慶應義塾体育会ソッカー部の2017シーズン初戦、天皇杯予選準決勝・駒大戦が3月22日(水)に迫っている。昨季は関東大学サッカーリーグで6位、全日本大学サッカー選手権大会(インカレ)では2回戦敗退に終わった慶大。今季は再び優勝争いに加わりたいところだ。ケイスポでは、今季開幕に向けて選手・監督に意気込みを語ってもらった。
第5弾は、須田芳正監督の単独インタビューをお届けする。須田体制下で長らく主力として試合に出場し続けた宮地元貴(総卒・現名古屋グランパス)前主将の代が引退。さらに冨田賢コーチもチームを去り、新たに望月大知(総卒)がコーチに就任するなど、選手・スタッフともに陣容が大きく変化した。指揮を執る須田監督に、今季のチームについて語っていただいた。
――優勝という目標を掲げながら不本意な結果に終わった昨季を振り返っていただけますか?
うーん、そうだね…。まず、前期のチーム作りが上手くいかなかったかな。いろんな原因はあると思う。言い訳になっちゃうかもしれないけど、例えばユニバーシアードで3月末まで4人抜けていて、全員でトレーニングできたのが実質2週間くらいだった。その間は残っている選手たちを強化していて、まあ残り2週間で何とかなるだろうと思ってしまっていたけど、そんなに甘くなかったな。加えて帰ってきた選手たちのコンディションも良くなかった。ケガも多かったしね。そんな形でスタートダッシュに失敗したというのが一つ。あとは、チーム全体のまとまりというのが、シーズン通して統一されていなかった。そういったことが原因だったんじゃないかと思う。
――昨年の開幕前と比べると、今年はチームの状態は良いのでしょうか?
良いか悪いかは別として、チームとしての戦術トレーニングはきちんとできている。ただ、昨年の4年生が15人くらいAチームから抜けて、そこにBチームから入った選手たちがちょっとおとなしすぎる。だからもうちょっと、一言で言えばトップチームの責任感を持ってしっかり持ってやらないと、そんなに甘くはないかなと思う。
――今季も目標は優勝ですか?
もちろん優勝!優勝を狙う。関東1部で、どこのチームが強いとか弱いとかはない。大きな力の差がないからこそ、チームが一つになること。4年生がリーダーシップをとってチームをまとめて、一つになって戦えるチームが結局は勝つと思う。そこが何より重要だと思っている。そういった意味ではやっぱり、まだおとなしすぎるんだよね。今のところ課題はそこかな。
――新チームはおとなしい印象が強いですか?
そうだね。「俺のチームだ」と思っていない。やっぱり一人一人が自分のチームだと思わないと、責任感も生まれないと思う。自分のチームだと思うから、ゴール前で体を投げ出して失点を防いだり得点したり、そういうのが生まれると思うんだよね。他人のチームだと思ったらそこまでできないんだ。そういった意味では、まだまだ他人のチームだと思ってやっている人が半分ぐらいいる。そこのところじゃないかな。こればかりはこっちが何か言ったところで、本人が変わらないといけないんだよね。こっちが言い続けることも大切だと思うんだけど。どこで馬鹿になれるか。そういうところじゃないかな。
――新チームのストロングポイントはどんなところにありますか?
逆に言うと、チームのためにはプレーできるんじゃない。エゴはもちろんなければいけない部分もあるけど、ありすぎるとチームはまとまらない。そういったことはないかな。そこのバランスが整えばチームは一つになる。だから良いところも悪いところも表裏一体なんじゃないかな。
選手の良いところが出るようなチームを作っていきたい
――チームを引っ張る主将の手塚朋克(環4・静岡学園高)選手、副将の片岡立綺(総4・桐蔭学園高)選手について聞かせてください
二人は言葉よりも自分のプレーでチームを引っ張っていくタイプじゃないかな。二人とも経験はある。特に手塚は1年の頃から試合に出ていたし、片岡も昨年の後期は中心となってプレーしていたんで、彼らの良さを出してプレーで引っ張っていってほしい。
――昨季まで守備陣の中心選手だった望月大知さんが今季よりコーチに就任されました
まず、冨田賢コーチが急遽武蔵丘短期大学の専任コーチになった。大学の教員としては最高のポジションに就けたね。そこでBチーム及びディフェンシブコーチがいなくなったので、という形。良い選択したでしょ。彼も就職活動もあるし、将来的にはサッカーもやりたいということで、選手と一緒に動きながら指導するのが一番良いと思って。適任だなと思ったし、彼も快く「是非やりたい」と言ってくれた。チームのことをよく知っているし、後輩たちも彼の人間性をよく知っているから、兄貴分としてチームをまとめてくれるような働きも期待してやってもらっています。
――守備陣の中心メンバーがほとんどいなくなった一方、攻撃陣は中心メンバーが多く残っていますが、新しい戦術やシステムの構想はありますか?
守備陣が4枚抜けたのはやっぱりすごく不安だね。その中で、もともと「全員攻撃全員守備」を掲げて、特に守備に関してはチーム全体でやっていこうということは前から言っていたんだけど、今年は特にその部分を指導している。新しい戦い方としては、前からのプレス。これを今トレーニングしている。前でプレッシャーをかけて取りどころを決めて、後ろの選手がボールを奪う。そういうトレーニングは今かなりやっていますね。
――最終的に求めるスタイルはどのようなものですか?
やっぱりサッカーは11人でやるスポーツだから、まず自分の役割をしっかりと整理することだね。だからこそ僕がいつも言っているのは、「ストロングポイントを強化しなさい」ということ。そしてそれを組み合わせていくのが僕の役割。それがサッカーっていうスポーツだと思う。要するにまずはチームとして戦う。その上で選手の良いところが出るようなチームを作っていきたいと思っています。
――キーマンと考えている選手はいますか?
基本的には全員。全員がキーマンだね。ただその中でもゲームをコントロールする役割というのがある。試合になったら監督は外で指示は出すけど、ピッチの中の監督が必要だと思うんだよね。それは片岡立綺。彼に任せたいなと。ゲームをコントロールすること、90分間をどう組み立てるか。それは彼がやるべき仕事として与えるんで、その点では片岡がキーマンになるかな。
――前線にタレントが豊富だが、組み合わせや戦い方は試行錯誤中ですか?
そうだね。いろいろなタイプの選手がいるんで、相手によってだったり、うちらのやりたいサッカーに合わせて、選手を使っていきたいなと思っています。
悪い時期にどうチームが一つになれるか。それがすごく大事になる
――選手たちに一番求めることは何でしょうか?
全力を尽くすこと。100%全力を尽くすことを要求している。僕の方針としては、トレーニングは2時間しかやらない。だからその2時間、自分が上手くなること、強くなること、それだけを考えてやってくれと言っている。日々のトレーニングから自分の力を精一杯出すことが大切だということは毎日言っています。
――以前から「大学サッカーは人間教育の場だ」とおっしゃっていますが、須田監督の教育者としての信条はどのようなものでしょうか?
さっき言ったように、全てにおいて全力を尽くすこと。これってすごく大切なことだと思うんだよね。勉強においてもそう。何でもそうだよ。簡単そうだけど、これが難しい。選手たちにもよく言っているんだけど、この4年間の大学生活というのは、本当に勝利を追求できる場だと思うんだよね。卒業して彼らはいろいろな道に進んでいく。サッカー選手になる人もいるし、一流企業に入る人もいる。留学してまた自分の道を探す人もいるし、自分で何かを始める人もいる。あらゆる分野で活躍する可能性を秘めた人材だと思うんだよ。そのためのこの4年間なんだ。特に彼らはソッカー部だから、彼らの人生においてサッカーというのはかなりのウェイトを占めていると思う。そこで4年間チャンピオンになることを追求すること。全力を尽くすこと。その経験は将来彼らが社会に出た時に必ずプラスになると思う。何の心配もなくサッカーを追求できる環境なわけだから、チャンピオンを目指して、そのために何ができるかを考えることが、人間教育につながるんじゃないかな。もちろんいろいろな誘惑があって、自分を律して生活しなきゃいけない部分もあると思うんだよね。楽しいことはたくさんあるんだよ。それをどうコントロールしてサッカーのために準備できるか。そういったところも含めて、すべて人間教育になっていくと思う。あとは、チームのため、という精神。もちろんエゴを出さなきゃいけない部分もあるんだけど、チームのためにどう働けるかということは、ピッチ内外においてすごく大切なことだと思う。そういう話をよく彼らにします。
――シーズン開幕に向けた意気込みを聞かせてください
本当に一戦一戦勝利を追求して戦って、最終的には優勝を目標に。で、シーズン通して良い時期ばかりってわけにはいかないんだよね。良い時期はこっちが何も言わなくても、彼らで良い雰囲気を作ってできる。悪い時期にどうチームが一つになれるか。それがすごく大事になると思う。人生だってそうでしょ?悪い時にどう行動するか、どういう対応をするかで、その人の本性が分かる。悪い時期に、僕も含めてチームが一つになることを追求したいなと思っています。
――最後に、応援してくださっている皆様にメッセージをお願いします!
我々は慶應の看板を背負って精一杯戦うので、ぜひ会場の方に足を運んでもらいたいなと思います。応援よろしくお願いします。
(取材 桑原大樹)