【野球】遠かった1アウト 逆転負けで優勝逃す 早大②

野球戦評

11月8日(日)東京六大学野球秋季リーグ戦 早大2回戦 @明治神宮野球場

あいさつを終え、泣き崩れる選手たち

あと1つ。1アウトの重みを痛感させられた試合だった。先制を許すも直後に追いつき、4回、瀬戸西純(政4・慶應)の適時打で勝ち越す。5回以降は早慶ともに継投で無失点に抑え、このまま慶大が勝利するかと思われた最終回。2死から蛭間拓哉(スポ2・浦和学院)に痛恨の一発を浴び、つかみかけていた優勝は手からこぼれ落ちていった。

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早大0010000023
慶大001100002

早大バッテリー:今西、西垣、山下、徳山、、柴田、○早川-岩本

慶大バッテリー:森田、小林綾、長谷川、長谷部、増居、関根、木澤、●生井-福井

早大本塁打:蛭間3号2ラン(9回)

◆慶大出場選手

 ポジション選手名(学部学年・出身高校)
1[8]渡部遼人(環3・桐光学園)
2[3]廣瀬隆太(商1・慶應)
3[5]下山悠介(商2・慶應)
4[9]正木智也(政3・慶應)
5[7]橋本典之(環3・出雲)
7水久保佳幸(総4・慶應)
6[4]宮尾将(商2・慶應)
H古川智也(環2・広島新庄)
7[2]福井章吾(環3・大阪桐蔭)
H嶋田翔(環4・樹徳)
R田口巧(政4・慶應)
8[6]瀬戸西純(政4・慶應)
H植田響介(総4・高松商)
9[1]森田晃介(商3・慶應)
H新美貫太(政3・慶應)
1小林綾(環2・松本深志)
1長谷川聡太(経3・慶應)
1長谷部銀次(総4・中京大中京)
1増居翔太(総2・彦根東)
1関根智輝(環4・城東)
H朝日晴人(環2・彦根東)
1木澤尚文(商4・慶應)
1生井惇己(総2・慶應)
H藤元雄太(商4・慶應)

明治神宮野球大会の開催中止が発表され、勝っても負けても4年が慶大の選手として神宮で戦うのはこの試合が最後。「お世話になった4年生を優勝させたい」。「スタンドで応援しているメンバーのためにも優勝したい」。それぞれの思いを胸に、慶大の選手たちは神宮のグラウンドへ飛び出した。

昨日黒星を喫し、優勝のためには勝利しか残されていない慶大。先発を任されたのは、森田晃介(商3・慶應)だ。初回から1死一、二塁のピンチを招くも後続を封じ、この場面を切り抜ける。しかし3回、得点圏に走者を背負うと、3番・瀧澤虎太朗(スポ4・山梨学院)にタイムリーを許し先制点を与えてしまう。

2安打を放った廣瀬

一方の慶大打線は1回、2回と走者を出すものの、併殺打で好機を生かすことができない。打線がつながりを見せたのは、点を取られた直後の3回裏だった。1死から内野安打で出塁した渡部遼人(環3・桐光学園)が盗塁を決めると、廣瀬隆太(商1・慶應)が左安打を放つ。そして相手の失策の間に、渡部遼がホームイン。試合を振り出しに戻した。続く4回にも、この試合でスタメンに復帰した橋本典之(環3・出雲)が右安打で出塁。犠打と空三振で2死二塁とすると、ここで主将・瀬戸西に打席が回る。早慶戦に強い男の左前適時打で勝ち越しに成功した。

勝負強い打撃でチームをけん引した瀬戸西

4回以降、慶大は細かい継投で早大打線を抑えていく。2番手として登板した小林綾(環2・松本深志)は、二者連続四球を与えたところでマウンドを降りる。無死一、二塁という緊迫した局面を託された長谷川聡太(経3・慶應)、長谷部銀次(総4・中京大中京)だが落ち着いて無失点に抑え、ピンチを凌いだ。6回途中からは今季初出場の増居翔太(総2・彦根東)が、7回途中からは関根智輝(環4・城東)が登板。スコアボードに0を並べていく。

長谷部は今季4試合に登板して無失点に抑えた

再び慶大にチャンスが訪れたのは8回。2死から下山悠介(商2・慶應)の内野安打、正木智也(政3・慶應)の左安打で一、三塁に走者を置く。ここでこれ以上点を与えたくない早大は、早川隆久(スポ4・木更津総合)を投入した。昨日苦汁をなめさせられた相手。雪辱したいところであったが、いい当たりを見せた水久保佳幸(総4・慶應)の打球は左翼手のグラブにおさまり、追加点はかなわなかった。

昨日に引き続き登板した慶大エース・木澤

そして1点リードのまま試合は最終回へ。8回から登板したエース・木澤尚文(商4・慶應)が力投する。先頭の丸山壮史(スポ3・広陵)を空三振に仕留め、続く野村健太(スポ1・山梨学院)は左飛。テンポよく2死をとり、残すはアウト1つのみ。しかし簡単には終わらないのが早慶戦だ。7番・熊田任洋(スポ1・東邦)に左安打を許すと、昨日本塁打を放った蛭間が打席に立つ。そこで慶大ベンチはここまで守護神として慶大を支えてきた生井惇己(総2・慶應)を送る。祈るように慶大ファンが見つめるなか投じた初球。変化球をバックスクリーンに運ばれ、重い2点を献上した。まさかの逆転劇だった。それでもまだ、試合は終わっていない。その裏、慶大の攻撃。再び逆転するため、慶大は総力を挙げて点を奪いにいく。先頭・古川智也(環2・広島新庄)は中飛に倒れ、1死で昨日ヒットを打った嶋田翔(環4・樹徳)が送られる。慶大の副将が意地の右安打で希望をつなぐ。しかしその望みもすぐに断たれてしまう。植田響介(総4・高松商)は二飛に打ち取られ、藤元雄太(商4・慶應)のバットが空を切る。その瞬間、早大の優勝が決まった。歓喜に沸く早大、崩れ落ちる慶大の選手たち。あと一歩。ほんのわずかのところで、優勝には届かなかった。

今年は新型コロナの影響で思うように練習や試合ができず、苦しい1年だっただろう。それでも、「今できることをやる」と前を向いて努力を続けてきた。真夏の連戦、例年と異なる環境、そうしたコロナ禍の逆境を乗り越え、熱いプレーで見ている人々に元気を与えてくれた。どんなにかっこ悪くても1つでも多くのアウトを取ると語った先発陣。安心して後を任せられた層の厚いリリーフ陣。スタメンとしての責任があると、チームのために自分の役割を果たすだけだと話してくれた野手陣。代打として大事な場面でチームを救ったベンチメンバー。精神面や技術面でサポートしチームを盛り立てていた選手。結束力の強く、お互いを支え合う最高のチームであった。そんな今年の慶大だからこそ数多くのいい試合、いいプレーを見ることができたのだ。

卒業後も野球を続ける人、今年で野球を辞める人、今後も慶大でプレーを続ける人——。これから歩む道は違うとしても、きっと今日の涙は無駄にはならない。この悔しさを力に変え、それぞれの舞台で活躍を見せてくれるだろう。

(記事:小嶋華、写真:澤田夏美)

 

◆打撃成績

   123456789
1[8]渡部遼四球投バ安遊ゴロ投飛
2[3]廣瀬三安左安①空三振見三振
3[5]下山三ゴロ空三振見三振二安
4[9]正木四球三ゴロ空三振左安
5[7]橋本典見三振右安遊飛
7水久保左飛
6[4]宮尾遊ゴロ三犠打一ゴロ
H古川遊飛
7[2]福井三安空三振一ゴロ
H嶋田右安
R田口
8[6]瀬戸西併殺打左安①三安
H植田二飛
9[1]森田
H新美二ゴロ
1小林綾
1長谷川
1長谷部空三振
1増居
1関根
H朝日併殺打
1木澤
1生井
H藤元空三振

◆投手成績

 投球回数打者数球数安打三振四死球失点自責
森田126130111
小林綾3 0/32900200
長谷川0 1/31500000
長谷部62001100
増居1 1/362001200
関根0 1/31800000
木澤1 2/361612011
● 生井0 1/32310011

東京六大学野球秋季リーグ戦順位表

 勝点勝率
1早大107038.51.000
2慶大106227.750
2明大106227.750
4立大103524.375
5法大102623.250
6東大100910.5.000

◆ベストナイン

・捕手 福井 2回目(7票)

・一塁手 廣瀬 初(11票)

・三塁手 下山 2回目(11票)

・外野手 正木 2回目(満票)

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