春シーズンもいよいよ折り返し。21日にニッパツ三ツ沢球技場で行われた春季大会第3戦、慶大は関東学院大との対戦に臨んだ。前半は慶大が試合を優勢に進める。PR細田隼都(商4・慶應)とFB金澤徹(商4・慶應)の連続トライで開始早々から流れを引き寄せると、守りでは統率の取れた詰めのディフェンスで、走力の高いBK陣を擁する関東学院大を寄せつけない。終了間際にも連続トライで得点を追加し、28-5で前半を折り返す。
しかし後半は一転、ようやくエンジンの掛かってきた相手チームのアタックに手を焼いた。前半の堅守は鳴りを潜め、ラックでなかなかターンオーバーできない。3トライを献上し、一時は4点差まで迫られた。最後は慶大が意地を見せる形で粘る関東学院大を突き放し、49-24でノーサイド。結果的に3連勝を決めたものの、ディフェンスへの取り組みについて見直しを迫られる試合内容だった。
5/21(日)14:00K.O関東大学春季大会 vs関東学院大
@ニッパツ三ツ沢球技場
ポジション | 先発メンバー | 交代選手 |
1.PR | 細田隼都(商4・慶應) | →後半9分 渡邊悠貴(経3・慶應) |
2.HO | 安田裕貴(政2・慶應) |
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3.PR | 吉田雄大(総4・秋田) | →後半9分 中島雅大(環3・桐蔭学園) |
4.LO | 植竹創(商3・湘南) |
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5.LO | 松村凜太郎(商4・慶應) |
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6.FL | 中村京介(文4・明和) |
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7.FL | 小林嵩基(経4・慶應) | →後半0分 古舘健介(経4・慶應) |
8.No.8 | 川合秀和(総2・國學院久我山) |
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9.SH | 小宮山大地(政4・慶應) | →後半14分 高野倉健生(商2・慶應志木) |
10.SO | 古田京(医3・慶應) |
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11.WTB | 小原錫満(総3・東海大仰星) | →後半30分 権正拓也(政4・慶應) |
12.CTB | 栗原由太(環2・桐蔭学園) | →後半14分 豊田康平(総3・國學院久我山) |
13.CTB | 今成哲(経4・城北) |
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14.WTB | 安西浩昭(政2・慶應) |
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15.FB | 金澤徹(商4・慶應) |
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試合序盤は慶大がこれ以上ない試合の入りを見せた。前半1分、PR吉田雄大(総4・秋田)のチャージが決まり、弾いたボールにPR細田隼都(商4・慶應)が追いつきグラウンディング。先制のトライを決めた。続く5分には、ラインアウトからテンポよくパスを展開しながら前進し、最後は左隅にFB金澤徹(商4・慶應)が走り抜けてトライを奪った。
その後は、相手が果敢に突破を狙いつつも、慶大が詰めのディフェンスでそれを許さない。スコアこそ動きはなかったものの、鋭いタックルでプレッシャーをかけ続ける。そして終了間際、SO古田京(医3・慶應)の絶妙な縦のキックパスに、FB金澤が反応しインゴールに走り込んだ。技ありのトライを見せると、42分にもHO安田裕貴(政2・慶應)がトライ。SO古田が難しい角度のゴールを成功させ、28-5で前半を終えた。
だが、打って変わって後半は苦戦を強いられる。関東学院大の外に展開するラグビーがようやく機能し始めた一方で、対照的に慶大の方は前半に見られたような積極的なファーストタックルが影を潜める。そうなると、自然とディフェンスも後手に回った。一方的に攻め込まれる展開が続き、8分、21分、29分と3連続で失トライ。一気に4点差にまで詰められた。特に29分のトライは完璧にディフェンスを崩されてのもの。長いカットパスを絡めた相手のアタックに翻弄され、全く対応することができなかった。
追い込まれた慶大だったが、そこからは意地を見せた。活路になったのは、泥臭い縦の突進だった。38分に相手のペナルティーで得たスクラムからLO松村凜太郎(商4・慶應)やSO古田が縦をしぶとく突き、最後はSH高野倉健生(商2・慶應志木)がゴールポスト右にトライを決める。続く42分、縦のショートパントから裏に抜けたCTB今成哲(経4・城北)が独走でトライを奪う。45分、テンポよく左にボールを展開し、最後はFL中村京介(文4・明和)からフリーでボールを受けたWTB権正拓也(政4・慶應)が走り抜け、駄目押しのトライを決めた。ここでノーサイド。49-24で慶大が勝利を収め、春季大会の連勝を3に伸ばした。
「みんなが焦ってしまい、個人で前に出て、個人でタックルするというディフェンスのシステムにしてしまったのが良くなかった」。後半の苦戦の理由を、中村京介副将(文4・明和)はこう話した。前半はターンオーバーの回数こそ少なかったものの、随所に低く突き刺さる鋭いタックルを見せるなど、ある程度慶大のディフェンスの形を出せていただけに、後半の失速は一層勿体なく感じられた。
後半についてはアタックも精彩を欠いた。「風上だったので、キックを上手く使ってもっと楽にゲームを運べると思ったのですが、そうじゃなかったので……」と古田。少ないチャンスをキックパス中心に攻撃を組み立てようとしたが、なかなか思惑通りには運ばなかった。
今季、慶大がフォーカスしていたディフェンスで見られた綻び。「相手が外に仕掛ける攻撃に対して、一人目のタックラーのクオリティーが低かったことや組織的なディフェンスが乱れた」(中村)「自分のところでもっと相手にボールを持たせないようなゲームメイクができたのかなと少し思う」(古田)他にも、スタミナや集中力の切れも要因にあげられるかもしれない。いずれにせよ問題は一つではなく、複合的なものであるように思われる。春シーズンも折り返しの時期に入ったが、もう一度自分たちの取り組みをじっくり再点検する必要があるのかもしれない。
(記事:江島健生、写真:萬代理人)
以下、コメント
FL中村京介(文4・明和)
——今日の試合を振り返ってください
今日はディフェンスでもファーストタックルにフォーカスして試合に臨みましたが、相手に外に展開するラグビーを仕掛けられ、うまくファーストタックルに入ることができませんでした。
——見つかった課題は
相手が外に仕掛ける攻撃に対して、一人目のタックラーのクオリティーが低かったことや組織的なディフェンスが乱れたことです。
——後半は、ディフェンスが受け身になったように見受けられました
みんなが焦ってしまい、個人で前に出て、個人でタックルするというディフェンスのシステムにしてしまったのが良くなかったです。(もっと)チーム同士でのコミュニケーションをとり、チームでディフェンスをするという意識を持つべきでした。
——ご自身のプレーを振り返って
ターンオーバーを奪えるタックルがなく、積極的にいいタックルをして、ターンオーバーまでつなげるようにしたいです。
——今後に向けて一言
格下のチームに対して今日のラグビーではいけないので、課題を修正し、次に対戦する明治と早稲田に対して勝てる試合ができるようにしたいです。
SO古田京(医3・慶應)
——試合を振り返って
見ての通りで、関東学院大の外に振るアタックに翻弄されました。そこがこの試合が競った試合になった1番の原因だと思っています。個人的にも、チームとしても見直して修正していきたいと思います。
——アタックとしては相手のミスにも助けられつつ、少ないチャンスをものにしたというように見受けられました。ご自身の感覚としては
そうですね。ディフェンスが悪かったので、ボールを持てる時間は少なかったのですが、その中でもボールを持ったときは良い判断でボールを運べたと思っているので、アタックはレベルアップできていると思っています。
——前半の古田選手が放った縦のキックパスから金澤選手が走り抜けてトライしました。あのプレーを振り返って
あそこは徹さんから、後ろ空いてるよというコールがあって、そこに合わせたという感じですね。
——試合全体のご自身のプレーに点数をつけると
合格点ぐらいですかね。6、70点ぐらい。アタックはいつも通りできていたと思うのですが、(もっと)良いタックルをしないといけないなと思いました。
——コンバージョンの成功率も7本中7本成功で100%でした
そうですね。(ただ)まだ(そこには)フォーカスしていないので。(今回は)たまたまなので、練習するタイミングで練習していこうと思います。
——今日は特に後半、相手に外に展開されてチームが差し込まれ気味でしたが、どこが良くなかったのでしょうか
一つは相手のアタックがディフェンスに対応しきれなかったというのがあります。もう一つはまた映像を見てしっかり確認しようと思っているのですが、自分のところでもっと相手にボールを持たせないようなゲームメイクができたのかなと少し思います。
——前半上手く試合を運べた一方で、後半に入った途端、流れが悪くなってしまったように見受けられました
後半は風上だったので、キックを上手く使ってもっと楽にゲームを運べると思ったのですが、そうじゃなかったので……。そこが何だったのかというのは、もう一回みんなで反省したいと思います。
——次戦は明治との招待試合ですが意気込みを
春ですが、勝ちたいと思います。その中でも今、自分たちはディフェンスが課題だと思うので、それを良いアタックをする明治に対してどれくらいできるか、というのを意識して個人的にもチームとしても1週間頑張っていきたいと思います。