11月19日、講道館にて今年で68回目と長い歴史を誇る早慶柔道対抗戦が行われた。早慶対抗柔道戦は20人対20人の勝ち抜き戦と他の大会とは異なる試合形式で、勝てばそのまま残り、負ければ次の選手に交代、引き分ければ両校ともに交代するという流れである。時に、体格も階級も異なる相手と対戦しなければならない試合もあり、たとえある階級で実力のある選手でも、体格差ゆえに敗戦することもある。それゆえ、柔道は基本的には個人種目であるが、この早慶戦では、個人のみならず、チーム全体で戦術をたてる必要がある。昨年、一昨年は惜敗し、あと一歩のところで勝利を逃した慶大。今年こそ勝利をつかむべく、周到な準備をして臨んだ早慶戦だったが、今年も一人残しと悔しい敗戦を喫した。
2016年11月19日(土)
第68回早慶対抗柔道戦
場所:講道館(10:30~)
〈男子出場選手(先鋒から)〉
①堤大輝(総1=福大大濠)、②白鳥力也(商4=慶應義塾)、③澁沢純(政1=慶應義塾)、④内山将志(環2=桐蔭学園)、⑤福島大輔(商2=慶應義塾)、⑥小田島重夫(環1=慶應義塾)、⑦齋藤渉(商1=慶應義塾)、⑧大畠裕宣(総3=修道)⑨生田新(総4=白陵)、⑩井上頌悠(法3=慶應義塾)、⑪渡邉大輝(総1=慶應義塾)、⑫廣谷凛也(商2=慶應義塾)、⑬小田原洋夢(総2=慶應義塾)、⑭西村康佑(商3=慶應義塾)、⑮角田裕祐(総4=高崎)、⑯三觜修斗(理4=慶應義塾)、⑰長田治親(総2=秋田)、⑱松本旭夫(商4=慶應義塾)、⑲中沢嵩史(総4=國學院栃木)、⑳後藤隆太郎(政4=慶應義塾)
〈結果〉1人残しで早大の勝利
早大 |
| 決まり技 |
| 慶大 |
高波勁佑 |
| 背負投 | 〇 | 堤大輝 |
伊藤悦輝 | 〇 | 肩車 |
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| × | 引分 | × | 白鳥力也 |
古川凌 | × | 引分 | × | 澁沢純 |
佐野安大 | × | 引分 | × | 内山将志 |
田中大勝 | 〇 | 合技 |
| 福島大輔 |
| × | 引分 | × | 小田島重夫 |
木浪龍太郎 |
| 合技 | 〇 | 齋藤渉 |
佐藤竜 | 〇 | 大内刈 |
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| 〇 | 横四方固 |
| 大畠裕宣 |
| × | 引分 | × | 生田新 |
瀬川勇気 | × | 引分 | × | 井上頌悠 |
矢野雄大 |
| 優勢 | 〇 | 渡邉大輝 |
西山洸大 | × | 引分 | × |
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斎藤光星 | 〇 | 合技 |
| 廣谷凛也 |
| 〇 | 内股 |
| 小田原洋夢 |
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| 優勢 | 〇 | 西村康佑 |
河田満 |
| 優勢 | 〇 |
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下田将大 | 〇 | 横四方固 |
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| 上四方固 | 〇 | 角田裕祐 |
長谷川公輝 | × | 引分 | × |
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中上駿 | 〇 | 合技 |
| 三觜修斗 |
| × | 引分 | × | 長田治親 |
井上昂亮 | 〇 | 大内刈 |
| 松本旭夫 |
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| 合技 | 〇 | 中沢嵩史 |
浅賀慎太郎 | 〇 | 背負投 |
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| 出足払 | 〇 | 後藤隆太郎 |
熊田耕成 |
| 優勢 | 〇 |
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圓山泰雄 | × | 引分 | × |
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林孝樹 |
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慶大の先鋒を任されたのは、一年生の堤。早大の高波に対し、残り2分半で技有を獲得すると、直後に背負投で一本を決めて勝利する。第2戦では、早大の伊藤に一本を決められ、敗戦するも、その活躍は主将の後藤も認めるほど大きな活躍だった。その後の3戦は、両者ともに全く譲らず引分に終わるが、白鳥、澁沢、内山が粘りの戦いを見せてくれた。続く5人目の福島が早大田中を相手に惜しくも敗戦。しかし、6人目の小田島が田中を相手に引き分け、両校の実力が拮抗する様子が見て取れる。勝利の行方は全くわからない展開が続いた。続く7人目の齋藤が残り3分半頃に技有を獲得、このまま終わるかと思われた終了30秒前に一本を決め、再び波に乗る慶大。しかし、次戦の相手である早大の佐藤は、慶大に傾いた流れを一気に早大に戻し、齋藤、続く大畠を相手に二連勝。慶大にとっては危険な流れだったが、9人目の生田とは引き分け、早大の独走を阻止した。
続く井上は早大8人目の瀬川と引き分けると、慶大11人目の渡邉は開始直後に技有を獲得、最後まで激しい組み合いを見せ、技有優勢で勝利をものにした。渡邉は早大10人目の西山には引き分けたものの、差を一人とする大きな活躍を見せた。ここで再び流れをつかみたい慶大だったが、早大11人目の斎藤が廣谷、小田原に二連勝し、差を三人までに離される。この悪い流れを断ち切ったのは、西村だった。三戦目と疲れの見え始めた斎藤を相手に技ありを獲得し、喜びの表情を見せる。最後はふらつく様子も見られたが、技有優勢で勝利した。二戦目も開始直後に技有を獲得。そのまま逃げ切り二勝を果たした。三戦目は疲れの蓄積もあり、一本負けを喫したが、最後まで粘る柔道を見せ、慶大にとって大きな二勝となった。慶大15人目の角田は、西村が敗北した下田を相手に激しい攻めを見せ、上四方固で一本を決める。二戦目では攻めも守りも粘りを見せるが惜しくも引分。しかし、その果敢な戦いぶりが認められ、優秀賞を受賞した。
早大15人目の中上は慶大16人目の三觜に快勝したのち、17人目の長田とは両者ともに譲らない展開で引き分け、接戦を演じた。18人目の松本は一本負けに終わるが、続く副将の中沢が残り5分半頃に技有を獲得、残り2分半にはかけられた技をすぐに技をかけ返し、そのまま合技一本。二戦目は惜しくも敗北したものの、副将としての責任を果たして主将の後藤へと望みをつなぐ。慶大は後藤一人が残る中、早大は残り4人と厳しい展開。しかし、後藤は強かった。1戦目は開始1分もたたないうちに鮮やかな一本勝ち。2戦目はしばらく互いに技が決まらず一進一退の状況だったが、待望の一手で技有を獲得し、技有優勢で勝利をつかんだ。三戦目は、大きな声援が飛ぶ中、「相手も守りにきていてそれを取り切れなかった」と、猛攻を見せるが厳しい戦いとなり、惜しくも引分で試合を終えた。結果は、一人残しで早大の勝利。全29試合と長い戦いとなった早慶対抗柔道戦が幕を閉じた。
昨年、一昨年のリベンジを果たすことができず、早大に三連覇を許してしまった今季の早慶対抗柔道戦。しかし、その中身は決して早大に劣る内容ではなかったはずだ。20人全員が本戦に向けて準備、練習を重ね、試合では実力を存分に発揮し、粘り強い戦いを見せてくれた。1人の試合で終わるのではなく、次の選手へつないでいく試合形式が、少しでも良い流れで次の選手へつなぎたいという思いを生み出したに違いない。四年生は引退となるが、来年の勝利に向けて生まれ変わる新生柔道部の今後が楽しみだ。
(記事・清野日奈子)
以下コメント
後藤隆太郎主将(政4=慶應義塾)
(自分の試合についての感想)早慶戦は去年も負けていて、その雪辱を果たそうとチーム一丸となって一年間頑張ってきたのですが、結果的には結果を残せなくて情けない結果になってしまいました。この悔しさを後輩に受け継いで、来年雪辱を果たしてくれるように託したいと思います。(チーム全体としては)シミュレーションもやったのですが、それに近い試合ができていました。この試合にかけていたので、気持ちのこもった良い試合ができたと思います。(早慶戦に向けての練習は)早慶戦を一番大きな目標として、シミュレーションであったり、ビデオ研究であったりいろいろなことに取り組んでやっていたのですが、結果負けてしまいました。(観客に向けてのあいさつの時には涙を浮かべていたが)一年間この日のためにやってきたので本当に悔しくて、勝てなかったのですが、来年の後輩に託したいという思いと、涙の理由は悔しさが一番です。(初戦での鮮やかな一本について)一発目はすぐ決まったので、「このままいけるんじゃないか」と自分の中で思っていたのですが、二戦目は粘られて腕も張ってきて、三戦目は相手も守りにきていてそれを取り切れなかったので、自分としては三人目も取り切れるような体力とパワーが必要だったと思います。疲れと腕の張りがすごいのでそれをうまくいなして、力を使わずに技をかけることが柔道の本質でもあるのでそういう部分を極められたら良かったと思います。それが極められなかったことが今日の敗因だと思います。(優秀賞の受賞について)僕がもらっていいのかなという感じです(笑)頑張った後輩にあげたいです。(あげたい後輩は)西村くんとか先鋒の堤くんとか一年生がとても頑張っていました。一年生はすごく努力するんですよね、練習時間以外でもみんな努力していたり、僕でも一年生を尊敬する部分があります。一年生の頑張りがよく見れたので、この優秀賞は一年生に贈りたいと思います。(今後を支える後輩へのメッセージ)今年も負けて、三年連続で負けているということなので、来年必ず雪辱を果たしてもらって、僕みたいに泣いて終わらずに笑って終えられるように頑張ってほしいと思います。
中沢嵩史副将(総4=國學院栃木)
(前半の試合はどのような気持ちで見ていたか)嬉しい誤算で、1年生が活躍してくれて、この流れを僕で断ち切るわけにはいかないなと思っていました。後ろには主将がいますし、絶対決めてくれるっていう信頼のもと、僕は思い切って柔道ができたというのがありました。あまり緊張もしていなくて、思い切って攻められたのが1戦目だったかなと思いますね。(1戦目は合わせ技一本での勝利だったが、試合を振り返って)試合自体にそんなに満足はしていないですね。相手は2戦目で疲れていますし、早く決めて流れに乗っていくというのが僕のスタイルなので、そこを早く決め切れなかったというのが少し満足できない部分ですね。(2戦目に関して)中学の頃から練習試合や試合をさせてもらっていた相手で、実はすごく苦手なんですよ。やはり自分に対する戦い方も徹底されていて、突破口を探りながら戦っていたというのはありますね。(主将の後藤さんはどのような存在か)頼れる主将。後藤が主将にいるから僕が副将として思い切って1年間やってこられたなというのはありますね。(副将としてチームの中でどのような役割を果たしていこうと考えていたか)後藤が主将としてチームを引っ張るというのは誰が見てもそうなので、僕は練習中の雰囲気作りとか、後藤ができないところを僕がやってみようという思いもあって、後輩に厳しく当たってみたり、練習中に喝を入れるような役割を意識しました。すごく苦しい1年間でしたけど、すごくいい経験になった1年間でもありました。(今日が柔道人生の区切りとなるが今の率直な感想は)やりきったかと言われると、今すごく心の中にモヤモヤと残っているものはあるのですが、もう柔道する機会はほぼないので、7歳から柔道を始めて15年間やりきったかなというのはありますね。(後輩へのメッセージ)僕は1年生の時にこの早慶戦に勝ったのですが、2年から4年生では負けてしまって、今の3年生は3連敗している状況なので、何としても来年勝って欲しいなと思います。
角田裕祐選手(総4=高崎)
(試合の感想)僕の役割としては、絶対に取りにいかなければいけない役割で、チームの中でもポイントゲッターとして期待されている部分もあったと思うので、できればあともう一人くらい勝ちたかったです。ほぼ想定していたシナリオ通りの展開できて、もう一人くらいいると思ったのですが、河田、下田あたりで回ってくるかなと予想はだいたい的中していて、僕が引き分けた長谷川くんが去年後藤を破っていて、かなり実力もあるので大きくて力が強くて取り切らないだろうなという予想があったので、どっちかが一つとれば技ありが入るというところだったので最後攻めに行こうとはしたのですが、なかなか難しかったですね。(チーム全体としての印象は)目立つのは一年生の活躍で、先鋒の堤にしろ齋藤、渡邊の三人の一年生が頑張ってくれて、僕らが予想していたシミュレーションだと、前半の中堅まではこっちはほとんどポイントを取ることなく耐久戦になって後半で盛り返すという予想があったので、それを良い方に覆す活躍をしてくれたので、かなり心強かったです。一年生で好きなように試合をしてくれたので、それが良い方に向かっていったのだと思います。展開としてはかなり良かったですね。(早慶戦のために特別に練習していたことは)今週の頭くらいに各々が二十人対二十人でどういう流れになるだろうと予想して、その予想した相手の前後二、三人あたりを研究して対策するということをしました。そもそもシミュレーションが間違ってしまうとだめなのですが、だいたいシミュレーション通りに来てくれた部分で、練習がかなり活きたのではないかと思います。例えば引き分けるところは、しっかり引き分けたりだとか、取りに行くところは取りに行くだとかはしっかりできたのではないかと思います。(優秀賞の受賞について)あれは完全僕じゃないと思っていて、僕の前の西村とか斎藤、堤、渡邉あたりじゃないかなと思っていました(笑)でも、自分の名前が呼ばれた瞬間びっくりして、四年生として上が気を遣ってくれたのではないかなという感じですね(笑)一応想定通りの試合ではあったので、仕事はしたとは思うのですが、名前を呼ばれた瞬間はびっくりしました。勝った数も西村の方が多いですからね、僕は一人しか勝ってないですし、謎です(笑)(後輩へのメッセージ)僕らは最後惜しいところで負けてしまって、去年、一昨年も同じように負けてしまって、三年間負け続けているので、後輩たちにはそこを打開してもらうというか、そこが一番難しいと思うのですが、何か原因を見つけてもらいたいです。今練習を見ていると一年生が、かなり気合の入った練習をしているので、僕らはもういないですが、来年かなり期待しています。
西村康佑選手(商3=慶應義塾)
(試合の感想)一年生、下級生がいい流れで繋いでくれて僕たち上級生も絶対やってやるぞという気持ちで望んだのですが、結果的には勝てなくて残念です。(早慶戦に対する特別な思いはあったか)みんなチームとして一丸になって絶対勝とうという気持ちが、見ていてもらった人にもわかってもらえると思うのですが、それが一段と強い試合なので僕たちも絶対勝つという気持ちで臨みました。(変則的な試合形式の対策は)2週間くらい前からみんな早慶戦のためだけにいろんなルールに対応したやり方とか、相手のチームをビデオで研究したりとかもして、勝ちにこだわって準備して来ました。(相手は2人破った強敵だったが)僕の任された役としては引き分けるという話だったのですが、それではつまらないので、絶対勝ってやるという気持ちで臨みました。(優勢勝ちという結果に関して)練習していた成果が少しでも出たのではないかという風に思っています。(5分戦いきっての次戦も優勢勝ちだったが)手もパンパンで体力もいっぱいいっぱいだったのですが、本当に気持ちだけで5分間戦いきったという風に思います。(次の試合は一本負けだったが敗因は)あそこで分けられれば役に立ったかなと思うのですが、僕の詰めの甘さがあそこでちょっと出てしまったので反省点として今後活かしていきたいです。(今回の1人差での敗北という結果について)やっぱり一人一人がもうちょっと、0.5人、あと1人というところが最後の勝負につながってくると思うので来年は少しの差というのを意識して試合に臨みたいと思います。(今後の戦いに向けて)絶対一年後ここで勝てるように1年間しっかりやっていきたいと思います。