表にも選ばれているだけある」と驚きを隠さなかった。「大学ナンバーワン捕手」へ。道のりはまだ長いが、この一戦がさらなる飛躍へのきっかけとなるに違いない。
記事:小沢 光市
◆打撃成績
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| 1 | 2 | 3 | 4 | 5 | 6 | 7 | 8 | 9 |
[5] | 沓掛 | 二飛失 |
| 二ゴロ |
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| 空三振 | 空三振 |
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[4] | 倉田 | 一犠打 |
| 空三振 |
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| 四球 | 空三振 |
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[7] | 岩見 | 遊ゴロ |
| 三邪飛 |
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| 四球 |
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7 | 重田 |
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| 見三振 |
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[3] | 山本瑛 | 左安① |
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| 見三振 |
| 三併殺 |
| 左安 |
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R | 小原徳 |
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3 | 清水翔 |
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[9] | 山口 | 三飛 |
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| 空三振 |
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| 一ゴロ | ニゴロ |
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[2] | 郡司 |
| 一ゴロ |
| 三邪飛 |
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| 左本① | 遊直 |
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[8] | 柳町 |
| 四球 |
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| 一ゴロ |
| 右2 |
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[1] | 加藤拓 |
| 左安 |
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| 三ゴロ |
| 中安 |
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[6] | 照屋 |
| 三併殺 |
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| 空三振 |
| 投安① |
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◆投手成績
| 投球回数 | 打者数 | 球数 | 安打 | 三振 | 四死球 | 失点 | 自責 |
○加藤拓 | 9 | 35 | 147 | 3 | 12 | 7 | 1 | 0 |
◆監督・選手コメント
大久保秀昭監督
相手の小島君の調子が良いのは分かっていたし、加藤も良くて、いい投手戦で試合が進んだと思う。さほど大きなミスもなく、我慢しながら戦えた。最後は郡司のホームランで流れを手繰り寄せて、非常に締まったいい試合だったと思う。(加藤拓は1失点完投)フォアボールが減ってくれれば文句のつけようもないが、相手に流れを渡さずに、本当にいいピッチングだった。(7回に決勝のホームランを放った)郡司は、この秋からずっと試合でやっているが、期待に応えているし、打てる捕手は本当に希少なのでもっともっと高みを目指してほしい。郡司にはキャッチャーとしてのスケール、雰囲気がある。本当はもっと元気があれば。今はまるでベテラン捕手のようにプレーしている。そこが良いところでもあるが、もっともっと自分を出していければ、大学野球界を代表する捕手になれると、そういった見方をしている。うちには須藤という良いキャッチャーもいるが、総合的に見て右バッターという部分と、勉強をさせるという点で起用している。(明日に向けて)優勝、日本一、早慶戦勝利という三つの目標を掲げてやってきた。どれも達成出来なければ残念なシーズンとなってしまう。何とか明日勝てるように、集中してやっていく。
重田清一主将(環4)
苦しい試合展開だったが、何とか粘って集中を切らさず出来たことが良かった。今日も小島投手を相手に苦しんだが、最初に相手のミスで山本瑛がしっかり打ち、郡司も打って、加藤拓が粘ってくれたことで勝つことが出来た。7回の攻撃は郡司につきる。リードしたことでみんなの気も楽になり、相手の集中が切れかかったところを畳み掛けることができた。自分の打席では出塁できれば良かったが、簡単にアウトになって相手に流れを渡さないようにすることを考えていた。最後の最後まで勝利に貢献できるように食らいついていきたい。チームも勝って自分も打って終われたらベストだが、なかなか上手くいかないので、何とか勝てるようにいいチームを作っていく。自分の出来ること、役割をしっかり果たしていき、試合に出たら打つところは打つ、守るところは守る、走るところは走るというようにやっていきたい。今日と同じように攻撃陣は1点ずつ取り、先発投手を中心に最少失点で抑えてくれれば。2016年のこのチームで最後に早大から勝ち点を取って、しっかりと終わりたい。
加藤拓也(政4)
初戦はなんとか勝ちたいと思っていたので、今日勝てて本当によかったと思う。調子はいつも通りという感じだった。四球を7つ出してしまったし、特にいい投球だとは思わないが、1失点に抑えられたことはよかった。同じくドラフト指名された石井については、特に意識はしていなかったが、相手の3番打者という意味では警戒していた。300奪三振達成については頭の中にはなかったが、相手をゼロに抑えようとした結果の積み重ね、という点ではよかったとは思っている。打者としても、なんとか後ろに繋ごうという意識があったから、それが2安打という形になってよかった。今日だけで終わりではないので、できれば明日勝って、勝ち点を取って終わりたいと思う。
山本瑛大(商4)
早大に勝ちたいという強い思いで試合に臨んだ。早慶戦の雰囲気は最高だった。小島投手はいい投手だが、今日はコツコツと点を取れて、粘りの守備も見せることができたと思う。打撃面では、あと2試合、自分のスイングをしようと思った。1回の適時打の場面は、走者を返すことが4番の仕事なのでそれだけを考えていた。18年間やってきた野球なので、思い残すことがないように終わりたい
照屋塁(環3)
早慶戦は絶対勝つとみんなで言ってきた。いい試合ができて本当に良かった。寒いとわかっていたのでチームでしっかり体を動かして準備を怠らないようにしようと話していたのでいい準備はできたと思う。ストライクが来たらバントを決める自信があった。練習通りやれた。監督がマウンドに行った時は沓掛選手と次のプレーの確認をしていた。(九回、併殺を奪った場面は)ランナーが飛び出してくれて、ラッキーだったのできっちり取れるアウトを取ろうと大事にやった。加藤投手は後ろから見ていて本当にかっこいい投手だと思う。とにかく2連勝していい形で4年生を引退させたい。自分はいつも通りやれることをやっていきたいと思う。
郡司裕也(環1)
慶應の優勝はなくなってしまったが、それ以上に早慶戦で勝つことが慶應にとっては大事なことだと思う。今日まず1戦目を勝てたことは慶應にとっては大きいし、チームも波に乗れるのではないかと思う。チーム全体として、できないことをやろうとするのではなくしっかり今までやってきたことを発揮しようと心がけた。非常に良いチームになっている、と感じている。今日は反省という反省はあまりないと思う。しかし牽制の暴投など細かい部分ではあるので、しっかり今日帰ってから詰められる部分を探して詰めようと思う。加藤さんのピッチングは、途中荒れたり力んだりしてしまい崩れてしまった部分もあったが、ピンチになってから気合を入れて要所要所で完璧なピッチングをしてくれたと思う。リーグ戦初ホームランは、狙っておらず偶然出たものだったが、結果的にはすごく良いところでのホームランだったので良かった。しかしこれで変な自信を持たないようにしたい。この早慶戦で四年生と一緒に試合をするのも最後になるし、1年間やってきた集大成が明日だと思うので2連勝して勝ち点をあげたい。
柳町達(商1)
接戦で均衡した試合で苦しかったが、郡司のホームランから集中的に点を取れて、加藤さんもしっかり抑えてみんなで守ってという形ができたので、勝てたのだと思う。3打席目の二塁打は、カウントが2ボールで、ここは入れてくるだろうと思って、思いっきり狙って振ったら、いいところに飛んでくれた。入るかなとも思ったが、入らなかった。感触としては、かなり良かった。(同じく1年の郡司選手のホームランについて)あの場面で打てるのは、やっぱり甲子園にも出て、日本代表にも選ばれているだけあるなと思った。早慶戦は、他のリーグ戦と違って、応援もすごいし、応援してくれる方がたくさん来てくれているので、雰囲気がやっぱり違った。まだ1勝しただけなので、あと1勝を全員で全力で勝ちにいきたい。