【野球】春季リーグ戦開幕前取材⑥ 堀井哲也監督 〜あの負けを財産に雪辱を誓う〜

野球対談

ついに開幕を迎えた東京六大学春季リーグ戦!慶應スポーツ新聞会では、王座奪還に燃える選手たちに開幕前インタビューを行いました。

最終回は、天皇杯奪取に向けて選手以上に気持ちを昂らせている堀井哲也監督です!

快く取材に対応してくれた

 

――監督として1シーズンを戦い抜きましたが、昨年1年は率直にどのような1年でしたか

 誰もが経験したコロナ禍という要素を除けば、大学生の可能性と大学野球の醍醐味を感じた1年でした。

 

 

――2季連続の2位という結果についてどのように受け止めていますか

 結果は悔しいの一言ですけど、戦い方や内容を見ると就任してから準備してきたことがある程度は出せたかなと思いますので、そういう意味では選手に感謝しています。

 

 

――あと一歩、優勝に届かなかった要因はどこにあったと考えていますか

これは力と力の勝負ですので、要因はひとつではないと思います。色々な要素が積み重なり、噛み合っての結果だと思いますので、負けたという結果を真摯に受け止めるということが大切だと思っています。

 

 

――采配は結果論で語られる部分が多いと思いますが、難しさを感じるような場面はありましたか

 選手起用や作戦がうまくいくこともあれば、うまくいかないこともありますので、これは監督として結果を受け止めるしかないと思っています。選手も勝とうと思ってそれぞれが100%の全力を尽くした結果、届かなかったということですので、勝敗の責任は私にありますね。それに対して振り返った時に、悔いが無いと思わないことはないですけど、思っても仕方がないことですので、前を向いて、それを経験したチームの財産にするということに尽きると思っています。

 

 

――以前のインタビューで社会人と大学違いとして教育面を挙げていましたが、采配面での違いは何か感じましたか

冒頭で大学生の可能性と大学野球の醍醐味という話をしたんですけど、社会人以上に未完成な世代、未完成なレベルの野球だと思っています。1試合でグッと変わることもありますし、ひとつのプレーでがらっと局面が変わることもあります。ですから、一球に対しての心技体がものすごく動くというところ、例えば試合前の準備段階での心配り、また試合に入ったら一球で大きく動くという気持ちの準備の面も含めて、それらの2つがより求められる野球だなと思います。

 

 

――新チームの始動に際して福井(章吾=環4・大阪桐蔭)選手が主将に就任しました。昨季から福井選手に対する信頼が大きいように見えましたが、具体的にどのような役割を期待していますか

文字通り扇の要ですので、守備に入った時には投手のリードから野手への声がけ、ポジショニングであったり予測する言葉がけであったり、守備面での監督のような要素は、彼には役割として期待しています。

 

 

――福井選手は将来的に指導者を目指しているということですが、堀井監督は福井選手の指導者としての適正をどう見ていますか

将来指導者としての適性はものすごくあると思います。根拠としてはやはり人柄ですね。リーダーシップというのは色々なタイプがあると思いますけど、最終的にはその人の発言をどれだけ腹落ちできるかだと思っていて、腹落ちさせるために例えば凄い実績もあるでしょうし、カリスマ性もあるでしょうし、人との距離感を取るのが上手いという人もいるでしょうけど、福井はそのいずれの要素も兼ね備えているところがありますので、十分に指導者としての素養はあると思っています。

監督から絶大な信頼を寄せられている

 

――副将のふたりにはどのような役割を期待していますか

 正木(智也=政4・慶應)は打線の核でもあります。中心選手として今年、一塁手にコンバートしたこともありまして、一塁手は守備の面で目がいき届くポジションですので、攻守の要としてチームを引っ張っていって欲しいなと思っています。性格的にもプレーで引っ張るタイプですので、そのスタイルで良いと思います。上田(寛太=商4・郡山)は役割としては代走、代打、なかでもバントなど細かいことができるタイプで勝負強いところもありますので、途中出場というのが役割になりますけど、他にベンチスタートの選手をまとめていったり、試合に出る選手のサポートをしたり、そういった面での役割も含めて期待しています。

 

 

――オープン戦で正木選手が一塁手に挑戦していますが、どのような意図や狙いがありますか

まず同学年の外野手の人数が非常に多いですね。正木と同じロングヒッターの若林(将平=環4・履正社)、中堅手で守備、走塁が売りの渡部(遼人=環4・桐光学園)、小柄ですけどパワーヒッターで勝負強く、代打で何度もチームを救ってきた橋本(典之=環4・出雲)、去年ベストナインを獲得した新美(貫太=政4・慶應)、もうひとり石川(涼=法4・興南)という興南高校で3番打者を務めた選手もいます。外野手の同級生が非常に多いというなかで、誰かひとり内野を守れれば選手の起用の幅が広がるなと思いまして、秋のシーズンが終わった11月からずっとチャレンジしてきたんですけど、正木がなんとかいけそうだという感じでですね、そういったチーム事情からスタートしたコンバートでした。

 

 

――外野手争いが熾烈ですが、監督の中でスタメンは固まってきていますか

 やはり外野手が非常にポイントですね。外野手の3人をどういう布陣にするのかということが最終的なポイントだと思っています。今の時点では6人、若林、渡部、橋本、新美、萩尾(匡也=環3・文徳)、山本(晃大=総3・浦和学院)。この6人をどう組み合わせるかというところまではある程度、頭にあります。

 

 

――これまで正木選手が守っていた右翼手ですが、右翼手のスタメンに重視するのは守備面か打撃面かどちらになりますか

基本的には守ることを重視しています。守りがある程度の水準にあるという前提で、攻撃面の組み合わせを考えています。

 

 

――外野手は各選手の調子を見て流動的に起用するということもあり得ますか

かなり6人のタイプが違うなかで組み合わせということもありますし、タイプは違いますけど誰が出ても一定の仕事、役割は果たすのではないかと思っていますので、相手を見ながら調子の良い選手を使うというところですかね。

外野手争いは熾烈を極める

 

――昨年は木澤(R3商卒=現・東京ヤクルト)投手という圧倒的なエースがいました。昨季は木澤投手は長いイニング、森田(晃介=商4・慶應)投手は早めの継投という形が多く見られましたが、今年はやはり継投主体になりますか

できれば投手に長いイニングを投げてもらった方がチームも落ち着きますし、勝つ確率も高いですけど、その時の調子を見て早めに代えることもあると思います。その時にひとつ心強いのは、非常にリリーフがしっかりしているということですね。タイプが違う投手もいますし、経験のある投手も揃っていますので、先発が投げて調子が悪ければすぐに代えるということも当然あります。

 

 

――森田投手、増居(翔太=総3・彦根東)投手には先発としてどのような役割を求めますか

試合を作ってくれることですね。2人とも力はあると思っていますので、5回、6回までとにかく試合を作るということを期待しています。

 

 

――オープン戦では丸谷(浩太郎=総4・國學院久我山)投手や谷村(然=環2・桐光学園)投手など、リーグ戦での経験がない投手が登板していますが、ここまで目立っている投手はいますか

丸谷は短いイニングですけど、非常にいいですね。谷村も2年生ですけど非常に良い投球をしています。あとは渡部淳一(政3・慶應)、笠井建吾(経4・明和)ですかね。彼らは非常に調子が良いと思います。

 

 

――昨季は長谷部(銀次=R3環卒・中京大中京)選手など左の中継ぎの活躍が目立ちましたが、左の中継ぎとして渡部投手や森下(祐樹=総2・米子東)投手は中継ぎに食い込んできますか

そうですね。渡部、森下にはそういう力があると思っています。

今季も継投主体の戦いになるか

 

――ここまでのオープン戦を見て、今季ブレイクしそうな選手はいますか

投手では橋本達弥(環3・長田)ですね。3年生の右の本格派で、彼は先発も中継ぎも長い回も投げられる非常に力のある投手です。野手では萩尾と山本の3年生の2人の外野手が良いですね。

 

 

――慶大はここ2年、下山(悠介=商3・慶應)選手や廣瀬(隆太=商2・慶應)選手など1年生から頭角を表す選手がいましたが、今季1年生でベンチメンバーに食い込んでくる選手はいますか

本間(颯太朗=総1・慶應)、水鳥(遥貴=商1・慶應)が良いですね。特に本間の打撃という部分では、廣瀬が入ってきた時を彷彿とさせるような良い打撃をしています。

 

 

――キャンプやオープン戦ではどのような収穫や手応えを得ましたか

打線の点の取り方が非常に上手くなってきたというのは、すなわち一人ひとりが役割を果たせるチームになってきたということだと思います。投手の方は層が厚くなってきて、投げられる投手が増えてきています。ですから、細かい継投が可能な年になるのではないかと思っています。

 

 

――キャンプからオープン戦にかけてチームとして徹底してきた意識やプレーはありますか

いかに1点を取っていかに1点を守るかというところですね。1点の重みを感じる攻防、ここに尽きると思います。

1点を争う場面でこそ手腕が問われる

 

――ここまでかなり多くの実戦をこなしていますが、チームの仕上がりはいかがですか

点数をつけるとすれば80点くらいですかね。

 

 

――昨年のチームと比べて今年のチームはどう写っていますか

一人ひとりの役割が明確になっている、それを果たせるという面では、去年よりはまたワンランク、ツーランク上だと思います。

 

 

――監督から見て、現在のチームの雰囲気はいかがですか

点を取ること、守ることに対して非常にしつこくなっているので、士気は高いと思います。

 

 

――いよいよリーグ戦が始まりますが、どのような戦いを予想していますか

どこも力は変わらないので、本当に終盤まで1点を争う紙一重の戦いになると思っています。

 

 

――今季のキープレイヤーを挙げるなら誰ですか

投手は橋本、打者は廣瀬です。

急成長を遂げている橋本達

 

――今季特に警戒している相手チームや選手はいますか

初戦の法大ですね。そこをどう滑り出すか、そして次の明大。この法明との戦いというのが非常に大事だと思うので、まずこの2つに向けてしっかりと準備したいと思います。

 

 

――今季の目標、そして意気込みをお願いします

目標は天皇杯奪取。意気込みはしつこい野球です。

 

 

――最後にファンの方々にメッセージをお願いします

 コロナ禍で非常に生活も大変だと思いますけど、明るい話題を提供できるように頑張ります!よろしくお願いします!

 

ーーお忙しい中、ありがとうございました!

 

◆堀井 哲也(ほりい てつや

1962年1月31日生まれ。韮山高を経て、慶大に進学。卒業後は三菱自動車川崎で4年間プレーした。現役時代のポジションは外野手。現役引退後はマネージャー、コーチを務め、1997年に三菱自動車岡崎の監督に就任。2005年からはJR東日本で監督を務めると、2011年には創部初の都市対抗野球優勝に導いた。177センチ、100キロ。右投左打。

 

※当取材は新型コロナウイルス感染拡大を受けて、3月22日にオンライン上で実施しました。

(取材:林 亮佑)

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