ベスト4まで勝ち上がった慶大。決勝への切符を懸けて東北福祉大と戦うことになる。投打ともに高いレベルを誇る東北福祉大の戦力分析を今大会の戦いぶりと合わせて行っていく。
1回戦で出場校唯一の国立大学・広島大学相手に投打で貫録を見せ完勝。2回戦は相手校の出場辞退で不戦勝となると、準々決勝は9回にエラーで追いつかれるも延長タイブレークの末白鴎大を下してベスト4入りを果たした。これまで慶大が有利に働いていた日程だが、1回戦から慶大が中2日、東北福祉大が中3日とやや不利に働くかもしれない。
第1戦の先発は山野太一(2年・高川学園)だった。リーグ戦では序盤こそ第2戦先発だったが、中盤以降第1戦を任され、チームで唯一規定投球回を投げた左腕だ。初戦の緊張からかやや制球に苦しむも、5回2失点と試合を作り、序盤のリードを保って先勝した。準々決勝ではけがによりリーグ戦で登板が少なかった津森宥紀(3年・和歌山東)が先発。9回に自らの牽制エラーで1点を失い、同点にされたが無死一、二塁から始まるタイブレークの10回を無失点に抑えるなど、10回を投げて与四死球6つを数えながら被安打3で完投勝利を収めた。
準決勝では山野の先発が濃厚だ。先述の通り中3日と登板間隔が空いているため、初戦から修正した本来の投球をしてくるものと思われる。スリークオーターからキレのある速球を中心にスライダー、チェンジアップを投げ込んでくるオーソドックスな左腕だ。後半の仙台大1回戦では自責3、東北学院大1回戦では4回与四死球6と調子を落としている。リーグ戦全体では32回で与四死球10個と基本的には安定しているものの、全日本の1回戦でも5回与四死球5とまだ本調子には至っていない。付け入る隙があるとすればこの制球難だろう。準々決勝のように立ち上がりを攻め立てて主導権を握りたい。これまで全日本では対戦の少ない左投手であるために、4番の郡司裕也(環3・仙台育英)や準々決勝で本塁打を放った嶋田翔(環2・樹徳)ら右打者が好調の上位左打者陣と同様に結果を残せれば打ち崩すことも可能だろう。中継ぎ待機となりそうな津森、そして抑えを任されている椋木蓮(1年・高川学園)はともにサイド右腕。準々決勝で登板した船迫と比べると両投手とも速球派で、準々決勝とは違った攻め方が要求される。
一方打者を見てみると、2戦連続で2桁安打を放ち好調だ。上位の吉田隼(4年・国士舘)、中野拓夢(4年・日大山形)が2戦3安打と機能。特に吉田は準々決勝で独特の打法から先頭打者本塁打、サヨナラ犠飛を放つ活躍を見せた。リーグ戦では5割近い打率で首位打者に輝いた3番の元山飛優(2年・佐久長聖)も初戦で2打数2安打3四死球とさすがの活躍を見せている。好調の上位打線には準々決勝同様気を付けたい。下位打線では指名打者の大西涼太(4年・智辯学園)は2戦で5安打と要警戒だ。
初戦同様エース髙橋亮吾(総3・慶應湘南藤沢)が先発することになるだろう。リーグ戦終盤から安定感のある投球を続けており、普段通りの投球ができれば目標の2失点以内に抑えることも難しくないはずだ。
準々決勝では大量リードで寄り切ったものの珍しくエラーが続発するなど、らしくない展開もあった。1日の休養日でどこまで詰められたかにも注目したい。これまで以上に厳しい試合になることが予想されるが、強敵ぞろいの六大学を勝ち上がってきた実績とプライドがある。普段通り、王者の戦い方で7年ぶりの決勝の切符を掴みたい。
(記事・尾崎崚登)