青学大との春季大会初戦を見事勝利で飾った慶大は4日、同志社大との定期戦に臨む。同試合は日本最古の大学ラグビー対校戦で、今回で記念すべき100回目を迎える。関西屈指の強豪校であり、過去大学選手権などで死闘を繰り広げてきた同校との対戦は、今季の黒黄軍団の戦いの行方を占う上で重要な一戦となる。長いシーズンを戦うにあたり、早い段階からチームを軌道に乗せていくためにも、ぜひとも勝利を掴みたい。
今回は先日の副将インタビューに引き続き、金沢HCに新体制、今季のテーマ、春季大会の展望などについて話を伺った。(このインタビューは4月6日に行われました)
——まずは関東大学対抗戦4位、大学選手権準々決勝敗退という昨季の成績を振り返っていただけますか
当然目標には届かないところでしたし、結果については悔しいと思っています。ただ、大学日本一の目標を掲げて最後までいけるのは1チームしかいません。
なので結果は悔しいんですけど、去年は去年のものとしてしっかりレビューして、さらに先に進めるようにチームを動かしていくしかないです。今までした経験を踏まえて、どんどん進んでいかなくちゃいけないと思います。
——特に対抗戦でも善戦を演じながらも勝利をものにできない試合が続きました。なにが最後勝敗を分けたとお考えですか
細かいスキルのところはその都度反省しています。ただ自分は、あまりそのことを「勝つつもりがなかった」とかそういったところには繋げたくないと思っています。勝つ気持ちなんて選手は当たり前のように持っていますし。なので、(精神面というより)スキルや準備がちゃんとできていたのか、もっとできたんじゃないか、というところを突き詰めていかなくちゃいけないのかなと思っています。
ただ選手は当たり前ですけどベストを尽くしているので、単純にその時の慶大よりも明大、早大の方が力があったというふうに考えています。
——昨季はディフェンス・運動量・ブレイクダウンといったところにフォーカスしていたと思いますが、この3つについて自己評価を
ディフェンスについては、前年より数字上でも格段に上がってきているので、自分としては手応えを感じてきています。ですが慶大の場合ディフェンスが一番のチームカラーなので、そういう意味ではこれをもっともっと上げていかないとディフェンスを強みにしているチームとしてはまだ弱いのかなと思っています。
例えば被トライ数では1試合平均でも4トライ取られてしまっているので、それを今年は3トライに抑えるぐらいにしたいです。なかなか難しい目標なんですけど、そのぐらいの意識をもって、やっていかないといけないと思います。キックオフミーティングでもそういう話をしました。
——運動量とブレイクダウンについてはどうでしょう
自分たちが強化をするのと同時に、相手も強化してくるものなので、どこまでいったらそれがゴールということも無いと思いますし、昨年よりも一歩でも二歩でも先に進むように今年もやっていかなくちゃいけないと思います。
ただ一方で昨年の試合を振り返って、帝京大戦やその他の試合でもブレイクダウンでどうだったかというと、選手は比較的手応えを感じていると思いますし、自分もそう感じています。いわゆる強豪チーム、慶大より身体の大きなチームにも対抗できるぐらい、太田(千尋)S&C(ストレングスアンドコンディショニング)コーチが中心になってやってくれていて、キャッチアップできている自信は持っていますね。
——今季も継続して取り組んでいくと
そうですね。昨季良かったから今季も良いというわけじゃないので。メンバーも変わりますし、更にそこを強化して自分たちの強みにできるくらいやっていきたいと思っています。
——一方で新たに今季からフォーカスして取り組んでいきたいことは
大きくは無いんですけど、この2年間でだいぶ選手たちも自分のラグビーの考え方を理解してきているので、より判断っていう方に軸をもう少し持っていっているようにはしています。「色々なことを考えるとフィジカリティが無くなる」とラグビーではよく言われるんですけど、思い切りドーンといくのと、色々なプレーを考えながらやろうとするのでは、フィジカリティに差が出てしまいます。今の子たちは、考えるところは理解が進んでいるので、その分もう一歩昨季より先に進めるのかなと思います。
——先ほど副将の対談のなかで「プレーを判断するのにも自分たちの裁量に任せている部分が多かったんですけど、その中で枠組みを定めて、自分で判断する際にも最低限ここは守っておきたいという決まりを作っている」といったお話を伺ったのですが…
実は昨季もそうやっているはずなんですけど(笑)。そういう話を聞くと、しっかり落とし込みが自分の方でできていなかったのかなと思います。枠組み自体は昨年からあるので。ただ、それをより丁寧に春季のうちからやっているというのはあるのかもしれないですね。
——規律の徹底というのは今後も大事になると
そうですね。全く何も無いところからボールを渡して「はい、判断して」と言っても、何をどう判断すればいいかわからないじゃないですか。慶大の場合、たとえばこのエリアでボールを持ったら、きっとこういう風にしよう、という全体で統一された意識があった上で、その中で判断して、慶大の決まりはそうだけど、今はこっちが空いているからこういうふうにプレーしようよ、と。いわゆる土台はあるんですけど、そこに自分の判断を加えて、それよりも良い結果が得られるなら自分の判断を加えても良いよ、というのが副将の二人が言っていたことだと思います。その自分たちの土台のところ、規律をより今年は明確に打ち出しているというのはあるかもしれないです。
——新チームについて伺いたいと思うのですが、ここまでのトレーニングを振り返って
毎回年間のプログラムを立てて、それを見直しながら進んでいるのですが、今のところ自分の感覚としては順調に今のところは強化できていると思います。
アタックだったらこう、ディフェンスだったらこう、理解してくれているので。春のうちでしたらストレングスですとか、個人の基本的なスキルにフォーカスしてやっていると思うんですけど、チームでぱっと15人集まってやってもチームの形にはなるので、そういう意味では自分の中では手応えを感じています。
——昨季は「One Team」というスローガンを立てていたと思うのですが、今季は特に決まったスローガンを設けていないというふうに伺いました
実は「One Team」も学生が勝手にやっているんですよ。勝手にと言ったら言い方は悪いんですけど。もちろん慶大で大事にしているものはあるんですが、自分はあまりスローガンを作ることはしなくて、そういうのはどちらかというと学生に任せています。学生がそれを自分たちでやって、去年だったらそれが「One Team」で、自分たちで最後「One Team」になるように、多分彼らは動いていったと思うんですけど。
——今季のチームの印象は
個人主義的なところがあるというか。良く言えば個性が強い、ある意味ではバラバラなんですけれども、日本一を目指している部で、みんながそこに向かってはいると思うんですね。そこさえ合っていれば普段はバラバラでも良いんじゃないかと思っています。個性があるというのは仲良しチームじゃないということなので、そういったチーム(の方)が結構強くなるのかなと思います。
——特に金沢HCからまとまっていくよう働きかけるということはないのでしょうか
あ、でもそういったこともチームが進んで行くなかで当然あると思います。やっぱりラグビーは15人のスポーツですし、この部だとプレーヤーで120人ぐらいいるんですけど、学生が大学4年間をここに賭けるので、卒業したときに最後振り返って、「4年間ここに所属して良かったな」と思えるチームに自分はしたいと思っているので、ある程度一体感は作っていかなきゃいけないと思っています。
一方で、先程も言ったように仲良しクラブではないので、厳しく取り組める人じゃないといけないとも感じています。
——慶大は伝統的に4年生の中の話し合いで主将を決めるということで、今季は佐藤大樹主将(総4・桐蔭学園)が主将に指名されたわけですが、金澤HCから見た佐藤主将はどういった選手ですか
実は僕が(慶大に)来た2年前は、そんなことを言ったらあいつに怒られるかもしれないですけど、練習中に手を抜いているやつで。ここに来たときその印象が凄くあって、彼にもそういうふうに言っているんですけど、凄く怒っていたんですよ。練習中も「大樹、何やってんだ」と言っていたんですけど、その秋ぐらいから昨年にかけてだいぶ変わりました。
やはり(昨年の)3年生の中でも元々レギュラーにも絡んでいた子で、(そういった選手に)だんだんリーダーシップと自覚が生まれてきていたので、今年彼がキャプテンをやるというのは自然な流れなのかなと思っています。またプレー的にも体を張れる選手なので、自分は信頼しています。
——副将には中村京介選手(文4・明和)、堀越貴晴選手(総4・茗渓学園)が就任しました。二人については
副将は去年もそうなんですけど、自分と主将で相談しながら決めるというシステムを取っているんですね。色んなバランスとか人間性を見て彼らを選んだんですけど、中村京介は凄い努力の人間なんですよ。誰に聞いてもそう言うと思うんですけれども。彼は明和高校というところから来て、自分は1年のときを知らないんですけど本当にちっちゃい子だったらしくて、とてもじゃないけどシニアに絡むような選手じゃなかったらしいんですけど、プレーにも表れていますが凄く真面目なのと、慶大のタックルを体現できる選手だと思いますし、取り組む姿勢が凄く良いです。プレーで引っ張る佐藤大樹に対して、下から来ている選手なので周りに気配りもできますし、姿勢でもチームを引っ張っていけると思って、彼を副将に選びました。なので印象で言うと本当に真面目な選手ですね。それが一番(大きかった)かなと思うんですけど。
堀越は……天然ですね(笑)。なんですけど彼も2年まではずっと下のチームにいて、凄く才能はあるんですけど、ちょっとセルフィッシュなところがあるのと軽いプレーが多くて。2年目(の途中)まではそうだったんですけど、一昨年ジュニア選手権から少しずつ出るようになって、だんだんシニアでプレーする自覚も彼の中で芽生えてきました。スキル的にも去年一年で本当に伸びたので、BKを引っ張っていくとしたら彼なのかなというところですね。プレーの面ではそんなに問題はないと思っていて、リーダーとしてはこれからまだ成長していかなくちゃいけないところはあるんですけど、彼ともそういう話をしながら一緒に成長していかなくちゃいけないね、と話しました。
——他の二人からも「意識を変えろ」といったような趣旨の話をされたと本人が言っていました(笑)。
ははは(笑)。言ってました?「役職が人を作る」ということわざもありますけど、そういう意味では彼にはこの1年間で成長してもらえたらなと思います。
——同じ幹部でも全くタイプの違う3人ですね。
そうですね。似ていない方が良いんじゃないかと思いますけどね。そういうことでバランスが取れていれば、自分は良いと思っています。
——今季から副将が2人体制に戻りましたが、その意図を教えていただけますか
いや、佐藤大樹が主将に選ばれて、彼をサポートするってなったらやはり2人なのかなと単純にそういう考えですね。そのときのバランスを見ながら決めている感じです。昨年もそうでしたけど、FWが2人出ていて、その下にBKがついているという形なので、人柄とかで選んでいくと、たまたまそうなったというか。上手くFWとBKに配置したことで、それぞれ3人が相乗効果でチームに働きかけられるんじゃないかと思っています。
——具体的に3人にはどういう風にチームを引っ張ってほしいですか
佐藤大樹はキャプテンなので、自分としてはチームが勝つために何をしなければならないのかというところを厳しく引っ張っていってほしいと思いますし、そういうことができる選手だと思います。かなりタフな選手なので、そういう状況に陥っても自分で引っ張っていける選手だと思うので、そこを期待しています。それぞれ自分の強みを生かしてほしいなと思います。
中村京介だったら、まずは献身的なプレーと、昨年は廣川(翔也)がいて、彼のタックルがチームに火を付けていたんですけど、それを中村京介に託したいと思っています。一方で彼はずっと下積みを重ねてきた選手なので、下の選手への気配りも彼ならできるんじゃないかと思いますね。堀越貴晴にはリーダーとして成長していってもらえたら良いと思います。チームへの働きかけというよりも、彼がその役割の中で成長していってくれれば良いんじゃないかと思います。
——金沢HCが考える理想のチーム像は何でしょうか
少なくとも全員が最後まで諦めない、例えば簡単にゴールラインを割らせないチームですね。最後にトライを取られるとき、もみくちゃでレフェリーが覗いてなんとかトライになるのかで、それって全然違うと思うんですけど、トライをとられるってわかっていても、真ん中にトライをされないように最後まで追っていて寄せる、そういうプレーがみんなに染みついている、そういう風にしたい。トライを取るときも片手で置いてトライする人もいますけれども、必ず両手でトライするとか。最後まで気を抜かずに諦めずにプレーをする、そういったチームにしたいと思います。それができればタックルもできると思いますし。
慶大では「片手でのトライは絶対にしない」と言っています。見たことあります?日本代表のセブンズの試合で、ジャパンの選手がトライを取ろうとして、最後ダイビングしてこうやってやった瞬間(ボールを持ち上げる動作をしながら)ボールがポロっと抜けて、ノックオンになったとか。冗談みたいなことがあるんですよ。あと、自分が見たのはボールを置こうとして、置こうとしたそのボールを自分で蹴っちゃったとか。
——そういったこともあるんですね
あるんですよ。独走していて、(あともうちょっとのところで)トライを取れるかもしれないのに。でもそんなことをしていたら、慶大は絶対に勝てないので。最後まで諦めずに追っていって、もしかしたらプレッシャーをかけると相手が落とすかもしれないし。そういう諦めないプレーを最後までみんなができる集団が、一番の自分の理想のチームですかね。
——今年で就任3年目となりますが、ご自身の考え方がチームに浸透してきているという手応えはありますか
ありますね。グラウンド中ではいつも怒っていますけど、はは(笑)。怒っていますけど、徐々に。やっぱりなかなか難しいと思うんですよね。グラウンドに寝て、すぐに起き上がって次のプレーに参加するとか。
あとはすごく難しいんですけど、例えばここにラックがあったら、狭い方のことをショートサイドって言うんですけど、さぼる選手はいつもショートサイドに戻るんですよ。そうじゃなくてちゃんと広い方に返れるかとか。そういった常になにか仕事をしよう、プレーをしようという意識をみんなが持ってくれるようやりたいな、と。
多分そういう試合を見ると、勝っても負けてもお客さんは感動すると思うんですよ。何か心を震わせるようなものがあると思うんですね。勝ったときだけそうじゃなくて、勝ち負けに関係なく、いつでも慶大ってそういうプレーをしていきたいなと。歴史の中でも慶大にはそういうところがあると思うので、それを今年も自分は目指したいと思っています。
——昨季からの主な戦力的な変化としては、BKは今まで主力だった選手が残っていると思うのですが、FWが鈴木達哉前主将(H28年総卒)や廣川翔也(H28年環卒・現ヤマハ発動機)といった多くの主力選手が抜けました。彼らに代わる新戦力の目処は立っていますか
昨季もちょっと出ていますけど、例えば川合(秀和=総2・國學院久我山)とか、リザーブで出ていた山中(侃=商3・慶應)らが今度その穴を埋めなくちゃいけないのかなと思います。
——金澤HCの中で、今急激に伸びてきていると感じる選手はいますか
例えば4年生で言うと、野村龍太郎(経4・千種)がセンターでシニアチームに上がってきていて。この間聞いたら4年間で初めてなんですね、シニアに上がったのが。すぐにレギュラーでどうこうって話ではないですけど、自分は楽しみですし、見ていきたいなと思いますね。
若いので言うと、今だと2年生で栗原由太(環2・桐蔭学園)という選手がいて、今センターでシニアチームに入っています。彼も去年はほとんどプレーできていないので、今年初めてシニアに入ってきたばかりなんですけど、今伸びている選手かなと思います。
——主将と副将の2人以外で、チームのプレーの面でキーマンになる選手は
なかなか難しいですけどね。人に限らず、やっぱり自分がやろうとしている、しっかり前を向いて判断しながらプレーをするというラグビーの中で、スクラムハーフとスタンドオフはキーになると思っています。去年から出ていた選手で言うと、江嵜(真悟=商3・小倉)、古田(京=医3・慶應)が今残っていますけど、それ以外の選手でもそこのプレーヤーは慶大のラグビーにとってはキーになるポジションなので、重要だと思っています。
——ちなみに辻選手(隆康=文3・慶應)選手と丹治選手(辰碩=政3・慶應)のけがの状態はどうでしょう
辻はもうやっていますよ。ちょっと始めの方は部分参加という形でしたけど、今はすべて参加しているかな。丹治はもう少しかかりそうなんですけど、順調に回復しています。
——チーム全体で課題として取り組んでいることは
実はこの3週間ぐらいはアタックで今年ちょっとやりたかったことをやりながらベーシックなスキルを磨いていたんですけど、3月末からディフェンスにフォーカスしていて、どうやって相手にプレッシャーをかけていくかというところを意識しながらやっていますね。間違いなくディフェンスは慶大にとってキーになるので、昨季よりも良いディフェンスができるチームを作っていきます。
——中村選手は「ラブディフェンディング」という言葉を使って、ディフェンスに恐怖感を持たない、マイナスイメージを持たないということを今年のテーマにしていると言っていました
今年は「ディフェンスを好きになろう」ということを言っています。(今までも)比較的選手はポジティブにディフェンスに取り組んでいると思うんですけれども、自分もそうだったのですが、やっぱりディフェンスって嫌なんですよね。タックルに行くのは怖いし、やっぱりボールを持ってプレーする方が自分から仕掛けられるので(気分的には)良いと思うんですけど、タックルやディフェンスはラグビーには欠かせないものですし、慶大はそこがキーなので、「もっとディフェンスに取り組むことにポジティブになろう」とみんなには声をかけています。そういう意味ではみんな一生懸命練習中も取り組んでいますし、少しはそういう意識も芽生えてきてるのかなと。
(選手たちに)よく言うのはディフェンスになると、昨年もそうなんですけどちょっと受けるような感じにメンタル的にもなると思うんですけど、ディフェンスって慶大の時間でしょ、という話をいつもしていて。ミスをして相手ボールになっても、いや、ディフェンスから慶大は(リズムを)作っていくんだ、と。そうするとポジティブにマインドセットされるので、そういう風に伝えるようにしています。
——今季は2月から3月にかけて、3週間ほど4つのグループに分かれてウエイトトレーニングに重点的に取り組んだと伺ったのですが、これはやはり上位校とのフィジカル面の差を少しでも埋めていきたいと意識しての取り組みなのでしょうか
そうですね。S&Cの太田が中心にグループ分けをやっていてくれています。さっき言った「One Team」もそうですけど、チームが一体感を持つという意味でいつもシニアとジュニアとコルツというふうに分かれているとチーマがバラバラになってしまうので、そういう形で組んでいるというのも一つあります。そのことで下の選手が上の選手に刺激を受けて、またさらにレベルアップしていくということもありますし。
あとどちらかと言うと、上位校との差を埋めるというよりは、上位校に勝つためにどうするか、と。今そんなに自分たちは負けているというふうには思っていないので。当然負けている選手もいますが、そうじゃない選手もいるので。埋めるというよりはどうやってフィジカル面でまず勝つか。そこが一番重要だと思っていて、S&Cのコーチとも共有しながら進めている状況ですね。
——この春から新しく新入生が入部してきました。新入生に望むことはありますか
まず身体作りに取り組んで、早く練習に参加できるようにしてほしいと思っています。今の学生にも話しているんですけど、みんな入部してくる人には自分たちが何のためにここに来ていて、なぜここにいるのかということですね。別に僕が彼らに頼んで入ってもらっているわけじゃなくて、彼らがここで何かを成し遂げたくて来ていると思うので、そのことをしっかり理解して自分から自主的に色々なことに取り組んでいってほしいと思います。
——春季大会の展望をお願いします
結果は当たり前ですけど、しっかり自分たちが歩んでいる過程を確認しながら進んで行くべきだと思っています。勝ったからOK、負けたから反省しなくちゃいけないじゃなくて、最後冬に優勝するために、春どうやって歩んでいるのか、プランはあるんですけど、それを一個一個確認しながらしっかり歩んでいかなくちゃいけないと思っています。選手にはプロセスのところを突きつけながらやっていきたいと思います。
——この時期から他大学の動向を意識したりはしていますか
まあ、無いということはないです。
——特別対策をするといったことは
それは無いですね。春と秋はまったくの別ものなので、多分どの監督に言ってもそうだと思うんですけど、メンバーも違えば、チームの進み具合、仕上がり方も違いますし。春勝ったから秋勝てるということも無いですし。
例えば早大には昨季春は50点差以上つけて勝っていますけど、秋には負けているので。結果は当たり前ですけど、(秋の戦いに)あんまり関係は無いので、自分はプロセスを大事にしていかなくちゃいけないな、と。自分たちがその瞬間に何ができていて、何ができていないのかを確認しながらテーマを持って試合に臨みたいと思います。
——これはあくまで個人的な考えなのですが、慶大は他大学と比べて仕上がりが早いチームだと思っていて。例えば早大や筑波大は、春は全体的にミスが多い傾向にあるのに、秋になって急に強くなるというか。何かそこは違いがあるのでしょうか
他の大学をコーチングしたことが無いので、どういう感じかはわからないんですけどね。多分意図的に仕上がりを遅らせるということは無いと思うんですけど、どうなんでしょうね。自分も春の一番最初からチームを仕上げようなんて思っていないですし、その一年間のプロセスの中でやっていかなくちゃいけないと思っています。一つ思うのは、シーズンが終わることで、一々ゼロには戻らないと思うんですよ。
例えば、(一旦)シーズンが終わって春になって、じゃあ基礎の基礎からやりましょう(じゃなくて)。いやいや、4年間ちゃんと積み上がっていくものでしょ、と。1年間終わって、次の年はもうちょっと先からスタートできると自分はいつも思うので、チームの仕上がりが何をもって判断するかによるんですけど、チームプレーで言うと、慶大は比較的みんな理解はスムーズに進んでいると思います。
——わかりました。最後に今季1年を通しての意気込みをお願いします
対抗戦Aグループにいてこういうところにいる以上、当たり前ですけど日本一を目指しています。(本気で)取りに行けると思ってプランを立てているので、今年こそその目標を選手と一緒に叶えたいなと思っています。
あと一方で先ほども申し上げましたけど、見ている人が「慶大のラグビーってこういうラグビーだよね」ってわかるようなラグビーをしたいなと。慶大にとってそれはディフェンスだと思いますし、ライズという運動量のところだと思いますし、ティアーっていう激しさのところだと思うんですけど、お客さんに慶大ってどういうチームって聞いたときその3つの言葉が出てきたら、自分たちが歩んでいる道は絶対に正しいと思うので、そういったチームを作っていきたいと思いますし、そのことが見ているお客さんの心を震わせることにつながると思います。
——最後に応援してくださるファンの方々にメッセージをお願いします
3年目でこの2年間、なかなかみなさんが期待しているような結果になっていないんですけれども、選手はグラウンドで日々一生懸命取り組んでいますし、間違いなくベストを尽くしていると思います。今年も慶大らしいプレーを秩父宮のグラウンドで見せて、結果を残したいと思っているので、引き続き応援いただけたら凄く嬉しく思います。
——ありがとうございました!
(取材・編集:江島健生、写真:清野日奈子)
◆金沢篤(かなざわ・あつし)
1977(昭和52)年10月21日生まれ、39歳。神奈川・慶應高出身。2015年から現職に就任。今期で就任3年目を迎える。